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ICC FUKUOKA 2027の下見で、福岡(ナカシマファーム・乗富鉄工所)を訪問しました

ICC KYOTO 2026が終わったばかりの9月14日〜16日にかけて、ICC一行は、早くも次回福岡の下見に行ってきました。今回、最終日のエクスペリエンス・プログラムの候補として、フード & ドリンクアワードで入賞した佐賀のナカシマファームと、クラフテッド・カタパルトに登壇した福岡柳川市の乗富鉄工所を訪問。見応えたっぷりの様子をお伝えします。ぜひご覧ください!

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回500名以上が登壇し、1,200名以上が参加する。そして参加者同士が真剣に議論し、学び合うためのカンファレンスです。次回ICCサミット FUKUOKA 2027は、2027年3月1日〜3月4日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページのアップデートをお待ちください。


嬉野温泉経由、ナカシマファーム運営のカフェへ

8時すぎに博多駅前を出発して西へ向かい、「嬉野温泉」の標識が見えてきたのは9時半ごろ。見た目も新しい新幹線の嬉野温泉駅に着くと、人影はまばら。駅前には低層のフェアフィールド・バイ・マリオット・佐賀嬉野温泉や、土産物ショップがあります。

それより目立つのは、上の写真だと左手前側に位置する、この白い建物。ナカシマファームが運営する、カフェや雑貨のセレクトショップUPLIFT。わりに静かな駅前ですが、中に入ると若い人たちで賑わっています。

迎えてくださったのは、ナカシマファームの中島 大貴さん。ICC KYOTO 2026のフード & ドリンクアワードでは、ブラウンチーズとミルクブリューコーヒーを出品して、サステナビリティ部門、アルチザン部門、ブランディング部門に入賞、審査員賞では4位に輝きました。

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【速報】獣医師親子が世界基準のたまごを届ける「デイリーファーム(ココテラスの丘)」がフード & ... 「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場 「Industry Co­-Creation(ICC)サミット KYOTO 2026」、9月1~2日に「フード & ドリンク アワード」 Sponsored by ICCパートナーズが開催されました。80名超の審査員とオーディエンスによる投票の結果、優勝は「デイリーファーム(ココテラスの丘) 市田 旭宏」、2位は「罠ブラザーズ(土とデジタル) 小川 大暉」、3位は「fluir 久保田 靖朗」でした。また、「美味しさ」「サステナビリティ」など各部門賞も決定しました。

まだまだ暑い日だったので、冷たいミルクブリューコーヒーと、特製のミルクマグに入ったホットミルクをいただきました。う〜〜ん、うまいっ! 嬉野温泉駅は、日本一短い西九州新幹線の駅のうちで唯一スタバのない駅だそうですが、その代わりにここがカフェとなっているそうです。ファーム直営とは、なんともぜいたく!

名産物を置いている土産物屋が近くにあり、このセレクトショップでは規模は小さくても選りすぐりのものを中心に紹介しています。ICCでもよく見かけるブランドやお酒、地元のクラフテッドな雑貨や地元の農産物などが並んでいます。訪問時は焼き物のポップアップが開催されていました。

居心地のいい明るいスペースですが、建築を学んでいた中島さんだからこその工夫や場作りのお話を聞くと、このスペースの面白さが倍増。お買い物したい……と後ろ髪引かれながらも再び車に乗り込んで、次に向かったのは中島さんの地元にオープンしたMILKBREW COFFEE。その街並みが想像以上に素敵だったので、ご紹介しますね。

塩田津の静かな町に人を集めるMILKBREW COFFEE

写真の右手に塩田川、左手のレンガの壁の向こうに町が広がっていますが、ここは昔、砂糖を運ぶルートとして栄えた町だったそうです。船着場から、古い建物の屋根(足元には貨物の重量を量る計量器が埋まったまま)をくぐって行くと……。

タイムスリップしたような、塩田津のレトロな街並みが現れます。

▶︎塩田津(しおたつ)(佐賀県公式観光サイト)

よく見ると、景観を残したまま営業しているカレーショップやカフェなど、気になるお店がちらほら見つかります。気鋭のデザイナーが獲得した物件もあるのだとか。そんな街並みのなかにあるのが、かつて銀行の建物だったという蔵を改造したMILKBREW COFFEEです。

もとは銀行が使っていた建物だそう
AXIS Web
ケース・リアルが店舗設計を手がけた 佐賀・嬉野の「MILKBREW COFFEE」 | AXIS Web | デザインの視点で、人... ▲写真:水崎浩志デザイナーの二俣公一が率いるケース・リアルは、佐賀県嬉野市にある塩田津(しおたつ)町にオープンしたミルク出しコーヒー店「MILKBREW COFFEE」の店舗設...

外観からは想像できないですが、中に入ると間口の印象より広くて驚きました。ここはさきほどのUPLIFTなどでも販売するフードのセントラルキッチンとなっており、奥にあるガラス張りの厨房では、若い人たちが黙々と作業をしていました。

写真の奥が厨房

このカフェがオープンしたのは2021年、コロナ禍の緊急事態宣言中。直近の10年間、ほとんど盛り上がっていなかったという場所にもかかわらず、初年度はなんと3万人もの来店があり、「地殻変動が起きて、それからお店の出店が増えた」と中島さんは言います。

名前のミルクブリューはもちろんのこと、ここに来たら、ぜひ試していただきたいのがフレッシュな牛乳から作ったソフトクリーム。器にカラフルなシールが貼られていますが、それには意図があり、この街並みにない色をあえて選んでいるのだとか。訪れた人たちが手に持って、食べ歩くことで街に新たな彩りが加わります。

子どもたちの社会見学訪問先ともなっているそうで、市内の小学生以下の子どもたちに年1回、無料でこのソフトクリームをプレゼントしているそう。うらやまし〜い!

この蔵は、中島さんが高校生時代、日々通学ルートで見ていて「いいな」といつも思っていた建物だそう。貸し出されたときに真っ先に名乗りを上げたのだそうです。「22歳の頃は、このエリアにどうスタバを持ってこようか考えていた」という話も胸熱なMILKBREW COFFEEと塩田津訪問でした。

耕畜連携のナカシマファームの畑

次に一行が到着したのは、いよいよナカシマファームのほど近く、牛の飼料を育てる水田の前です。平和な世の中であれば飼料の価格も安定するものの、刻々と変わる情勢に左右されないための備えとして中島さんはさまざまな手段を考えています。

奥に見えるのが、牛の資料となるお米。もみの部分が短い種類だそう

「20年前は輸入飼料100%だったのですが、現在のような状況もあって、自前に切り替えられる能力をつけることを重視しています。

植物と動物の連携をすることを”耕畜連携”といいます。僕たちは水田でお米を作りますが、現在はお米としての出荷はほとんどなくて、牛に与えて乳に変換しています。情勢に合わせて、お米でも、乳でも、牛肉でも出荷できるという状態を作って、それを行き来するのを自由自在にできるようになるのが、僕は大事だと考えています」

屋内には改造を重ねた農機具がずらり

100頭の乳牛とチーズ工房

最後はいよいよ、ナカシマファームの牧場を訪問です。まずはアワードでも提供された、おいしいブラウンチーズをはじめとする、ナカシマファームのチーズ工房の前で一行は車を駐車しました。

「裏に牛舎があります」とのことで、チーズ工房の間の道を通って、中島さんのご自宅の前を通って裏手に歩いていくと……。

牧場というからには正直、強烈な匂いを想像していたのですが、そんなことはありませんでした。その証拠に、住居の真裏に牛舎があります。そこで1頭700kgにもなるというホルスタインが、土の上に静かに座っていました。土はフカフカに見えます。

現在は110頭ほどいて、1頭で1日約30リットルの乳量だそう。

「この土は、バイオベッドと呼んでいます。牛の糞尿を堆肥化して微生物を増やして、ここに戻しています。牛たちは微生物がたっぷりの状態の上に座っていて、ここで糞をしてもすぐに分解されるから、匂わないんです。バイオベッドは、夏も冬も25度ぐらいで快適なんですよ」

柵近くに飼料が集まるよう、餌押しロボット(写真中央)を活用したところ、乳量が上がったとのこと

牛のデータはファームノートのウェラブルデバイスで管理しています。こういった大型の牛は、餌を食べるとき以外の1日の7〜8割は座って寝て過ごすそうです。中島さんいわく、いい牧場の条件は、牛が鳴かないこと。基本的に動物は問題がないかぎり鳴かないそうで、たしかにこの見学中に、大きな牛の鳴き声を聞くことはありませんでした。

私たちはカフェを出るときに、食べたあとのアイスクリームやコーヒーのプラスチック容器を捨てずに持参するように言われていました。その出番は、うず高く土が積まれたこの場所です。

「カップのシールを剥いでいただいて、『レッツポイ捨て!』で投げ込んでください! 分解されるまでにはもう少しかかりますが、容器の形は3日間くらいで見えなくなりますよ」

焼却炉不要のゴミ処理です

ナカシマファームの特徴である微生物がたくさん住む土によって、生分解性のプラスティックはあっという間に土に還っていくそうです。温度が40度以上で微生物がたくさんいなければ分解が進まないそうですが、このナカシマファームの土なら楽勝でできるというわけです。

「カフェをやりたいからこれをしているのもあるけれど、これをしたいからカフェをするというのもあります。生ゴミは7、8割が水と言われていますが、現在は燃料を使って燃やしている。僕たちのカフェのコーヒーカスや生ゴミは全て回収して、熱を出さずに処理しています。

街と牧場をつなげる1つの仕組みというか、この土は家庭菜園や農家さんにも販売しています」

日本ならではの水田酪農の話や、放牧への模索など、尽きることない話をしながら再びチーズ工房へ戻ってきました。工房は極めて小規模ですが、 17ヘクタールの畑と牛100頭からなる牛乳の出荷量の10分の1〜2ぐらいを使って作るチーズは、牧場の売り上げを超えるのだそうです。

ここでは水田のチーズの新作、九州特産の柚子胡椒入りを試食させていただきました。

さわやかですっきりとした味わいに、柚子胡椒がピリリ。なぜこのチーズを水田のチーズと呼ぶのかは、中島さんのnoteにも紹介されています。

水郷の街・柳川の乗富鉄工所へ

柳川市街地の堀割

嬉野から移動して約束の時間より早く柳川に着き、周辺を車で回っていると、ベニスに匹敵する「水の町」と呼ばれるのも納得の水路の多さに驚きます。その治水の要である水門を作っているのが、ICC FUKUOKA 2026のクラフテッド・カタパルトに登壇した乘冨 賢蔵さん率いる乗富鉄工所です。

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総距離なんと930kmあるという人工の柳川の水路「掘割」は、町に独特の風情を与えています。水門は、柳川だけで約1,100あるそうです。迎えてくださった乘冨さんにお話を聞きました。

▶︎掘割が作り出すまち並み(柳川市観光公式サイト)

元々湿地帯だった柳川の由来は、有明海の満ち引きでできた干潟。水に囲まれていながら、田や暮らしに使える真水は乏しい土地でした。 そこへ人が住むために、水を流す溝を掘り、土を盛ることでこの堀割と柳川のまちが誕生したのだそうです。

「柳川には1,100ぐらいの水門があり、自律的に管理されています。私たちは老朽化した水門を新しくし、遠隔で管理できるようにしています。堀割は年に1度、全部水を抜くのですが、結構いろんな生き物がいるんですよ」

説明してくださる乘冨さん

湿地帯で水だらけの環境ですが、水門は人を水から守り、10年以上にわたり柳川に大きな水害は起こっていないというから驚きです。現在の市長も水路科出身で、洪水が来そうなときに先行排水の仕組みを整える仕事をした人だそうです。

柳川名物といえばうなぎ。有明海から遡上するうなぎにとって、塩水の逆流を防ぐ水門が通り道をふさいでいる面もあります。水門を遠隔で操作して水の流れを細かくコントロールできるようになれば、うなぎが遡上できる環境を取り戻せるのではないか。乘冨さんはそんな可能性にも関心を持っていますが、堀割は農業用水も兼ねているため、両立には難しさもあります。 事業をすることで地域に詳しくなっていき、自治体の活動などにも呼ばれることが増えてきたそうです。

工場の前の橋は、乘冨さんの祖父が掛けたもの

今回は時間がなくて訪問できませんでしたが、工場から車で15分くらいのところにプレゼンでも紹介された水に浮かぶステージ「掘床」があり、新しくなる柳川駅に先がけて、2027年5月のオープンを目指して柳川の観光エリアにカフェを建設中とのこと。 

訪問の前の週には年一回のツクルフェスイベントも大盛況に終わったそうで、この工場エリアには約1,600人の来場があったそうです。訪問時には従業員の皆さんしか見なかった静かなこの場所に、そんなに人が集まったとは驚きです。

▶︎“ツクル”に触れて・知って・楽しむ「ツクルフェス2026」9月13日に開催 社員・家族向けの工場開放から、3年で約2,000人が訪れるものづくりの祭典へ(MICE TIMES ONLINE)

300kgの水門を手動で開けてみる体験! 

工場見学やオフィスもご案内いただき、水道管で脚を作った執務スペースのデスクや、カタパルトのプレゼンでも紹介していた商品の数々、メタルクリエイターの道具など、さまざまなものを見せていただきました。福岡のICCサミットでツアーが実現したら、メタルクリエイター体験ができるかもしれません。

工場や社内には、メタルクリエイター作のアイテムがそこここに
メタルクリエイターが愛用する機械の前で
遠隔地から水門をコントロールするシステムを試作中

スタジオジブリの高畑勲監督によるドキュメンタリー『柳川堀割物語』の題材になり、今年の5月には、「水と人間の未来」をテーマにしたトークイベントに映画監督・岩井俊二さんが出席するなど、柳川はクリエイターを刺激する歴史があり、魅了する場所のようです。

▶︎シンポジウムを伝えるポスト(乘冨さんのX) 

ICC FUKUOKA 2027のタイミングは、柳川では春の風物詩、さげもんめぐりが開催中。はなやかな町を舟で巡りながら、メタルクリエイター体験はいかがですか? 名勝の柳川藩主立花邸 御花  の見学や、名物「うなぎのせいろ蒸し」もおすすめです。

▶︎柳川雛祭り さげもんめぐり(クロスロードふくおか)

▶︎春を告げる さげもんめぐり(柳川市観光情報)

見学を迎えてくださった乗富鉄工所の西田 美織さん、柳川観光協会の氏家 将利さん、呂 連紫さんからは、柳川を盛り上げたい!という熱い気持ちを感じました。柳川出身ではないのに、出向したまま住むようになったり、移転してきたりと、乗富鉄工所には確かな技術と若い力が集まってきているそうです。

ICCサミットの会場から車で、ナカシマファームは約1時間半程度、乗富鉄工所は約1時間という距離です。最終日に開催されることの多いエクスペリエンス・プログラムですが、その土地を実際に訪れて、体験する学びの大きさは他に代えられません。今回訪問した2か所とも素晴らしい体験ができること請け合いですので、開催の際はぜひご参加ください。以上、現場から浅郷でした。

(終)

編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/戸田 秀成

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