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Takram田川さんと、ライフスタイルアクセント山田さんをお迎えして開催した「モノづくりとデザインで切り開く日本の未来」の記事を再編集して6回シリーズでお届けします。
デザイン特集(その3)は、Takram田川さんに、産業史から歴史を紐解いて、なぜいまビジネスでクリエイティブが重要視されているのか?といったテーマをお話いただきました。ぜひご覧ください。
ICCカンファレンスは新産業のトップリーダー160名以上が登壇する日本最大級のイノベーション・カンファレンスです。次回 ICCカンファレンス KYOTO 2017は2017年9月5〜7日 京都市での開催を予定しております。
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登壇者情報
2016年3月16日
トークセッション
「モノづくりとデザインで切り開く日本の未来」
(スピーカー)
田川 欣哉
Takram
代表取締役
山田 敏夫
ライフスタイルアクセント株式会社
代表取締役
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【前の記事】
【本編】
産業発展の歴史を振り返る
山田 有難うございます。デザインの重要がさら増している時代になっていると感じているのですが田川さんはどのように考えているのでしょうか?
田川 そうですね。なぜ、デザインが必要なのか、という質問については、いろいろな回答が可能ですが、その前に少し産業の歴史を振り返ってみたいと思います。
この図は、歴史の変遷の中で、どのようなタイプの人々が産業を動かしてきたか、ということをまとめたものです。
人間が道具を使うことに目覚めて以来1900年頃までは、ハードウェアの時代です。「2001年宇宙の旅」で、猿が骨をつかんで相手を打撃するというシーンがあります。
僕ら哺乳類の体は柔らかいので、相手を殴ると自分の手も痛いんですよ。
でも、硬いものを手にとって、例えば棒で相手を打撃すると、相手にダメージを与えつつ、自分は痛くも痒くもないという。
つまり、道具を介して相手と自分の間に非対称性を生み出すというのこと、人間が道具を使うことで能力拡張できるということに目覚めたんですよね。
石器や土器も全部道具です。船も鉄道も自動車も全部、人間の能力拡張と考えることができます。
このハードウェアの時代に一番競争力があったのは、ヨーロッパの国々です。図面やメートル法を発明したのはフランス人だし、船をつくるのがうまかったのはスペイン人、蒸気機関をつくったのはイギリス人。全部ヨーロッパなんですよね。だから、ヨーロッパの時代なんですよ。
時代が変わるのが、第一次大戦と二次大戦の間です。エレクトロニクスという概念が出てきました。
エレクトロニクスが最初に発達したのがアメリカです。ハードウェアとエレクトロニクスを組み合わせ自動制御することで、ハードウェア単体よりも非常に性能のよいものが作れるようになった。
ここはハードウェアとエレクトロニスの時代で、この時代を最初に切り開いたのはアメリカで、非常にうまくビジネスに落とし込んだの国として日本を挙げることができます。
日本の代表企業は、この第2世代に密集しています。ソニーしかりキャノンしかりパナソニックしかり。
山田 日立製作所もそうですよね。
田川 そうですね。それに続く第3世代はソフトウェアの時代です。マイクロソフトやアップルが出てきた時代です。
それまでCDで音楽聞いていたのが、アプリ上で音楽再生ができるようになったりしました。
バリューの源泉がソフトウェアにシフトしてしまい、ハードウェアとエレクトロニクスはソフトウェアの乗り物になってしまった。
その後出てきたのが、グーグルやアマゾンに代表される第4世代です。ソフトウェア・ネットワーク・サービスを駆使する会社達ですね。
そして、いま現在、何が起こっているかっていうと、第5世代でハードウェア・エレクトロニクス・ソフトウェア・ネットワーク・サービスの全5要素を駆使する会社が決戦をしているという状況です。
山田 一番しんどい戦いですね。
田川 アップルは第3世代から、うまく第4世代をスキップして、第5世代に移行した会社です。
グーグルは第4世代から、アンドロイドを介して第5世代にジャンプしてきた会社ですね。
デザインがわーわー言われ始めたのは、第3世代と第4世代の間くらいで、ここでITとインターネットの台頭があります。
クリエイティブがビジネスで必須になってきている理由をここで考えてみます。
クリエイティブがビジネスで求められる理由
例えば、皆さんが座っているイスには値段がついてますよね。
でも、皆さんが普段使っているグーグル検索ってゼロ円ですよね。あれにも裏側ではコストがかかっているわけだから、普通に考えたら、1検索あたりの使用料をグーグルに払わないといけないはずです。
このグーグル検索に代表されるように、ネット上でのサービスは無料か非常に安い値段に設定されています。
第3世代までのビジネスは基本的に、機能・性能・価格で勝負が決まっていたんだけれども、第4世代以降のIT企業は価格を極限まで下げてきます。
グーグルは自動運転で車さえも無料で提供しようとしているのではと思えます。
ゼロ円になると何が起こるかというと、広告とサービスによるマイクロ課金のモデルが採用されます。そのモデルでは、継続的にユーザーと付き合っていく必要が生じます。
そうなるとどうなるか、というと、付き合うのか、結婚するのか、というような差が出てきます。
第3世代までは、「おっ」と思わせて買ってもらえれば、それで顧客との関係は成立していました。
でも第4世代以降の、顧客との関係は結婚に近くて、ずっと一緒に暮らしていったり過ごしていったりするので、そういう目で相手を見るんですよね。
だから、恋愛対象と結婚する対象の差みたいなことが現象として出てきます。その中で台頭してきたのが、エクスペリエンスというキーワードです。
機能・性能・価格の三要素に加えてエクスペリエンスが出てきました。
エクスペリエンス以外の話は、定量的に記述できるんですが、エクスペリエンスだけは、ふわっとしていてよく分からない。
これを扱える人種が、いわゆるクリエイティブ系の人たちなんです。これを既存のBT軸に掛け合わせて、事業展開しているのが、今のIT企業の姿です。
だから、Facebookがデザイン会社を大量に買収しているとか、例えばマッキンゼーがデザインファームを買収しましたっていうのも、全部この系譜の中で考えることができます。
Takramは、テクノロジーとクリエイティブをつなぐ機能として、デザインエンジニアという人材像を考えていますが、これにビジネスが結合されてできるBTCの三角形の中で仕事をすることに、現代的なモノづくりの一つのあり方を見ています。
たぶん山田さんがやっていることも共通点があるのではと思います。
(続)
編集チーム:小林 雅/榎戸 貴史/戸田 秀成/藤田 温乃
続きは 創業期の「何でも屋」がいなくなった大企業からはイノベーションが生まれない(Takram田川) をご覧ください。
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【編集部コメント】
続編(その4)では、ビジネス・テクノロジー・クリエイティブを兼ね備えたBTC型になるには?というテーマで、ベンチャー経営がもたらす成長機会や企業の硬直化について議論しました。是非ご期待ください。他にも多く記事がございますので、TOPページからぜひご覧ください。
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