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ICC FUKUOKA 2024 クラフテッド・カタパルトに登壇した、石川樹脂工業 石川 勤さんのプレゼンテーション動画【「石川樹脂工業」は、1,000回落としても割れない食器「ARAS」を通して樹脂の可能性を世の中に拡げていく】の文字起こし版をお届けします。ぜひご覧ください!
ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に学び合い、交流します。次回ICCサミット KYOTO 2024は、2024年9月2日〜 9月5日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページのアップデートをお待ちください。
本セッションのオフィシャルサポーターはJ.フロント リテイリングです。
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【登壇者情報】
2024年2月19〜22日開催
ICC FUKUOKA 2024
Session 8A
CRAFTED CATAPULT 豊かなライフスタイルの実現に向けて
Sponsored by J.フロント リテイリング
石川 勤
石川樹脂工業
専務取締役
HP | X(旧Twitter)
石川県加賀市生まれ。 東京大学工学部システム創成学科を卒業後、世界最大の消費財メーカー Procter & Gambleに入社し、約10年間勤務。Finance &Accounting部門に所属し、工場でのコスト管理・原価低減・内部統制、家電分野での営業戦略など数年間の経験後、シンガポールに転勤。アジア全体の消臭剤・台所用洗剤の経営戦略に携わる。その後、帰国し日本CFOの右腕として、日本全体の営業戦略・流通コスト改革・内部統制に従事。 “自分の手で、ものづくりをしたい!”と“中小企業をスタートアップに変える!”と一念発起し、自分の親の会社に後継として現職に就く。食器ブランド”ARAS”など新規事業や営業統括・ロボティクスによる生産性の改革を推進中。大学時代の恩師とCFRPやサステナブル複合材料の共同研究にも従事。
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石川 勤さん 石川県から来ました、石川樹脂工業の石川です。よろしくお願いいたします。
こちらが僕のプロフィールです。
P&Gを辞めて、父が元気なうちに一緒に働きたいなと思いまして、アトツギとして戻ってまいりました。
その時に感じた課題、そして解決策、ものづくりの未来について少しだけお話しさせてください。
工業部品から食器まで幅広く扱う樹脂成形メーカー
まず簡単に石川樹脂工業の紹介をさせてください。
石川樹脂工業は、石川県加賀市にある樹脂成形メーカーです。
商品として、例えばこういった工業部品であったり、または仏具であったり、または皆さんの身近なところではサイゼリヤさんだったりスターバックスさんの店内用のグラスをすべて取り扱いさせてもらっています。
▶︎株式会社サイゼリヤ プレスリリース
▶︎スターバックスコーヒージャパン株式会社 プレスリリース
メーカーが直面する、ものづくりの「課題」
その時に直面した課題について説明させてください。
これは、多くの中小企業に共通しているのかなと思います。
まずあったのが言いなりの下請け仕事、そして低賃金、さらには外国人実習生頼みのものづくり、かつデジタルに疎い、石川樹脂の課題はさらにあります。
特有の課題です。
課題は「樹脂のイメージの悪さ」と「生産人口減少」
まずひとつ目が、取り扱っているのが樹脂であること。
めっちゃイメージ悪くないですか?
さらに課題があります。
なんと石川樹脂のロケーションがある石川県加賀市は20年後、生産人口が半分になってしまいます。
僕が入社した時に、めちゃくちゃ課題だらけだと思いました。
でもそんな中で信じられるものが3つありました。
1つは親父が培ってきたチャレンジ精神です。
そして2つ目は巧みの技術。
そして3つ目が樹脂の素材としての可能性です。
樹脂は“イノベーティヴ”で“サステナブル”な素材
もう少し、樹脂について説明させてください。
樹脂はそもそもガソリンなどを作る時の副産物みたいなニュアンスもあります。
そして2つ目は意外と低エネルギーで循環可能です。
そして3つ目は、まだまだ実は進化を続けている新素材です。
というわけで捨てるプラスチックがダメなのであって、使い方次第でこれからの時代を支える永く使えて循環できるイノベーティヴでサステナブルな素材といった一面もあります。
▶︎永く使える素材(石川樹脂工業)
▶︎真似できない技術(石川樹脂工業)
樹脂の可能性を信じ、3つの改革に取り組む
そういったことを踏まえて、課題解決のために3つの改革を行いました。
1つは新事業「ARAS(エイラス)」、2つ目は生産工程の見直し、3つ目は貪欲なまでの活用&連携なのですが、時間のかね合いで2つだけ説明させてください。
改革① 樹脂そのものの魅力を体現する「ARAS」
1つ目はARASです。
ARASは、1つの出会いから始まっています。
それは、secca(セッカ)です。
seccaは金沢を拠点とし、空間から器まで食体験をアップデートし続けるクリエイティブ集団です。
彼ら自身も、焼き物や木工の工房を持って日本を代表するようなシェフと対話しながら食体験の進化を実装している、そんな職人集団です。
そんなseccaと出会い、樹脂の魅力についてずっと考えていました。
フェイクではなくて樹脂の素材そのものの魅力というのはどうなのかというのをずっと5年以上一緒に考えて、生まれたのが、ARASです。
ぜひ皆さん、お手元にあるので触りながら聞いてください。
ARASは1,000回落としても割れない、こだわりのある人の普段使いの食器です。
これまでの常識をひっくり返し、技術、形、素材、すべてを見直しました。
長く使ってもらうために、1,000回落としても割れないガラスと樹脂の新素材、熟練した職人とデジタルが融合したデザイン、そして樹脂だからできる環境への配慮、先進と伝統が融合した器たちです。
テクノロジーと職人技をかけ合わせる
こちらの動画をご覧ください。
こちらはARASの実際の製品開発の様子になっています。
石膏(せっこう)型を職人が手仕事でくり抜き、それを3Dスキャンし、金型としての造形を形成しています。
さらに形状を3Dプリンターによる試作・造形にて検証しており、そうやって多数の手仕事と研鑽によって生まれたのがARASです。
1,000回落としても割れない安心感から、大人から子供まで同じ食卓を囲むことができるというのも人気のひとつです。
循環型かつ工芸的な魅力もある「杉皮シリーズ」
さらに、実は審査員の皆様のお手元にあるのは杉の皮の器です。
▶︎サステナブルコレクション Vol.1「杉皮シリーズ」(ARAS)
こちらは、捨てるか燃やすしかない杉の皮をアップサイクルして50%以上使って樹脂とガラスをつなぎ合わせて強化した素材を使っています。
環境の配慮と1点1点、表情の違う工芸的な魅力のある人気商品になっています。
さらにお手元のカトラリーの絵は先ほど言ったサイゼリアが伏線でして、実はサイゼリア様で回収した素材というのをそのまま使っていて、もう既に循環型の生産というのも行っております。
熱量の高いユーザーとファンに支えられ成長
続いて少しマーケティングの話をさせてください。
まずマーケティングの上で活用させていただいたのがMakuakeさんです。
不安のある最初の段階で、本当にありがたいことに多数の熱量の高い初期のユーザーさんを獲得できて本当にいいスタートができました。
本当にありがとうございます。
さらにその勢いのまま、今インスタグラムのフォロワーはもうすぐ15万人と、本当に熱量の高いユーザーさんとファンに支えられているブランドになっています。
星野リゾートでも導入。売り上げは3年で3割増
最近ではオンラインだけではなく、このように百貨店、小売店でも展開がどんどん増えています。
また小売りだけではなくて、星野リゾートさんをはじめ多くの宿泊施設で割れないけれど妥協ではない選択肢として親しまれています。
結果として本当に運が良かったのが、OEMは実は減少していたのですが、全体の売り上げを3年で3割もアップすることを達成できました。
改革② 生産工程の見直しで省人化。生産性は2倍に
それでは次は工程の見直しの話をさせてください。
ものづくりの最大の危機、少なくても私たちにとってのそれは人口減です。
我々の答えはロボットによる省人化でした。
こちらの動画をご覧ください。
※実際の2倍の速度で再生しています
ARASの実際の製造風景の動画になっています。
こちらでは射出成形、水による冷却、ゲートカット、レーザーによる刻印というのを全部1台でやっています。
また今月からはAIによる自動検品システムを実装し始めていて、単純作業をAI・ロボットにどんどんどんどん置き換えているようになっています。
僕自身もエンジニアなのですが、システム構築などの工程改善のリーダーシップを現場と一緒にやっています。
本当に人間がすべきことは何なのかというのを、現場の人と一緒に楽しみながら試作している毎日です。
結果として3年でなんと約2倍の生産性になり、先ほど挙げたARASと共に弊社の業績のV字回復の原動力になっています。
さらに進化するための取り組み
こんな形ですが、さらに進化するために3つあります。
1つは海外展開、北米アジアに展開していきたいと思っています。
2つ目はAI・ロボットにはまだまだできることがいっぱいあるので、僕もわくわくしながら実装をしていきたいと思います。
そして3つ目は皆さんへのお願いになるのですが、樹脂の可能性はまだまだあります。
ARAS以外でももっとあると思います。
ぜひ皆さんと共創型のプロジェクトをやって、「未来につながるものづくり」というのを一緒に考えて社会実装していきたいと思いますので、今後ともよろしくお願いいたします。
(終)
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編集チーム:小林 雅/森田 竜馬/正能 由佳/星野 由香里/戸田 秀成