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ICC KYOTO 2025 ソーシャルグッド・カタパルトに登壇した、クロックアップ 中村 公一さんのプレゼンテーション動画【遊び心で地方都市の課題を解決、若者が幸せと誇りを感じられるまちに創生する「クロックアップ」】の文字起こし版をお届けします。ぜひご覧ください!
ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に学び合い、交流します。次回ICCサミット FUKUOKA 2026は、2026年3月2日〜3月5日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。
本セッションのオフィシャルサポーターはICCパートナーズです。
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【登壇者情報】
2025年9月1〜4日開催
ICC KYOTO 2025
Session 11A
ソーシャルグッド・カタパルト – 社会課題の解決への挑戦 –
Sponsored by ICCパートナーズ
中村 公一
クロックアップ
代表取締役
公式HP
1978年青森県生まれ。東京の広告制作会社でアートディレクターとしてキャリアをスタートさせ、2005年に渡米。ニューヨークの名門レコードレーベルでブランディング業務を担当。2009年に帰郷し、「おもしろい街をデザインする」を経営理念に掲げ、デザイン会社「株式会社Qlock Up」を起業。街を俯瞰で捉え、偶然の出会いである「セレンディピティ」を意図的に創出することで、街の活性化に取り組んでいる。これまでにミュージックバー、和食料理店、グロサリーストア、コーヒーロースターなど多岐にわたる店舗を開業。さらに、3万人規模の音楽イベントやマルシェイベントの運営、青森駅前にあるビーチの賑わい創出を担当し、エリア全体の連鎖起業を促すことで、商店街の空き店舗をゼロにした。
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課題を解決する、という考え方を止める
中村 公一さん(以下、中村) 「社会課題は、なぜ解決しないのか?」――僕が住む青森県は、課題の宝庫です。


平均寿命は全国ワースト1位、自殺率も全国ワースト1位、貧困率も全国ワースト1位です。

これらの課題を、どうにかしなければならない――僕は、そうした考え方をするのをやめました。

社会課題を解決しようとすると、難しい言葉や堅苦しい方法論になりがちです。

課題を抱えている人に寄り添って克服しようとする姿は、美しく崇高に見えますが、中途半端に関わってしまうのはよくないのではないかと、近寄りがたい存在になってしまいます。
遊び心を社会課題の解決につなげる
僕が取り組んでいるのは、その真逆です。
課題から解決策を考えるIssue-Driven(イシュードリブン)ではなく、遊び心からスタートし、それがいつの間にか社会課題の解決につながるPlayful-Driven(プレイフルドリブン)です。
あらためまして、本州最北端の青森県青森市から参りました、まちのクリエイティブディレクター、クロックアップ 代表取締役 中村 公一です。

僕の生き方のコンセプトは、「自分の人生が映画よりつまらないなんて許せない」です。

僕は、28歳のときにニューヨークへ渡り、レコード会社にインターンとして潜り込み、ブランディングを担当しました。

地方都市に足りないのは「自信」と「誇り」
32歳で青森県に戻り、デザイン会社のクロックアップを立ち上げました。

ニューヨークで学んだ数多くの中で、最も重要だと学んだことは、“I❤️( love )NY”という、シビックプライド(都市に対する市民としての誇り)を持つことです。

ポジティブな精神と、ひとりひとりがニューヨークの営業マンになります。
青森に帰ってきて気づいたことは、自然も文化も食も、日本の地方都市は、都会にはない魅力が多くあるヤバい場所であるということです。

日本の地方都市に足りていない点は、自信です。

反対に、あるのは、都会に行きさえすれば何かよいことがありそう――という幻想でした。
僕が最初に挑戦したのは、“誇り”のデザインでした。

絶対的な誇りには、長い歴史と文化が必要ですが、相対的な自分を作ることには時間がかかりません。

青森にしかないものを作り、誇りを育てる
まずは、これまでの青森にはなかったものを、そしてこれからの青森にしかないものを作る――そうした情報を発信し、外からの評価を得る、その積み重ねでシビックプライドを育てていくのです。
アメリカで貯蓄してきたお金を元手に、古いビルをリノベーションして、ニューヨークテイストのカフェ「PENT HOUSE」、屋上にはアジアンリゾートのようなルーフトップバー「ON THE ROOF」、デザートをコースで食べられるスイーツバー「SWEETEST DAY」、ドライエイジングビーフを使ったステーキレストラン「熟成肉バル BISTECA」、スペシャルティコーヒーを気軽に飲むことのできるコーヒースタンド「COFFEEMAN good」をオープンしました。


新設されたビーチサイドにはハンバーガーショップ「OCEAN’S DINER」、大通りには和モダンな日本料理店「UGUISU」、ベルギーのブリュッセルで12年修行したシェフによるベルギー料理のビストロ「サカナバル nickel」、地元の食材とおしゃれな加工食品が並ぶグロサリーストア「The AOMORI MARKET」、夜景が一望できて、ねぶたが個室のドームになっているミュージックバー「夜空のMusic Bar うみとひかり」も、展開しています。


誰も想像していなかった、魅力的な青森へと変貌
あおもり駅前ビーチ開業に伴って結成された、賑わい創出・保全管理コンソーシアム(共同事業体)「CISOLA」、すぐ横には、リンゴと写真を撮影できるオブジェを作りました。

また、全国からトップクラスのコーヒーロースターが集う「AOMORI COFFEE FESTIVAL」は、集客15,000人の規模まで成長しました。

来場者数35,000人の無料音楽フェス「太陽のおと 」も開催しています。

クロックアップ 41
このように、店舗やイベントを次々と立ち上げ、誰も想像していなかった青森へと、まちの風景を変えていきました。

滞在時間を延ばして稼げるまちにする「ご近所資本主義」
直近13年間で雇用した人数は、延べ421人、支給した給与の総額は、7億9,700万円です。

関連するプロジェクトは60件、街への投資額は約12億円、経済効果は約40億円、遊び心から始めた挑戦が、確かにまちを動かし始めています。
エリアを、ひとつの家族と見立てますと、家族の中でお金を循環させることができれば、外からの収入が入ったとき、エリア全体のお金は次々と増えていきます。

つまり、バケツの穴を塞ぐことが、重要なのです。
外からの収入は、まちづくりの方程式「集客数×滞在時間×客単価」によって、増やすことができます。

僕が着目したのは、滞在時間です。
半径200mの徒歩5分圏内に、10のアクティビティを作ります。

コーヒー屋の隣にパン屋、その向かいに本屋、近くの公園にベンチを設置することにより、街を回遊する人が増えていきます。
滞在時間が延びれば延びるほど、稼げるまちとなって、出店者数が集まり、街のコンテンツが次々と増えていく――これが「ご近所資本主義」です。

仲間を作り、事業を連鎖的に生み出していく
中村 しかし、自分ひとりの挑戦では、限界があります。

そのため、仲間を作り、事業が連鎖的に生まれるように、生態系をデザインしました。
コミュニティへの入射角は緩やかに、最初はお店のイベントに訪れてくださった方にお声をかけて、次のイベントスタッフとしてお手伝いしていただきます。

慣れてきましたら、出店していただき、自信とお客さんがついてきたら、実店舗を開業します。
出番と役割を与えることも、重要です。

ITに詳しい方はITコーディネーターとして、商店街で講演を、サウナが好きな方には、熱波師としてサウナイベントを開催していただくなど、肩書と責任があれば、人は地域に能動的に関わっていきます。
そして、そのような方々が集まることのできる、共創空間を作ります。

飲食や仕事ができ、本を読めて、行けば必ず顔見知りの誰かがいる――コワーキングスペースやカフェ、ゲストハウスなどは、賑わっているまちには、必ずあります。
そういった場所で、何か面白そうなことが始まる雰囲気を、まちづくりのワークショップで行っていき、1つのプロジェクトをスタートさせると、連鎖的に事業が生まれていきます。
実際に、隣の青森県弘前市にて、自治体とともにこの方法を試してみたところ、ご覧のように、お店が次々と立ち上がり、まちが楽しくなっていきました。


地方を創生する「4段階ムーブメント」
直近2年半で立ち上がったお店は9軒、現在進行中のプロジェクトは8件です。

先駆者の方々のイケてる動きが、20代のインフルエンサーやそのフォロワーへと広がっています。
やがて、「みんな東京の大学に行っているから、東京に行けば何かがありそう」――そのような理由で東京へと流出していた、ボリュームマス層の空気が反転し、「みんな地元に帰るから」と、大きく流れが変わります。

こういった流れを、「地方創生4段階ムーブメント」と呼んでいます。

大都市では、大多数の中のモブキャラクター(※)のひとりが、地方では認められて必要とされる唯一無二の存在となります。
▶編集注:個々の名前が明かされない、主要キャラクター以外のそのほか大勢。
そのほうが、幸福度が高いということに、多くの方々が気づき始めているのです。
日本のすべての地方都市を幸せを感じられるまちに
社会の課題を解決する方法を事業とする、Issue-Driven(イシュードリブン)。
一方で、欲しい暮らしは、遊び心で楽しみながら作るPlayful-Driven(プレイフルドリブン)。課題解決は結果で、始まりは、いつもワクワクする遊び心なのです。

僕は、このロジックを横展開して、日本の地方都市すべてを、幸せを感じられるまちにしたいと考えています。

(終)
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編集チーム:小林 雅/星野 由香里/浅郷 浩子/中村 瑠李子/戸田 秀成


