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ICC KYOTO 2025 ソーシャルグッド・カタパルトに登壇した、ZERO (EGAO FARM) 青木 竣平さんのプレゼンテーション動画【売上3倍を実現！「ZERO（EGAO FARM）」が実践する、生産者のこだわりを価値に転換する農業】の文字起こし版をお届けします。ぜひご覧ください！
ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に学び合い、交流します。次回ICCサミット FUKUOKA 2026は、2026年3月2日〜3月5日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。
本セッションのオフィシャルサポーターはICCパートナーズです。
▶【速報】“インパクトヒーロー”を育成し、世界中で小さな革命を起こし続ける「Earth Company」がソーシャルグッド・カタパルト優勝！（ICC KYOTO 2025）
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【登壇者情報】
2025年9月1〜4日開催
ICC KYOTO 2025
Session 11A
ソーシャルグッド・カタパルト – 社会課題の解決への挑戦 –
Sponsored by ICCパートナーズ
青木 竣平
ZERO (EGAO FARM)
CSO/プロデューサー
公式HP
1998年長野県生まれ。 5歳でヒーローに憧れ20歳で消防士に。消防職員意見発表に県代表で出場し関東大会出場へ。長野県知事から表彰を受ける。命の尊さや当たり前は奇跡の連続、を心に刻む。ご縁で繋がり地域農業の「こだわると稼げない」を覆すべくプロデューサーの道へ。ぶどう農家EGAO FARMとともに世界一を目指す。
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長野県で5本指に入る高い栽培技術のぶどう農家
青木 竣平さん（以下、青木） 「こだわると、稼げない」を覆す――。
2年前、ぶどう農家のEGAO FARMの石橋さんが、弱音を漏らしました。
「娘から、芸術の学校に進学したいと言われたけれど、今の収入では難しい」――苦しい親心でした。
EGAO FARMは、長野県で三代にわたって71年続くぶどう農家で、その栽培技術は常軌を逸しています。
207,320時間――EGAO FARMが、栽培方法の研究に、これまで費やしてきた時間です。
ナガノパープル28粒、シャインマスカット35粒、クイーンルージュ30粒などの粒数、葉の枚数や枝の長さなど、ぶどうの品種ごとに、最適解を導き出しています。
さらに、気候や降水量から予測した水分量の調整、甘さや味のみならず、皮の厚みや歯切れまで調整されています。
ぶどう農家3万人と言われる長野県において、上位5農園に選ばれるという受賞経験もあり、折り紙付きの技術です。
本日は、そのような栽培技術から生まれた、ナガノパープルをお持ちしました。
▶︎編集注：審査員席には、試食としてナガノパープルが配布されました。
一粒で笑顔があふれる、ぶどうです。
ぜひ、お召し上がりください。
種なしで、皮ごと食べられます。
こだわりゆえに立ちはだかる厳しい現実
青木 しかし、このような栽培方法には、大きな落とし穴がありました。
とにかく手間がかかるのです。
そのため、栽培面積は一般的なぶどう農家の1/4が精一杯で、収入も1/4、販路を探す余裕もなく、卸業者に頼るしかありません。
一年間、手間暇をかけて栽培したぶどうも、一房たったの900円です。
娘さんの夢を叶えるためには、1年間で2倍の売上が必要でした。
あまりにも厳しい現実です。
しかしながら、僕は諦められませんでした。
石橋さんは、海外在住の僕の両親に代わって育ててくれた、第二の親のような存在です。
「いつか絶対に恩返しをしたい」――そう思っていました。
消防士から転身、プロデュースを学ぶ
青木 「なんとかします」とは言ったものの、当時の僕は、消防士4年目の24歳で、商売に関しては、メルカリでTシャツを1枚5,000円で売ったことがある程度で、ビジネスの知識も経験もありませんでした。
必死に調べて出会ったのが、一粒1,000円のライチをプロデュースした齋藤 潤一さん主催のこゆ財団が企画したスクールでした。この時はローカルスタートアップ協会は立ち上げ前、斎藤さんはこゆ財団の代表理事を務められていました。
お話を伺うと、マーケティングやデザイン、販路など、自分が知らないことだらけでした。
品質がよいだけでは売れない――僕に圧倒的に足りていなかったのは、価値の届け方でした。
そのため、川原 卓巳さんが主催する、プロデュースの学校（Takumi.Inc）へ入学を決意しました。
費用は、齋藤さんのスクールの10倍ですが、ここに賭けるしかないという覚悟で、震えながらも飛び込みました。
しかし、現実は残酷でした。
入学から2カ月が経過しても、何も進まず、進め方も頼り方もわからず、時間だけがただ過ぎていく状況でした。
このままでは終われない。
「力を貸してください」と、僕は同期のみんなに頭を下げました。
この言葉に、プロデューサーを目指す同期が巻き込まれてくれました。
圧倒的な強みを「価値」に変える
青木 同期の知識やつながりを活用して、ようやくチームが動き出しました。
1年目に目指したのは、お客様や企業と直接つながり、利益率を上げることです。
EGAO FARMの圧倒的な強みを、価値へと変えることでした。
具体的には、自社販売サイトを立ち上げ、商品の販売価格を4倍に引き上げ、また、お客様と直接つながる、ぶどう狩りツアーも企画しました。
直接取引ができるように、日本全国77社を訪問して、大手百貨店を中心とした6社と新規契約しました。
その結果、売上は、どうにか一年間で2倍になり、石橋さんの娘さんも無事に進学することができました。
大手企業等で採用され、売上が3倍に成長
青木 2年目には、自社サイトの顧客数は、1,900名を超えました。
大手航空会社のファーストクラスや会員制ホテルでも採用、取り扱いしてくださる企業が14社にまで拡大し、売上は3倍へと成長しました。
卸業者に頼っていた販路は、直接販売に切り替え、直販売上は2年間で91％まで増加しました。
長野県内でしか知られていなかった、EGAO FARMは、日本全国のみならず、アメリカやイギリスからも、ご注文を頂いている状況にまでなっております。
質にこだわる農業の魅力が若い世代にも伝わった
青木 さらに、想像もしていなかった大きな変化が起きました。
「農業はダサい」「こだわっても、稼げない」と言っていた石橋さんの息子さんが、こだわりを価値だと感じて、それで勝負ができるということに誇りを感じ、家業を継ぐ決意をして、東京から地元に戻ってきたのです。
また、ぶどう農家で働く20代の2名が、大量生産ではなく、品質と価値で評価される農業がしたいと、石橋さんを指名して、栽培を学びに来ました。
農業の魅力が、若い世代に伝わった瞬間でした。
存続危機にある日本の農業の現状
青木 現在、日本の農業は、本当に大変な状況です。
稼げない・継げない構造の中で、多くの農家が、未来を描けずに、農業を続けることを諦めている――そのような現状です。
唯一無二の価値を活かしきる社会へ
青木 EGAO FARMも、まさに同じ状況でした。
だからこそ、確信を持っています。
大量生産が当たり前で、こだわるほど稼ぐことができないと言われてきた農業ですが、こだわりを唯一無二の価値として転換することができれば、十分に続けていくことが可能です。
今、これをご覧になっている皆さんに、お伝えしたいです。
「日の目を見る瞬間」は、作り出せます。
信念を持って、こだわっている“価値”を、諦めないでください。
「こだわると、稼げない」を覆し、個性を活かしきる社会を創りたい――本年（2025年）3月、僕は、消防士人生に終止符を打ち、現在、ZEROのプロデューサーとして、価値で選ばれるブランド作りに奔走しています。
石橋さんから頂いた言葉があります。
「人生を変えてくれて、ありがとう」――この言葉に、僕は身震いをしました。
消防士として目の当たりにしてきたのは、尽きていく命の多さでした。
救いたいのに救えない、運命は変えることができないと感じ続けていた中で、石橋さんの一言は、人の人生を救うことができたと、僕が実感できた瞬間でした。
このような活動に命をかけたい。
日本には、こだわりを突き詰めているにもかかわらず、報われない生産者や食材が多くあります。
このような、突き詰めたこだわりを価値へと最大化するポテンシャルは、間違いなく日本は地球でNo.1だと思っています。
ただし、そこにプロデュースがなければ、安い価値のままとなってしまいます。
僕たちは、仲間とつながり、コミュニティとなって、オールジャパンで挑戦したいのです。
こだわるほど稼げないという構造を覆し、世界で戦える日本のトップブランドを、ともに目指していきませんか。
僕は、まず、EGAO FARMで、世界一をとります。
ありがとうございました。
（終）
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編集チーム：小林 雅／星野 由香里／浅郷 浩子／中村 瑠李子／戸田 秀成