ビジネス・ブレイクスルー大学大学院の「アントレプレナーコース」が2016年4月に開講しました。ICCパートナーズ小林雅が担当した「スタートアップ企業のビジネスプラン研究」全12回の映像講義について、許諾を頂きまして書き起し及び編集を行った内容を掲載致します。今回の講義は、ライフスタイルアクセント株式会社 代表取締役 山田 敏夫 氏にゲストスピーカーとしてお話し頂きました。60分の講義を7回に分けてお届けします。
(その3)は、ファクトリエ創業時の苦難とそれを乗り越えた「行商」策についてお話し頂きました。ベンチャーらしい船出と山田さんの努力の軌跡を是非ご覧ください。
登壇者情報
ビジネス・ブレイクスルー大学大学院「アントレプレナーコース」
スタートアップ企業のビジネスプラン研究
「ライフスタイルアクセント(ファクトリエ)」
(講師)
小林 雅
ICCパートナーズ株式会社 代表取締役
ビジネス・ブレークスルー大学大学院 教授
(ゲストスピーカー)
山田 敏夫
ライフスタイルアクセント株式会社 代表取締役
(アシスタント)
小泉 陽以
その1はこちらをご覧ください:「日本から世界ブランドを作る」ファクトリエ山田氏のグッチ・パリ店での決心【BBT-FCT #1】
その2はこちらをご覧ください:工場のこだわりと息吹を伝える新しい流通”ファクトリエ”【BBT-FCT #2】
「ファクトリエ」の創業
山田 スタートの時は、ファクトリエのロゴも、このようなものでした。
小泉 今はファクトリエのスペルも違いますよね。
山田 はい。最初はスペルすら間違っているという様でした。
アトリエですから本当はLが正しいのですが、間違ってRにしている。また、謎の絵もついていますね。
小林 謎ですね。日本っぽくない絵です。
山田 はい。何だかアルプスの家みたいな絵です。こうした部分も最初はこのような感じでした。
クラウドファンディングで最初の資金を集める
これは、2012年ですから、3年半くらい前、キャンプファイヤーというクラウドファンディングが立ち上がったような時に、これを活用させていただいた時のものです。
出所:当時のクラウドファンディングページ(CAMPFIRE)
目標金額は30万円だったのですが、これが100万円くらい集まりました。そして、「このビジネスはイケる。俺はすごいものを見つけてしまった」と思いました。
しかし、フタを開けてみると、まったく受注が入らないという時期が、当たり前に続いたのです。
それは何故そうなったかといいますと、キャンプファイヤーでは、みんな友達がご祝儀代わりに買ってくれていたのです。
一般的なお客さんからすれば、ファクトリエと検索しませんし、そもそも誰も知りません。
在庫の山に囲まれて生活する
ですから、私の世田谷の1Kの部屋に、初回生産量400枚のシャツがだいたい大きな段ボール15箱くらいに入って来て、売らないと日の光が入ってこないという事態になりました。
山田 1枚ずつ売れると日の光が入ってくる。
ネット通販ではなく「行商」からスタート
最初は売れず、ネットに出しているだけではダメだということで、最初行商のようなことをやりました。
いろいろなタクシー会社やホテル、ディズニーランドなど、シャツを使っていそうなところへ営業に行きました。
小林 代表電話ですね。
山田 代表電話です。
実はその時、もう2カ月後に、400枚分の金額 200万円分の支払いが迫っていました。
そのうち、100万円は、キャンプファイヤーでいただいたクラウドファンディングのお金を使おうと考えていました。
そして、残りの100万円分をどうしようかと思った時に、「こういうところであれば100枚くらい発注してくれるのではないか」と淡い期待を持ったわけです。
そこで500社くらいリストして一個一個電話をかけていったのですが、全部ダメでした。
どうしよう……と思いました。
「着こなしセミナー」を開催して出張販売する
それから次にやったことが、「着こなしセミナー」というものでした。
着こなしセミナーというものを企業に無償でやるので、その分終わったらシャツを売らせてくださいというものです。
これは100社くらいかけますと、結構こちらは割が良くて、5社くらいアポが取れました。
すると、1社あたり10枚売れば良いと考える。そして、200件電話をかけると12件くらいアポが取れました。
これを一件で10枚売ろうということだけを必達目標として、いろいろなところでセミナーを開きました。
幹部向けのセミナーなどいろいろです。
そして、これが最初全部終わった時には130枚売りまして、なんとか支払いを終えた。
スタート時期はそのような感じでした。
小泉 少しお話を戻して恐縮ですが、最初のクラウドファンディングはシャツを作るための資金をくださいというものだったのですか。
山田 はい。ただ、初回生産のミニマムロットというのがあります。
つまり、あまり生産数が少ないと工場も生産効率が悪くなりますから、「400枚くらいは少なくとも作ってね」と言われたのです。
クラウドファンディングの目標額は30万円と遠慮した金額を設定したのですが、もしかしたらそのくらいは最初で行くのではないかと思っていました。
また、たとえ最初で行かなくても、クラウドファンディングの現状を見れば、ファクトリエがオープンすれば売れて400枚くらいすぐになくなってしまうのではないかという、あまりに甘い、淡い期待で始めたのです。
最初の400枚の販売の厳しさ
そして、フタを開けたら、月に1枚も売れないという当たり前のことになったというわけです。
それで急いで行商を始めたというのがスタートでした。
小泉 その作る部分というのは工場にお願いして作っていただいた。
そして、山田さんは売る部分を担当されていたということですか。
山田 僕は、製品を買い取って売るということです。
小林 メディアなどのインターネットサービスでは在庫がありません。
ですから、サービスを作ったけれど誰も来なかったというケースはあるのだけれど、別にそれで困ることはないのです。改善しようということになるだけです。
しかし、Eコマースのように在庫を抱えるとなると話は違います。特にスタートアップでは「お前は誰だ」というところから始まりますから、先にお金払えと言われる。
つまり、普通は前金でという話になりますよね。
山田 おっしゃる通りで、本当は前金でという話になります。
小林 でも手付金は払ったわけでしょう。
山田 手付金はちょっと遅れさせていただいたのですが、少し払いました。
小林 最低ロット分は作るのにお金がかかりますから厳しいものがありましたでしょう。
山田 はい。厳しかったです。
始める前は400枚がこんなに厳しいとは思いませんでした。
しかもサイズが9サイズあり、全部均等に作ってしまったので、一番売れるMサイズだけ先に完売して、よくわからないサイズばかりが残ることになります。
それは売りづらかったです。
小林 良いですよね! このドシロウト感が起業家ですね。
山田 ドシロウトでした。
最後はそのサイズに合わせに行くくらいしなければならなかったです。「ちょっと長いけれど、洗っていくと少し縮むから」などと言って。
(続)
続きは 共感の連鎖を呼ぶファクトリエ山田氏の「沸点を超えた」想い をご覧ください。
編集チーム:小林 雅/石川 翔太/榎戸 貴史/戸田 秀成
【編集部コメント】
続編(その4)では、山田さんの想いが人を動かしてきた「共感の連鎖」のエピソードと実践されている「想いを人に伝える手紙術」についてお話し頂きました。是非ご期待ください。感想はぜひNewsPicksでコメントを頂けると大変うれしいです。
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