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ICC FUKUOKA 2022のセッション「伝統や産業をアップデートするクリエイティビティとは?(90分拡大版)」その⑥は、まさにそれに取り組む当事者たちが集結!このパートでは、アップデートのアイデアはあっても実行に難しさがあるという指摘から、新政が伝統製法に回帰すると決断した理由が語られます。ぜひご覧ください!
ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。 次回ICCサミット FUKUOKA 2023は、2023年2月13日〜2月16日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページのアップデートをお待ちください。
本セッションは、ICCサミット FUKUOKA 2022 プレミアム・スポンサーのNOT A HOTELにサポート頂きました。
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【登壇者情報】
2022年2月14〜17日開催
ICCサミット FUKUOKA 2022
Session 5C
伝統や産業をアップデートするクリエイティビティとは?(90分拡大版)
Sponsored by NOT A HOTEL
(スピーカー)
国見 昭仁
株式会社2100
CEO
佐々木 紀彦
PIVOT株式会社
代表取締役社長/CEO
佐藤 祐輔
新政酒造株式会社
代表取締役社長 CEO
中川 政七
株式会社 中川政七商店
代表取締役会長
濵渦 伸次
NOT A HOTEL 株式会社
代表取締役CEO
(モデレーター)
岩田 真吾
三星グループ
代表取締役社長
各務 亮
THE KYOTO
Creative Director
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1. 企業の存在意義を拡張するビジネスデザインとは?
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5.パースで物件を販売してから着工。NOT A HOTELの逆転の発想
本編
各務 一通り、皆様の話を聞かせて頂きました。
改めて、会場の皆様が、メタ視点から見た構造として持ち帰れるように議論をしたいと思います。
国見さんが「事象」と「本質」を整理し、本質を発見することで業界をアップデートしやすくするというお話をされました。
他の登壇者のそれぞれのストーリーについて、本質と事象を捉え直したからこそアップデートが加速したなど、感じたことはありますか?
ずっとその業界にいると本質が見えなくなる
国見 繰り返しになりますが、素人であることがアップデートの要素になると思います。
これは固定概念という言葉で表されるかもしれませんが、ずっとその業界にいると、事象が自分の全てを埋め尽くしてしまい、本質が見えなくなってしまうと思うのです。
事象で埋め尽くされた人間は、どうしても本質に立ち返れなくなるので、例えば軽井沢の別荘を買う時、軽井沢という土地を買っているのか、そこで過ごす時間を買っているのかが、意外と見えなくなってしまうのです。
それが一つの共通点だと思いました。
岩田 先ほどCOTENの話が出ましたが、COTEN RADIOは、時代を変えて物事を見ることで、「メタ認知を高めるきっかけを提供する」ことをミッションに掲げています。
国見さんが言っていることも、メタ認知に近いのでしょうか?
国見 それもありますし、これは人から聞いた話ですが、日常的な文脈で言うと、「人からの頼まれごとには未知なる自分が眠っている」ということです。
僕はこれを聞いた時、ぐっときたのです。
岩田 今、みんながぐっときていますよ(笑)。
国見 「なぜ、これを自分に頼んできたのだろう」と思ったとしても、自分には見えていないものが他人には見えているので、それに乗ってみようということです。
事象と本質の話も、根っこはこれと同じかなと思っています。
日々の身近なところから、大きな業界そのものまで、アップデートする時の考え方は同じだと思います。
アイデアはあっても、実行していけるかどうかが全て
各務 素人目線を持って本質を見つけ、アップデートするとき、そこにアイデアというかクリエイティビティが発揮されるから、熱狂的に人を惹きつけるのだと思います。
佐々木さん、色々なイノベーターの話をこれまで聞かれていますし、ご自身もイノベーターとして新しいサービスを立ち上げていますが、どういう手法でアイデアを発見したのでしょうか?
佐々木 アイデアは、よく縦横思考と言いますが、異業界や海外、歴史に学べば結構出てくると思います。
ただ、今日の話を伺って、伝統産業のアップデートは、アイデアの問題じゃないなと思いました。
結局、ある程度のクリエイティビティを持っている人は既にアイデアは思いついていて、それを実行していけるかどうかが全てである気がします。
そこを深掘りして議論したいなと思いました。
中川さんが、デザイナーだけが取り組んでもダメなので、経営コンサルをしていると話されていました。
色々な積み重ねだとは思いますが、具体的に、一番変えるべきところはどこなのでしょうか?
また、共通して持っている病とは何なのでしょうか?
伝統産業では経営の基礎を教える
中川 ものすごく初歩的すぎるので、あまり皆さんの参考にはならないと思いますが、コンサルをする会社の99%は、予算表を持っていないのです。
つまり、経営が下手なのではなく、経営をしている状態ではないということです。
ですから、経営をするようになると当然、状況は良くなります。
これが本質なのですよね。
もう一つ上のレベルだと、佐々木さんのお話の通り、経営とクリエイティブをどうかけ合わせるかになるので、経営者のクリエイティブリテラシーをどう上げるか、経営リテラシーのあるクリエイターとどうつなげるかが重要なのです。
例えば、我々の会社は、水野学さんとずっと二人三脚で取り組んでいます。
双方のリテラシー向上が大切な気がします。
佐々木 最高のアイデアを差し上げるよりも、会計の基礎を学ぶ方が断然、伝統産業のためになりそうですね。
中川 そうなのです。
波佐見の件も、有名なデザイナーたちがプロジェクトに入っていますが、僕と先方の息子が方眼紙に描いたデザインが爆発的に売れました。
つまり、デザインは大切ですが、それが全てではないということです。
佐々木 いやあ、本当に面白いですね。
各務 中川さん、佐々木さんの提起した「良いアイデアはあるけれど、それを実行するのが難しい」という点について、どう思われますか?
中川さんはコンサル事業も含め、実行までされていると思いますが。
中川 そうですね。
序盤は経営の基礎を教えますが、後半のアウトプットが近づいてくると、みんなドキドキして、不安になるのですよ。
その時の僕の役割は、根拠は特にないのですが、「絶対大丈夫です」と伝えることです。
「絶対大丈夫ですから」と言い続けるのが、後半の仕事です。
もしそこでビビってしまうと、実行の前にプランを変えてしまうことにもなりかねません。
まっすぐ実行すれば、割と結果につながる気がしますね。
各務 国見さんもコンサル事業で、業界変革を実行するべく伴走されていますが、実行を促すポイントはありますか?
国見 実際、実行にかなりの時間を使います。
その中でモチベーションを維持するために意識しているのが、一回決めたことを軌道修正することです。
より良いものを実現するために、ちょっとした微修正であっても修正をします。
最初に決めた通りに行おうとすると、疲れるし、飽きてくるので、エネルギーを絶やさずに時間を費やす時に意識しているのは、考え続けながら実行することですね。
入口作りで頭を使う必要がありますが、実行においても時間や忍耐が求められます。
新政が伝統製法に回帰すると決断した理由
各務 佐藤さん、先代の時代は秋田の多くの方に愛されるお酒を造っていたけれど、佐藤さんの代でかつての手法に則って造った純米酒への路線変更をしたと、ある記事で読みました。
その際、造り手の方々には戸惑いもあったと思いますが、実行できたポイントは何だったのでしょうか?
佐藤 毎年色々変えてきましたが、私にとっては、過去にあった手法や、過去の文献で探した手法のリスクは低く、むしろ、現在のやり方や流行っている味に合わせる方が、リスクが高いと思ったのです。
何を伝統と定義するかにもよりますが、たかだが50年間での経験値をもとに導き出された答えは非常に不安定ですが、1000年や2000年の中で出たアイデアの方が、リスクが低いと思います。
ですから、伝統産業において長期的視点で見ると、得体の知れないバイオ技術を活用するよりは、伝統製法に回帰する方が正解に向かうだろうという確信を持って、実行したのです。
しかし、それがなかなか伝わらず、言ったところで、「会社から機械をなくしてどうするのか、人をたくさん雇わなければいけない、生産効率が悪くなる」などと言われます。
そこで、「自分たちの仕事の何が大事だと思う? 一体何が、お客様のロマンを掻き立てると思う?」とコツコツ社員に語りかけて、無理やり進めてきたと思います。
短期的な利益は望めなくても、メタ認知というか、事象と本質の切り分けが深ければ深いほど、リスクは低くなると思います。
そういう考え方で、やることとやらないことを判断してきました。
岩田 後継ぎであれば、そういう時、親御さんが反対する、既存社員が辞めてしまうということがありがちなのですが、ありませんでしたか?
佐藤 ほとんど辞めてしまいましたね。
岩田 やはりそうですか。
佐藤 2008年に家業に戻り、酒造りを学んでから戻ったこともあり、2009年頃から製造側の手綱を締め、好きなことができるようになって、2012年に社長になりました。
その頃から残っている社員は、今は2人ですね。
ガラッと変わってしまいました。
岩田 新しい方針に合う人が入ってきて、新陳代謝が起こったということですかね。
佐藤 そうですね。
例えば、他の会社の社長が、うちの会社で酒造りをしていることもあり、複業を持つ人が働く形にもなってきています。
岩田 働き方も最先端にアップデートしていますね。
佐藤 僕たちは農業も行っている百姓ですが、「百姓」は百の姓(職業)と書きます。
それが本来、日本人の生き方に合っているのです。
年功序列の会社で働くサラリーマンというのは、たかだがここ4、50年のことですから、そういう生き方は本質ではないと思うのです。
生き方についても本質を探ってみると、おそらく色々な人間が入れ替わる組織の方が強いのだろうと思います。
例えば、村で木桶酵母を作るとき、どうやって人間を育てて扱うかについて、今盛んに考えています。
岩田 次回はビズリーチのセッションにも呼ばれますね(笑)。
(続)
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続きは 7.クリエイティビティが伝統や産業をアップデートする!【終】 をご覧ください。
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編集チーム:小林 雅/星野 由香里/浅郷 浩子/正能 由佳/戸田 秀成/大塚 幸
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