▶カタパルトの結果速報、ICCサミットの最新情報は公式Xをぜひご覧ください!
▶新着記事を公式LINEで配信しています。友だち申請はこちらから!
▶過去のカタパルトライブ中継のアーカイブも見られます! ICCのYouTubeチャンネルはこちらから!
ICC KYOTO 2025 ソーシャルグッド・カタパルトに登壇した、青葉組 中井 照大郎さんのプレゼンテーション動画【自然を保全・再生する産業の創出で、未来の暮らしを守る世界最先端の林業を目指す「青葉組」】の文字起こし版をお届けします。ぜひご覧ください!
ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に学び合い、交流します。次回ICCサミット FUKUOKA 2026は、2026年3月2日〜3月5日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。
本セッションのオフィシャルサポーターはICCパートナーズです。
▶【速報】“インパクトヒーロー”を育成し、世界中で小さな革命を起こし続ける「Earth Company」がソーシャルグッド・カタパルト優勝!(ICC KYOTO 2025)
▼
【登壇者情報】
2025年9月1〜4日開催
ICC KYOTO 2025
Session 11A
ソーシャルグッド・カタパルト – 社会課題の解決への挑戦 –
Sponsored by ICCパートナーズ
中井 照大郎
青葉組
代表取締役
公式HP | 公式X
1987年東京生まれ。大学卒業後、2011年に三菱商事にて、インドネシアのLNGプロジェクトへの投資業務などに従事。再生可能エネルギーのベンチャー自然電力のファイナンス部門を経て、2017年4月岡山県西粟倉村へ移住、林業に携わり始める。2017年株式会社百森を創業、代表取締役共同代表に就任。地域の森林管理を始める。2020年、さらに造林という全国共通課題に専門特化した青葉組株式会社(旧:株式会社GREEN FORESTERS)を創業。2025年5月三井物産共創基金issue finder認定、日本林業経営者協会参与(栃木支部)、東京都「東京の林業振興に向けた専門懇談会」委員。
▲
中井 照大郎さん(以下、中井) 林業から新たな自然資本産業をつくる――青葉組代表取締役、中井 照大郎です。
直近20年でスギ花粉は2倍、クマ被害は史上最多に
中井 実は現在、自然が静かに劣化しています。
日本の国土の約3割を、人が植えた、スギやヒノキの林が占めています。

▶︎拡大造林とは|戦後の人工林造成(森林・林業学習館)
しかし、管理が行き届かず、直近20年で、スギ花粉は2倍、クマによる被害は史上最多となりました。

▶︎どうしてスギ、ヒノキの花粉が大量に飛ぶようになったのか。(バイオーム)
▶︎近年、クマ被害が急増している理由 気候変動による影響は?(ウェザーニュース)
さらに、放置された森林は、土砂崩れのリスクが増大し、山火事も増えています。

しかし、このようなお話は、すでに聞き飽きているかと思います。

本日お話しさせていただくことは、そういった課題についてではなく、日本を、世界最先端の林業地にする方法についてです。

私は、5年前に、森を育てる植林・育林事業家として起業し、業界の人手不足の課題を解決するために、命を燃やしてきました。
栃木県を中心に、北関東エリアと新潟県において、活動しています。
留学先のインドネシアの元紛争地が転機に
とはいえ、実は、私は東京都出身で、林業はもちろん、地方にさえ、さほど縁もゆかりもありませんでした。
転機となったのは、学生時代に留学した、インドネシアの元紛争地でした。

その後、商社に入社し、天然ガスの輸入を担当していました。
私が目の当たりにしたのは、依存して資源を輸入させてもらっている日本が起こしてきた、紛争です。
私たち先進国の生活が、人命を奪ってきました。
身近な資源を、より大切に使うことに人生を懸けたい――これが、私の人生のテーマです。
林業で起業し、自然の劣化を目の当たりにする
身近な資源と言いますと、日本には大きな森があるのではと思い、勤めていた商社を思いきって退職して、林業の世界へ飛び込み、起業しました。

しかし、地域につながりもなく、紹介していただいたお仕事も下請けばかりで、やればやるほど赤字になり、借金のみが増えていきました。

また、その傍らで、自然が静かに劣化している様子を見てきました。

こちらは、スキー場の跡地です。
1cmの土がつくられるには、100年かかると言われているにもかかわらず、こちらは、わずか20年で、1.5mもの土が流れていました。
生物の絶滅につながる里山・草地・湿地の消滅
こうした自然資本の劣化は、今に始まったことではありません。
明治時代から現在までの140年間、農林漁業者は92%も減り、凄まじく里山利用が減ったために、湿地は60%・草地は90%も減っていると言われています。


何が問題かと言いますと、生物の絶滅につながっているということです。

絶滅危惧種のうちの多くが、こうした里山や草地・湿地に生息しています。
それらが意味しているのは、里山のような自然がなくなることによって、生物が絶滅し、ひいては、農作物や人間の生存が脅かされているということです。

自然を保全・再生させることで稼ぐ「自然資本産業」とは

私の使命は、経済活動が拡大するほどに、自然が破壊されるのではなく、自然が保全・再生されるシステムをつくることです。
現在、まさに植林・育林業を担っている方々が、その答えの鍵を握っています。

植林・育林を行っている方々に、植林仕事だけでなく、その周辺にある湿地や草地づくりも行っていただき、新たに自然を保全・再生させていくことで稼いでいく、「自然資本産業」の担い手となっていただきたいのです。
また、企業と連携して、お金が巡る仕組みをつくります。
大企業が森林への投資事業を求めている
しかし、このような事業に、お金をお支払いいただけるのでしょうか?

実は、私たちはすでに、大手企業を中心に累計で約1.3億円を受注しています。
さらに、すべての案件は、事業部からの相談によってすでに始まっているのです。
つまり森林への投資は、もはやCSRの世界ではなく、実際に事業価値につなげる投資へとつながっているのです。

企業のニーズは、単なるIRにおけるリスク回避としての森林への寄付「調達」ではなく、自社事業に連動する取り組みを「企画・共創」するパートナーを探しています。
私たちは、企業のニーズから逆算して、企業独自の自然に関わる事業を、ゼロからともに企画します。

自社ですべての作業を行っているからこそ、最適な現場を、オリジナリティあふれる取り組として提案して、ともに実行することができます。
取り組みをインパクトレポートとカーボンクレジットで報告
そのため、林業に限らず、湿地づくりでも何でも取り組みます。

このような山中で放置されて細くなった沢を、小さな湿地帯へと拡張しています。
そちらへ、繁殖のために渡ってきたのは、絶滅危惧種のサシバ(※)です。
▶参考:サシバ (Wikipedia)
わずか1日の作業でしたが、ほかにも10種類以上の絶滅危惧種が、私たちの小さな湿地を利用している様子を確認できました。

自然再生の結果は、機関投資家や銀行向け対応にも活用できる30ページ以上のインパクトレポートにまとめて、お届けしています。

さらに、カーボンクレジットの権利も、創出しています。
このような自然資本・再生課題に対して、世界はすでに動き出しています。
イギリスでは、「2021年環境法」により、年間450億円の市場が生まれています。
▶参考:2021年環境法 (国立国会図書館)

現在、まさに、市場が創出されつつあるのです。
直近20年間で植林・育林従事者は6割減少
しかし、時間はありません。

植林・育林従事者は、直近20年間で6割も減少し、ついに約17,000人となりました。

そのうえ非常に疲労困憊しています。
彼らの年収は、全産業に比べますと、120万円も低く、労災リスクは建設業の5倍です。

暑い夏の日も、熱中症のリスクと戦いながら、取り組んでいます。
彼らの強靭な体力と精神力をもってすれば、都会ではよりよい仕事はあるのです。
しかしながら、給料も安く、非常に大変な仕事にもかかわらず、森林やこの仕事が好きだと、人知れず頑張ってくださっている方々が、全国に約17,000人もいるのです。

彼らこそが、希望です。
彼らが主人公となる、そのような産業をつくりたいのです。
大船渡の山火事跡地の再生に向け、三井物産とタッグ
そのために私たちは、5年以内に自然資本産業をつくります。

まず、直近3年間で、新たに3拠点をつくります。
また、企業の成功事例30件をつくります。
自社だけではなく、同じ志を持つ農林業者と連携して、みんなで産業をつくります。
早速、今月(2025年9月)には、栃木県・新潟県に加えて、山火事が起きた岩手県の大船渡市へも、進出することになりました。

▶参考:大船渡市山林火災 (Wikipedia)
すでに、地元の多数のメディアに、取り上げていただいています。
みんなが、期待してくださっています。
さらに、(2025年)6月には、三井物産が助成金として1億円を助成してくださいました。
▶参考:三井物産共創基金、ゆたかな自然資本を育む未来の森づくりを国内で実現する挑戦への助成決定 (三井物産 株式会社)

資源争奪の時代から「資源循環」の時代へ
自然資本産業というものを確立させることができましたら、自然を回復・成長させることはもちろん、さらに持続的な森林経済を支える、世界最先端の林業を行うことができます。

日本は、資源の自給率が低い島国です。

だからこそ、身の回りの資源を、有効に活用して再生させていかなければならない運命にあります。
これまでの時代が、資源争奪によって多くの不幸が生まれた時代であったならば、これからの時代は「資源循環」の時代です。
自然を徹底的に再生させ、災害を減らし、次世代の暮らしを守る――日本を、その発信地にしませんか。

私たちは、自然分野から、徹底的に貢献・発信していきます。
日本初、自然資本の新たな産業をつくる――青葉組 代表取締役 中井 照大郎でした。
ありがとうございました。
(終)
▶カタパルトの結果速報、ICCサミットの最新情報は公式Xをぜひご覧ください!
▶新着記事を公式LINEで配信しています。友だち申請はこちらから!
▶過去のカタパルトライブ中継のアーカイブも見られます! ICCのYouTubeチャンネルはこちらから!
編集チーム:小林 雅/星野 由香里/浅郷 浩子/中村 瑠李子/戸田 秀成


