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「ビジネス」「テクノロジー」「デザイン」の三要素の結合からイノベーションが生まれる

「ビジネスとテクノロジーとデザインが、上流から一緒に仕事をすべき」「ビジネス感覚を持ち、テクノロジーを理解する、有能なデザイナーの存在が重要」とtakram design engineering 田川さんは語ります。 ICCカンファレンス TOKYO 2016に登壇したtakram田川さんとファクトリエ山田さんの対談の(その1)をご覧ください。

2016年3月16日開催
 「モノづくりとデザインで切り開く日本の未来」

(スピーカー)
 田川 欣哉 takram design engineering 代表
 山田 敏夫 ライフスタイルアクセント株式会社 代表取締役

山田 敏夫氏(以下、山田) みなさん、こんばんは。よろしくお願いします。

今日は、ゲストでtakram design engineeringの田川さんに来て頂きました。まずは僕から田川さんに色々な質問をしていきたいと思います。さまざまなキーワードが散りばめられたセッションになると思いますので、ぜひ楽しい会になれば、幸いです。

では、田川さん、まずは、takram design engineeringの紹介からお願いします。

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山田 敏夫
ライフスタイルアクセント株式会社 代表取締役

大学在学中、フランスへ留学しグッチ・パリ店で勤務。ソフトバンク・ヒューマンキャピタル株式会社入社。メディア事業本部営業マネージャーを経て東京ガールズコレクションの公式通販サイトを運営する「fashionwalker.com」へ。社長直轄の事業開発部にて、最先端のファッションビジネスを経験。2012年ライフスタイルアクセント株式会社を設立。2014年中小企業基盤整備機構と日経BP社との連携事業「新ジャパンメイド企画」審査員。2015年経済産業省「平成26年度製造基盤技術実態等調査事業」を受託。年間訪れるものづくりの現場は100を超える。

takram design engineeringの活動

田川 欣哉氏(以下、田川) みなさん、こんばんは。よろしくお願いします。この距離なので、トークショーというよりは、皆さんと会話した方が良さそうな気もしますが、5分だけ時間を下さい。僕が何者なのか、というのを皆さんにまずお伝えします。突っ込んで知りたいな、という人はウェブサイトをご覧下さい。

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田川 欣哉
takram design engineering 代表

ハードウェア、ソフトウェアからインタラクティブアートまで、幅広い分野に精通するデザインエンジニア。主なプロジェクトに、トヨタ自動車「NS4」のUI設計、日本政府のビッグデータビジュアライゼーションシステム「RESAS-地域経済分析システム-」のプロトタイピング、NHK Eテレ「ミミクリーズ」のアートディレクションなどがある。日本語入力機器「tagtype」はニューヨーク近代美術館のパーマネントコレクションに選定されている。東京大学機械情報工学科卒業。英国Royal College of Art, Industrial Design Engineering修了。LEADING EDGE DESIGNを経て現職。英国Royal College of Art客員教授。

takram design engineeringは、東京とロンドンに拠点を置く、デザインファームです。総勢で40名を少し超える規模で仕事をしています。

1 Takram

takarmはデザイン会社の中では珍しい立ち位置の会社で、社名の通り、デザインとエンジニアリングの両方を担うことをコンセプトにしています。takramの中軸を担っているのがデザインエンジニアと呼ばれる人たちで、デザインとエンジニアリングの両方に欲張って取組んでいる人たちです。

2 takram紹介

僕自身は、もともと機械工学を大学で学んだ後に、イギリスのアートスクールのRoyal College of Art(ロイヤル・カレッジ・オブ・アート)という学校の修士課程に留学をしました。そこを卒業後に日本に帰ってきて、プロダクトデザインのスタジオに就職をして、5年ほど経験を積みました。その後にtakramを共同創業しました。今は、takramの代表という立場と、母校のRoyal College of Artの客員教授という立場で、少し教育の方にも関わっています。

3 自己紹介

山田 客員教授! すごいですね。

田川 客員教授って名前だけの職だと思ってたんですが、実際には授業やったりレビューやったりと、それなりにちゃんと働いています。

山田 英語で教えているですよね?

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田川 もちろん、英語でやってますよー。

山田 先週、イギリスへ行っていたのは講義のためですか?

田川 いま僕は2ヶ月に1回、1週間位のペースでイギリスに行っているんですけど、takram Lononのスタジオを面倒みるのと、Royal College of Artで学生や教授たちと会ったりしていますね。

皆さんが知っている人で言うと、掃除機のDysonという会社ありますよね。Dysonの創業者のジェームス・ダイソンさんという方がデザインエンジニアとしては代表格の1人です。グローバルで見ると、意外にそれなりの数の人材が現場で働いているのではと思います。

4 大学

これは世界中から集まった大学院生達の写真です。2学年で80人在籍しているんですけど、確か40カ国籍の人がいます。ものすごいダイバーシティです。こういう人たちとコミュニケーションしながら、イノベーションの方法論に取り組んでいます。

5 生徒

山田 みなさん、生徒ですか。

田川 学生ですね。国籍ではUK人、EU人、それ以外がバランス良く配合されています。バックグラウンドとしては、デザイン系、エンジニアリング系、それ以外がミックスされています。国籍とバックグラウンドの掛け算で、構成されるリッチなダイバーシティの中で、教育が行われています。

デザインエンジニアリングというのを俯瞰で見た時に、山田くんとの話の中で軸線になってくると思うんですが、新しいものを創るタイプの人材を簡単に模式化したのが、僕らがBTC型の人材と呼んでいる人たちです。何を創るにしても、例えばファクトリエのビジネスを創るときもそうなんだけど、必ずビジネスの話と、テクノロジーの話と、クリエイティブの話と3要素が出てくるんです。

6 BTC

日本の産業で言うと、ビジネス系の人と、テクノロジー系の人がほとんどです。そして、そのハイブリッドであるBT型の人材が電気産業や自動車産業を牽引してきたのではないかと思います。

ポストITの時代に、アップルが出てきたりサムスンが出てきたりということで、デザインのパワーが顕在化したのは、この15年くらいです。クリエイティブ系の人材が台頭してきた結果、ビジネス・テクノロジー・クリエイティブの三要素、つまりBTCをうまく結合させて、モノづくりすることがトレンドになっています。

僕らの仕事や方法論については、本にまとまっているので、そちらも読んでみてください。これは去年出した本で、「デザイン・イノベーションの振り子」という本です。代官山蔦屋の建築部門で2014年に一番売れた本らしいです。

7 デザインイノベーション

山田 すごいですね!!

田川 あとは去年、一橋ビジネスレビューでデザインエンジニアリングが特集されたものがあります。僕も巻頭の論文のひとつを書かせてもらっています。この本は入門書としてはよくまとまっているので、興味がある人はこれもAmazonで買えるので、参考にしてもらえるといいかなと思います。

8 デザインエンジニアリング

「一橋ビジネスレビュー」が入門書で、「デザイン・イノベーションの振り子」が理論・実践編という感じです。

で、僕らの仕事なんですが、ハードウェアからソフトウェアまで、本当に色々な仕事をやっています。これはプロジェクトのコラージュです。

9 いろいろ

10 いろいろ2

これは一昨年に着手した仕事で、事業主体が内閣府と経済産業省という仕事です。日本のビッグデータビジュアライゼーションの基盤プラットフォームである「RESAS」のプロトタイピングの仕事でした。帝国データバンクのデータの専門家の皆さんと設計・デザインを行いました。

11 RESAS

 

これはかなり世界的に見ても先端的なプロジェクトで、チャレンジの多い仕事です。

山田 これは何を表してんですか?

田川 これはね、石川県の金沢市に存在している企業と取引のある企業を線で結んでみたときに、金沢市が日本中のどの地域と濃密に取引しているのかを表示した線です。
帝国データバンクさんが持っている企業情報と企業間取引データをパースして、地域経済を分析するというシステムで、すごく面白いプロジェクトですね。

これは去年のグッドデザイン賞でベスト8に入って、デザイン面でも評価されました。

12 TOYOTA

これは、トヨタのコンセプトカーに搭載されたカーナビのプロトタイプです。手元と前方に設置された二つの画面の間をUIがなめらかに流れるように移動することで、運転とUI操作の二つが調和することを目指しました。

13 TAMRON

これは、TAMRONの一眼レフの交換レンズです。レンズの中にほんの少しだけ有機的な形を埋め込むことで、男性的になりがちな雰囲気を、中性的でミニマルな方向にまとめています。毎年、少しずつプロダクトラインナップを増やしていくプロジェクトになっています。

14 NHK

あとは、NHKの番組にも関わっています。NHK Eテレで毎週月曜日に午後5時くらいからやっている「ミミクリーズ」という科学番組です。この番組のアート・ディレクションとキャラクターデザインを担当しています。

この番組は、映像系の賞をいくつか頂いていて、日本賞のグランプリをとったり、アメリカ・フィルム・フェスティバルの教育部門のグランプリをとったりと、国際的にも評価されています。

15 MORIOKA

このプロジェクトはブランディングの仕事です。銀座のすぐ近くに、1冊しか本を置かない本屋さんが昨年できました。「一冊一室」というコンセプトで、本が好きな人は知っているかもしれませんね。この書店は海外でなぜか評判がよくて。この前もイギリスのガーディアンという大きな新聞社にも取り上げられたりしています。

16 dOCUMENTA

これはドイツのdOCUMENTA(ドクメンタ)というアートフェスティバルから招待されてやったものです。作品制作のテーマとして「100年後の未来の水筒を考えて下さい」という問いが与えられて、それに対して、僕らは人工臓器のコンセプトを逆提案したというプロジェクトです。

17 VELDT

これはVELDTというベンチャーの仕事です。IoTのブロダクトデザイン。アナログ時計的なルックスを備えながらも、スマホとの連動が埋め込まれています。ドットLEDとアナログ針のコンビネーションで新しい情報表示のあり方を探りました。

18 MoMA

これは手に障害をお持ちの方のための日本語入力デバイスです。プロダクトデザインを山中俊治さん、ソフトウェアデザインを本間淳さんが担当しました。これはニューヨークのMoMAのパーマネントコレクションに選定されています。

19 SanSan

これは、Sansanという名刺管理の会社の仕事で、Eightという名刺管理アプリの立ち上げを手伝いました。これは日本でもかなりユーザーの多いサービスに育ってきています。

20 Muji

これは、無印良品のiPadアプリです。アナログのノートと同じような感覚で図や文字を描くことができるようになっています。

21 ドコモ

NTTドコモさんとは長いお付き合いで、規模の大きいサービスのUI設計やデザインをやっています。プロトタイプを無数に作りながら、コンセプトを検証していくPDCAサイクルを回すプロセスでやっています。

はい、以上がtakramの紹介です

山田 有難うございます。デザインの重要がさら増している時代になっていると感じているのですが田川さんはどのように考えているのでしょうか?

(後)

編集チーム:小林 雅/藤田 温乃

続きはこちら:第5世代(ハードウェア・エレクトロニクス・ソフトウェア・ネットワーク・サービス)の次はデータとAIの時代

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