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働きたくても働けない人への就農支援を通じて、農業と人の未来を応援する「農スクール」(ICC KYOTO 2021)【文字起こし版】

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ICC KYOTO 2021 ソーシャルグッド・カタパルトに登壇いただき、5位に入賞した、NPO農スクール 小島 希世子さんのプレゼンテーション動画【働きたくても働けない人への就農支援を通じて、農業と人の未来を応援する「農スクール」】の文字起こし版をお届けします。ぜひご覧ください!

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回250名以上が登壇し、総勢800名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。 次回ICCサミットFUKUOKA 2022は、2022年2月14日〜2月17日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページのアップデートをお待ちください。

本セッションは、ICCサミット KYOTO 2021 プラチナ・スポンサーのベクトル様にサポート頂きました。

【速報】子どもの好奇心に火をつける!新しい学び場「SOZOW」を提供する「Go Visions」が審査員号泣のソーシャルグッド・カタパルトで優勝!(ICC KYOTO 2021)


【登壇者情報】
2021年9月6〜9日開催
ICC KYOTO 2021
Session 11A
ソーシャルグッド・カタパルト&ラウンドテーブル
Supported by ベクトル

小島 希世子
NPO農スクール
理事長

幼少期、海外の飢餓問題のドキュメンタリー番組を見たことをきっかけに農家に。現在、「農を食と職に」を目指し、ホームレスや生活困窮者・引きこもりと人手不足の農業界をつなぐ就農支援プログラムの構築・提供している。また、首都圏の生活者が、自然の中で野菜作りを楽しみながら学べる場として「体験農園・貸農園コトモファーム湘南藤沢」を運営。農家として雑草や昆虫など生物多様性を活かした環境で年間20種類以上の野菜を栽培し、最終的には雑草や昆虫も食糧として活用していく「雑草昆虫農法」を実践中。WIRED Audi INNOVATION AWARD2019受賞(2019)。著書:「ホームレス農園」(河出書房新社,2014年)「農で輝く!ホームレスや引きこもりが人生を取り戻す奇跡の農園」(河出書房新社,2019年)


小島 希世子さん 初めまして、神奈川県藤沢市で野菜農家を運営している、小島(おじま)と申します。

また、NPO農スクールの代表でもあります。

人手不足の農業界と「働きたいけど仕事がない人」をつなぐ

まず、こちらの数字をご覧ください。

皆さん、数字を見て何を想像されますか?

現在、日本の農業界は、農業従事者が136.1万人、平均年齢が67.8歳で、高齢化と担い手不足が進み、危機的状況にあります。

農業従事者、40万人減少 20年調査、65歳以上7割(Yahoo!ニュース)

一方、ホームレス、生活保護受給者、引きこもりの方は計330万人いると言われています。

330万人の中には、病気などで働けない状態の方もいらっしゃいますが、中には働きたいけれども仕事がない方や、心理的に一歩を踏み出せれば、ちょっとしたチャンスがあれば、いきいきと働くことができる方も多数存在します。

私たち農スクールでは、「働きたいけど仕事がない人」と「人手不足の農業界」をつなぐ取り組みをしています。

農業プログラムと農家インターン体験で就農を目指す

具体的には、大きく2つです。

1つは自社農場での農業プログラムの提供、2つ目は、農家インターンを通じて適材適所を発見し、農家に就職して頂く取り組みです。

このプログラムはトータル半年間ですが、農家インターンに参加した人のうち約44%が、主に正社員やアルバイトとして農家に就職しています。

農林水産省のモデル事業(藤沢モデル)としてプログラムを提供した2020年には、参加者のうち83.6%が就職しました。

「農家になって食糧難をなくす仕事がしたい」

なぜこの取り組みをしているのかについてお話しします。

私の幼少期にさかのぼるのですが、私は熊本県合志市という農村地で生まれ育ちました。

きっかけは、小学生の時に見たドキュメンタリー番組です。

自分が住んでいる農村地帯では、畑に行けばたくさん食べ物があるのに、世界には食糧不足で死んでいく子供たちがいる。

自分と同世代の子供たち。

将来は農家になって食糧難をなくす仕事がしたいと思い、農家を目指すようになりました。

大学受験では農学部を受験しましたが、残念ながら失敗し、食糧政策や国際協力が学べる、慶應義塾大学の環境情報学部に進学することになりました。

上京で初めて知ったホームレスの存在

進学のために熊本県から神奈川県に出てきた時、驚いたことがあります。

それは、ホームレスの存在です。

農村に行けば空き家もたくさんありますし、農家は慢性的な人手不足状態です。

農村で農家という職業につけば、住む家も食料も一気に手に入れられる。

そんな仕組みが作れないかと思うようになりました。

ホームレスのおじさんたちが持っていたスキル

そこで2009年、私は畑を借りて、3人のホームレスの方と一緒に、野菜作りを始めました。

この時、意外な発見があったのです。

皆さん、この図を見て、何を、どういう仕事を想像されますか?

中には、建築現場の様子だと思った方がいるかもしれませんし、農村地帯で生まれ育った方は、農業の現場だと思った方もいたかもしれません。

そうなんです、大規模な農業現場で使う機械は、建築現場の機械とほとんど一緒なのです。

当時のホームレスのおじさんたちは、もともと建築現場で日雇いの仕事をしていたけれど、リーマンショックの影響で仕事を失い、ホームレスになってしまった方たちでした。

ですから、ホームレスのおじさんは農業界で即戦力になれます。

適材適所となるよう丁寧にマッチングを行えば、働く側も雇う側も両方ハッピーになれるのではないか、そう思った瞬間でした。

畑は命そのものの価値を実感できる場

ある50代の男性の話を、ご紹介させてください。

彼は仕事を失って自殺を図り、雑木林で倒れているところを行政に保護され、ホームレス支援団体のシェルターから私たちの農園に通うようになりました。

彼と一緒に作業をしていた際の、印象的だった会話があります。

畑の昆虫たちを見て、こうつぶやいたのです。

「人間以外の生物は、生きていることを生きている。生きているっていいですね。生きててよかった」

そして数カ月後、彼は農家になりました。

畑には、たくさんの生き物がいます、命にあふれています。

自分も生きていていいんだと思える、実感できる場所なのです。

命そのものの価値を実感できる場、それが畑だと思うのです。

驚くべきことに、彼が農家になったことで、40代や60代のホームレスだった方も農家に就職していきました。

そうすると、今度は引きこもりだった方が参加するようになり、農家の正社員や農業経営者になる人まで出てくるようになりました。

今日会場にいらっしゃる方の中にも、農スクールの卒業生が作った農作物を食べた方がいらっしゃるかもしれません。

自治体の就労支援でも活用される「農業プログラム」

プログラムは毎回データを収集し、分析結果に基づいて構築しています。

難しいことは置いておいて、農スクールのプログラムを一言で言うと、「野菜を育てながら自己肯定感を育て、適材適所を発見するプログラム」です。

現在、関東を中心に、15の自治体の就労支援の現場でも活用頂いています。

その他、色々な連携が生まれており、年々需要が増えているのですが、遠隔地ではプログラムを提供することができません。

現在、遠隔地にもプログラムを提供できるよう、オンラインを使った仕組み作りに挑戦中です。

誰もが望めば、農業を食糧と職業にできる社会へ

農業のすごいところは、食料も職業も自らの手で生み出せるところです。

ご協力お願いします、ご清聴ありがとうございました。

▶農スクールへのご支援・ご寄付はこちらからアクセスいただけます。

実際のプレゼンテーション動画もぜひご覧ください。

(終)

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編集チーム:小林 雅/小林 弘美/浅郷 浩子/戸田 秀成/大塚 幸

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