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ICC FUKUOKA 2021 REALTECH CATAPULTに登壇いただいた、ジャパンモスファクトリー 井藤賀 操さんのプレゼンテーション動画【「ジャパンモスファクトリー」は、フィルター化した苔で、汚染された水や環境を浄化する】の文字起こし版をお届けします。ぜひご覧ください!
ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。 次回ICCサミット KYOTO 2021は、2021年9月6日〜9月9日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページのアップデートをお待ちください。
本セッションは、ICCサミット FUKUOKA 2021 ゴールド・スポンサーのKOBASHI HOLDINGS様にサポート頂きました。
▶【速報】眼科医の眼をスマホに装着「Smart Eye Camera」のOUI inc.がリアルテック・カタパルト優勝!(ICCサミット FUKUOKA 2021)
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【登壇者情報】
2021年2月15〜18日開催
ICC FUKUOKA 2021
Session 4A
REALTECH CATAPULT
リアルテック・ベンチャーが世界を変える
Supported by KOBASHI HOLDINGS
井藤賀 操
株式会社ジャパンモスファクトリー
代表取締役CTO
2002年広島大学大学院理学研究科修了、博士(理学)を取得。2003年より理化学研究所植物科学研究センター研究員、2013年より同研究所環境資源科学研究センター上級研究員に従事。日本蘚苔類学会奨励賞、日本鉱業協会賞など受賞。2018年アグリテックグランプリに出場、最優秀賞を受賞。2019年スピンアウトし、株式会社JAPAN MOSS FACTORY創業、NEDO NEP 2019採択、いちかわ未来創造会議社会実験実施者に認定される。現在、環境系の理研ベンチャーに認定されている。
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井藤賀 操さん 皆さんこんにちは、ジャパンモスファクトリー代表取締役CTOの井藤賀(いとうが)です。
環境改善素材として苔の原糸体を製造
弊社は理研ベンチャーで、環境改善素材として苔の原糸体(※) を製造・加工しているスタートアップです。
▶編集注:コケ植物、およびシダ植物において、胞子の発芽後すぐに形成される構造(Wikipedia)。
作っているのは「コケフィルター」で、2020年末に特許も出願しました。
工場廃液の中から「金」を抽出
これを、「もったいないこと」をしている化学工場に提供したいと思っています。
どういうことかと言うと、希薄な濃度で金を含む廃液を、わざわざお金を払って産業廃棄物処理をしている化学工場があります。
そのような化学工場を弊社の顧客と考え、コケフィルターを提供することで、新たな経済価値を創造したいと思っています。
具体的に手に入るのは、金塊です。
今まで捨てていたものでも、弊社のコケフィルターを使えば、金を抽出することができるのです。
上のスライドの右側に載せている金塊は、実証実験で得た14.8gの金です。
苔の原糸体が金を濃縮回収
工場の廃液を流す塩ビ管に、左の写真のようにフィルターを装着します。
フィルターの中に入っているのは苔の原糸体で、原糸体は繊維状構造の細胞でできています。
この細胞の中に、金イオンが入ることで金を回収できる仕組みです。
スライドにあるのは透過型映像で見ている画像なので、プラズモン共鳴現象により、金はカラフルに見えています。
反射型映像で見ると、キラキラとした金に見えます。
フィルター内の苔の原糸体は、自重の10%が金になる性能を持つ新素材です。
金以外の貴金属も回収可能
化学工業日報に、この仕組みで金以外の貴金属も回収することができると取り上げて頂きました。
これは実際に論文にも記載しており、パラジウムや白金、また金の6倍の経済価値のあるロジウムも回収することができます。
▶JMF to Commercialize Moss Adsorbent Able to Recover Precious Metals(化学工業日報)
苔細胞壁の特性を活かし鉛も回収可能
白金族元素のものを吸着可能ですが、もう1つの特徴として鉛の蓄積もできます。
顕微鏡写真のピンクの部分が鉛ですが、鉛は繊維の表層に蓄積されます。
繊維の表層はポリガラツクロン酸やセルロースといった細胞壁を主成分とするのですが、ポイントとなるのは本来表面に存在すべきクチクラ層を、苔は欠いているということです。
実は苔は色々なものが無いことが特徴です。
スライド右下にあるのは一般的な細胞壁のモデルです。
黄色い部分がクチクラ層で、一般的な細胞壁の表面にはクチクラワックスという水を弾く成分がありますが、苔にはクチクラ層がありません。
そのため水がダイレクトにアクセスできて、細胞壁成分だけでも鉛を蓄積することができるのです。
弊社では、高機能な苔を100L規模の水槽で培養しています。
興味があれば動画をご覧ください。
光合成で永続的に増やせ、紙にもなる新素材「原糸体」
また、培養した原糸体を加工して、金属吸着剤を作っています。
特徴は、光合成で永続的に増えること、繊維状なので固液分離性能に優れエネルギーコストを抑えられること、工業プロセスでも利用でき、既存の化学処理剤の代替品としても活用できることです。
何よりも、非常に軽いので運搬が可能で、紙にすることもできます。
苔で環境汚染の浄化に取り組む
弊社のビジョンは「苔で地球環境を守る」です。
世界中に苔を届けたいと思っています。
紙にもできるようになったので、土壌や空気、水など全てを浄化していくことを考えています。
例えば、インドでは大気汚染が大きな問題となっているので、大気浄化フィルターを作りたいと思っています。
また、金の採掘を行っているフィリピンでは採掘時に水銀を使い、それを流した川や土壌を小学生が裸足で歩いていますが、そんな状態を改善したいと思っています。
日本には重金属の問題はもうないと思っている方もいるかもしれませんが、休廃止鉱山では水はきれいでも汚泥をためているダムがあり、40年間無毛の地帯になっています。
そういった場所を緑化するために、苔を使っていきたいと考えています。
太陽光を利用した持続可能な培養システム
自然界では、苔は太陽光やCO2を吸収して暮らしています。
ですから弊社も、苔の原糸体を培養する時には太陽光や自然エネルギーを使って培養したいと強く思っていました。
それが実現しました。
KOBASHI HOLDINGS と共同で、休耕田や休廃止鉱山などの排水性が悪い土地に生育できる苔を、野外で培養することに成功しました。
▶ニュースリリース 2021年02月12日 休耕田や休廃止鉱山で生育可能なコケ植物の屋外培養に成功(KOBASHI HOLDINGS)
持続可能な土地利用の推進
弊社では、SDGsでもゴールとなっている「陸の豊かさを守る」ことに挑戦したいと思っています。
具体的には4つのテーマがあり、特に「持続可能な土地利用の推進」に努めていきたいと思います。
これから人口は減少するのでリソースやインフラは休んでいきますが、休ませるのではなく、苔の力で土地利用を推進していきます。
ジャパンモスファクトリーでした。ありがとうございました。
(終)
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編集チーム:小林 雅/小林 弘美/浅郷 浩子/戸田 秀成/大塚 幸
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