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ICC KYOTO 2025のセッション「「アート」と「デザイン」がビジネスに与える本質的な価値とは何か?」、全5回の①は、アート×ビジネスで価値創造に挑むスピーカー陣のトップバッターとして、丹青社の石上 賢さんが登場。箏のパフォーマンス集団のプロデュースも手がける石上さんは、西洋で作られたアートの付加価値形成の仕組みと評価基準を解説します。モデレーターは慶應義塾大学の琴坂 将広さんです。ぜひご覧ください!
ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に学び合い、交流します。次回ICCサミット FUKUOKA 2026は、2026年3月2日〜 3月5日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。
本セッションのオフィシャルサポーターは EVeM です。
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【登壇者情報】
2025年9月1〜4日開催
ICC KYOTO 2025
Session 10B
「アート」と「デザイン」がビジネスに与える本質的な価値とは何か?
Supported by EVeM
(スピーカー)
石上 賢
丹青社
事業開発センター B-OWND室/プロデューサー
石川 俊祐
KESIKI
代表取締役 CDO
岩本 涼
TeaRoom
代表取締役CEO
松田 崇弥
ヘラルボニー
代表取締役Co-CEO
(モデレーター)
琴坂 将広
慶應義塾大学
教授(SFC・総合政策)
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▶『「アート」と「デザイン」がビジネスに与える本質的な価値とは何か?』の配信済み記事一覧
琴坂 将広さん(以下、琴坂) もう18時ですが、皆さん、疲れていませんか?


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琴坂 将広
慶應義塾大学
教授(SFC・総合政策)
慶應義塾大学総合政策学部教授。慶應義塾大学環境情報学部卒業。博士(経営学・オックスフォード大学)。小売・ITの領域における3社の起業を経験後、マッキンゼー・アンド・カンパニーの東京およびフランクフルト支社に勤務。北欧、西欧、中東、アジアの9カ国において新規事業、経営戦略策定にかかわる。同社退職後、オックスフォード大学サイードビジネススクール、立命館大学経営学部を経て、2016年より現職。東京大学社会科学研究所客員研究員、フランス国立社会科学高等研究院アソシエイトフェロー、一橋ビジネススクール特任准教授等を歴任。上場企業を含む数社の社外役員・顧問、及びオックスフォード大学サィードビジネススクールのアソシエイトフェローを兼務。専門は、経営戦略、国際経営、および、制度と組織の関係。主な著作に『STARTUP』(NewsPicksパブリッシング)、『経営戦略原論』(東洋経済新報社)、『領域を超える経営学』(ダイヤモンド社)、監訳・解説書に『VUCA時代のグローバル戦略』(東洋経済新報社)、分担著にJapanese Management in Evolution New Directions, Breaks, and Emerging Practices(Routledge)、East Asian Capitalism: Diversity, Continuity, and Change (Oxford University Press)などがある。
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にもかかわらず、このセッションに来ていただいているということは、たくさん聞きたいことがあるのではないかと思います。
私自身もアートとデザインについて色々なことを聞きたいと思って来ているわけですが、私がモデレーターを務めるセッションではいつも、会場の皆さんの期待値を聞いています。
ぜひ、このQRコードから、本セッションに何を期待されているかを書いていただけないでしょうか?(現在は終了)

皆さんが聞きたいことをスピーカーの皆さんにインプットすると、きっと答えてくれるのではないかと期待しています。
会場からの質問はさまざま
琴坂 もういくつか、書いていただいていますね。
「ビジネスにアートは必要か?」、そもそも論で、ビジネスにアートは要らないのではないかというアサンプション(仮定)がありそうな問いですね。
皆さんの声が、このセッションを作っていきます。

「デザインとアートの違いとは?」
「デザイン経営とは?」
「ビジネスにおけるデザインの定義は何か?」
「登壇者のようなプロデューサーを採用、育成するにはどうすればよいのでしょうか?」、非常にプラクティカルな質問が来ていますね(笑)。
「起業はアートかサイエンスか?」
「センスとは?」、これも深いですね、これだけで1時間かかりそうです。
「アート的視点でセンスのない経営者だなーと感じることはありますか?」、オフレコセッションではありませんが、ここで聞いたことは他では言わないようにしてください(笑)。
「地域でアートビジネスをするには」
「アートがビジネスに役立つ事例とは?」
やはり、アートというものがどうすればビジネスにつながるかについて聞きたいということなのかなと思います。
「言葉で表現しきれないビジョン、ミッションをアートで表現するには」、これもなかなかプラクティカルな質問ですね。
「ビジネスにおいてクリエイティビティ、アートは必要か?」
「ビジネスにおけるアートセンスを養うのにお薦めの方法は?」
「アートの再現性について」、これは重要ですね。
ビジネスの視点からは、やはり再現できるのか、仕組み化できるのかが非常に大きな問いになると思います。
「他社に劣ったサービス製品が、アートで復活した事例はありますか?」
これらが、興味関心なのかなと思います。
こちらは引き続きオープンにしているので、質問があれば書いてください。
もし良い質問があれば、Likeを押していただけると上の方に上がってくるので、ぜひ、参加型でお願いします。
アートとビジネスをつなげるスピーカー陣
琴坂 スピーカーの皆さんから引き出していくセッションにしていければと思っていますが、今回登壇いただいている皆さんは、そもそもアートとビジネスをつなげている方々です。

そこで、私がモデレーターを務めるセッションでは異例なのですが、長めの事業紹介をお願いしています。
単なる事業紹介ではなく、問いに答えるようなエッセンスを頂きたいというリクエストをしています。
そして会話をしながら、もし良い質問があれば中断して、という進行をしていきたいと思います。
今日の問いは、包摂的イノベーションの起こし方、創造的価値創造のすそ野を広げる社会インフラとは、そしてグローバル市場での文化的共感をどう獲得するか、です。

これらが我々にとっての本質的な問いなのではないかという前提条件を共有した上で、このセッションを進めていこうと思います。
では石上さんから、自己紹介を兼ねた事業紹介をお願いいたします。
アートの付加価値形成プロセスを解説、丹青社 石上 賢さん
石上 賢さん(以下、石上) 初めまして、丹青社の石上と申します。

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石上 賢
丹青社
事業開発センター B-OWND室/プロデューサー
1992年、愛知県にて、画家の父、画商の母の元に生まれる。10代からアート作品の販売をはじめる。国内芸術家の経済活動における困難さを目の当りにし、大学在学中よりアーティストのプロモーション活動を開始する。アート作品のコンセプト立案、WEB・映像制作そして150を超える展覧会の企画等に携わる。国外では、ヴェネチア、ニューヨーク、香港、マイアミなどでの個展やアートフェアの企画販売の実績を持つ。2016年、(株)丹青社に入社後、これまでの経験を活かしアート工芸を中心とした日本の美意識と現代要素を掛け算した新規事業の開発に従事する。2019年、アート・工芸×ブロックチェーンのプラットフォーム「B-OWND」を立ち上げ、プロデューサーに就任。アーティストのキュレーションをはじめとする本事業に関する戦略・企画を構想し、日本のアート・工芸作品の価値を高めることを目指している。2024年、Forbes Japanが選出する世界を動かす文化起業家30人に選出。
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私の自己紹介を簡単にさせていただくと、父が画家で母が画商、そして兄も現代アーティストという家庭環境でした。

幼少期は貧しすぎ、大学の学費を稼ぐため、高校生の時に、アート作品を売り始めました。
それから15年間ほど、アート事業を行っています。
自分の会社を立ち上げましたが、年間約6,000件の空間づくりに携わり、大阪・関西万博でも10施設ほどを手がけた上場企業の丹青社に入社しました。その後、社内の新規事業としてアート事業を提案し、2019年に立ち上げたのが「B-OWND」というサービスです。

また、箏とEDM(Electronic Dance Music)を掛け合わせたTRiECHOES(トライエコーズ)というバンドのようなものの3本目の作品のプロデュースも行ってきました。
▶︎TRiECHOES(トライエコーズ)というムーブメントのはじまり (前編)(B-OWNED Magazine)
3本の映像が計10億回再生されており、YouTube登録者数は37万人です(2025年9月現在)。
▶TRiECHOES Official(YouTube)
伝統のようなものと時代性を掛け算したようなビジネスを、色々行っています。
どんな思考でアート事業をしているのかについて、ご説明します。
アートには、1点1億円の価値がついたり、全く価値がつかなかったりします。
その付加価値形成プロセスを図式化したものが、こちらです。

まずアーティストが作品を制作しますが、作品の価値には、目で見える「視覚的価値」、歴史やコンセプトのような「文脈的価値」、そして需要と供給のバランスで決まる「希少価値」があります。
時間経過とともに、専門的なキュレーター、批評家、美術館などが評価をすると、権威化というか、「芸術価値」が生まれます。
一方、下には「コレクター」とありますが、市場には、ギャラリーなどの「プライマリーマーケット」とオークションなどの「セカンダリーマーケット」の2つがあり、市場が作品の価格を決めるので、市場価値が後から付加されるのです。
まとめると、「文脈化」「権威化」「流行化」によって付加価値みたいなものが生み出されると考えています。

これを組み合わせることによって、例えば、B-OWNDに所属しているアーティストは、5年前は600万円だった年間売上が1.2億円になり、20倍売れるようになりました。
作品の平均単価も2万円ほどだったのが、30万円になりました。
国内だけではなく、アメリカやヨーロッパ、アジアを中心に、毎月のように展示や販売をしております。
琴坂 すごく面白いですね。
崇弥さん、これ(付加価値形成プロセス)は、崇弥さんのサービスでも同じですか?
カテゴリーによって違うのでしょうか。
アートの付加価値形成の仕組みはどこで生まれたか

松田 崇弥さん(以下、松田) 同じだと思いますが、この仕組みや取り組みはどこで生まれて、日本と世界はどう違うのかについて、聞きたいなと思いました。
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松田 崇弥
ヘラルボニー
代表取締役Co-CEO
小山薫堂が率いる企画会社オレンジ・アンド・パートナーズ、プランナーを経て独立。4歳上の兄・翔太が小学校時代に記していた謎の言葉「ヘラルボニー」を社名に、双子の松田文登と共にヘラルボニーを設立。「異彩を、放て。」をミッションに掲げ、福祉を起点に新たな文化の創造に挑む。ヘラルボニーのクリエイティブ統括。東京都在住。双子の弟。Forbes JAPAN「CULTURE-PRENEURS 30」選出、第75回芸術選奨(芸術振興部門)文部科学大臣新人賞 受賞。NPO法人ニューロダイバーシティ理事。著書「異彩を、放て。―「ヘラルボニー」が福祉×アートで世界を変える―」。
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石上 僕はもともと哲学や神学を大学時代に勉強していたので、少し哲学的な話になりますが、そもそもアートは定義できないものです。
定義を更新し続けてきたのがアートです。
基本的にアートという概念は西洋で生まれたわけですが、ルネサンス期は、神がその価値を決めていたのです。
でも第二次世界大戦後、アメリカが国家政策としてアートの価値形成に取り組みました。
それで作り上げられたものが現代アートと呼ばれ、便器をアート(※作品名は《泉》1917)だと呼んだマルセル・デュシャン(1887~ 1968、1955年にアメリカ国籍を取得)というアーティスト、クレメント・グリーンバーグ(1909~1994)という美術史家、世界最大と言われるギャラリーを運営するラリー・ガゴシアンの師匠であるレオ・キャステリ(1907~1999)が生まれました。
つまり、アーティスト、美術の専門家、マーケットに、国家とロックフェラーなどの財閥が莫大な資本を投入して価値を形成していったということです。
その歴史はまだ100年ほどのものです。
松田 日本もその潮流の中で、同じルールで動いているということでしょうか?
石上 いえ、例えば、日本ではアートは感情を表していると言われたりしますし、ファインアートという分野に絞ると、ルールは野球とサッカーくらいに違います。
価値基準のルールが欧米にはありますが、日本ではあまり定まっていないため、それを変えたいという思いで事業を行っています。
琴坂 なるほど。
カテゴリーや地域によって、確固たる仕組みが完成されつつあるところもあれば、漠然としたものは存在するがまだ分かりにくい状態であるところもある、という理解で良いでしょうか。
石上 そうですね、あとアートという概念自体が日本にはありませんでした。
つまり、カテゴリー自体がないので、ルールは欧米のものになってしまいました。
琴坂 日本には欧米で確立された仕組みを移植されたものが存在する、という理解は正しいですか?
石上 存在していたが、アートというものではなかったということです。
呼称が違ったという理解をしています。
琴坂 ありがとうございます。
岩本さん、もしよければ、補足をお願いします。
欧米でアートのルールやOS作りが上手い理由とは

岩本 涼さん(以下、岩本) 石上さんとよく議論するのですが、アートと言うと西洋絵画が思い浮かぶことがほとんどだと思いますが、日本の工芸や茶室、建築などにも価値があると信じたいです。
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岩本 涼
TeaRoom
代表取締役CEO
1997年千葉県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。2018年、「対立のない優しい世界を目指して」を理念に、文化と産業を架橋すべく株式会社TeaRoomを創業。幼少期から茶道裏千家に入門し、茶道家としても活動し、茶の湯や日本文化の価値や思想に根ざした取り組みも行なっている。また、静岡県本山地域の茶畑と製茶工場を承継し、2020年に農地所有適格法人「THE CRAFT FARM」を設立、一次産業に参入。2023年には文化に潜む日本の可能性を、世に問い、社会実装を目指すため「一般社団法人文化資本研究所」を設立し、代表理事に就任。株式会社中川政七商店にて社外取締役も務める。
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信じたいものの、高い値段で取引ができないのは、我々が努力をしていないというよりも、仕組みを理解せず、西洋が作ったルールでゲームをしようとしているからではないでしょうか。
つまり、価値がつかない構造の中で勝負をしているということで、価値構造自体を作っていかないと、そもそも勝負ができないということだと思います。
そのためには、多くの方々が協力しないといけないという前提で、話を続けていただくのが良いと思います。
石上 ナイスパスをありがとうございます(笑)。
岩本さんが話された通り、アートやデザインも含め、文化という大きな言葉を聞いた時に頭に浮かぶのは、このスライドの真ん中にあるアプリケーションレイヤーにあるものだと思います。
工芸や歌舞伎、茶の湯など、目で見える分かりやすいものです。
でも人間が作り出してきた文化形態は、哲学や何か伝えたい精神などがあるはずで、つまり下の階層には、OSのような、価値基準みたいなものがあるはずだと思っています。
音楽が得意な人は音楽家になるし、絵が上手い人は画家になる。
欧米は、それをきちんと築き上げてきたと思っています。
西洋は一神教ですが、日本は多神教です。
一神教は過去2000年間、神の存在証明をしてきました。
それは他の神を否定するということで、言い方が悪いですが、ある種の虚構を信じ込ませることを2000年間、し続けたわけです。
それがロジックとなると聖書で、建築だと教会で、アートや音楽という形でも行われてきました。
これをビジネスに置き換えると、高付加価値、高単価なハイブランドと思考プロセスや手法が全く同じだと思っています。
だからこそ、ルールやOSを作るのが上手いのです。
我々日本はそれができていなかったので、今、改めてこういう場で、OSをきちんと作ろうということを投げかけたいと思い、このスライドを用意しました。
分別しないことを良しとする価値観が見直されている
琴坂 なるほど。
私は素人ですが、一神教、つまり価値観が一つの世界の方が、金銭的価値における序列をつけやすいカルチャーかと思いました。
こっちの方が良い、悪い、高級だ、そうでないということで、こっちは3億円、そっちは100円と説明しやすくなるのかなと。
多神教となると、全部良いよね、序列はないよねという話になりそうな気がしたのですが、いかがでしょうか?

石上 そういう傾向はめちゃくちゃあると思います。
カテゴリーを作らなかったので、分別しないことを良しとしてきたわけですが、とにかく分別をするのが二元論の世界の欧米です。
全く考え方や思考プロセスが違います。
ただ、二元論を進めてきた結果として、環境問題や戦争を含め、さまざまな分断を生んでいると思っています。
この時代においては、二元論よりも「無分別智」、東洋で大事にされてきた分別をしないことの価値が見直されていて、それがチャンスなのではと僕は思っています。
琴坂 なるほど、石川さん、どう思われますか?
石川 俊祐さん(以下、石川) すごく面白いですね。

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石川 俊祐
KESIKI
代表取締役 CDO
KESIKI代表取締役CDO・旭川市最高デザイン責任者。多摩美術大学 特任教授・東北芸術工科大学 客員教授。ロンドン芸術大学Central Saint Martins卒。Panasonic Design Company、PDD Innovations UKを経て、IDEO Tokyoのデザインディレクターとして立ち上げに従事。大手から中小企業、公的機関とともに、携わった業界は、金融、食品、教育、運輸と多岐にわたる。その後、BCG Digital VenturesのHead of Design を経て現職。数多くのイノベーションプロジェクトに携わる。D&AD賞やグッドデザイン賞、全国各地のデザインセレクションなどの審査委員を兼任。Forbes JAPAN『世界を変えるデザイナー39』に選出。著書に『HELLO, DESIGN 日本人とデザイン』(幻冬舎、2019年)がある。
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多神教の価値観や思想のある東洋において、西洋と違う形でどう評価構造を作っていけるかを考えていらっしゃるのかなと思いました。
西洋のルールメイキングについても、話していただけると…。
琴坂 会場から、ちょうどその質問が。
松田 素晴らしい(笑)。
石川 どうルール作りをしているかもそうですが、アジアでどんな取り組みができるかは面白いので聞いてみたいですね。
歴史性、時代性、個人性がアカデミアにおける評価基準

石上 西洋では、分かりやすくヒエラルキーを作っている印象があります。
先ほどのスライドで言う、権威の部分です。
例えば、ヴェネチア・ビエンナーレのような祭典、オークション、MoMA(ニューヨーク近代美術館)やメトロポリタン美術館などで、アート分野で博士号を取得した美術の専門集団、あるいはキュレーターが「これが正しい」としています。
アートの価値はそのものよりも、いつ、誰が、どの評価したかという事実の積み重ねによって上がっていきます。
新品が売買される市場では、価格は自分たちでつけますよね。
でもオークションになると、市場に評価されることになるので、数字が貯まっていくわけです。
アカデミズムの視点とマーケットの視点がすごく重視されています。
アカデミアにおける評価基準は、簡潔に言うと、「歴史性」「時代性」「個人性」の3つであると個人的に定義しています。
歴史性と時代性とは、これまでの歴史をふまえて、今の時代にどう解釈するのか、つまり、なぜその作品を今作るのかという点であり、個人性とは、なぜその人が作っているのかという点で、これらを評価します。
個人性が重視されることが多いですが、例えば工芸では歴史性ばかりが評価されて、今の時代という視点が少ない傾向にあります。。
アーティストやギャラリーは、歴史性、時代性、個人性について、論文のような形でステートメントを提出します。
その内容とビジュアルの整合性を評価し、価値やルールにしている感じです。
障害のある人のアートの評価基準
琴坂 それがすごくやりやすいタイプのアートと、そうではないアートがある気がします。
例えば、ショパンコンクールなどがあるピアノであればやりやすそうですが、カテゴリーによって違いはあるのでしょうか?

松田 我々の事業では、それが難しいです。
障害のある人によるアートを扱っていますが、世界でそれについて論じる人の数がとても少ないです。
アカデミックな文脈で障害のある人によるアートを収蔵する行為自体が、本当にここ最近、ようやくフランスで出てきたくらいです。
日本では、美術館でもそれはほぼ行われていないと思います。
我々が一生懸命アカデミアを作っていくというよりも、柳 宗悦(1889~1961)が民藝運動で、色々なものを見て収集して「これが民藝です」としたように、ヘラルボニーが、障害のある人によるアートをキュレーションして、高い価格で売るという運動をした方が良いのかなと感じています。
▶民藝とは何か(日本民藝協会)
金沢21世紀美術館のチーフキュレーターだった役員(黒澤 浩美さん)がいるのですが、彼女との激論の上、既存の枠組みに乗ろうとするのはやめた方がいいのかなという考えになっています。
どう思いますか?
石川さんの意見も聞きたいです。
生活美や様式美でアジアが先頭を走りうるタイミング

石川 後で自己紹介をしますが、僕は、小さい職人の会社を買ってホールディングス化し、デザインの力を活かす会社を経営しています。
我々は知らないうちに、欧米や西洋のものが、美しい、価値が高いと思ってしまっています。
僕は10年ほどイギリスに住んでいたのでよく分かるのですが、彼らはルールを作るのが本当に上手です。
琴坂さんもイギリスにいらっしゃったので分かると思いますが(笑)。
一番で走り続ける強みですね、先頭を走る=ルールを作る、です。
それはオークションハウス(※オークションを行う競売会社)もパリコレもそうです。
フランス人が作ったパリコレにおいて、アジア人が1位になることはないのです。
シャネルのバッグは130万円しても、日本のバッグはたかだか30万円になるわけです。
越えられない壁があるので、ゲームチェンジしなくてはいけません。
人口が増え、購買力が増えるアジアで、美しいものの評価基準を新たに作らなければいけないと思います。
アワードを獲るにしても、イギリスやドイツに行って……。
琴坂 他のものに乗っかっていますよね。
石川 それで、9割方、欧米の人に評価されると。
松田 本当にそうですよね。
石川 それを不思議に思わず続けてきた歴史の中で、今、世の中が一周回って、循環、優しさ、環境などの文脈においては、生活美や様式美に関してアジアの方が先頭を走っている形になりうるタイミングが来ていると思っています。
それで、民藝運動や人間性を回復しなくてはというアーツ・アンド・クラフツ運動が起こっている。
▶アーツ・アンド・クラフツ運動(artscape)
その時に、アジアではそもそも人間性にあふれた生活をしていたし、民藝のような自分の手で作るものに美を見出していたわけですが、貧富の差がないのでラグジュアリーにはなりづらく、良いものを安価で多くの人に売ろうと思うのです。
松下 幸之助の哲学みたいですが。
そうではなく、職人に儲けさせよ、自国の文化を守ろうという話だと思いますが、それが起こらないのは仕掛けがなかったからで、今、その仕掛けを作ろうとしているのだと思います。
石上 松田さんのお話にあった、キュレーターがそもそもいないという点については、障害のある方によるアートは過去に結構あると僕は思います。
例えばジャン・デュビュッフェ(1901~1985)のアンフォルメル(不定形、非定形)など、今の現代アートに繋がる様式が生まれ、世界大戦中と後には反芸術運動が世界各地で起きていました。
美の価値を更新しようとして、アウトサイドアートや障害のある方によるアートは美術館に実際に収められたり、規定されたりしています。
評価されているカテゴリーが既にあるので、文脈をどう繋ぐかだけだと思います。
琴坂 なるほど、ありがとうございます。
では石川さん、よろしくお願いいたします。
(続)
▶カタパルトの結果速報、ICCサミットの最新情報は公式Xをぜひご覧ください!
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編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/戸田 秀成


