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特別対談「町起こし・産業づくりプロデューサー対談」【K16-9F】のセッションの書き起し記事をいよいよ公開!4回シリーズ(その1)は、電通京都支社 各務(かがみ)さんに、京都の伝統工芸や芸能の価値を発信する「GO ON」プロジェクト等についてお話しいただきました。是非御覧ください。
ICCカンファレンスは新産業のトップリーダー160名以上が登壇する日本最大級のイノベーション・カンファレンスです。次回 ICCカンファレンス KYOTO 2017は2017年9月5〜7日 京都市での開催を予定しております。
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登壇者情報
2016年9月6日・7日開催
ICCカンファレンス KYOTO 2016 「ICC SUMMIT」
Session 9F
特別対談「町起こし・産業づくりプロデューサー対談」
(出演者)
市来 広一郎
株式会社machimori
代表取締役
各務 亮
株式会社電通 京都支社
プロデューサー
小松 洋介
特定非営利活動法人アスヘノキボウ
代表理事
(聞き手)
井上 真吾
ベイン・アンド・カンパニー・ジャパン
プリンシパル
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▶「町起こし・産業づくりプロデューサー対談」の配信済み記事一覧
井上 各務さんは静岡県ご出身ということですが、今京都でどんなことに取り組まれているかということも合わせてきっかけの部分から教えてください。
各務 はい。
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各務 亮
株式会社電通 京都支社
プロデューサー
2002年から中国、シンガポール、インドなど電通拠点を移り住みながら日系グローバル企業の海外戦略を担当。2011年 電通京都支社帰任、京都からグロー バル企業の海外戦略を担当しながら、伝統工芸の海外発信プロジェクト「GO ON」、太秦映画村を文化エンタメパークに変身させる「太秦江戸酒場」はじめ各種文化プロジェクトのプロデュースに多数とりくむ。既存商品のマーケティングやブランディングに留まらず、京都や日本の伝統をベースに、まだ世にない価値を生み出す、事業クリエーション、サービスクリエーションを実践中。
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僕はもともと京都とは縁もゆかりもありませんで、5年前に京都に帰ってきたんですが、どこから帰ってきたかというと海外なんです。
インド、シンガポール、中国等に10年ほど、電通の仕事で行かせてもらって、会社から「そろそろ一度帰任を」と言われ、「京都でしたら」と我儘を言って京都に帰ってきました。
アジアでは日本を代表する自動車メーカーさんや家電メーカーさんなどを担当させて頂き、とてもやりがいがありました。
当初は「洗濯機が届く、すると家事が簡単になる。クルマが届く、すると移動が自由になる」という貢献の手応えがありました。
一方、車が増えると渋滞が起こり、モノが溢れると公害が問題化されるなど、僕がいた10年間の中でも負の副作用の部分が大きくなってきて、日本が海外でその地域へ貢献するためには、モノとは違う何かがあるんじゃないかと思い始めました。
私は海外で自分のキャリアを築こうと思っていたのですが、一度、足元を見定めたい、モノだけでない日本の誇る価値を見つけたいという気持ちがあって京都に帰ってきました。
京都といえば若旦那。若旦那は祇園のお座敷で雅に遊んでるんだろうな、仲間に入れてもらいたいな、という浅はかな下心がありました。
当時 西陣織の「細尾」という会社のショールームが会社の近くにありまして、ふらっとそこに入ると、日本にはこんな美しい工芸があるんだと感動しました。
店員の方に「西陣織や工芸品を海外に紹介すること何かお手伝いできませんか」ということを言っていたら、なんと若旦那(細尾 真孝さん)からその夕方に「良かったら今度お茶でも」と電話を頂きました。
「若旦那と仲良くなれるかも」と思って飲みに行くとだんだん京都の友人を紹介してもらい、本当にラッキーだったのですが、京都の中でも「細尾」は世界に対して挑戦している会社さんで、彼の周りには同じような熱い想いを持っている同志が何人かいました。
彼らの話を聞いていると非常に面白いので「ネットワークで挑戦したらどうですか」という話をさせてもらい、6社の工芸企業の後継者が集まり「GO ON」というプロジェクトを5年前にスタートしました。
例えば、(「細尾」の)細尾君(細尾 真孝さん)というのはお父さんが社長で彼は12代目の後継者、朝日焼の松林君は焼物茶陶を作っている16代目です。
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【参考資料】
「目線を変え、新しい価値観を生む」 西陣織の老舗「細尾」の12代目が語る、生き残り術とは?
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京都は外からは恵まれているように見えますが、実は伝統産業は危機的な状況です。職人さんの平均年齢は65才以上、半分以上は後継者がいない、このまま見つからなければ半分ぐらいの技術が日本から失われていまう、という不都合な真実があります。
であればやれる人間が挑戦しなければいけないよね、1000年以上続いてきた伝統を未来に繋げていくためには、想いを持った後継者が世界に挑戦しないといけないよね、ということで立ち上げたのが「GO ON」というプロジェクトです。
【参考資料】
COLOCAL「リファインされた京都の伝統工芸がヨーロッパで人気に。 GO ON 前編」
「Japan Handmade」
各務 伝統工芸の衰退は、和のライフスタイルの減退に大きく影響をうけています。そこで現代のライフスタイルに活かせるプロダクトを開発して「Japan Handmade」というブランドを作って展開しています。
参考資料:「Japan Handmade」のWebサイトより引用
例えば西陣織の帯を、海外向けには家具の張地に使ったりと、伝統工芸に新しい用途を発見して、商品開発しています。
参考情報:HOSOO(細尾) Japan HandmadeのWebサイトより引用
すると有り難いことに世界中の王族や富裕層の方が目敏く見つけお求めくださいます。
京都の技術が時代遅れのものではなく、本来は世界中で価値と共感性のある希少なものだったということが僕もやってみて改めて気づきました。
5年間やっていくうちに色んなご縁をいただき、今は伝統工芸だけではなく伝統芸能であるお能、お茶、お華や和食や日本酒等のプロデュースにも取り組んでいます。
織物、木工芸、竹工芸のように縦割りになりがちな業界に第三者のプロデューサーが横串を刺すということが、伝統を現代に生きた文化として再生させるためにはポイントだと感じたので、それを工芸の中だけではなくて伝統産業を通して挑戦しています。
今後、加速させたいことに、京都だけでなく、海外や東京、今回ICCカンファレンスに来てらっしゃるような企業との連携もあります。
どんどんいろいろなものをつなげて事業を生み出していく。今は10件ぐらい事業を責任者としてマネージメントをさせていただいています。
説明だけでは良く分からないと思うので、書き起こしにはできませんが、(「Go ON」のWebサイトに)映像があるのでお見せします。
例えば「Japan Handmade」はこういうブランドです。
例えば「おひつ」を作っていた京都の木工技術でスツールを作り、シンガポール、京都、ニューヨークのショールームで展開させていただいています。
また、GO ONの6社に留まらず、京都では日常的に50社ぐらいの工芸企業とお付き合いをしてるんですが、海外の富裕層の方から工房を見たいという要望を多数頂くので、工房を案内するコンシェルジュサービス「Beyond Kyoto」も運営しています。
【参考資料】 COLOCAL「京の伝統工芸が、食が、芸能が、次々とつながるおもしろさ。 GO ON 後編」
また、電通がお付き合いさせていただいている日系のグローバル企業さんも世界に対してより貢献していくためには日本の文化から学んで価値を再発見したいという想いの会社さんが増えてきて、そんな企業の事業開発・商品開発のお手伝いもさせていただいています。
「太秦江戸酒場」
各務 そしてこれも面白いんですが、かつては時代劇の聖地といわれた京都太秦地域に「太秦映画村」があるんですが、ここは夕方5時に閉まるんですね。
そこで、閉館後を「文化のエンターテイメントパーク」に生まれ変わらせるのでやらせてください、と言ったら「面白い事言うね」と言って頂き、「太秦江戸酒場」を始めました。
こんな感じで暖簾の中に僕がお付き合いさせていただいている250人ぐらいの文化人、職人に実際に入ってもらって、「江戸酒場」というテーマで江戸時代にタイムスリップをして遊ぶというもので、ライブで時代劇が起こったり、中には職人さんがいたり、遊郭が再現されていたりしています。
7割ぐらいの方がみんな着物で、こうやってみんなセットに上がり込んで誰がお客さんで誰がホストか分からない感じです。
京都の酒蔵さんに来てもらって作りてさんからストーリーを伝えながら、中の工房の職人さん達も一緒にお酒を飲む、みたいなことをやっています。
「#playkimono」
各務 これの現代版のイベント「#playkimono(プレイキモノ)」を今月末(2016年9月末)に阪急梅田店で行うことになっていますが、昨日発売したディスカバー・ジャパンで僕がプロデュースした着物のプロジェクトが掲載されています。
「GENIUS TABLE」
各務 これは京都市と大学と連携した観光事業なんですが、世界中から京都に才能豊かな方がいらっしゃるので、その方達が京都を通り過ぎちゃうのはもったいないと思い、ソーシャル観光サービス「GENIUS TABLE」ということを行っています。
京都大学の学生が事務局になって、京都に観光に来る世界の面白い人たちを京都らしい場所と食べ物をコーディネートするといものです。
世界中の面白い方が週1回ぐらい来てくださって、市民とのランチ会や中京の昼間の銭湯、鴨川の辺りや西陣の町家等、普通に観光に行ったら辿り着けないけど京都の本物の日常を感じられるような場所と食でおもてなしするようなサービスです。
プロジェクトを事業化して実践する。どのプロジェクトも、誰かに頼まれたわけではないんですが、こんな社会課題をどうにかしたなという想いに共感してくれる仲間たちをその都度集めプロデュースしています。
京都の伝統を少しでも未来に繋げることに貢献できればとい想いでやらせていただいています。
井上 日本にいらっしゃったのは2011年ですよね。
それ以前は京都に住まれたことは無かったんですか?
各務 全然無かったです、縁もゆかりもないです。
ただ、京都に帰ってきた時、外国に行くぐらい衝撃を受けたんですね。
色んなアジアの国に行ってインドはすごくびっくりしたんですけど、京都に住んでると当たり前なんですが、「街中なのにこんなに川が綺麗って何だろう」とか、「人がこんなに規則正しく歩いてるって何だろう」と衝撃を受けました。
僕は海外に住んでいたのでみんな生きるか死ぬかみたいな感じでやっている中で、「この豊かなみんなの生活の感じは何なんだろう」とびっくりしました。
これが世界の中の日本の素晴らしいところだなと再認識したので、それをおせっかいながら発信していくことで役に立てればと考えています。
井上 先程 短期間で250名を集めたとおっしゃっていましたが、伝統工芸をやられている職人の方とか京都の地元に根づいた方々とのネットワークをどのように広げられたのでしょうか。
勝手な印象ですが、京都は「一見さんお断り」みたいな閉鎖的な感じがあるじゃないですか。
各務 ご縁というか本当にラッキーなのですが、5年間で紹介が紹介に繋がっていきました。僕は鈍感なので全く気付いて無かったのですが、実は最初「GO ON」も「各務は京都の伝統を潰す気か」とすごく言われてたんです。
「若旦那と最近仲良くなってるからみんなおいでよ」みたいに調子に乗ってたんですが、実はその裏で「GO ON」のその6人でさえも「京都の町に祟り神が」ぐらいに言っていたらしいのです。
京都の人ってちょっとしたたかで「やらせとけばいい、そこまで言うならやってみな」という部分があるみたいで、やらせていただいたんです。
一歩づつの成功体験の積み重ねで、最初のこの6人(「GO ON」のメンバー)に幸せになっていただいたら、その次は工芸のこういうところも紹介いただいて、次は時代劇もありますよ、お能もありますよ、食もありますよという話がきました。
それぞれ聞いてみると思ったのは、「みんな繋がりたいし、変わりたいし何かしたいけれど、今の状態を敢えて崩すこともちょっと躊躇している」ような両方の気持ちがあるんですよね。
だからこそ、余所者の僕が鈍感力で多少役に立てているのかもしれないなと思います。
(続)
続きは 注目の地域プロデューサー対談 – 「よそ者」抵抗を乗り越える をご覧ください。
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編集チーム:小林 雅/榎戸 貴史/戸田 秀成/城山 ゆかり
【編集部コメント】
続編(その2)では、主にアスヘノキボウ小松さんとmachimori市来さんに、町興しを始めたきっかけや、その中で経験した困難等についてお話しいただきました。是非ご期待ください。他にも多く記事がございますので、TOPページからぜひご覧ください。
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