人生を変えた出来事(ソラコム玉川 / FiNC溝口) – INDUSTRY CO-CREATION

人生を変えた出来事(ソラコム玉川 / FiNC溝口)

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「アメリカ留学が転機。今までの力が叶わない場所での挑戦は大きな意味があった」(ソラコム玉川)

「閉店とリストラ。20代前半での失敗と反省が、経営者としての原点になった」(FiNC溝口)

注目を集めるソラコム代表 玉川 氏と、FiNC代表 溝口 氏が、自分の人生を変えたきっかけについて熱いトークを展開。経営にかける思いと、若者に向けて、組織で仕事をする上で欠かせない「信頼」の築き方も指南。

登壇者情報
2016年2月17日開催
ICCカンファレンス STARTUP 2016 
特別インタビュー「人生を変えた出来事」
(語り手)
玉川 憲     株式会社ソラコム 代表取締役社長 
溝口 勇児    株式会社FiNC 代表取締役社長CEO 
(聞き手)
渡辺 裕介

「アメリカ留学が転機。今までの力が叶わない場所での挑戦は大きな意味があった」(ソラコム玉川)

司会 人生を変えた出来事を教えてください。

玉川憲氏(以下、玉川) 20代後半でアメリカに留学したというのはすごく大きな転換になったなと思っています。海外留学前は外資系のIT企業(日本IBM)に入ってキャリアを積み上げていった。そのころの僕はサラリーマン人生を歩んでいたので、キャリアを考えるときに「日本IBMのCTOになろう」みたいなキャリアパスを描いていました。

でも、それをMBAの同級生に話すと、「何で日本なの、何でそこでとどまるの、日本の中でCTOになったって、ひとつのカントリーマネージャークラスのポジションでしょ」という視点をくれたんですよね。その時、「なんか井の中の蛙だったな」と感じました。

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株式会社ソラコム 代表取締役社長 玉川 憲
株式会社ソラコムを創業し、IoT プラットフォームのスタートアップに挑戦中。1976年大阪府生まれ。東京大学工学系大学院機械情報工学科修了。米国カーネギーメロン大学MBA(経営学修士)修了、同大学MSE(ソフトウェア工学修士)修了。AWSの可能性に魅せられ、2010年に日本市場の立ち上げにエバンジェリストとして参画。2012年より、アーキテクト、トレーニング、コンサル部隊を統括。CDPの発起人。普段の趣味は子育て、テニス、フットサル。 『Amazon Web Services クラウドデザインパターン 設計ガイド』『同 実装ガイド』『Amazon Web Servicesガイドブック』『アジャイル開発の本質とスケールアップ』他、著作翻訳多数。

また、海外留学することで世界中の人とコミュニケーションをとる能力、英語能力だけでなく、異文化理解能力といったところの大切さが分かりました。海外留学する前は、自分は日本の中ではコミュニケーション能力も高いし、仕事も出来るようになっていると感じていました。ところが海外留学して英語でやれ、と言われてみると、後ろに両手を縛られたような状態で仕事をしないといけない、という手が出せない感覚を久しぶりに味わったんですよ。

それを少しずつ少しずつ、ゼロから再構築していくような経験をさせてもらいました。何か全然今までの力が叶わない場所で、もう一回頑張ってそれなりの実力をつけていくという、新しい変化に対応していくっていうプロセスを再度踏めたところは非常に大きかったと思います。

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司会 海外留学でインスパイアされたということですが、アメリカに留学でいこうというのもかなり意識しなければできなかったと思いますが。

玉川 コンピュータ・テクノロジー、ソフトウェア・テクノロジーはアメリカが断トツ先に走っているんですよね。テクノロジー分野で活躍したいと思ったら、最先端のところにいかないといけないっていうのは、明白だったというか、目をつぶろうとしても目をそらせられない事実があったので、行かなきゃいけないなっていうのは最初から思っていました。これはもう本当にいよいよやらないといけない、と一念発起したのが、27か28歳のときだったと思うんですけど、そこから必死に数年勉強して留学したという感じですね。

「閉店とリストラ。20代前半での失敗と反省が、経営者としての原点になった」(FiNC溝口)

司会 溝口さんにも人生を変えたきっかけをお伺いしたいと思います。

溝口勇児氏(以下、溝口) ファーストキャリアが、スポーツジムやフィットネスクラブのコンサルティングを行う会社だったんですね。その会社が地方の都市に大きなフィットネスクラブを建てたんですよね。僕は23歳のときに、そこのマネージャー、支配人になったんです。

スポーツジムの支配人というのは、中小企業の経営に非常に近いんですよね。僕の場合だと、場所も離れているので、予算作りなどからの収益責任まですべてを負っていました。結局どうなったかというと、一年半後くらいにお店が潰れてしまったんですよね、業績不振で閉めざるを得なくなってしまったんです。当初計画も全然達成できずに、3千人くらいのお客様を集めないといけないところ、結局1,500人くらいまでしかいかなかったんです。

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株式会社FiNC 代表取締役社長CEO 溝口 勇児
1984年生まれ。高校在学中からトレーナーとして活動。今日までプロ野球選手やプロバスケットボール選手、芸能人等、延べ数百人を超えるトップアスリート及び著名人のカラダ作りに携わる。トレーナーとしてのみならず、フィットネス、ヘルスケア業界最年少コンサルタントとして、数多の新規事業の立ち上げや数々の業績不振企業の再建を担い、業界内において「日本一の再生ノウハウ」と称される実績を残す。2012年4月にFiNCを創業。一般社団法人アンチエイジング学会理事他、日経ビジネス「若手社長が選ぶベスト社長」に選出、ビジネスチャンス「2015年注目の100人」に選出

どういう結末になったかといえば、全てのお客様にやめて頂くことでした。僕が採用してきた仲間たちが、常勤のメンバーでも、2,30人くらいいましたし、契約ベースで言えば、さらに3、40人くらいいるんですけど、その人たちみんなにやめてもらうような決断をせざるを得なくてですね。

スポーツクラブとか、フィットネスクラブは地域のインフラみたいな側面があるんです。特にお年寄りの方ですと、「それだけが生きがい」みたいな。よく病院にみんなお年寄りに行くのは、そこにコミュニティがあるから、友だちに会いに行くために病院に行くってことがありますよね。それよりももう少し建設的なあり方が、フィットネスクラブです。汗をかきにいくと同時に、友だちに会いに行くみたいな。ですから、毎日来られるような方がたくさんいらしたんですよ。僕がその居場所を奪ってしまったんですよね。そのときは、本当に肩をつかんで泣かれました。従業員に、「ここは存続できない、辞めてもらわないといけない」という話をした時の、皆の表情が絶望に変わっていく様が今でも忘れられません。

僕が本社から来ている唯一の人間だったので、僕以外は、基本みんな辞めていただかないといけないという状況だったんですよね。そのときに、自分の力不足ゆえに、多くの方の大切な居場所を奪ってしまったという罪悪感が非常に大きくて。

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この話には前置きがあるんです。僕はそこで経営者としての価値観というか、リーダーとしての考え方が完全に変わったんですよね。実はそのスポーツジムが開業した時に7、800人くらいしか客が集まらなくて当時の経営者から、「社員を半分切れ」と言われたんですよ。スポーツジムを建てる際に、半年前から、長いものだと1年くらい前から一生懸命準備をして、それこそ泥水を一緒に飲んで、頑張ってきた仲間なんですよね。仲間を半分切るというのは、僕は出来なかったんですよ。

それで僕は、「半分切るならストライキする」ということを言ったんです。僕は影響力があったので、僕が「ストライキしよう」と言ったら、社員みんな来ないですから。そうすると会社は困るので、結局は、僕の意見をそのまま押し切ったんですよね。それで、誰ひとり辞めさせることなく、経営をしていたんです。でも、最後に経営者が何で撤退を意思決定したかといえば、まさに高コスト体質から抜け出せないし、このままの成長するにしても損益分岐点を超えるのに時間がかかるからだった。つまり、結果として僕の問題がかなりあったんですよ。そこで気が付いたのは、僕が未熟な道徳を押し通した結果、会社をダメにしちゃったんですよね。

つまり、トカゲでいえば、「しっぽ」を守りにいった結果、頭を犠牲にして、実際にはとかげそのものが死んじゃった。僕はそのときに「力がなければ、自分の道徳とか正義を押し通せない」ということをすごく痛感しました。リーダーのそうした表層の正義みたいなことで、会社をダメにしちゃうんだなだということに気が付きました。僕はそこから超リアリスト、理想を掲げながらも、現実主義者になりました。そこからの、僕に対しての社内の印象はどうだろうな結構、非情と思われる側面もあると思いますね。自分の経営スタイルを、その出来事が決定づけたというところがあります。

「判断基準や価値観を合わせていくことが組織マネジメントの鍵ではないか」(FiNC溝口)

玉川 そのことは日々のオペレーションに影響を与えるというか。冷徹であればあるほど、周りの従業員にも影響を与えるじゃないですか。そのコントロールってどうするんですか。

溝口 前の会社で、地方支店のマネージャー後に本体の経営も実はしていたんですけど、社内の人間関係は当時はほとんどうまくいかなかったですね。会社の業績をものすごく上げて、倒産しそうな会社を再生は出来たんですが、こと社員との関係というのはあんまり良くなくて。もう恐怖政治だったんですよね。だけど、今は実は会社の空気は悪くないです。

ただ今も非情と思われることもありながら、うまくバランスをとれているのは、周りのマネジメントのおかげです。僕が(FiNCの)代表をやってますが、FiNCには他にも副社長が2人いるので、彼らが僕の感情や、意思決定の根っこにあるものを代弁してくれるんです。僕が当事者なので、僕がいかに社員に対して、僕の根っこではこういうこと考えているというのを伝えても、それって伝わりづらいんですよね。それを周りの人たちがフォローしてくれている、という環境がうちにはあるので、すごくバランスをとれている。うちの強みのひとつだな、と思いますね。

玉川 大きな意思決定を社長がしていても、周りがその余波を吸収するようにうまくやっているんですね。

溝口 組織の問題というのは、大体は判断基準のすれ違いですよね。例えばですけど、「60度」という言葉があったときに、「温度」と思う人と「角度」と思う人もいます。結局は、こっち側の正義と、あっち側の正義の違い。つまり判断基準が違って、意思決定が異なることによって、それが不満を持つ原因になって、組織がギクシャクしていくんだと思うんですよ。

そこの判断基準をうまく合わせていくということを僕らはとても大切にしています。それを僕自らじゃなくて、制度や仕組みやルールの力を借りたり、また自分と想いを同じくするマネジメントチームを作ることで、判断基準の相違が起きないようにしています。ビジョンやバリューがなぜ必要かというと、一番はメンバーの判断基準を合わせていくことにあると僕は思っています。そこが優れている組織は手の平みたいな組織です。ベースとなる価値観や考え方は同じだけど、それぞれ、その先に指が長いものもあれば、太いものものある。そこで多様性を実現している。手の平の部分をうまく共有しながら、指の部分の多様性を実現していくことをとても意識して制度など作っています。それが結果としては、うまく機能していると思います。

「何のきっかけでもいい、頑張れそうだな、と思うことをとにかく一生懸命やれば、やりたいことはあとから全部見えてくる」(FiNC溝口)

司会 先ほどおっしゃっていただいた溝口さんのきっかけというのは、本当にやらざるを得ないような環境に自分が追い込まれたからこそうまれたきっかけだと思います。まだ自分が何をしたいのかも分かっていない人もいれば、そういう必然的に動かないといけない環境にいる人はすごく少ないと思うんですね。そういう人たちが、何かきっかけを見つけるために、どういうことをしていくべきなのでしょうか?

溝口 何か目の前のことに没頭していれば、その道のプロにはなるんですよね。僕の場合は、最初のキャリアのスタートはスポーツジムのトレーナーでしたけど一生懸命に没頭して、目の前のお客様の笑顔をつくりたいとか、悩みを解決してあげたい、というのを一生懸命やっていたら、その道にプロになるんですよね。

FiNC 溝口勇児1

その道のプロになれば、その道における色々な問題とか、課題が見えてくるんですよね。そうすると、そういう問題とか、課題を解決したいと思えてくる訳ですよ。僕の場合は、この世界での話をしますけど、平均11年間の日常生活に制限がある「不健康期間」であるとか、コンプレックスを抱えながら生きる期間とか、腰痛、膝痛、頭痛といった不定愁訴に悩みながら日々生きている人がたくさんいて、これを少しでも解きほぐしてあげたい、解き放ってあげたい、と思っているんですよね。

司会 最初は、そういうところまで見えているわけではなくて、トレーナーとして極めたい、という思いから、今出来ることを突き進んだ結果、見えてきたっていうことでしょうか。

溝口 結局は、「今いるところに立ちすくんでいても、何もやりたいことは見えてこない」と思えてならなくて。だけど、学生の人は、やりたいことがないことに対して、ものすごく悩んでいますよね。それで結局は、行動を起こさない。僕は、ちょっとの興味とか、「この人と働きたいな」ということでもいいです。何のきっかけでもいいんですけど、頑張れそうだな、と思うことをとにかく一生懸命やれば、やりたいことはあとから全部見えてくる、と思っています。

「ただ目の前のことに集中する。一段一段登っていかないと、いきなり遠いところには行けない」(ソラコム玉川)

司会 素晴らしい話です。ありがとうございます。玉川さんが、アメリカに行った後の話をお伺いしたいのですが、「日本のトップはカントリーマネージャーか」とアメリカで衝撃を受けて、「これじゃない、世界に目を向けてやらないといけない」という思いになった後に、実際に、自分の中で変わっていった行動などがあれば教えて頂きたいです。

玉川 その後ですね、すごく背伸びをして、じゃあその世界をのぞきに行こうというか、勉強しようと思って、シリコンバレーにあるベンチャーキャピタルのインターンシップに行ったんですよね。そこで、とてつもなく打ちのめされて。15年早かったな、と思って。

当時はIBMに行っていたので、IBMのベンチャーキャピタルグループに、インターンをさせてくれっていって、2ヶ月半か3ヶ月くらいですかね、土下座をして入れさせてもらって。で、とことん打ちのめされたというか。僕、何にも出来ないな、と。何も積み上げてきていなくて、この世界で何が貢献できるのか、というのをまざまざと思い知ったんですよね。

大体ベンチャーキャピタリストというのはほとんどが起業経験があるとか、もしくは投資銀行など金融系を極めてきている人たちなので、精神的には何も貢献できなくて、ものすごく辛かったんですけど、逆に、大きな大きなキャリアの長さというか、「これは一段一段登っていかないと、いきなり遠いところにはいけないんだ」ということを改めて分からせてもらったんですよ。
だから、僕はもう一度積み上げ直そうと思って、日本に戻って、目の前の新規事業をしっかり立ち上げるっていうことをやろうと改めて思ったんですよね。

司会 そこで、AWS(Amazon Web Services)の日本のビジネスの立ち上げにつながるわけですね?

玉川 先ほどの溝口さんの話に近いんですけど、「きっかけ」というのは、人によって色々と違うと思うんですよね。学業に精を出すのもいいと思うし、サークルに精を出すのもいいと思うし、今はインターンをやらせてもらえる会社も、すごくあると思うので、インターンでもいいと思うんですよね。

でも、何か今ある目の前のチャンスをつかみにいくというときに、学生は背伸びしていい、と思っていてます。背伸びをしても、失うものはないはずなので。先の世界を見せてもらうというのは、今出来なくても、なんとなくイメージがつかめるじゃないですか。なので、それはすごくいいことだな、と思いますね。

司会 学生の中でも、インターンをしている学生が多いと思うのですが、その中で、目指していきたい方向性が見つかっていない学生に対して成長のために、どのような言葉をかけてあげて、どのように可能性を伸ばしていくのでしょうか?

玉川 僕自身を振り返ってみて、学生のときに、僕は何も分かっていなかったと思って。すごく小さな世界に住んでいたし、まだ何も積み上げていなくて実力もなかった。僕の場合、そうだったんですね。それでも果敢に挑んで、ひとつひとつ前の壁というのと戦ってきたから、そういう風になってきたと思うんですよね。うちの会社にインターンで、いま学生でインターンしてくれている子がいるんですけど、非常に優秀ですごく活躍していますよ。

僕らの場合は、テクノロジーで世界をより良い場所に変えよう、という会社なので、ソフトウェア・エンジニアリングの力が非常に大事だと思っていてます。今の日本ってエンジニアがリスペクトされる環境は、すごく少ないんですよね。なので、学生の中でエンジニアになりたい、ソフトウェア・エンジニアになりたいと人がいれば、ぜひソラコムで育てたいです。

色々苦労をして高いレベルのエンジニアになっている人がたくさんいるので、その中で高みのエンジニアと働くことが大切だと考えています。そういうところで、ロールモデルを提供するのは、ひとつのやり方だと思っていて、それがソラコムでは出来るかな、と思いますね。

あと、結構大きな大企業だと、定量的にやる、というか1年後にこうなりましょう、目標を立ててっていうのがすごくやりやすい。既存事業だとそれが出来ると思うんですけど、僕らみたいなスタートアップは新しい市場を生み出すとか、新しいテクノロジーを創り出すという会社なので、どちらかというとプロジェクト自体が探索型なんですよね。何かを創るっていう。定量的なことはできなくて、どちらかというと、もっと定性的な目標なんですね。

「リーダーシップっというのはこういうことだよね」みたいな定義があるんです。「お客様のことを中心に考える」とか、「動きが速い」とか、「完璧を求めるよりも出来るだけ速くやる」とか、そういう新しいことを創る上でのリーダーシップというのは、色々な成功をしているスタートアップ企業を見たときに共通するものがあると思っています。そういったところをメンバーに伝えることはやっていますし、今後もやっていきたいと思っています。

「逃げ出さない。必ずやり切る。結果を出す。信頼を築き上げることが何より重要」(FiNC溝口)

溝口 僕は「信頼」がとても重要だなと思うんですよね。例えば、玉川さんは起業してすぐに、大きなお金(約7億円)を集めて、とても優秀な人材で構成されている会社を創られている。僕は、今の玉川さんの話の中で、なぜ玉川さんにそれが出来たのかというのをすごく理解したんですね。

まず、今まで積み上げてきた実績、経験は大きいですよね。信頼があるからこそ最初からとても大きな資金に恵まれた。

僕の場合だと、27歳のときに起業をしていますけど、玉川さんのような実績、経歴、経験をしてしていない訳ですよね。小さなフィットネス業界、市場で4千億円くらい、そこでは執筆、連載、コンサルティング、講演などをやっていましたけど、そんなのは、特に誰にも知られていなかったわけです。ですから、最初から、何億円も何十億円も集まったわけではないんです。ひとつずつ実績を積む過程で、仲間や支援者が増えてお金が増えていった。実際大きな会社との提携するなど信頼を積み重ねてきたんですよね。

最近は起業願望のある若者がよくFiNCの門戸を叩きにきてくれますが、「僕は1年後に起業します」とか、「2年後に起業します」とか、「それまでこの会社で頑張りたい、色々教えて欲しい」ということをよく言われますけど、そんな都合のいい話はあんまりないんですよね。

やっぱりやる以上は、身を置いたところで結果を出す、実績を残すということがとても重要だと思っているんですね。そんな最初から、あくまでステップだ、と言い張る人間、それは個人的には面白いなと思いますが、いざ経営者として冷静に考えるときには、そういう人間に大きな役割を与えよう、というのは思いづらいんですよね。いつ投げ出されるかも分からないですし、やりきるかどうかも分からない。そうすると、自ずと代替可能な仕事しか任せなくなる。

僕は、前の会社では、小さな会社の経営をさせてもらっていました。当時の自分のことを言えば、「投げ出さない」、「逃げ出さない」、「必ずやり切る」、「絶対裏切らない」といった印象は持ってくれていたと思います。手前味噌ですが、だから創業者から信頼されていたのだと思います。そういう信頼をされると、どんどん大きな役割とかが回ってくるようになる。そうすると、多くの役割をこなしていく過程で、より大きな経験ができて、実績がそこに付加されていくんですよね。いかに信頼されるかということを考えて仕事をすること、そして日々を生きることが大切だと思います。

玉川 信頼関係というのは、もちろんコミュニケーションというか、そういうのはもちろん大事なんですけれども、仕事の世界だと、仕事の結果で信頼を得るというのは、本当にその通りだと思いますね。

司会 信頼をひとつずつ得ていくことで、次の信頼につながっていく。そのためにも目の前のことを、とにかく一生懸命やる。

玉川 最近「グリッド」と表現されていますけれども、学生に限らず、優秀な人は、なんとかして成し遂げる能力がありますよね。「僕はスキルがないから出来ません」とか、そういうことではなくて、今与えられたものを、あらゆる手段、あらゆるリソースを使って、人に助けてもらってもいいから、なんとしてでもやり遂げるという強さというのは、経営者としては、すごく有り難いし、任せられます。非常に好ましいなと思いますね。

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溝口 やっぱり起業したいという若者がよく来るんですよね。「修行をさせてほしい」とか、「話を聞かせてほしい」とか来るんですけど、そのときによく質問するのが、「今すぐ自分の友だちやお父さんとかお母さんとかに頭を下げて、トータルいくら位のお金を集めてことができるか?」です。

司会 生々しい質問ですね(笑)

溝口 結局、その人が今まで構築してきた信頼というのは定量で置き換えられちゃう訳ですよ。
2011年3月11日に東日本大震災が起きましたけど、僕はいてもたってもいられなくなって、3月の終わり頃でしょうか、まだ震災の爪痕が大きな被災地に仲間と一緒にいったんです。

まだそれこそ道路には自衛隊とか、パーキングエリアにもガスマスクをした人しかいないような、そんな時に行ったんです。東京に戻ってからも何かやれることないか、と思って募金活動をしたんですよね。僕はトータルで300万円くらい集めたんですよ。だけど、その1週間後に、ソフトバンクの孫正義さんが100億円とか、楽天の三木谷さんとかユニクロの柳井さんが10億円とか募金していて。

はじめてそうした一流の経営者と自分の価値の差を定量で突きつけられた気がしました。孫さんに比べたら自分が集めた金額は1/3333だったわけですからね。もちろん金額の多寡ではないというのは頭ではわかっていますが、なんだかとても悔しくて。
孫さんは仮にソフトバンクがなくなっても、相当な資金も集まるし、相当な仲間を集めてリトライ出来ますよね。そういう意味で、信頼というのは事業を成功させる、自分の人生を豊かにする意味では、とても重要なキーワードだと思っています。そこを軽視せずに、ちゃんと向き合っていくことをされたらいいんじゃないかな、と思いますね。

(終)

編集チーム:小林 雅/小林 泰/城山 ゆかり/藤田 功博

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