【最終回】「ディズニーのような存在を目指す」ライフイズテック水野氏が語る21世紀の教育変革【BBT-LIT #6】 – INDUSTRY CO-CREATION(ICC)

【最終回】「ディズニーのような存在を目指す」ライフイズテック水野氏が語る21世紀の教育変革【BBT-LIT #6】

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ビジネス・ブレイクスルー大学大学院の「アントレプレナーコース」が2016年4月に開講しました。ICCパートナーズ小林雅が担当した「スタートアップ企業のビジネスプラン研究」全12回の映像講義について、許諾を頂きまして書き起し及び編集を行った内容を掲載致します。今回の講義は、ライフイズテック株式会社 代表取締役CEO 水野 雄介氏にゲストスピーカーとしてお話し頂きました。60分の講義を6回に分けてお届けします。

(その6)は、ライフイズテック水野さんが目指す21世紀の教育改革と、これまでITキャンプなどのオフラインでの教育を手がけてきたライフイズテックが新たに取り組むオンライン型のIT教育についてお話し頂きました。いよいよ最終回です。是非ご覧ください。

登壇者情報
ビジネス・ブレイクスルー大学大学院「アントレプレナーコース」
スタートアップ企業のビジネスプラン研究
「ライフイズテック」
 
(講師)
小林 雅
ICCパートナーズ株式会社 代表取締役
ビジネス・ブレークスルー大学大学院 教授
 
(ゲストスピーカー)
水野 雄介
ライフイズテック株式会社 代表取締役CEO
 
(アシスタント)
小泉 陽以

その1はこちらをご覧ください:「IT界のディズニーランド」中高生向けIT教育を変えるライフイズテック水野氏の挑戦【BBT-LIT #1】
その2はこちらをご覧ください:ライフイズテックの創業秘話-幻に終わった職業体験グランプリ【BBT-LIT #2】
その3はこちらをご覧ください:ライフイズテック、中高生向けITキャンプの誕生-契機となったスタンフォード視察【BBT-LIT #3】
その4はこちらをご覧ください:「誰もプログラミングできなかった」素人だからできたライフイズテックのカリキュラム【BBT-LIT #4】
その5はこちらをご覧ください:世界に広がるITキャンプ-ライフイズテック水野氏が語る”転機の資金調達”【BBT-LIT #5】


小泉 そして、約3.1億円の資金調達をされたということですが、これは実際にどういった目的に使われたのでしょうか?

ライフイズテックが考える「21世紀の教育変革」

水野 僕らは2025年を目標として、教育変革6か条というのを創っています。船中八策(坂本龍馬が起草した新国家構想)のようなものを創りたいと思いました。どうしたら子どもたちにとっていい教育が出来るのかを考えて、6か条を創りました。

1つ目が、IT教育による、創造力の育成です。プログラミングの力は、ツールでしかないので、新しいモノを創り出す力というのを育みたいと思っています。

2つ目が、僕はアントレプレナーシップと呼んでいるのですが、何か問題が起こったら、安倍首相や政治のせいにするのではなくて、自分で変えてやるという気概や、人を巻き込んで実行していく力を、子どもたちに育みたいなと思っています。

3つ目が、経済格差や地域格差の課題を解決するために、東京に集中してしまっている知をオンライン教育により、オープン化するということです。

4つ目ですが、教育を良くするには、先生がとても大事です。

現状、先生は忙しいのですが、例えば、高校をまたいで連携して、授業の教材をシェアすることができれば、これまで教材作りに当てていた授業の前日の時間が、2時間くらい空けることが出来ます。

そうすると、子どもたちを見る時間が2時間 増えますよね。

教育をもっと良くするためには、先生の時間をどうやって増やすかという点がすごく大事です。なので、先生の力を最大化するプラットフォームを創るのが重要だと思っています。

5つ目ですが、そもそも僕は学校を創らないといけないと思っていて、学校のビジネスモデルから変えないと思っています。

例えば、現在は先生1人に対して生徒40人が通常の体制ですが、それを先生1人に対して生徒が20名の体制を実現するためには、ビジネスモデルを変える必要があります。

あるいは、もっと良い先生を雇いたいときに、簡単に言えば給料を上げないといけないのですが、学校の予算の約8割が人件費に使われているため、給料を増やしたり人数を増やしたりするのは、現在の予算では難しいです。

そうなると、やはりビジネスモデルから変えないといけません。

なので、そういった点を解決する21世紀型の学校を創りたいと思っています。

6つ目が、ダイバーシティがやはり大事なので、グローバルに学び合える土壌創りですね。

この6つにお金を使っていこうと思っています。

小泉 小林さんは、この6か条をご覧になって気になる点はありましたか?

小林 そもそも企業が何にお金を使うかについて話すときに、6か条が出てくるというのはなかなか見ないですね。変革者であることを感じますし、ワーディングが面白いです。

教育格差の課題を解決するオンラインサービス「MOZER」

小泉 やはりITの教育ということだけではなくて、教育自体がお好きであることを感じますね。

水野 そうですね。僕らは、中高生の教育を良くするというのを、会社のミッションとして掲げています。この6か条の中でも、3つ目のオンライン化というのが格差の課題を解決するには肝になります。

2016年6月にローンチさせて頂いたMOZER(マザー)というサービスは、経済格差や地域格差の課題を解決するためにスタートしたものです。

元スクエア・エニックスCTOの橋本さんに来てもらいました。

僕らは、ディズニーのような存在を目指しているのですが、ディズニーはディズニーランドもピクサーも持っていますよね。

ディズニーランドは、数年に1回あるいは年に1回のようなペースでしか来られないかもしれませんが、地元や自分の家でもアナと雪の女王のような映画のコンテンツを手軽に楽しめますよね。

同じようにプログラミングを身近に楽しみながら学べるものが欲しいと思っていて、ピクサーを創って欲しいと伝えて、元スクエア・エニックスCTOの橋本さんに来てもらいました。

これがそのMOZER(マザー)というサービスです。

これは、ローンチしたものとは異なるデモ版なのですが、簡単に言うと、WEBデザイン島とiPhone島というステージがあって、物語に沿って、学習が進んでいきます。

僕らは各コースに1つキャラクターを設定していて、WEBプログラミングは、この牛がキャラクターなんですけれども、プレイヤーである学習者は、ステージで出会う謎を解決していくシミュレーションゲームです。

ファイナルファンタジーは、敵を倒さないと経験値を上げられないのですが、このゲームでは敵を倒す行為に当たるのがプログラミングの学習になっています。

ゲームで楽しくプログラミング学習

具体的にどのように学ぶかというと、例えば、WEBデザインを学ぶ場合は、この猫がキャラクターです。

まず、Life is Tech!のホームページからコース内容のページに行って、ページの一部を変えてみるプログラミングの練習があります。

例えば、このように「こんな人におすすめ!」という部分の文言を変えてみたり、色を変えてみたりという練習から始まります。

小林 いいですね、分かりやすいですね。

水野 学習者はプレーヤーとして、ゲームのストーリーが展開されながら、プログラミングの学習を進めることが出来ます。家でも楽しく学ぶことが出来ます。

小泉 教育というカテゴリーで事業をされているのに、ベンチマークにされているのが、キッザニアやディズニーランドというのがすごく面白いですね。

小林 そうですね。人がどこに時間を使うかという意味で、競合になるということですよね。

子どもにとっては、ディズニーランドは楽しいですけれども、プログラミングを学びながら楽しい方が、親からするといいですよね。

また、教育的な効果が期待されるとともに、将来的には職業にもつながっていくので、企業からも協賛をとれるというモデルですよね。

ディズニーにとってのピクサーのように、スクエア・エニックスで活躍されていた方がいらっしゃることで、単なる教育サービスではなくて、開発力を活かしたサービス展開をしているので、非常に素晴らしいと思います。

オンラインとオフラインが連携し、1人1人に最適な教育を届ける

水野 僕は、子どもたち1人1人の可能性を伸ばしたいと思っているので、中高生1人1人に出来るだけ最適な教育を提供したいんですね。

そのためには、どんな子なのか、どんなタイミングで、どんな教材を渡すのがいいのか、どんな人に会わせるのがいいのかといった様々な点を考慮する必要があります。

例えば、定期的な同じタイミングで教育が提供されたとしても、好きな人にフラれてしまった日は、気持ちが落ち込んで、勉強する気にはならないですよね。

そのように、自分の状態に合わせられる仕組みが必要になってきます。

まずは、自分のポートフォリオが可視化されている必要があって、先ほどのMOZERというシステムの中には、自分の学んできたコースが見えたり、自分が作って来たモノが一覧して見えたりするので、将来的には履歴書のような形になります。

また、eラーニングでの学習は続かないケースが多いと思うのですが、学ぶモチベーションを維持する大事なポイントの1つは、友だちの存在があります。

そのため、MOZERの画面では、友だちとの繋がりをつくれるQ&Aやグループを作れる機能があります。

このようにオフラインで開催しているキャンプを、オンラインのウェブの中で完結することも出来るのですが、更にオフラインとオンラインが連携しているということが大事だと思っています。

オンラインは、インタラクティブパートとして、先ほどお見せした学ぶ画面があって、その上にアドベンチャーのパートがあって、更にその上にラーニングマネージメントシステム(LMS)とSNSのパートがあります。

学びを加速させて継続させるのに大事だと思っているのは、オンラインとオフラインであるFace-to-Faceの両方を行き来しながら学べることです。これが、これからの教育の鍵になるのではないかと思っています。

小林 ディズニーとも共通点がありますよね。

ディズニーの世界観があって、それを実現するリアルな場であるディズニーランドがあって、等身大で体感することが出来ます。ライフイズテックもプログラミングの世界観があって、それがリアルな場で体感でき、Face-to-Faceで人と知り合うことが出来るというのはいいですよね。

オフライン型中高生向けプログラミング教育では世界2位に

小泉 中高生向けのプログラミング教育では、競合はいないのでしょうか?

水野 そうですね、少しずつ競合が出てきてはいます。

オフラインでの参加人数という点では、世界で2位になっているので、少しずつ人数を増やしていきたいと思っています。オンラインでは、大人向けの教育サービスは結構あるのですが、中高生向けはあまりないので、引き続き、こだわって進めていきたいと思っています。

小泉 いまはシンガポールとオーストラリアに進出されているということですが、海外の他の国にもこれから進出されていくのでしょうか?

水野 そうですね。まず、このオンラインのサービスで、ヨーロッパから進出することを考えていて、イギリスを拠点にスタートしたいと思っています。

Life is Tech! の未来像

小泉 では、続きまして、2050年に向けてというお話ですね。

水野 僕らが、どんな組織や世界観を目指していきたいかということです。少し図が汚くて申し訳ないのですが、綺麗にする前の僕が作った段階の図です。

子どもたちの学びの場について考えると、大きく2つに分かれます。学校、あるいは、学校ではない場所です。

子どもたちが成長していくときには、軸というものがあります。例えば、野球が好きでやっていたとしたら、野球の部活と学校を両方続けながら、成長していくわけです。

僕らの場合は、Life is Technologyなので、テクノロジーという軸が1つあります。その中で、これまでは私教育に取り組んできたのですが、これからは公教育に取り組んでいかないといけない、学校を創らないといけないと思っています。

そして、そのプラットフォームになるのが、MOZERだと考えています。

年末にNHKで昭和という時代を創った3人を主人公としたドラマをやっていました(NHK放送90年ドラマ「経世済民の男」3部作)。高橋是清、小林一三、松永安左エ門の3人が取り上げられていたのですが、松永安左エ門は電力会社を創った人なんですね。

もともと電力会社は1社しかなかったのが、戦後に松永安左エ門の尽力によって、いまの形の9社になりました。

松永安左エ門が電力会社を9分割することを提案したのですが、電力会社は既得権益が絡んでいるため、周囲には反対されていました。

それでも松永安左エ門は信念を持ち続けて、最終的にGHQの支持を取り付けられたことをきっかけとして、電気事業の分割民営化を実現しました。

小林一三も松永安左エ門も福沢諭吉の門下だったのですが、ドラマで松永安左エ門が「福沢諭吉先生はいつも言っていた。独立自尊だ」と語る場面を見て、すごいと感じました。独立自尊だから、9つに分割し、各々で成り立つ仕組みをつくっていくべきななんだと。

1つの教えが、松永安左エ門始め、たくさんの人たちを育んで、昭和という時代を創ったんですよね。

次のウォルト・ディズニーを生み出したい

僕らは、テクノロジーを教育の軸として持っているわけですが、僕らは、未来の時代を形作っていくテクノロジーのどんな創り手を育てたいかと考えたときに、それはウォルト・ディズニーだと思いました。

歴史を振り返ると、テクノロジーは戦争を契機に発展することが多いのですが、そのように人を不幸にするテクノロジーではなく、人を幸せにするテクノロジーが生み出されればいいと思います。

例えば、ウォルト・ディズニーは、世界大恐慌で苦しい時代に、大好きなアニメーションに邁進して、ミッキーマウスを創り出すことで、誰も不幸にせずに、たくさんの人を幸せにしたんですよね。

彼はアニメーションという新しいテクノロジーを創り出しました。

ライフイズテックに来てくれる子たちから、ウォルト・ディズニーのように、世の中を進化させるテクノロジーを創り出す子が出てくればいいと思っていて、そのためには、私教育と公教育の両面に取り組みながら、組織とサービスを進化させていきたいと思います。

21世紀の福沢諭吉になる-学校創立構想

小林 素晴らしいですね。さすが慶應義塾大学で学ばれた塾生ですね。独立自尊の精神ですね。

水野 21世紀の福沢諭吉になるというのが僕の目標です。

小泉 学校をもう創ろうと思っていらっしゃるんですね?

水野 そうですね。2020年頃に中高一貫校をと思っているのですが、東京で創るとなると、100億円くらいかかるんですよ。なので、1番かっこいいのは、自分たちが上場をして、自分たちの資金で創れたらいいなと思っています。

学校を創ることで、自分たちの理想とする教育を実現できるので、色んな学校が真似できるノウハウ化して普及することが、教育を変えていくのに1番早い方法なのではないかと思っています。

小林 ライフイズテック大学という名前になるかは分かりませんが、近い内に学校が出来そうですね。

小泉 それでは、最後に小林さんにまとめをお願いします。

小林 最初は参加者が3人という所から始まったということで、まさに寺子屋のような形で始められていますよね。

福沢諭吉さんを始めとした教育者のパイオニアの方も、大体同じようなストーリーを辿っています。

まず、自分で教壇に立つことから始まって、やがて門下生が出てきて、どんどん拡大していきます。

このように、教育のサービスは、まず志があって、人を巻き込んでいって、ムーブメントになっていくという形だと思います。

水野さんは、現代版の福沢諭吉として、教育者と起業家の両面を兼ね備えて、非常に志のある熱い人材であると改めて感じ、感動いたしました。有難うございました。

小泉 有難うございました。

ビジネス・ブレイクスルー大学大学院「アントレプレナーコース」 スタートアップ企業のビジネスプラン研究はいかがでしたでしょうか。今回はゲストに、ライフイズテック株式会社代表取締役CEOの水野 雄介さんにお越し頂きました。

水野さん、小林さん有難うございました。

水野・小林 有難うございました。

(終)

編集チーム:小林 雅/榎戸 貴史/戸田 秀成/藤田 温乃

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ICCパートナーズ(ICC Partners Inc.)は産業を共に創る経営者・経営幹部のためのコミュニティ型カンフ ァレンス「Industry Co-Creation(ICC) カンファレンス」の企画・運営および新規事業創出・アライアンスなどのアドバイザー業務を行っています。