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ICCカンファレンス KYOTO 2016 において大好評だった「オープン・イノベーションを実現するには?」【K16-4B】のセッションの書き起し記事をいよいよ公開!6回シリーズ(その6)は、オープン・イノベーションの始め方について、現場感覚たっぷりで議論しました。「秘密結社」や「うぇーいwww」が炸裂しております。是非御覧ください。
ICCカンファレンスは新産業のトップリーダー160名以上が登壇する日本最大級のイノベーション・カンファレンスです。次回 ICCカンファレンス KYOTO 2017は2017年9月5〜7日 京都市での開催を予定しております。
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登壇者情報
2016年9月6日・7日開催
ICCカンファレンス KYOTO 2016
Session 4B
「オープン・イノベーションを実現するには?」
(スピーカー)
竹林 一
オムロン株式会社
IoT戦略推進プロジェクトリーダ
西條 晋一
株式会社WiL
共同創業者ジェネラルパートナー
留目 真伸
レノボ・ジャパン株式会社 代表取締役社長
NECパーソナルコンピュータ株式会社 代表取締役 執行役員社長
丸 幸弘
株式会社リバネス
代表取締役CEO
(モデレーター)
西村 勇哉
NPO法人ミラツク
代表理事
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▶ 「オープン・イノベーションを実現するには?」配信済み記事一覧
【前の記事】
【本編】
西村 隣で竹林さんが歌舞伎役者のようなお顔をされていたのですが、「そうか!」という心の声をお聞かせ下さい。
秘密結社がイノベーションを生み出す
竹林 ページを出して頂けますか?
(会場笑)
このテーマは今まで封印していたのですが、この会場の雰囲気ではいいかなと思って出しました。
実は、クローズドからオープン・イノベーションが起こるというのが私の持論なのです。
僕は日本中の様々な新しいビジネスモデルを研究しているのですが、一番ヒットしたのが「秘密結社型ビジネスモデル」、これなんです。
右下に「日本ロマンチスト協会」とありますが、入っておられる方おられますか?
(会場笑)
ここにはおられないですか。
日本人はもっとロマンチックにならなければならないと真剣に考えている人達が立ち上げたんですね。
今はオープンになっていますが、元々はずっとクローズドで運営されていました。
長崎の愛野というところに、愛野駅(「愛の駅」との語呂合わせ)というのがあり、JRとタイアップして町興しをしており、お金も回っているんです。
次にできた秘密結社が、「日本唐揚協会」ですね。
唐揚が好きで、唐揚の認知を日本でもっと上げなければ日本が危ない、と思っている人達が集まっています。
ここの中にはから揚げ粉をつくっている会社の人もいるし、大分の人もいるし、Willが共通しているんですね。
大体、お金がないとビジネスは回らないので何が起こってくるかというと、クローズドでやっておいてから、共通した一つのWillでお互いの会社を動かそうとするようになります。
そして出てきて何が起こるかというと、コンビニに、日本唐揚協会認定の唐揚が出始めますよね。
そして、唐揚に関する取材があるとこの協会に来ます。
右上に「全国丼連盟」とありますが、ご存知ですか?
これにもお金がものすごく回っていて、スポンサーは自動車会社さんですね。ミシュランと同じモデルですね。
丼を食べるために車で日本中を走らせようということで、また、福井県がバックアップしていて、福井の真ん中で手を振って「福丼県(ふくどんけん)」と言っていますよね。出所:福丼県のWebサイト
最新で立ち上がろうとしている秘密結社には、「あけみくらぶ」というのもあって、これは夜明けの女性、つまり夜勤明けの看護師さんを応援するものです。
看護師さんって、夜勤が明けて、朝終わったらそのまま家に帰って寝るしかないので、ストレスも溜まり離職率も高くなっています。
彼女たちを応援する「あけみくらぶ」は何をするかというと、朝10時から旅行に行けるという、まず第一ステップですね。
そして日本の美人女将の会を束ねているところがあって、そこと鉄道会社がタイアップして、夜勤明けから旅行に行くプランを作り、その旅行は、まず老舗の旅館に泊まって寝るところから始まるんです。
(会場笑)
そして、起きてから新しいサービスが受けられるんですね。
これに誰が投資し始めているかというと、病院なんです。
いきなりITだソリューションだと言って、看護師さんを楽にするために昼間の世界からあれこれ持ち込んでも、効率を上げることに繋がるのかという話になってくるんですよね。
ヘルスケア時代にここを応援していて、まずは看護師さんに幸せになって頂こうと思っていました。
このモデルの面白いところは、Willが共通している点なのです。Willで先に握っておく。
先ほども台風からエネルギーを取るというお話がありましたが、本当にそれでやってみようということで、「秘密結社台風一過」のようなものができるんですよね。
そして、しばらく、どのタイミングでビジネスにするか企む。
そしてそれが表に現れた時に、オープン・イノベーションが起こっているぞということになるのですが、実は裏でそれをやりたい人が集まらないと、中途半端に人が集まって「イノベーションや!」と言っても熱量がバラバラで熱量を引っ張る人も出てきます。
人のエネルギーを取りに来る人も、オープン・イノベーションの中には大勢いますから。
でも僕は、Willで繋がっている関係には、上下関係がないと思っています。
大企業とか中小企業とか、あの人は社長だとか、この人は係長だからとかそんなのは関係ないのです。
あとは、どこのタイミングでこの事業をオープンにしていこうか、どこのタイミングで自分の会社も巻き込んでいこうかということで、それは会社のためにもならなかったらダメですけれども、自分のためにもなって会社のためにもなって、ビジネスが回る。
究極は、この秘密結社型ビジネスモデルだなと思っています。
ただ、この話に関しては、周りの雰囲気や、壇上の雰囲気を見ながら、このスライドを出すフォーラムと、あまりここに触れずにいくフォーラムとがあるんです。
今日はちょっと皆さんに釣られて出してしまいました。
でも僕はここに(丸さんが)言われていた本質があるなと思います。
西村 これはもう丸さんの出番ですよね。
どこまでクローズドでやって、ちょっと待てみたいな、そのタイミングについて教えて頂けますか?
オープン・イノベーションは「うぇーいwww」という感覚
丸 今のお話は本当にその通りで、基本的に、研究者は裏実験というのをやるんですよ。
メインの実験とは別に、実はもっとやりたい実験がある。どんなとき、本当はいけないのだけれども、時間やお金を少しずつ融通して、メインの裏でやりたい実験をするんです。で、結果が出たら「裏」実験を「表」に持っていく。
まさに秘密結社モデルで、今日は良い言葉を聞いたと思っています。
僕はまさに、40社もの秘密結社を作ってきているんですね。
残念なことに、今、大きな会社には、すごく能力があって一緒に組みたいと言って下さる方もおられるのですが、持ち帰って検討してもらうと、結局、「いや、うちの会社はダメなんだよ」といったことになるんですよね。
それをどうにかやめて欲しいと思っています。
働き方が変わって来ているから、この先は、肩書きを20個までは持ってもいいというような時代になるはずじゃないですか。
その秘密結社モデルをきちんとできれば、多分オープン・イノベーションの仕組みというのは変わってくると思います。
そもそも、僕らは大企業の知恵が欲しいのですが、いいタイミングで来て下さらない。
ポイントは、この秘密結社型のクローズド・コミュニティーからどう開けていくかという点です。これは、完全に時代の流れを見なければならなくて、開ける瞬間を間違えると爆発するんですね。
(編集部:続きはテキストだと伝わりにくいため動画で是非ご覧ください)
分かります?
分からないでしょうね。
(会場笑)
大体、分からないですよ。
数字は見えないです。
何というか、感覚ですね、感覚。
西村 それって、外からでも「今だ!」と言えるのでしょうか。それとも中の人が…
丸 ダメです、外からではダメです。
中の人が「今だ!」と言っても、外は大体「違う」と否定してきますから。
これは外から言ってはダメです。
沸々と湧き上がる情熱が、3人くらい重なってくるときがあるんですよ。
1人で言っていると、「いや、まだだよ」と言って止められてしまい、2人でもまだダメです。
3人くらいになると、「だな!」となります。
ですから、「だな!」ですよ。
(会場笑)
「だな!」となって、「行っちゃう?」「行っちゃう?」「うぇーいwww」となって行っちゃうんですよ。
その瞬間が「旬」なんです。
分かります?
西村 丸さんは、その「旬」を見つけにいっておられるのですか?
丸 そうなんですよ。
これが気持ちよくて、たまらないですよ。
僕も一緒に「うぇーいwww」となって、行っちゃいなさい、みたいな。
この感覚は、数をこなさないと見えてきません。
もちろん失敗もたくさんしてきていますけれども、お金を入れるタイミング、外に公表するタイミング、それは実は外から言ってはならないのです。
VCに尻を叩かれて、変なタイミングでポーンとやってしまうと失敗するので、内側のパッションが3人以上固まって、行けるという勘違いをしたいう状態になったら、「旬」なんですよ。
大体、僕はそのタイミングで声をかけられて、「丸さん、出番ですよ」となります。
弊社は、ユーグレナと一緒に「リアルテックファンド」というベンチャーキャピタルファンドを持っていて、そこでも23社の事業体の企業の方から75億円集めたのですけれども、それでベンチャー企業の「うぇーいwww」のタイミングに呼ばれたので、「うぇーいwww」と言ってお金を出すと、「うぇーいwww」とオープンになっていくんですね。
(編集注:現在、リアルテックファンドでは、10社以上のテクノロジーベンチャーの「うぇーいwww」のタイミングで出資を行い、オープン・イノベーションにより大企業との連携を図っています。)
(会場笑)
分かります?この感覚。
西村 これ、記事に起こす人はかなり大変ですね。
(編集注:大変でした)
丸 記事には、オープン・イノベーションは「うぇーいwww」という感覚ですと書いておいて下さい。
(編集注:指示通り書きました)
皆さん、今日はいい話を聴けてよかったですね。
(会場笑)
ありがとうございます。
西村 外から言ってはダメなのですね。
丸 本当に、外から余計なお世話をしない方がいいですよ。
本当に一緒にやりたいのだったら、自分も内側に入って情熱を燃やすことです。そうすると、外からでは決して見えないその瞬間が見えてきます。立ち上がりのところは内側からの方がよいというのが重要なところだと思います。
ある程度までいくと、外からガンガンいけます。
最初の技術が秘密結社からローンチする時に、立ち上がりの角度が決まるんですよ。
このタイミングで変なことをすると傾斜が緩やかになってしまうので、その最初の速度というか、角度が大切です。
後からバーッといくともっと角度が上がるので、そこはもうガンガン燃料を詰めて欲しいのですけれど、ここ(初期)だけは少し放っておいて欲しいなという感じはありますよね。
西村 丸さんは、守られている訳ですね。
ではその話を落ち着けて頂くために、西條さんに伺ってみたい思います。
今はまだ出してはダメだというような、そのタイミングのお話を、分かり易い日本語で教えて頂けますか?
(会場笑)
「やるぞ!」という人が「キタ!」と思ったタイミング
西條 (頭を抱えて)「うぇーいwww」ですね…。
やはり合議制でやるというのではなくて、「やるぞ!」という人が「キタ!」と思ったタイミングがいいなとは思いますね。
そして、やはり新規事業やオープン・イノベーションをやる時には、市場調査がどうとか、あまりそういったことをやっているとよくないと思っています。
やはり、リーダーが消費者感覚を持っていて、自分で欲しいとか、こういうものがあったら使いたいみたいなところが、ピンとくるときがあるんですよね。
僕も約10社新規事業を立ち上げたのですが、ここのマーケットが伸びているからやろうみたいな理由でやって、例えば僕があまり得意ではないeコマースなんかをやると、こけるんですよ。
あとは、海外文脈で、とにかく海外やろう、やりやすいところからやってみようといったもの、これもこけるんですね。
ただ、自分は投資が好きだから金融をやろうというと、それはすごく上手くいくし、ゲームが好きだからゲームをやろうというとそれも上手くいくし、自分が好き、且つ今やりたいという直感があった時に信じてやるというのが、あまり科学的ではないのですが打率はかなり高いなというのはありますね。
何人かで決めるというのは、大きい会社では仕方がないと思うのですが、ある程度分野を決めるといったことはありだと思うのですけれども、取り側のタイミングはそういうものなのかなというのはよく思うことですね。
西村 留目さん、この話、どう解釈しましょうか?
自発的な動きが起こってこないとプロジェクトにならない
留目 これは、こういうことではないでしょうか。
秘密結社というのは、クローズドなものではなく、色々な人が混ざって秘密結社になると思うので、これは鎌倉でもそうだし、渋谷でもそうだし、考えてみるとまずそういう秘密結社ができて、それが「うぇーいwww」となってプロジェクトになっていく訳ですね。
そして経済産業省に申請してみたら通ってしまったというような、そういう感じになのだと思います。
私は大企業側で経営をやっているわけですが、僕の方からこういう風にやれと言ってやれるものでは全くなくて、そういう「うぇーいwww」というものが起こってこないとプロジェクトにならないので、そこがすごく面白いところであり、経営としては難しいところであると思うんですね。
自分自身も共創プロジェクトに関わってみて、結論づけているのは、将来的にはやはり大企業というのは結局は工場的な存在なんだなと思うんですよね。
大企業が得意なのは、分野としてはやはり、効率的な、エフィシェンシー(efficiency)を上げるオペレーションなので、そこはもう役割分担でいいのではないかなと思うんですよね。
オープンイノベーションのプロジェクトというのは個々に起こっていきますし、もしかしたら大企業の工場長的な経営者よりは、むしろこういうプロジェクトを幾つも生み出したり、リードできる人の方が、偉いですよね。
社会的にも価値があるし、多分そういう人達の方がもしかしたら大企業の経営者よりも稼ぐような時代になるかもしれません。
インターネットで最適化されてきたら、ファンディング(資金調達)もできる訳です。今だと、企業の中で上に上げるタイミングを誤ると潰されてしまう、ということもあるかもしれませんが、本当にいけるプロジェクトだったら、企業の上司が納得してくれない場合、別のカタチでお金だって集められます。
ですから、オープン・イノベーションは将来的にはもう当たり前になると思いますし、むしろ単体の企業でイノベーションを起こしていくという方が、難しくなってくるのではないかと思いますね。
西村 ありがとうございます。
ここで少し皆さんに質問をとろうかなと思うのですが、竹林さん、もう隠されているスライドなんかはないですよね?
「サブマリンプロジェクト」の重要性
竹林 ないですけれど、もう一つだけ。
新規事業を色々と立ち上げてきたのですが、大企業の方は今まで「センミツ」と言われたんですよね。
つまり、1,000個やって3つ。
それについて、一度、社内でイノベーターと言われる面白い人達を集めてディスカッションしたことがあるんです。
その結果分かったのが、1,000個やって3つ成功するということではないということです。
つまり、1,000隻の潜水艦を稼働させておいて、いいタイミングで3隻の潜水艦を上げるということなのです。
先ほどのお話にもありましたけれども、それまでにどれだけネタを持っているのかということが重要なのです。
潜水艦が見つかると、上から機雷が降ってきて潰されるので、わざと違う潜水艦を出して機雷を誘き寄せてなくさせておいて、本命の潜水艦を上げる。
つまり、本当にその企業でやりたかったら、ビジネス化するタイミングを考える必要があります。
今反対しているからもういいやということだったら、それだけのこと。そこで終わりです。
1,000隻の潜水艦を走らせることを、「サブマリンプロジェクト」と呼んでおり、その1,000隻の中には難題も走っていることもあるのですが、良いタイミングで浮上させていくというのも、一つご参考になるかなと思います。
以上です。
西村 壇上は収まりましたので、皆さんから質問をお受けしたいと思います。
手を挙げて頂いたら、マイクを持って行きますので、ここはもう少し深堀してみたいとか、ここはもう少し聞いてみたいといったことがあればお願い致します。
皆サブマリン中ですね。
(会場笑)
はい、それではマイクをお願いします。
質問者1 今日はありがとうございました。
別府と申します。
イノベーション・ガーデンという団体をやっております。
僕はヘルスケア系の人間なのですが、よく会社さんからご依頼頂くのが、この既存事業だけでは立ち行かないので何とか新規事業を、といった感じで、所謂、社内のクローズドなイノベーションプロジェクトみたいなものをされようするのですけれども、今日のお話で、オープン・イノベーションというのは、オープンな方が色々なセクターの方が混ざり志で繋がるので、その結果、多様性がある団体が濃密にグッとスタートのカーブを描くみたいな、そういう背景があるように聞こえました。
やはり社内だと同質の人であったり、同質の文化があるので、ある程度の粒が揃った多様な人を集めて来るといってもそこには限界があって、だからこそオープンな方がいいよねという話に聞こえるんです。
社内でやることの限界を超える工夫のようなものがあるのか、それとも今日のお話の結論で、そもそもオープンでやりなさいよ、間違いないんだよ、という話なのか、その辺の感覚を、皆さんオープン・イノベーションもされているけれども、同時に企業という組織の方々なので、感覚的なことでよいので教えて頂きたいなと思います。
西村 非常にロジカルなご質問です。
答えたい方いらっしゃいますか?
留目 多分これは、イノベーションの内容によるのだと思います。定義によっても違うのかもしれないですけれども、例えば私のPCの会社で言うと、NECパーソナルコンピュータという会社には非常にいいエンジニアもたくさんいますし、優秀な人達がたくさんいるんですね。
こういった世界最軽量のPCなんかは、すごく得意なんですよ。結構手間はかかっているんですよね。
これもイノベーションと言えばイノベーションだけれども、こういうものは、社内の経験に基づいて起こり易いものですよね。
ただし、今本当に変曲点にかかってきていると思いますし、ほとんどの事業がIoTで外と繋がってしまうので、逆にこういうイノベーションが通じる領域の方が珍しいのではないかなという風に思うんですよね。
既存の製品の少し新しいバージョンや、或いはもう少し良いバージョンのようなものというのは、もちろん社内で十分やれるところもありますが、これが通用するのというのはむしろ少ないという風に思っています。
西村 もう一人どなたかお願いします。
西條 新規事業を立ち上げる時には色々なやり方があると思うのですが、人事部や役員の人がその会社の人材を送り込んで、「この人たちとやってね」というケースが結構多いと思うのですけれども、僕の場合はいつも、外から、一から人を採るんですね。
やはり自分で集めた人達で、きちんとビジョンを語って共感し合って来てくれた人でやる方が、人集めには苦労するのですが、結局早いなというのがあって、基本的には人を採るところからやるというのをやっています。
その方がやり易いし上手くいく。
例えば大企業で思考が凝り固まってしまっている人達がガッと来られても、むしろマネジメントコストがかかるというか、変えることに労力がまず半年かかるみたいな感じになると思い、これは結構陥り易い罠のような気がします。
世界をどう変えていくかがないとイノベーションは生まれない
丸 新規事業をつくるのとイノベーションは違います。新規事業だったら僕が手伝って作ってあげればいいだけですよね。
売り上げが下がってきてこの既存事業がもうダメだから、もう一つ事業が作りたいという時に、お金さえ頂ければ僕が作って売り上げを上げることができるんですよね。
そうすると、皆がありがとうと言ってくれるから、「いやいや、そんなこと気にしないでよ。売り上げが上がってよかったね。ちょっと頂戴ね」と言えば終わりなんですよ。
でも、イノベーションというのはそうではないんですよ。
売り上げのためにやるとかではなくて、世界をどう変えていくかとか、どの課題に対して何をやりたいのかという議論をし始めないとスタートラインに立てないんですね。
ですから、既存事業がダメだから新規事業を立ち上げたいというのであれば、僕にお金さえ払っていただければ新しい事業を売り上げ付きで差し上げます。
僕、すぐに行きますので、その方にそう言ってください。
いや、安いですよ。本当に。
もう少しお金下されば、投資へのリターンはすごいですよ。
ですがイノベーションというのは、どういう課題に対して、これからその企業とかその人が情熱を持ってやっていきたいのかという議論から始めないといけないので、内側だろうが外側だろうが本気で議論する人が集まればできるんですよ。
売り上げが下がったから、既存がダメだからとかいうことで新規事業の話になると、研究者はよい顔をしないですね。
質問者1 ありがとうございました。
現場に答えはあれども、ヒントは外にある
竹林 僕は色々な分野で事業を立ち上げてきましたが、最初に話を聞くのは社内ですね。それから社外の関係者、そして次はその業界でない社外の方の話を聞きにいくんですね。
昼間はヘルスケアの業界の人と会って喋るんです。何を考えているか分かるんですね。
それで今までイノベーションも起こってこなかったし、サービスレイヤーなんて立ち上がっていない。
夜は温泉業界の会長と会食したり、エステの社長と会食したり。
彼らが考えるヘルスケアとは何だろう、健康で楽しく生きるとは何だろう、実はそういうところにヒントがあるんですよね。
他所でやろうが中でやろうが一緒で、青島刑事は現場に答えがあると言いましたけれども、現場に答えはあれども、ヒントは外にあるんですよ。
このヒントが外にあるということが分かっているだけで、やり方が違ってくるかなと思います。
今までの業界で今までの人達と先のことを考えようというのは、できないと思います。
先のビジネスモデルの話にしても、一からビジネスモデルを考えられないので、世の中にどれだけビジネスモデルがあるのかということを考え倒した中でどれを使うのかを考える訳です。
例えば「京都お茶屋型ビジネスモデル研究会」というのをやっているのですけれども、なぜ450年続いているのかということを考えた時に、そのノウハウをこちらに応用できるのではないかと考える場合もあるんですね。
先人の知恵というノウハウが外に沢山あって、それをどう持ち込んで融合させるのかというのがイノベーションのポイントであって、ずっと机で座って考えていてもイノベーションは起こらないし、他所から連れて来るにしても、連れてくるだけだったらイノベーションは起こらなくて、それなりのヒントを持っている人を連れてこないと起こらないなというので、現場に答えはあるが、ヒントは外にあると思っています。
西村 ありがとうございます。
残念ながら質問はお1人からしかとれませんでしたが、それでは、この辺りでまとめに入りたいと思います。
最後に皆さんから、こういうことを考えていけば今回のテーマの「オープン・イノベーション」が実現に近づくのではないかというアドバイスを一言ずつ頂いて終わりにさせて頂きたいと思います。
一番素早く反応して下さりそうな丸さんから、よろしくお願いします。
課題を解決するというパッションだけが人類を進化させる
丸 今日はありがとうございました。
大きく2つです。
大学の研究をなめるなということです。あり得ない研究が埋まっていてすごいので、これを活用して頂きたいという思いがあります。
もう一つは、これからの時代はヒエラルキー組織ではやっていけないということです。
個のネットワーク組織を使っていく。
そして、僕はオープンもイノベーションもよく分かっていないので、横文字に騙されないでやっていきたいと思います。
とにかく個のネットワークを使って、ビジョンをしっかりと持ってやっていけたら、当たり前になると仰っておられましたが、普通ですよね、何か課題を解決するというパッションだけが人類を進化させるので、そういうことをやっていけばいいのではないかなと考えています。
一生かけて世界の課題が何個解決できたか、という事が自分の中での人生指標です。
お金が幾ら稼げたかということには全く興味がないので、台風発電も、腸内細菌も、ミドリムシもすべて、世界を変えるためにやっていきたいなと思っていますので、今後ともどうぞよろしくお願いします。
ありがとうございました。
留目 ありがとうございました。
ほとんど同じ話になってしまうのですが、本当に、オープン・イノベーションこそ未来の当たり前の価値創造のやり方だと思います。
ですので、会社ありきで考えない方がいいのではないかなと思うんですよね。
事業、プロジェクト、パッションや想いといったお話もありましたが、何を実現するのか、そのためにチームを集めていったらいと思いますし、多分それは社内のメンバーではない可能性の方が多いと思うんですね。
元々違う事業、違うプロジェクトをやるためにできている集まりなのに、新しいプロジェクトをやるためにその組織が最適である可能性なんて殆どないと思うんですよね。
事業のため、プロジェクトのためのにどんなチームを組んだらいいか、考えていけば当然オープンになるわけで、将来的にはそれが当たり前になるのだと思います。
第4次産業革命というのが、そもそもそういうことだと思うんですよね。
本当に、人と社会、人と会社との関わり方が変わるから産業革命なので、一つの会社でしか働かないとか、お給料をもらうのは一つの会社からだけとか、そういうことは未来にはなくなると思います。
そしてIoTやインターネットというのは本当に最適化・再配分を実現していくので、そういう世の中を楽しく生きていくために、意味のあるプロジェクトをやっていきましょうということですね。
よろしくお願いします。
西條 今、WiLで、出資して頂いている会社さんと色々な取り組みをしているのですが、やはりその中でも案件がきちんと進むケースというのは、社長や担当役員の方ご自身がオープン・イノベーションをやるぞという気持ちがはっきりしていて、且つ先ほど仰っていたような、積極的に外に出られたりされているケースが確実に多いんですね。
トップの方が、なるべく意識して自ら行動していくということがないと、現場にオープン・イノベーションをしろと言っていても、いつまでたっても実現しないのかなという風に思います。
イノベーションを実現するには「Will(強い意志)」と「谷町(スポンサー)」が必要
竹林 2点ですね。
イノベーションを起こせと命令されて、イノベーションが起こせるのかというとそれは無理ですね。
なぜかというと、イノベーションを起こすと、ハレーションが起こるからです。
これはハレーションに耐えられるかどうかですね。
耐えられるかどうかというのは、Willが必要だということです。
Willがなかったら、イノベーションを起こせと言われても色々な軋轢が出てきますし、これは無理ですね。
ですからまずはWillが大事で、会社の中にいて会社がお金を出してくれるのだったら、会社自体が株主さんなので、会社もよくなって自分もよくなるというWillを探すというのがまずは第一でしょうね。
そうでないと、組織を作られてイノベーションを起こせと言われても、怖くて起こせないですものね。
それが一つです。
次に、イノベーションを起こしたいというWillがある人に対して、社内であろうが外部の投資家であろうが、谷町(無償スポンサー)が必要なんですね。
この谷町というのがなかなかいなくなってくるから、直近のお金ではなくて、育成する間の、文化を育成する谷町がどこに付いてくれるのか。
社内であろうが、どこを谷町にするのか考えなければならないんですね。
それは会社の中で出してくれないとかいうことではなくて、出してもらうためにはどこに行ったらいいのかとか、イノベーションを起こすためにはそこまでする必要が出てくるかなと思います。
それは中であろうが外であろうが、お金を持ってくるためには苦労しなければならないんですよね。
外にあるのだったらもっと苦労しないといけません。
大企業になってくると社内でお金を出してくれるかもしれないけれども、色々なしがらみが出てきます。
でもそのトータルの苦労をどこでするのかというだけで、やはり谷町というのは見つけてこないとWillは実現できないと思いますね。
だからまずはWillでしょうね。
Willがあったら自分で谷町を探してくるだろうなと思います。
西村 ありがとうございました。
「オープン・イノベーションを実現するには?」というタイトルでお話を頂きました。とても楽しいお話ができたかと思います。
最後に、登壇者の皆さんに拍手を頂ければと思います。
ありがとうございます。
(終)
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編集チーム:小林 雅/榎戸 貴史/戸田 秀成/Froese 祥子
【編集部コメント】
最後までお読みいただきありがとうございます! オープン・イノベーションは「うぇーいwww」です。感想はぜひNewsPicksでコメントを頂けると大変うれしいです。
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