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FiNC溝口氏の人生を変えた出来事 – 20代前半に実施したスポーツジムのリストラ【SP-LF2 #2】

ICC TOKYO 2016

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これまでに配信した、生き方に関する議論を総特集いたします。今回は、ICCカンファレンス STARTUP 2016 から、特別インタビュー「20代にチャレンジすることで人生は大きく変わる!」を3回に再編集してお届けします。3回シリーズその(2)は、FiNC溝口さんに人生を変えた出来事についてお話し頂きました。大変熱いお話しでした。是非御覧ください。

ICCカンファレンスは新産業のトップリーダー160名以上が登壇する日本最大級の招待制カンファレンスです。次回 ICCカンファレンス KYOTO 2017は2017年9月5〜7日 京都市での開催を予定しております。参加者の募集を開始しました。

登壇者情報
2016年2月17日開催
ICCカンファレンス STARTUP 2016 
特別インタビュー「人生を変えた出来事」
 
(語り手)
玉川 憲
株式会社ソラコム
代表取締役社長
 
溝口 勇児
株式会社FiNC
代表取締役社長CEO 
 
(聞き手)
渡辺 裕介

その1はこちら:ソラコム玉川氏の人生を変えた出来事 – 海外留学で感じた「井の中の蛙」【SP-LF2 #1】


司会 溝口さんにも人生を変えたきっかけをお伺いしたいと思います。

溝口勇児氏(以下、溝口) ファーストキャリアが、スポーツジムやフィットネスクラブのコンサルティングを行う会社でした。その会社が地方の都市に大きなフィットネスクラブを建てたんですよね。僕は23歳のときに、そこのマネージャー、支配人になったんです。

溝口 勇児
株式会社FiNC
代表取締役社長CEO
 
1984年生まれ。高校在学中からトレーナーとして活動。今日までプロ野球選手やプロバスケットボール選手、芸能人等、延べ数百人を超えるトップスリート及び著名人のカラダ作りに携わる。トレーナーとしてのみならず、業界最年少コンサルタントとして、数多の新規事業の立ち上げに携わりまた数々の業績不振企業の再建を担う。再建を託された企業に関しては、その全てを過去最高業績へと導く。2012年4月にFiNCを創業。一般社団法人アンチエイジング学会理事、日経ビジネス「若手社長が選ぶベスト社長」に選出、「ニッポンの明日を創る30人」に選出。

20代前半でのジム閉店とリストラ

溝口 スポーツジムの支配人というのは、中小企業の経営に非常に近いんですよね。僕の場合だと、場所も離れているので、予算作りなどからの収益責任まですべてを負っていました。

結局どうなったかというと、一年半後くらいにお店が潰れてしまったんですよね、業績不振で閉めざるを得なくなってしまったんです。当初計画も全然達成できずに、3千人くらいのお客様を集めないといけないところ、結局1,500人くらいまでしかいかなかったんです。

どういう結末になったかといえば、全てのお客様にやめて頂くことでした。僕が採用してきた仲間たちが、常勤のメンバーでも、2,30人くらいいましたし、契約ベースで言えば、さらに3、40人くらいいるんですけど、その人たちみんなにやめてもらうような決断をせざるを得なくてですね。

スポーツクラブとか、フィットネスクラブは地域のインフラみたいな側面があるんです。特にお年寄りの方ですと、「それだけが生きがい」みたいな。よく病院にみんなお年寄りに行くのは、そこにコミュニティがあるから、友だちに会いに行くために病院に行くってことがありますよね。それよりももう少し建設的なあり方が、フィットネスクラブです。

汗をかきにいくと同時に、友だちに会いに行くみたいな。ですから、毎日来られるような方がたくさんいらしたんですよ。僕がその居場所を奪ってしまったんですよね。そのときは、本当に肩をつかんで泣かれました。従業員に、「ここは存続できない、辞めてもらわないといけない」という話をした時の、皆の表情が絶望に変わっていく様が今でも忘れられません。

僕が本社から来ている唯一の人間だったので、僕以外は、基本みんな辞めていただかないといけないという状況だったんですよね。そのときに、自分の力不足ゆえに、多くの方の大切な居場所を奪ってしまったという罪悪感が非常に大きくて。

「しっぽ」を守った結果「トカゲ」を守れなかった

20代前半のスポーツジム経営の経験がリーダーとしての考え方を変えた

この話には前置きがあるんです。僕はそこで経営者としての価値観というか、リーダーとしての考え方が完全に変わったんですよね。実はそのスポーツジムが開業した時に7、800人くらいしか客が集まらなくて当時の経営者から、「社員を半分切れ」と言われたんですよ。

スポーツジムを建てる際に、半年前から、長いものだと1年くらい前から一生懸命準備をして、それこそ泥水を一緒に飲んで、頑張ってきた仲間なんですよね。仲間を半分切るというのは、僕は出来なかったんですよ。

それで僕は、「半分切るならストライキする」ということを言ったんです。僕は影響力があったので、僕が「ストライキしよう」と言ったら、社員みんな来ないですから。そうすると会社は困るので、結局は、僕の意見をそのまま押し切ったんですよね。

それで、誰ひとり辞めさせることなく、経営をしていたんです。でも、最後に経営者が何で撤退を意思決定したかといえば、まさに高コスト体質から抜け出せないし、このまま成長するにしても損益分岐点を超えるのに時間がかかるからだった。

つまり、結果として僕の問題がかなりあったんですよ。そこで気が付いたのは、僕が未熟な道徳を押し通した結果、会社をダメにしちゃったんですよね。

つまり、トカゲでいえば、「しっぽ」を守りにいった結果、頭を犠牲にして、実際にはとかげそのものが死んじゃった。僕はそのときに「力がなければ、自分の道徳とか正義を押し通せない」ということをすごく痛感しました。リーダーのそうした表層の正義みたいなことで、会社をダメにしちゃうんだなだということに気が付きました。

僕はそこから超リアリスト、理想を掲げながらも、現実主義者になりました。そこからの、僕に対しての社内の印象は、どうだろうな、結構、非情と思われる側面もあると思いますね。自分の経営スタイルを、その出来事が決定づけたというところがあります。

判断基準や価値観を合わせていく

玉川 冷徹であればあるほど、周りの従業員にも影響を与えるじゃないですか。そのコントロールってどうするんですか。

溝口 前の会社で、地方支店のマネージャー後に本体の経営も実はしていたんですけど、社内の人間関係は当時はほとんどうまくいかなかったですね。会社の業績をものすごく上げて、倒産しそうな会社を再生は出来たんですが、こと社員との関係というのはあんまり良くなくて。もう恐怖政治だったんですよね。だけど、今は実は会社の空気は悪くないです。


(ICCカンファレンス FUKUOKA 2017 登壇時の写真)

ただ今も非情と思われることもありながら、うまくバランスをとれているのは、周りのマネジメントのおかげです。僕が(FiNCの)代表をやってますが、FiNCには他にも副社長が2人いるので、彼らが僕の感情や、意思決定の根っこにあるものを代弁してくれるんです。

僕が当事者なので、僕がいかに社員に対して、僕の根っこではこういうこと考えているというのを伝えても、それって伝わりづらいんですよね。

それを周りの人たちがフォローしてくれている、という環境がうちにはあるので、すごくバランスをとれている。うちの強みのひとつだな、と思いますね。

玉川 大きな意思決定を社長がしていても、周りがその余波を吸収するようにうまくやっているんですね。

溝口 組織の問題というのは、大体は判断基準のすれ違いですよね。例えばですけど、「60度」という言葉があったときに、「温度」と思う人と「角度」と思う人もいます。結局は、こっち側の正義と、あっち側の正義の違い。

つまり、判断基準が違って、意思決定が異なることによって、それが不満を持つ原因になって、組織がギクシャクしていくんだと思うんですよ。

そこの判断基準をうまく合わせていくということを僕らはとても大切にしています。それを僕自らじゃなくて、制度や仕組みやルールの力を借りたり、また自分と想いを同じくするマネジメントチームを作ることで、判断基準の相違が起きないようにしています。

ビジョンやバリューがなぜ必要かというと、一番はメンバーの判断基準を合わせていくことにあると僕は思っています。そこが優れている組織は手の平みたいな組織です。

ベースとなる価値観や考え方は同じだけど、それぞれ、その先に指が長いものもあれば、太いものものある。そこで多様性を実現している。手の平の部分をうまく共有しながら、指の部分の多様性を実現していくことをとても意識して制度など作っています。それが結果としては、うまく機能していると思います。

司会 先ほどおっしゃっていただいた溝口さんのきっかけというのは、本当にやらざるを得ないような環境に自分が追い込まれたからこそうまれたきっかけだと思います。

まだ自分が何をしたいのかも分かっていない人もいれば、そういう必然的に動かないといけない環境にいる人はすごく少ないと思うんですね。そういう人たちが、何かきっかけを見つけるために、どういうことをしていくべきなのでしょうか?

溝口 何か目の前のことに没頭していれば、その道のプロにはなります。僕の場合は、最初のキャリアのスタートはスポーツジムのトレーナーでしたけど、一生懸命に没頭して、目の前のお客様の笑顔をつくりたいとか、悩みを解決してあげたい、というのを一生懸命やっていたら、その道にプロになるんです。

若き日はスポーツジムのトレーナーとしての道を極めた

その道のプロになれば、その道における色々な問題とか、課題が見えてくるんですよね。そうすると、そういう問題とか、課題を解決したいと思えてくる訳ですよ。

僕の場合は、この世界での話をしますけど、平均11年間の日常生活に制限がある「不健康期間」であるとか、コンプレックスを抱えながら生きる期間とか、腰痛、膝痛、頭痛といった不定愁訴(編集注:何となく体調が悪いという自覚症状を訴えるが、検査をしても原因となる病気が見つからない状態)に悩みながら日々生きている人がたくさんいて、これを少しでも解きほぐしてあげたい、解き放ってあげたい、と思っているんですよね。

司会 最初は、そういうところまで見えているわけではなくて、トレーナーとして極めたい、という思いから、今出来ることを突き進んだ結果、見えてきたっていうことでしょうか。

溝口 結局は、「今いるところに立ちすくんでいても、何もやりたいことは見えてこない」と思えてならなくて。だけど、学生の人は、やりたいことがないことに対して、ものすごく悩んでいますよね。それで結局は、行動を起こさない。

僕は、ちょっとの興味とか、「この人と働きたいな」ということでもいいです。何のきっかけでもいいんですけど、頑張れそうだな、と思うことをとにかく一生懸命やれば、やりたいことはあとから全部見えてくる、と思っています。

(続)

編集チーム:小林 雅/榎戸 貴史/戸田 秀成/城山 ゆかり

続きは 「いかに信頼されるかを考えて日々を生きる」FiNC溝口氏が起業を志す学生に伝えたいこと をご覧ください。

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【編集部コメント】

続編(その3)では、ソラコム玉川さんとFiNC溝口さんに、起業を志す学生や若手社会人に向けた、「大事にしてほしいこと」のメッセージを頂きました。是非ご期待ください。他にも多く記事がございますので、TOPページからぜひご覧ください。

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