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これまでに配信した、デザインに関する議論を総特集いたします。今回は、Takram田川さんと、ライフスタイルアクセント山田さんをお迎えして開催した「モノづくりとデザインで切り開く日本の未来」の記事を再編集して6回シリーズでお届けします。
デザイン特集(その4)は、ビジネス・テクノロジー・クリエイティブを兼ね備えたBTC型になるには?というテーマで、ベンチャー経営がもたらす成長機会や企業の硬直化について議論しました。ぜひご覧ください。
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登壇者情報
2016年3月16日
トークセッション
「モノづくりとデザインで切り開く日本の未来」
(スピーカー)
田川 欣哉
Takram
代表取締役
山田 敏夫
ライフスタイルアクセント株式会社
代表取締役
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【前の記事】
【本編】
田川 Takramは、テクノロジーとクリエイティブをつなぐ機能として、デザインエンジニアという人材像を考えていますが、これにビジネスが結合されてできるBTCの三角形の中で仕事をすることに、現代的なモノづくりの一つのあり方を見ています。
たぶん山田さんがやっていることも共通点があるのではと思います。
山田 まさしくそうですよね。いいモノをつくれば売れる。ある意味、日本の縫製産業のものづくりは、テクノロジーだけしかない。
それは何かっていうと、あんまりビジネスについて考える余地がなかったんですよね。
商社からこの価格で作ってと言われた金額でやっていて、考える余地がない中で、ビジネススキーム、ビジネス脳も育っていない、デザイン脳も育っていない。
だから、出てくる見積もりがざっくりだったりするんですよね。
例えば、Tシャツだったら、「まあ1時間半くらいで3千円くらいかな」。そんなざっくり…みたいな話ですよね。
普通だったら、一回生地裁断してみて、縫製してみて、何分かかって、うちの人件費いくらだから、一分くらいいくらで換算して、これ一枚あたり1,850円です、みたいな。
何でもやるベンチャー経営はかけがえのない経験
田川 そうですね。それに関連する話ですが、日本の企業には第2世代で活躍した企業が多いじゃないですか。現在、メガプレーヤーとして活動している会社のほとんどは戦後に立ち上がった会社です。
戦後直後くらいに起業している人たちが多くて。戦争が終わった後に、会社を立ち上げた人たちが1980年代に活躍したときには、彼らはゼロからやっているから、営業だろうが技術だろうが人事だろうが全部やっていたはずなんですよね。
そういう何でもやります、というのは、今でいうところのベンチャーの経営者じゃないですか。何でもやらないといけない、僕はそれがとてもいいと思うんですよ。
全部の要素を有機的に多面的に立体的に扱える人たちという意味合いで、ベンチャー経営者は素晴らしいと思っています。プロフェッショナル人材のトレーニングという意味でも、会社をやるっていうのはかけがえのない経験なのではないかと思います。
だから、ベンチャーをやっていた人が、大企業にヘッドハントされて社長をやるっていうのは、僕はありだと思うんですよ。
規模の大小ではなくて。全部がつながっているっていう感覚を生身で持っているかどうかっていうのが、すごく必要だと思います。
大きな企業は、電機産業もそうなんですけど、創業期の何でもやってきた人たちが偉くなって、それと同時に人をダーッと増やすときに、とにかくスピーディーに人を増やさないといけなかったから、経理の人とか、メカ設計の人とか、とにかく細分化して部門をたてて、それに対応した大学と連携してハイスピードに人材を育てていったんですよね。そうじゃないと間に合わないから。
その時代の企業は、上部構造の傘の部分に、創業期の「何でも屋」的な感覚を持っている人材の層があり、その下に高度に専門性を高めた部門が柱として垂直に林立しているという構造です。
複雑な問題は、上部構造の中の有機的な会話の中で整理され、それが下の部門に落とし込まれていくという形で、企業構造の最良形の一つだと思います。
ですが、その後、創業期の「何でも屋」的人材が退職していなくなって、柱だけが残ってしまったときに、企業の硬直化が起こるんだと思うんですね。
これは日本の全産業でそうなのではないかと思います。だから、僕らはこのような状況を所与の条件とした上で、どのようなアプローチが可能なのかと考えるわけです。
山田 田川さん、トヨタとか資生堂とか、東芝とも仕事を共にやっていたと思うんですけど、古き良き日本の企業と一緒に仕事をやるときの、やりづらさとか可能性はどう感じているんですか。
「本質的にこれを良くするには、あなたたちだけじゃなくて、デザイン部門の人たちも連れて来て下さい、開発の人も連れて来て下さい」と本当はそうしたいですよね。
田川 もちろん、そこに意識的な企業も沢山あります。
仕組みとして落とし込んである例もいろいろとありますよ。例えば、トヨタさんのチーフエンジニア制度は有名で、チーフエンジニアは製品を企画から製造まで横串で貫いて見ていきます。
山田 そんな仕組みがあるんですね。
田川 仕組みが無いと、サイロ化された部門間の壁が障壁になって、部分最適になっていく傾向が強くなっていくのではないかと思います。
ユーザー像の再設定は商流の再設定とセット
田川 ちょっと話が迂回しているんだけど、さっき山田くんが工場の出荷価格の話をしてたでしょ。
あの手の話は電機産業でもある話で。面白いものをつくったとするじゃないですか。面白いものというのは大抵の場合、ターゲットユーザーとかが再設定されているんですよ。
ユーザー像の再設定が起こったときに、何が必要かというと商流の再設定とか、コミュニケーションの再設定とか、そういうことが同時に起こらないといけないんだけれども。日本は成熟しているから、よくも悪くも商流がものすごくばっちり出来ちゃってるんですよ。
そのような状況の中で、営業やマーケティングの担当者がやっていることの大半は、既存ルート上の営業やマーケティングになりがちです。そうすると、製品やサービスの革新性とのミスマッチが起こってしまいます。
僕は、山田くんがやっていることを横から見ていて思うのは、裏側のサプライチェーンのところを、例えばITがあるからこその再構築をして、それに対応した商流を、既存商流を通さずに、独自につくるというのをペアでやっているでしょ。それをちゃんと両側でやらないと、ワークしないんですよね、ほとんど。
日本の企業からイノベーティブな商品が出ることって少ないと、みんな思っているじゃないですか。けど、企業の中には山ほど面白いアイデアやプロトタイプが存在しているんですよ。
山田 そうなんですか。そんなのもう生まれないのか、と思っていました。
田川 まあ、マーケティングの基本に立ち返るということなのかもしれませんが、革新的なプロダクトやサービスとともに、価格と商流をきっちり再構成していくという部分でくじけるパターンも多いです。
山田 アップルがそうしたってことですよね。
田川 ジョブズがアップルに戻ってきたときに、初期の施策の中で重要だったのが、アップルストアの設置ではないでしょうか。商流・価格・世界観を3点セットでコントロールできたことは大きかったと思います。
山田 なるほど。
田川 そこらへんの状況を、どう嗅ぎとっていけるかということですよね。特にコンシューマー向けのビジネスは、緻密で精巧なガラス細工のようなものだと思うんです。デザインだけが良くてもダメで、価格も正しくないといけないし、広告も正しくないといけないし、売り場も正しくないといけないし、全部正しくて、ようやく売れるサイクルに入っていくから。
昔の人達は、販売の現場も、生産の現場も肌感覚を持っていて、それが頭の中で立体的に結合する感じで仕事をしていたんだと思います。今は、マーケティング畑だけど、工場については知りません、とか、工場は知っているんだけど、それがどういう形でお客さんの手元に届いているのか知りません、とか、そういう話が多いのではと思います。
僕が、ベンチャーが素晴らしいと思うのは、今日は後ろに小林さんもいらっしゃっていますけど、創業世代のメンバー達は、それらを全部やらなければいけないっていう点です。ベンチャーに投入される若者たちが増えれば増えるほど、将来の産業をひっぱっていく人たちが出来ていく。これが社会刷新のための一番の近道だと思っているんです。
山田 会社が成功するかどうかは置いておいて、個人としては強いタフな人材が必要なんですかね。
田川 それが産業界に1割くらいいれば、なんとか回ると思うんですよ。現状は1割もいないですよね。
山田 全然いないですよね。
田川 そういう人たちが、世の中を次に動かす、押しやっていく人たちだと思うんです。
次世代の要素はデータとAI
山田 田川さんは第5世代の「次」は何が来ると考えているのでしょうか?
田川 いまよく言われているのは、サービスの次にデータが来るよね、と。データのあとに、AIが来るよね、と。データとAIはセットかもしれないんですけど。サービスの次はそこになるんじゃないですか。
山田 人工知能(AI)か〜。
田川 これはビジネスとしては顕在化し始めているから面白いです。サービスの中には、Human-centered designみたいな、人間中心設計という話があるんだけど、AIの世界になると、機械同士が取引したりし始めるので、Machine-centered designみたいなコンセプトが、この10年くらいで台頭してくるんじゃないか、と思っています。
山田 そのときもクリエイティブは残っているわけですよね。かっこいい自動運転の車に乗りたい、とかね。
田川 それは残ると思います。そして、次の時代は、製品やサービスを作る側にとっては、構成要素が増える。プレーヤーとして、世界と戦っていく上で備えなければならない要素がもう一個増えるということだから、競争の地平がシフトするということですね。
日本の企業は第2世代から、一気にジャンプしてこないといけないので、すごく大変なんだけど、最近のITベンチャーやソニーのような会社は、ここを飛び越える術を学び始めたのではないかと思います。
山田 「第二世代」を突き詰めていって未来はあるんですか。
田川 それはそれであると思います。ネットワークとかサービスがメインの価値になり得ない領域も確実に残っていくと思います。
(続)
編集チーム:小林 雅/榎戸 貴史/戸田 秀成/藤田 温乃
続きは 100年後の人類の為にデザインした水筒とは?(Takram田川) をご覧ください。
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【編集部コメント】
続編(その5)では、Takram田川さんがあるアートフェスティバルで手がけた、「dOCUMENTA」という体内に持つ水筒デザインのプロジェクトについてお話いただきました。是非ご期待ください。他にも多く記事がございますので、TOPページからぜひご覧ください。
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