▶カタパルトの結果速報、ICCサミットの最新情報は公式Xをぜひご覧ください!
▶新着記事を公式LINEでお知らせしています。友だち申請はこちらから!
▶ICCの動画コンテンツも充実! YouTubeチャンネルの登録はこちらから!
NSV柴田さんが「SaaSの死」とは、AI企業との圧倒的な成長率の差だと解説。AIはIT予算ではなく「顧客の人件費」を直接代替するため、市場規模が従来の100倍に跳ね上がります。そのなかで、飛躍的な成長を遂げているVertical AIを柴田さんが紹介します。雇用が守られる日本でこれから起こる変化とは?今、経営者が打つべき手とは? ぜひご覧ください。
ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回500名以上が登壇し、1,200名以上が参加する。そして参加者同士が真剣に議論し、学び合うためのカンファレンスです。次回ICCサミット KYOTO 2026は、2026年8月31日〜9月3日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。
本セッションのオフィシャルサポーターはリブ・コンサルティングとノバセルです
▼
【登壇者情報】
2026年3月2〜5日開催
ICC FUKUOKA 2026
Session 2C
AI経営イニシアティブ 前半パネルディスカッション
Sponsored by リブ・コンサルティング
(スピーカー)
柴田 尚樹
NSV Wolf CapitalManaging Partner
西 勝清
Notion Labs Japan合同会社
ゼネラルマネジャー アジア太平洋地域担当
松本 勇気
LayerX
代表取締役CTO
(モデレーター)
砂金 信一郎
Gen-AX
代表取締役社長 CEO
大島 周
リブ・コンサルティング
パートナー
▲
▶『AI経営イニシアティブ 前半パネルディスカッション』の配信済み記事一覧
AI企業に圧倒的に見劣りするSaaS企業
柴田 2週間ほど前に、『日経ビジネス』からSaaSの死を解説するように言われて、どう説明したら一番わかりやすいかなと思って、この1枚のスライドで説明することにしました。
SaaSの死の原因は何か?
一言で言うと、SaaS企業の売上成長率がAI企業に比べて圧倒的に見劣りしてしまうという非常に悲しい現実があります。

これはSaaSの方たちが悪いということではなくて、ものすごく頑張って素晴らしいサービスを提供していると思うのですが、新しく生まれた、AIと呼ばれる突然変異みたいな子どもがものすごく優秀すぎて、数字で見ると非常に物足りなくなってしまうのです。
NVIDIAは、あの規模でありながら未だに前年同期比60%を超えていて、直近の決算はもっと良かったと思いますし、そのぐらいで成長しています。
Google CloudやAzureなどのデータセンターは、もちろんAI以外もたくさん混ざっていますが、それでもこれだけのスピードで伸びています。
基盤モデル(LLMモデル)に関しては、OpenAIもあの規模でもまだ3倍、Anthropicにいたっては、2024年から2025年にかけて10倍近く成長していると思います。
投資家から見ると、SaaSでもエネルギーでも食料でも何でも、伸びるところに投資したいわけですよね。
そういう観点で見ると、「Saaの君たちは伸びてないじゃないか」という声がかかったというのが、「SaaSの死」という言葉になってしまっているのかなと思います。
Anthropicが新しい機能を出したというのは、もちろんその一つのきっかけではありますが、それにかかわらず、売上成長率がこのままだときついというのが、SaaSの死という現象かなと思います。
▶︎「SaaSの死」の正体、シバタナオキ氏が分析 「AIが人件費を奪い始めた」(日経ビジネス)
砂金 今日は技術の話はあまりしませんが、松本さんからすると、「SaaSで売っている商品は、普通にClaude Codeで作れますけど」みたいな状況が、もうやってきている感じはありますか?
SaaSの成長を支えた「SOE」の役割変化

松本 私はnoteに記事を出していて、有料のマガジンで書いたのですが、System of Record(SOR)という概念があって、これは、いわゆる堅牢なロジックとともにデータを保存するレイヤーです。
それを使って、System of Engagement(SOE)という、いわゆるお客様に対する付加価値を作るレイヤーがありますが、このSOEというレイヤーの役割は、今大きく変わりつつあるなと思っています。
実はSaaSの成長を支えてきたのは、SORの領域ではなくてSOEの領域で、要は付加価値を創出しているからアップセルができて、なかなかユーザーが離れないところでした。
しかし、このレイヤーはClaude Codeでも作れると思っています。
SORを作れと言われたら、多分みんな逃げ出すと思います。
例えば、皆さん、適当に作ったバイブコーディング(※)で作った会計ツールで決算を回したいですか?
▶編集注:バイブコーディングとは、人間がコードを書かず、AIに自然言語で「こんな感じ(Vibe)」と指示を出してソフトウェアを開発する手法。
非常に怖いですよね。
でも、しっかりした決算のデータベースがある上で、管理会計をやりたいなと思ったら、Claude Codeが非常に良いダッシュボードを作ってくれます。
ですから、例えばSOEもしくはSystem of Information(SOI)という、いわゆるデータを分析して活用させてくれる、このSOE、SOIのレイヤーは、今後Claudeがどんどん取り込んでいくのではないかという風に見られます。
SaaSの死という時に株価がつく企業

砂金 それで言うと、一見NotionはSOIのように見えますが、その実SORであるみたいなところは?
西 そうですね。
Notionが、SORに中立性を持たせて強みを持っていくことに取り組んでいるというのは、一つ共有できることです。
あと、アメリカの投資家を見ていると、結局AIネイティブと見なすかどうかの判断基準が、AI部分の売上がいくらあるかということと、AIを導入することによって、今までの成長率が再加速したかということの2点を主に見ているように感じています。
この2つが満たせれば、SaaSは死んでいないと見なされると感じています。
松本 これは非常に大事なポイントで、成長が伸びなければいけないと思っています。
なぜかというと、今までのLLM以前のAI、ソフトウェアでできなかったデジタル化がこれからできるのです。
今までは、AI OCRの単品だと、文字を読み取るところまでだったのが、帳票を見て、そこからデータを取り出して分類して、色々な処理をかけてという一連の全業務を一気にデジタル化する可能性が生まれたので、キャプチャーできる価値が非常に大きいのです。
それを提供していれば、必然的に売上成長のスピードが上がったり、新しい単位の売上が作れたりするはずだという仮説があるので、そこに至れていないと投資家から評価されないということですよね。
柴田 まさにそうだと思います。
おっしゃる通りで、会社が大きくなってくると、普通、売上成長率は落ちてきますよね。
これは自然なことですが、AIがうまく適用できている会社は、成長率を折れ線グラフにすると、途中でパンと跳ねるのです。
それができている会社は、SaaSの死が叫ばれる時代でも株価がつきますし、逆にそれを目指していくというのが、今日のセッションのテーマの一つなのかなと思います。
一番上のVertical AIを見ていると、これはスタートアップで、まだ小さい会社から大きい会社までたくさんありますが、1年で10倍になるような売上成長を遂げる会社を結構たくさん見ます。
SaaSの死という時に、これはあるアメリカのVCが解説していたことですが、その閾値となる前年同期比の売上成長率は最低20%は欲しいとのことでした。

これは、アメリカのSaaSの会社なので、売上が兆とか数千億ある会社でこのぐらいのスピードです。
景気が良かった2021年頃は「グロースが全てだ」と言われ、その後「いったんちゃんとプロフィタビリティ(収益性)を見ろ」と言われてきたのが、SaaS業界だと思います。
多分、ここから先はもう1回、グロースにかなり強く投資家の意識がいくのではないかと思います。
うまくいっている企業の2つの特徴
柴田 次に、やるべきことは何かという話をします。
社内と社外で分けると、社内のほうはもうとにかく「営業」ですね。

AIが一番効くのは、社内の業務では「コーディング」と「営業」の2つで、コーディングは、皆さん多分イメージしやすいと思います。
うまくいっている会社が何をやっているかというと、営業担当者の勤務時間のうち実際に顧客と会話している時間がどのぐらいかを細かく測っています。
前後の雑務が色々あるので、今までは勤務時間の25~33%ぐらいの時間だったのに対し、AIをフル活用している会社の営業担当者は、平均で70%の時間を顧客との会話に費やしています。
そうなると、当然商談数が増えるので、売上の成長率が上がります。
以上が、1つ目です。
2つ目は、社外に向けてAIプロダクトを提供することです。
ここは後でもう少しお話しできればと思いますが、ツールとしての提供だけではなく、エージェンティックに、実際にタスクをこなすようなAIのサービスを作ることです。
ここも、SaaSとの対比でいくと、うまくいっている会社は社内のKPIが結構面白くて、実際にAIエージェントが顧客の仕事をどのぐらいこなしたか、どのぐらいの時間を従業員にお返ししたかをKPIにしている会社が多いです。
SaaSの時のARRとか、何人ログインしてくれたかとか、そういう考え方ではなくて、実際にタスクをこなした量がKPIになっていく会社が、伸びている会社の特徴かなと思います。
日本企業はVertical AIにフォーカスすべき
柴田 日本というか、ハイパースケーラーでない会社は、基本的にVertical AIをやるのが正しいと思います。

Vertical AIの作り方は、ICCサミットで何回もお話ししているので、ご存じの方も多いかもしれませんが、LLMをみんな作っているわけではなくて、既存のLLMを使うわけですね。

そこに業界・企業ごとの特有の学習データをファインチューニングして、AIエージェントを作ります。
皆さんにAIエージェントの話をすると、ものすごく技術力が必要なのではないかと勘違いをされるのですが、実は全然そんなことはないのです。
どちらかというと、特に最初の立ち上げの時は、ビジネス側のスキルがかなり必要です。
特定業界のことをビジネスオペレーションまで含めて非常によくわかっている人、学習データがどこにあるか知っていて、どうやったら学習データが取れるかわかるぐらいの解像度で、その業界のことをわかっている人が必要です。
エンジニアももちろん必要ですが、LLMを作れるエンジニアは世の中に相当限られた数しかいません。
でき上がったLLMに業界データをファインチューニングするレベルの機械学習エンジニアはもう少し数がいますので、ここはスライドにあるような整理でいいのかなと思います。
T2D3を超えるVertical AIの成長とその理由
柴田 SaaSの成功パターンはT2D3(※)で、ARRが1ミリオンドルを超えた後、T2D3ですね。
▶編集注:T2D3とは、ARR(年間経常収益)を毎年3倍(Triple)×2回、2倍(Double)×3回に成長させることで、5年で72倍の売上を目指すこと。スタートアップ企業に求められる成長のスピードとし、米VCのNeeraj Agrawalが提唱。

それがユニコーンになる方程式だったわけですが、Vertical AIの会社を見ていると、去年1ミリオンドルだった売上が、今年10ミリオンドルになるみたいな会社を毎月見ます。
私が毎月見ているので、多分世の中にはもっとたくさんあります。
3倍成長ですごいと言われていたシードの会社が、10倍成長になるのですよね。
もちろんダメな会社もありますが、なぜこんなに早く会社が伸びるのか、なぜ10倍になるのかを多くのVCと議論しましたが、もともとパッケージで売っていたソフトウェアをクラウドのソフトウェアで置き換えたことがSaaSの革命だったと思います。
これはとても素晴らしいことがたくさんあったわけですが、Vertical AIの場合、最初はSaaSに似た課金体系で入っていって、そのサービスが良くなってうまくいくと、一番下にあるようにAIエージェントの時給で課金するとか、実際にこなしたタスク当たりいくらみたいな課金に、課金体系が進化していくパターンが多いです。
これはつまり、全部ではないですが、顧客の人件費を一部置き換えているのです。
皆さんの会社を想像していただきたいのですが、普通の会社ならIT予算と人件費では、人件費のほうが100倍ぐらい大きいと思います。
ですから、スタートアップ側から見ると、TAM(実現可能な最大の市場規模)が急に100倍大きくなっているわけです。
もちろん人件費を全部取るわけではないですが、人件費の一部でも取れると全然違う世界になります。
AIの会社がうまくいくと早く伸びるのは、ソフトウェアの予算だけではなく人件費も一部取り始めているからということかなと思います。
雇用が守られる日本でこれから起こる変化

砂金 雇用が守られる日本では、すぐさま人の作業をAIが置き換えて、人件費が次の年のP/Lにヒットするわけでもないですよね。
ソフトバンクの社内もそうだし、外部で行っているのもそうだし、松本さんの会社もそうだと思いますが、業務委託費でどうしても出費があるものが減っています。
理論の構造は柴田さんのお話と一緒で、IT部門、情報システム部門が持っている予算の中で、SaaSに支払うべきお財布の中から何%取りましょうではなくて、それ以外のお財布に取りに行く。
多分B2Cのサービスをやられた方々からすると、マーケティングや広告費用、販促費用を取りに行くのと同じような仕組みが、AIの中では起こっています。
ITや情報システムではないところに、どうやってタッチして入り込んで信頼を勝ち取るのか。
そのためには、一定のコンサルティングや、この後の話題で出てくるかもしれないFDEという新しいモデルをやらなければいけない職種も出てきて、プレースタイルがだいぶ変わってきている感じですね。
柴田 そうですね、売り方が全然違うかなと思います。

松本 日本では人は減らせないと言うのですが、意外と人を異動させることで席を空けようという努力は大企業で見られています。
先日も、大手金融機関で業務のデジタル化とセットで事務系人材を営業系の部署に異動させ、トップラインを伸ばそうという取り組みがありました。
このように、雇用を減らす以外のパターンで、経営を効率化させる動きも生まれています。
西 提供側の会社を見ると、Cursorが2ビリオンドルを売り上げたというARR(年間経常収益)が出ていましたが、結局爆発的に伸びているところは従量課金ですよね。
一方で外から見ていると、あまり利益が出ていないように見えますが、利益は出ているのでしょうか?
赤字を許容しアウトカムを最優先
柴田 AIの会社はSaaSの会社よりもグロスマージン(売上総利益)が低い傾向にあります。
SaaSでは、グロスマージン80%がベストケースだと思います。
AIの会社は、多分基盤モデルだと50〜60%ぐらいだと思いますし、Vertical AIの会社だともう少し高いかなと思います。
それでも80%までいかない会社も多く、理由として、今までよりも当然たくさん計算機を使っているということが一つあります。
2つ目は、とは言え、LLMのコストは今もそうですが、多分これからどんどん下がっていくので、SaaSと同じ水準まではいかないとは思いますし、80%まできっちりいくかというとわからないですが、これから数年かけてグロスマージンはどんどん良くなっていくのかなと思いますね。
松本 Vertical AIの会社は、あまりグロスマージンを意識した経営をしていないですよね。
この前、GensparkやAndreessen Horowitzの方に会って話を聞くと、「いや、アウトカムが先でしょ」という話をされていました。
今提供している価値が、下手すると、例えばパワーポイントでスライドを1枚作ったら赤字ですみたいな話でも提供し続けるんだ、自転車操業するんだというようなスタンスを感じています。
いつかはモデルの価格が下がるし、このいつかというのも1年で10分の1下がるので、それでいいじゃないかという経営をされているように見ています。
柴田 おっしゃる通りで、しかも今我々が普段使っているLLMはものすごい高性能で、車でいうとF1のマシンみたいなものを、みんな思いっきり踏みまくっているわけですよね。
それは、燃費が悪いに決まっています。
どこかのタイミングでそれぞれもう少し燃費が良い、何かに特化したモデルに分割・細分化されていくとは思いますし、チップの性能も良くなると思いますし、モデルの消費トークンも減ってくると思います。
そうなってくると、そこのマージンについてそこまで今、少なくともこの2026年においては気にしなくていいのかなと思いますね。
爆発的に成長した元「AI面接官」の企業

柴田 どのぐらい早く伸びているのかお見せしたいと思って、まとめてきました。
micro1という会社で、投資した時は、エンジニアの1次面接をするAI面接官を提供していて、その後ピボットしました。
今は、LLMやヒューマノイドなどを作っている基盤モデルの会社に学習データを作って売るというデータ販売のビジネスをしていて、Scale AIと同じビジネスです。
めちゃくちゃ伸びているのですが、彼らがなぜピボットをしたかというと、彼らのAI面接官を使って、2週間で300人ほど採用しようとした顧客がいたらしいのです。
なぜそんな採用をするのか、社長だったら気になりますよね。
それで、社長がその顧客に話を聞きに行ったら、顧客は自社サービスを作るために300人のエンジニアを採用していたわけではなく、彼らを使ってコーディングの学習データを生成して、それを販売するために採用していたのです。
それなら、micro1もそのビジネスをやったらいいじゃないかということで、ピボットして始めたわけです。
この会社は本当にすごくて、2025年1月でARR7ミリオンドルだったのですが、年末が終わると100ミリオンドルを超えていて、この間は200ミリオンドルを超えたと言っていました。
1年ですからね、1年で7ミリオンドルだったARRが200ミリオンドルになるのです。
micro1はAI面接官をやっていた頃からずっと黒字の会社で、資金調達の必要もないのですが、去年の半ばぐらいに1つラウンドをやって、年末に数ビリオンドルのタームシートが出たとか言っていました。
多分これから少なくてもあと1回は資金調達をすると思いますが、とにかくAIで一回うまくいき出すと、こんな感じでビュンと伸びるということで、私個人の投資成績としては、投資してから評価額が数倍になっています。
この後もう1回ラウンドをやってくれると、また何十倍かになるのかなということで、私は非常にハッピーですが(笑)、このぐらい本当にとんでもなく伸びる会社があります。
後半のセッションでは、ぜひいかに早くグロースをもう1回取り戻すかという議論を、皆さんとできればなと思っています。
大島 ありがとうございます。
(続)
▶カタパルトの結果速報、ICCサミットの最新情報は公式Xをぜひご覧ください!
▶新着記事を公式LINEでお知らせしています。友だち申請はこちらから!
▶ICCの動画コンテンツも充実! YouTubeチャンネルの登録はこちらから!
編集チーム:小林 雅/小林 弘美/浅郷 浩子/戸田 秀成


