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ICC KYOTO 2023 ソーシャルグッド・カタパルト – 社会課題の解決への挑戦 -に登壇した、MizLinx野城 菜帆さんのプレゼンテーション動画【海中データを取得する「MizLinx Monitor」で、藻場再生や持続可能な水産業の実現を目指す「MizLinx」】の文字起こし版をお届けします。ぜひご覧ください!
ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に学び合い、交流します。次回ICCサミット FUKUOKA 2024は、2024年2月19日〜 2月22日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。
本セッションのオフィシャルサポーターはICCパートナーズです。
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【登壇者情報】
2023年9月4〜7日開催
ICC KYOTO 2023
Session 11A
ソーシャルグッド・カタパルト – 社会課題の解決への挑戦 –
Sponsored by ICCパートナーズ
野城 菜帆
MizLinx
代表取締役CEO
HP | STARTUP DB | X(旧Twitter)MizLinx/野城菜帆 | MizLinx
1996年千葉県生まれ。2022年慶應義塾大学大学院理工学研究科修了。 大学院ではシミュレーションによる月面探査車の運動解析の研究に従事。在学中に長期インターンにてIoT製品の試作業務に従事。2021年8月、大学院在学中に株式会社MizLinxを設立、代表取締役に就任。(独)情報処理推進機構 2021 年度未踏アドバンスト事業採択、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)2022年度「研究開発型スタートアップ支援事業/NEDO Entrepreneurs Program(NEP)」タイプB採択。(株)リバネス主催マリンテックグランプリにてスポンサー賞、内閣府主催S-Booster2021にてスポンサー賞、(公財)みんなの夢をかなえる会主催みんなの夢AWARD12にて準グランプリ受賞。
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野城 菜帆さん 株式会社MizLinx(ミズリンクス)の野城 菜帆と申します。
よろしくお願いいたします。
私たちは、“海の課題を人と技術の力で解決する”会社です。
「MizLinx」という社名の由来は、「Miz(水)+Links(つながり)」で、水、特に海の周りの課題を、ヒトとヒト、モノとモノ、データとデータをつなげることで解決していきたい、そのような思いで創業した会社です。
深海への興味から機械工学を学ぶ
私は、「海底に行ってみたい」と思ったことができっかけで、海に興味をもつようになりました。
物心がついた頃から、深海に興味がありました。
▶編集注:しんかい6500は、6,500mの深さまで潜ることができる有人潜水調査船。
そして、自分自身が行ってみたい、しかし、そのためには、おそらく機械が必要だろう、そう思い、大学では機械工学を学んでいました。
水中で使える機械を作ろうと、実際に作ったのがこちらの写真の機械です。
しかし、自分でものづくりをしている中で、このままでいいのだろうかと思ったのです。
私のこのものづくりは社会の役に立っているのだろうか?
そう考えるようになり、大学で「ものづくりを社会に実装する」という講義を受けました。
全国各地の海の現場で知った課題
そして、幼い頃から自分がとても好きだった海の役に立てないだろうかと思いながら、色々と探し回っていた中で出会ったのが、水産業でした。
実際に、全国各地の様々な海の現場へ行きました。
各地で、漁師の方々と色々なお話をしたり、こちらの動画のように、実際に一緒に漁をしたりする中で、水産業には様々な多くの問題があることに気づきました。
例えば、現在、魚は、急速に取れなくなってしまっています。
この40年間で、漁獲量は1/3になってしまいました。
▶漁業・養殖業の国内生産の動向(水産庁)
また、養殖に限りますと、魚の大量死も、現在、非常に大きな問題となっています。
ここ数年、1つのエリアだけで、毎年100万尾も死んでしまっています。
毎年です。
これほど衝撃的なことが起こっているのです。
漁業者と対話しながら海の観測システムを開発
では、なぜ、このような問題が起きているのだろうか? どうすれば私はこれを解決できるのだろうか?
そう思ったときに、漁業者の皆さんから返ってきた答えは、「おそらく、環境変化だろう」「おそらく、海の水温が上がったからだろう」でした。
しかし、本当のところは、誰も、何も、わかっていなかったのです。
これでは正しいアプローチで解決ができないと思い、私たちは、こういった海の問題を解決するために、ものづくりを始めました。
実際に漁村に張り付いて、開発を進めてきました。
朝早く船に乗って、夜遅くまで開発をしました。
若いからこそできたことだと今では思いますが、そのようにして、実際に漁業者の皆さんと一緒に、何度もお話ししながらニーズを伺って作って、フィードバックを頂いてきました。
そういったことを続けるうちに、「野城さん、これ、きちんと作ってよ」――その言葉をきっかけに、私は2年前の2021年8月に、学生起業をしました。
海中データを「MizLinx Monitor」で取得
それから2年間、ものづくりを進め、現在、「MizLinx Monitor」という水産業向け海洋観測システムを、全国各地に置いています。
なぜなら、漁業者の何人もの方々が、まずは海の中をしっかりと見ることが大切だと、おっしゃっていたからです。
こちらの「MizLinx Monitor」によって、海の中の映像や画像、水温や溶存酸素(※水中に溶け込んでいる酸素)といった、環境情報を一元的に取ることができます。
そして、これらの情報が、Webアプリによって、いつでもどこでも、どのようなデバイスでも見られるようになっています。
自分の養殖場や漁場から遠い場所にいても、チェックすることができます。
「MizLinx Monitor」によって、効率的な操業や資源管理、大量死といった問題への対策が、早く正しく行えるようになりました。
見えなかったものを可視化するだけで、水産業のやり方が大きく変わったのです。
このことは、日本に限らず、世界でも同じことが言えます。
現在、私は、毎月フィリピンへ行っており、色々な漁業者や研究者の方々とお話をしている中で、「このソリューションを、ぜひ、フィリピンでも使いたい」というお声を、多く頂いています。
海の観測・解析技術で藻場再生に取り組む
また、各地を回っている中で、新しい問題をよく耳にするようになりました。
それは、“磯焼け”という問題です。
磯焼けとは、海藻が枯れてなくなり、戻らなくなってしまうことを指します。
深刻な状況の地域では、海藻が80%もなくなってしまっています。
そうすると、どういった悪影響を及ぼすのか?
魚介類が住んでいたり、えさとしているのが、海藻なのです。
そのため、海藻がなくなってしまうと、魚介類がいなくなり、沿岸漁業へも大ダメージを与えてしまいます。
私は、この海藻、藻場を再生する必要があると考えました。
しかし、効果的に藻場を再生させるためには、なぜ消えてしまったのか、どのようにして再生すればよいのか、そして、どうしたらきちんと定着するのか、それらをしっかり科学的に考えていきたいと思いました。
そのため、私たちの強みである、海の観測技術、また、データの解析技術を用いて、今、藻場再生をするプラットフォームを作りたいと思っています。
最後まで、きちんと効果測定をしていきたいと思っています。
実際に、こちらのシステムのプロトタイプで撮影した映像です。
左側が、磯焼けが起きてしまっている現場で、右側が、藻場がしっかりと再生した現場です。
こういったものを、きちんと蓄積して解析して残していくことで、藻場を正しく再生して、より良い環境を作っていくことができると信じています。
正しく認識し対処すれば豊かな海を取り戻せる
最後に、海の環境を変えてしまったのは、私たち人類です。
魚を追いやってしまったのも、海藻をなくしてしまったのも、私たちです。
しかし、それを諦めて嘆くのではなく、この環境変化を、正しく認識・理解して対処していけば、豊かな海をきちんと取り戻せると、私は強く信じています。
こういった変化に対応した水産業をしっかりと続けていくこと、それこそが、持続可能な水産業を実現することだと、私は強く信じています。
しかし、そういった世界は、私たちMizLinxだけでは、実現できるものではありません。
ですから、本日、こちらの会場にいらっしゃる方、私のプレゼンテーションをお聴きくださっている方の中で、この話に少しでも共感してくださった方、何か一緒に取り組みたいと思ってくださった方は、ぜひ、お声がけいただけますと幸いです。
“海の課題を人と技術の力で解決する”MizLinxでした。
ご清聴ありがとうございました。
(終)
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編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/星野 由香里/正能 由佳/中村 瑠李子/戸田 秀成