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2.100人の組織で毎年40人が退職、グッドパッチの組織崩壊

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経営者が実体験を赤裸々に語る「急成長期における組織崩壊と再生について」全6回の②は、「組織崩壊」のテーマでもっとも読まれているnoteの1つを書いたグッドパッチ土屋 尚史さんが、何度聞いても衝撃のエピソードを語ります。一方CARTA HOLDINGS宇佐美さんは、サイバーエージェントの採用を見て、自らの組織について発見した課題を語ります。ぜひご覧ください!

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。 次回ICCサミット KYOTO 2022は、2022年9月5日〜9月8日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。

本セッションは、ICCサミット FUKUOKA 2022 プレミアム・スポンサーのあしたのチームにサポート頂きました。


【登壇者情報】
2022年2月14〜17日開催
ICCサミット FUKUOKA 2022
Session 9F
急成長期における組織崩壊と再生について
Sponsored by あしたのチーム

(スピーカー)

赤羽 博行
株式会社あしたのチーム
代表取締役社長CEO

宇佐美 進典
株式会社CARTA HOLDINGS
代表取締役会長兼CEO

土屋 尚史
株式会社グッドパッチ
代表取締役 兼 CEO

吉岡 諒
株式会社ウィルゲート
専務取締役 COO 共同創業者

(モデレーター)

田中 允樹
株式会社リンクアンドモチベーション
MCVカンパニー長

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1.急成長期の組織崩壊を経験したスピーカーが赤裸々に語る!

本編

田中 土屋さん、組織崩壊について、どんなことがあったかについてお話し頂けますか?

社員50人を1人でマネジメントしていた、グッドパッチ 土屋さん

土屋 まず前提として、「グッドパッチ 組織崩壊」でググってください。

それで情報が出てきますので、ネット上には関連情報がたくさんあります。

創業して、2年目に20人、次の年に30人、そして50人、100人と規模が大きくなっていきました。

デザイン会社の中で、そのような成長をする会社はないのです。

田中 確かにそうですね。

土屋 倍々で伸びていく急成長でしたが、問題は、50人の段階で、マネジメントは僕だけだったということです。

田中 完全にワントップ体制だったということですね。

土屋 4年目で、気づけば50人になっていましたから。

デザイナーたちをクオリティにフォーカスさせたかったので、営業や雑多な仕事は全て僕が引き受けていたのです。

それでどんどん採用していき、気がつけば50人になっていて、マネジメントは僕だけという状態でした。

1対50になった段階で、もうチェックメイト(詰み)なのです。

その後は、崩壊するに決まっています(笑)。

ですから、その時には、時すでに遅しという状態でした。

しかし、1年後にはもう50人増えて100人になったので、急ごしらえの後出しジャンケンでマネジメントチームを作りましたが、実態は、マネジメントをやる覚悟のないメンバーにマネジメントをしてもらっていたのです。

田中 デザインが好きな人が多そうですしね。

土屋 その過程において、過去に他社で役員をしていた人材を採用してパラシュート人事で役員にし、年間1,300万円かけてリンクアンドモチベーションによるマネジメント研修を行い…。

田中 確かに、すごい投資ですよね(笑)。

なみなみならぬ強い意志で…。

土屋 「僕らにはマネジメント育成はできん!」と思っていたので、アサインされた6人のために、1年かけて1,000万円以上の投資をしてマネージャー育成をした結果、1年後には、その6人のうち誰も残っていなかったという(笑)。

田中 全員辞めてしまったと(笑)。皆さん、笑いどころでは笑って頂いて結構です。

土屋 そういうセッションですので。

田中 暗くなりやすいセッションなので、会場は明るくしています(笑)。

100人になってからの2年半の年間離職率は40%

土屋 振り返ると、マネジメント人材を前もってきちんと採用できていなかったのが良くなかったと思います。

また、ビジョンとミッションは強固なものがあり、価値観については、60人規模の時に設定した、自分たちが組織で大事にしている価値観がありました。

しかし、その段階で入社したマネージャー陣には価値観の重要度が伝わっておらず、その浸透にコミットしていなかったと思います。

つまり、絵に描いた餅になってしまったバリューや行動指針が存在しており、かつ、それをもとにした採用はしておらず、結局はスキルベースで採用をしていたのです。

その、スキルベースで採用されたメンバーが100人になった時、組織として何が良くて何が良くないかの共通認識がない状態になり、かつ、古くからいたメンバーはストレスをためており、結果的に大崩壊ということになりました。

ですから、ほとんどの場合、組織崩壊はミドルマネージャーに原因があって、ミドルマネージャーに問題があればそれは経営陣に問題があるということなので、つまりは全て社長の責任です。

ミドルレイヤーを強固にするということが、大きな壁でしたね。

田中 デザインの会社では、手に職があって、目の前の仕事が好きで手を動かしていたメンバーが、いきなり管理をする側、マネジメント側をやれと言われても、「聞いてないよ」と納得できないので反発が生まれてしまいますよね。

土屋 そうですね。当時はそういう人たちに完全に「頼み込んだ」状態でした。

ですから相手は、うんと言ったものの、心の奥底では納得していない状態だったのだと思います。

田中 その状態でマネジメントをやっても、踏ん張れないでしょうね。

土屋 踏ん張れないですね。

ですから1年後には、プレイヤーに戻りたいからと言っていなくなってしまいました。

赤羽 その時の取締役は、土屋さんだけだったのでしょうか?

土屋 その時は、パラシュートで入社した取締役がいました。

グッドパッチは、100人になってからの2年半の年間離職率は40%で、つまり、2年で80人が辞めたのです。

赤羽 (笑)。

土屋 100人の組織なのに、毎年40人ずつ辞めました。

2年で80人が辞めましたが、その2年で、僕以外の取締役も全員辞めました。

田中 研修で投資をしたマネージャーが辞め、役員も辞め、従業員も40人ずつ抜けていったということですね。

でも、従業員数は緩やかに増えていったのですよね?

土屋 40人抜けましたが、40人採用していたので、総数は変わらなかったのです。

100人の状態で停滞をしていた感じですね。

田中 グッドパッチの場合、ミドルマネジメント育成という壁をどう乗り越えたかがポイントということですね。

VOYAGE GROUP時代を振り返る 宇佐美さん

田中 では宇佐美さん、お願いします。

VOYAGE GROUP時代の話ということでしたが…。

▶編集注:CARTA HOLDINGSは、VOYAGE GROUPとCCI(CARTA COMMUNICATIONS)が2019年に経営統合して誕生。

宇佐美 2人の話を聞いて、うちではそういうことは全くなかったなと思いました(笑)。

(一同爆笑)

自分が、いかにまともな経営者だったかと改めて再確認しました(笑)。

土屋 絶対あったでしょ!(笑)

宇佐美 1999年に創業して、毎年10%くらいの離職はありましたが、それでも順調に人数が増え、2005年か2006年頃に100人規模になりました。

……なかったですね。

土屋 そんなことはない!(笑)

宇佐美 僕はもともと、事業を創ることと組織を作ることの2つに興味があったのです。

だから結構、そういう本を読んだり、実験したりしていたので……でもやっぱり、僕は上手かったのでしょうね(笑)。

土屋 宇佐美さん、サイバーエージェントの役員になったのはいつですか?

宇佐美 VOYAGE GROUPがサイバーエージェントグループに入ったのが2001年で、役員になったのが2005年です。

CARTA HOLDINGSの沿革(CARTA HOLDINGS)

土屋 2000年代前半、サイバーエージェントでも毎年30~40%の人が辞めていることを公開していますよね?

「素直でいい人」で離職減 サイバーの意外な採用基準(NIKKEI STYLEキャリア)

それをそばから見ていて…?

宇佐美 本体はそんな状態になっているのか、ぐらいの感じでしたね(笑)。

田中 サイバーエージェントの組織作りをトレースできたというよりも、宇佐美さんご自身がもともと組織の重要性を理解した上で経営されていたということでしょうか?

宇佐美 正直、それはあったと思います(笑)。

ただ、皆さんの話を聞いていると、外科手術のようなものが必要な問題が噴出して、それに対応する場合と、大きな事故はないけれど、成長する過程で慢性的に肥満体質になっていく場合があるように思います。

私たちは後者で、100人を超えて120人規模になった2005~2006年頃、コレステロール値が高くなった状態を自覚し始めたのです。

100~120人規模になった頃、社内会議が停滞

宇佐美 今はWeb3.0が謳われていますが、当時はWeb2.0の時代でした。

スピードがなくなったというか…昔はもっと早くできたのに、何かをしようと思っても、社内会議で「調整します」という言葉を聞くことが多くなりましたし、会議中、何も発言しない人がいる状況も増えたのです。

状況の変化や新しい取り組みに対応しようにもしきれない、そんな状態でした。

田中 当時は100~150人規模ですか?

宇佐美 はい。

また、サイバーエージェントは1998年創業、VOYAGE GROUPは1999年創業だったので、ほぼ同じタイミングで創られた会社であり、同じグループにいるのが事実でした。

それにもかかわらず、なぜサイバーエージェントという会社は良い人材を獲得し、組織が活き活きとしてうまくいっているのだろう、一方で、なぜVOYAGE GROUPはそうではないのだろう、と思っていました。

サイバーエージェントにあってVOYAGE GROUPにはない要素は何だろう?と、両社の違いを観察していましたね。

田中 それは、めちゃくちゃ気になりますね。

土屋 違いは色々あったと思いますが、自分たちにはこれは真似できないなと思ったことは何がありますか?

宇佐美 採用ですね。

吉岡 採用!

採用にかけるパワーが圧倒的だったサイバーエージェント

宇佐美 当時、組織作りと事業創りの両方が大事だと認識しており、かつ採用も大事だと思っていたので、採用にも力を入れていたつもりでした。

サイバーエージェントの採用方法を見た時、サイバーエージェントが組織として行っていたことが100だとすると、当時、自分たちが行っていたことは20くらいだと思ったのです。

自分たちができていたと思っていたレベルが、圧倒的に低かったということです。

田中 宇佐美さん、もう少し具体的に違っていた点を教えて頂けますか?

宇佐美 まず、採用にかける人数とコストですね。

それから、経営者の採用へのコミットです。

田中 なるほど。

100対20ということでしたが、具体的に、費用やリソースはどれくらい違ったのでしょうか?

宇佐美 費用というよりも、採用活動に投資していた人数の度合いですね。

採用チームをきちんと作り、藤田(晋)さんが彼らに「君たちは選ばれたメンバーだ」と伝えることで、採用チームに入ること自体がインセンティブになっていたのです。

つまり、「いつか自分も採用チームに、採用プロジェクトに入りたい」と思わせる土壌を作っていたということです。

さらに、採用チームの中でノウハウをシェアしながらPDCAを回していたので、これはすごい!と思いましたね。

土屋 リンクアンドモチベーションと同じですね。

吉岡 ウィルゲートが今、20の位置にいることを認識しました(笑)。

継続的な情報発信で、崩壊中でも優秀な応募者が現れた

田中 土屋さんからミドルマネージャーの話もありましたが、やはり共通するのは幹部の重要性ですね。

どういう人を登用するかもエントリーマネジメントですし、吉岡さんの例にもあったように、入社したいと言っている人を選ぶのではなく、自分たちが獲得したい人材を口説くことが大事だと思います。

初期のステージでは、採用にどれだけ注力できるかが、すごく大事なのですね。

土屋 グッドパッチが崩壊した際、40人が辞めたけれど40人が入ったという話をしました。

人材業界では当然、「グッドパッチでは大量に人が辞めている、グッドパッチが組織崩壊している」という噂は広まります。

それにもかかわらず、優秀な人材からの応募があったのです。

田中 それは、なぜだったのでしょうか?

土屋 創業期から続けている、継続的な情報発信ですね。

着飾らずに素の自分を出すーーグッドパッチ代表・土屋氏流、SNSの使い方(DIAMOND SIGNAL)

田中 発信は土屋さんからだったのですか?

土屋 僕個人もしていますし、会社からもしています。

創業期からオウンドメディア(Goodpatch Blog)を運営してもいますし、ツイッター(Goodpatch Inc.)などのSNSにも、未だに社員が登場します。

自社状況がネガティブだったとしても、嘘を発信するのではなく、ポジティブな要素を見つけて、それを発信するということをやめなかったのが良かったのだと思います。

田中 なるほど。

土屋 また、応募者に対しては、面接の冒頭で「組織が崩壊しています」と言っていました。

田中 ありのままを伝えていたのですね。

土屋 正直に、冒頭で状況を伝え、それによって期待値調整をしていました。

悪い状況であることを言わないで採用するのはあり得ないと思っていましたし、最初に伝えると、逃げていく人は逃げますし、逆にそれを面白いと思うような人には変革の意思があるということが分かります。

田中 ありがとうございます。

採用という文脈では、入口の段階で期待値調整をするということでしたが、それは人を登用する時にも共通して言えることかもしれないですね。

では、赤羽さんお願いします。

(続)

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編集チーム:小林 雅/小林 弘美/浅郷 浩子/戸田 秀成/大塚 幸

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