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アートの中で働く。NOT A HOTELの進化を触発するオフィス

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ICCサミット KYOTO 2026のDAY1、Session 3Dで開催するセッション「人が集まり、力を発揮するオフィスとは(シーズン2)」に登壇する企業のオフィスを訪問するシリーズ、シーズン2の第1回目は「NOT A HOTEL」です。ぜひご覧ください。

この記事は ICCサミット FUKUOKA 2026で青山スタイル / natがスポンサーするセッション「人が集まり、力を発揮するオフィスとは。」に登壇する企業のオフィスを紹介するシリーズです。

NOT A HOTELのオフィスを訪問

常識を超えた、今までに見たことがないようなデザイン性の高い建築物を別荘として、日本各地に誕生させているNOT A HOTEL。建築のCGパースやロケーションの情報で販売し、シェア購入の仕組みや、他拠点の相互利用など、従来のホテルにないビジネスモデルを作ったうえ、暗号資産やモビリティなど、新たな挑戦を続けている。

そのNOT A HOTELが2025年7月にオープンした晴海の新オフィス「NOT A HOTEL OFFICE」を、モデレーターを務めるnatの町田瑞穂ドロテアさん、佐村ふみさんと訪問した。最寄り駅勝どきから徒歩15分という場所、目の前に海が広がる立地である。

Photo: Kenta Hasegawa

オフィスは1階と、増床した執務スペースの4階。漆黒の玄関ドアの先は、 天井高約7メートルの空間が広がる。 NOT A HOTELの世界観に通じる、快適さを備えた上質かつストイックなデザイン、細部に行き届いた美意識が伝わる空間だ。インテリアや家具は空間にさりげなく溶け込み、日常的に使われている。

Photo: Kenta Hasegawa

一行がお話を聞いたのが、オープン時に話題を集めたTHE NIGO LOUNGE。これは建築中のNOT A HOTEL TOKYOオーナー専用のラウンジであり、いわば完成するまでの”待合室”であるともいう。テーブルではオーナーたちが焼肉を楽しむため、排気ダクトがテーブル下に埋め込まれている。扉の奥はワインセラーだ。

Photo: Kenta Hasegawa
特注のラグはインドの職人が数ヶ月かけて制作

徹底的に作り込んで非日常をつくるNOT A HOTELらしい場、という印象。執務スペースはおもに4階というが、ここで働く日常はどんなものなのか。“オフィスらしくないオフィス”を作った意図を、代表取締役Co-CEOの江藤 大宗さんにお話をうかがった。

本物を置いて使い、感性を磨く

Photo: Kenta Hasegawa
ソファのPRATONE。奥にプルーヴェハウスが見える

「代表の濵渦(伸次さん、代表取締役社長 Co-CEO)が、アートとも呼べるミッドセンチュリー期の名作「6×6 Demountable House(通称:プルーヴェハウス)」を購入し、どこかに置きたい、と考えたことが出発点でした。私たち自身、建築や空間を提供する立場としてその文脈や思想に共鳴するところがあり、建築を構成するパーツや、そこに収められたアート作品を受け止められる場所をつくりたかったんです。

代表取締役Co-CEOの江藤 大宗さん

ここは天井が高く、片面を大きく開口できるので物の出し入れがしやすい。加えて、ホテルへの移動そのものもひとつの体験であり旅である——そんな考えからNOT A GARAGEというモビリティ事業を始めたこともあり、晴海という立地が理にかなっていたという。

「虎ノ門エリアから車で10分、新木場のヘリポートまで15分弱、羽田空港まで20分。晴海側にも豊洲側にもクルーザーや屋形船を着けられるので、乗降まで5分以内です。ひとつはモビリティハブとしての立地、もうひとつはクリエイターが使える空間があること。この2点から、この場所に決めました」

最寄り駅から徒歩15分。あえて人里離れた場所を選ぶNOT A HOTELの思想が、ここにも表れている。

「ここで働くメンバーからはさまざまな声もありますが、15分歩いてでも来たいと思える、面白い空間を私たちがつくらないといけません」

オフィスは、従業員が帰宅した後や週末になると、オーナー向けのラウンジに姿を変える。中央に据えられた大きなテーブルの周りでは、イベントが催されることもあるという。

Photo: Kenta Hasegawa

オフィスで象徴的な存在感を放つプルーヴェハウスは、建築家・デザイナーであるジャン・プルーヴェが手がけた解体・移築が可能なプレハブ住宅で、歴史的にも価値が高く、博物館に収蔵されるような建築作品である。

▶︎ジャン・プルーヴェ(vitra)

Photo: Kenta Hasegawa
1階の中央にあるプルーヴェハウス

「構造そのものがアートになっているようなもので、私たちの設計思想やものづくりの考え方と近いんです。用を足すためだけのものではなく、それ自体に意匠性や佇まいの意味を持たせたい。ここに置くことで、その価値を知っている人も知らない人も土足で上がってきて、普通に飲食したり仕事をしたりする。そういう空間になっているのが、いいなと思いますね」

話をしている間も、建築チームがやってきて、調度品の上に資料を置き、打ち合わせをしていった。私たちがかけている椅子も、リプロダクトではなく、オリジナルのSTANDARD CHAIR。そこまで、本物を「普段使い」する理由は何か。

「例えばファッションや音楽は、アートからインスピレーションを受けてつくられることが多いと聞きます。でも、その逆はない。だからアートに触れる機会をつくったり、距離を近づけて日常のなかに置いたりすることは、自分たちのセンスを磨くうえで大切だと思っています。そこから、考え方も暮らし方も変わっていきますよね。

さきほどの立地の話もそうですが、私たちがホテルを通じてやりたいことも、そこにあります。環境が人をつくる。自然と良いものに接し、良い空間や良い時間の過ごし方に触れられる環境に身を置けば、ものの考え方が変わってくるんです。

私たちが何からインスピレーションを受けるかといえば、やはりアートです。ひと口にアートと言ってもいろいろありますが、大切なのは、それをアートだと意識しないくらい空間そのものがアートになっていること。気づかないうちに触れていて、その中で時間を過ごしている——そんな感覚をつくりたい。

私自身、そこまでアートに詳しい人間ではありません。それでも自然と触れるようになり、アートの話をしたり、個人的に生活に取り入れたりするようになった。やはり、近くに置いているからだと思います」」

普通のオフィスではない空間にしたかった

「使い勝手が良くて駅から近くて従業員のことを思って作る、となると普通のオフィスになりますが、そうではない空間にしたかった。ただアートを置くだけでは難しい。オフィス空間自体がアートになれば、そこで時間を過ごすことで意識しなくても自分たちにアートが入ってくる状態になると思っています。

それによる不便もあって、4階に執務スペースを拡張して作っていますが、最初にそれにチャレンジしたのは良かったなと思います。一定の空間はもう執務スペースですが、1階と一体になっていて、用途に合わせて行き来するのはすごく良いなと」

Photo: Kenta Hasegawa
1階の会議室

フルリモートからオフィスを作った理由

創業からフルリモートで5年間ぐらいたった今、オフィスを作ったのには理由がある。

「自分たちの会社やサービスを徐々に知っていただけるようになると、距離のある方——たとえば海外に住んでいる方にとっては、物件は建つ前に販売していて、オフィスもない。何を見ればNOT A HOTELが分かるのか、という状態になるんです。

そこで、実体のある安心感をつくるために、皆さんがイメージするものを具現化し、つくっている人間が集まっている場所を見せていく。そういうフェーズに来たと考えて、オフィスを構想しました。

NOT A HOTELという会社やサービスをより近くに感じてもらい、安心してもらうための空間で、刺激を交換しあえる空間ににならないと、意味がありません。

それはここで働く仲間にとっても同じです。オーナー様と直接の接点があるのは営業メンバーだけですが、実際に足を運んでくださる姿を見たり、何を喜ばれるのかが近くで分かったりすると、本社のメンバーも動きやすくなる。とにかく、その距離を近づけたいんです」

そんな空間を作ったことで、働く人たちにもいい効果が生まれている。

「オフィスができて直接対話するようになると、そこから生まれるものがあります。認識のギャップが埋まっていく密度が、まったく違う。

その中心に、楽しいものや美しいものがあることはとても大切です。アートやクリエイティブと縁のなかった仲間が、だんだんクリエイティブになっていく。全体のベースが上がっていく実感があります。

まさにプルーヴェハウスもそうです。仮設住宅ですから、本来は人が暮らせればよかったはずのもの。それを実際に目の前で見ると、そこで暮らす人のことを考えるようになる。空間がどういう状態かで、暮らし方も、過ごす人の気持ちも変わる——そう考えるきっかけになります。

それまでは何でもよかったのに、良いもののなかで暮らす、良いものと時間を過ごすのは、やはりいいことだな、と。このオフィスをつくって、自分がここで時間を過ごしてみて、そう思います。空間が与える影響の大きさを、改めて感じますね」

作り込まれたオフィスだが、守るべきものを保ちながら、アップデートも考えているという。「自分たちが一番面白いと思えるものをつくる。変化のない場所には人は来ないですから。集ってくれる場所であり続けるために、アップデートは必要です」と江藤さんは語った。

プルーヴェハウス内でポーズ

事業が急成長を続けるなか、従業員数は現在、全国に500名を超える。建築家からエンジニア、シェフ、船長まで多様な専門性を持つ仲間が集まり、自発的にさまざまな催しが開かれているそうだ。

執務スペースを見学

執務スペースは1階と4階に分かれており、さまざまな専門性を持つスタッフが働いている。そのオフィスをPR担当の西丸 亮さんにご案内いただいた。ホテルの中で働いているような環境の中で、ホテルで使用しているものを実際に使うことで、オーナー達の意見に同じ目線で答えられる利点もありそうだ。

Photo: Kenta Hasegawa
実際にホテルへ配置することを見据え、1脚ずつ異なる椅子を置いている。正面のカウンターには、ホテルに備え付けのカトラリー類や食器が収納されている。

Photo: Kenta Hasegawa
1階執務スペースの書類類の収納はグローブ・トロッターの特注スーツケース。どこに何が収納されているかはオンラインで管理。既製品のフォンブースはソファやカラーなどNOT A HOTEL仕様にカスタマイズ

4階の執務スペースへ

4階エントランス。メンバーの増加に伴い増床

自然光が入る4階も、広々としたホテルの世界観が延長されている。片面の窓からは海を臨む開放感のあるオフィスの中で、人々が働いている。

来訪者の上着収納スペースもホテル仕様
1階と同様、NOT A HOTELで採用しているインテリアやアートが配置されている
Photo: Kenta Hasegawa
鍵から空調まで、すべてのことがスマホやタブレットで操作できるNOT A HOTELの裏側を開発しているスマートホームラボ
建築図面を開いて打ち合わせも行いやすい大テーブル

「NOT A」とは「進化」

会話のなかでは、2025年に発表された有楽町駅前の暫定利用プロジェクト「JAPA VALLEY TOKYO」の話も出た。ここで挑むのは、3年と期限を区切られた場所に新たな価値と人流を生み、土地そのものの価値を上げること。期間限定の土地活用では解体のしやすさが優先され、駐車場などになりがちだ。そこに、このオフィスと同じくアートのある環境をつくるという。

▶︎NOT A HOTEL、三菱地所と共に有楽町駅前で期間限定の体験型プロジェクトを始動(PR TIMES)

このオフィスがそうであるように、訪れる人のなかに知らず知らずアートが入り込んでいく場になるのだろう。

訪問する前は、他を寄せつけないほど完成された孤高の集団に見えていたNOT A HOTEL。だが話を聞くうちに、まったく逆の印象を受けた。顧客にも、ともに働く仲間にも、このオフィスを通じて距離を縮めていく。アートのなかで時間を過ごすことで、社会を変える想像力を生み出そうとしている。

「ひとつずつは尖ったものも多いですけど、それは人に集まってもらうためです。そういう空間に集まるのは、おそらく同じような思想を持った人たち。その密度が上がれば、また新しいものが生まれると思っています。

『NOT A』を日本語に言い換えるなら、否定ではなく『進化』だと思っています。ここが進化のきっかけになる。それをやりたいんです」

クリエイティブやホスピタリティの価値が分かる人を増やし、その担い手も増やしていきたいという。オフィスとは、事業の思想や理念が宿る場所だ。空間の体験と、それが人に与える影響を知る彼らだからこそつくり得た、唯一無二の場所であった。

【NOT A HOTEL オフィスデータ】

延床面積(1F)1,161.16㎡
設立2020年4月
オフィス入居時期2025年7月
従業員数約530名(アルバイトを含む)
事業内容NOT A HOTELの企画・販売・運営

(終)

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