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スマホゲームセカンダリ市場No.1企業マイネット上原 氏の「起業理念」

ビジネス・ブレイクスルー大学大学院の「アントレプレナーコース」が2016年4月に開講しました。ICCパートナーズ小林雅が担当した「スタートアップ企業のビジネスプラン研究」全12回の映像講義について、許諾を頂きまして書き起し及び編集を行った内容を掲載致します。今回の講義は、ゲストスピーカーとして株式会社マイネット 代表取締役社長 上原 仁 氏にお話し頂きました。60分の講義を2回に分けてお届けします。

(その1)は 起業に至るまでの上原さんのキャリアと起業時の理念、そして現在のマイネットの事業戦略について語って頂きました。是非ご覧ください。


【登壇者情報】
2016年1月29日収録
ブレイクスルー大学大学院「アントレプレナーコース」
スタートアップ企業のビジネスプラン研究
「マイネット」

(講師)
小林 雅
ICCパートナーズ株式会社 代表取締役
ビジネス・ブレークスルー大学大学院 教授 

(ゲストスピーカー)
上原 仁
株式会社マイネット 代表取締役社長

(アシスタント)
小泉 陽以

小泉陽以氏(以下、小泉氏) ビジネス・ブレークスルー大学大学院アントレプレナーコース、スタートアップ企業のビジネスプランの時間です。

この講座のアシスタントを務めます小泉陽以です、よろしくお願いいたします。

それでは講師をご紹介いたします。ビジネス・ブレークスルー大学大学院教授、小林雅さんです。小林さん、よろしくお願いいたします。

今回はどんな内容になりますでしょうか。

小林雅氏(以下、小林氏)今回は、マイネットの上原さんにお越しいただいています。

マイネットは、もともと「マイネット・ジャパン」という社名でジャパンがついていたのですが、色んな事業の変遷を経て、最近では2015年の年末に上場されるということです。

今回は「紆余曲折」をテーマに、ベンチャーの世界ではよくピボットといいますが、ピボットの考え方や組織をどうしていくのか、というところを中心にお話を伺っていこうと思います。

小泉氏 それでは改めましてゲストをご紹介いたします。

株式会社マイネット 代表取締役社長の上原仁さんです、上原さんよろしくお願いします。

まず上原さんのプロフィールを紹介いたします。

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上原さんは1974年生まれ、神戸大学経営学部を卒業されました。

そして1998年にNTTに入社され、同社のインターネット事業開発に従事されました。

大学を卒業されてその後NTTに就職されていますが、この頃から起業は考えていらしたんですか。

上原仁氏(以下、上原氏) 起業自体は小学校5年生ぐらい、10歳、11歳ぐらいの時からしたいと思っていました。

小泉氏 そのきっかけは何だったんですか。

上原氏 これは今も変わらないんですが、松下幸之助さんに憧れていて、小学校5年生の時に小学館の少年マンガに松下幸之助さんの伝記が出ていました。

その頃は将来のことを悩んでいる時期だったのですが、松下幸之助さんの伝記を読んで、そこにあった「松下電気は家電を作っているのではありません。松下電気は人を作っております」という言葉が、11歳の私にビビビと刺さりました。

こんなに立派で、こんなにかっこいい経営者になりたいと思ったのが最初で、それからはずっとその道だけを考えてやってきました。

大学で経営学部を選んだのも、完全に松下幸之助さんのような起業家、経営者になろうと思ってのことです。

小林氏 僕も小学生の頃社長になりたいと言っていたんですが、これは「かっこいい職業、社長」ぐらいのレベルで 志が全く無かったので、素晴らしいと思います。

小泉氏 その時から考えて動いていらっしゃったんですね。

ご両親が何か経営されていたとか、そういうことではないんですか。

上原氏 両親が事業をやっているわけではありませんでした。

小学校5年生のそれがきっかけで自分でビジネスをやりたいと思い、ビジネスやるなら経営を勉強するべきだろうということで経営学部に行くべきたと。

経営学部は国公立だと神戸大学と横浜国立大学しかなく、私は関西人なので神戸大学の経営学部に行くと小学校5年生の時点で決めて、そのために高校は滋賀県の膳所高校に行かないと、そして膳所高校に入るには中学で10番以内にいないと、そしてそのためには何点取らないと、とそういう逆算思考で進めてきたところがあります。

ICCカンファレンス KYOTO 2016に登壇するマイネット上原 氏

ICCカンファレンス KYOTO 2016に登壇するマイネット上原 氏

小林氏 素晴らしいですね、うちの娘にも言いたいです。

小泉氏 うちの息子にも。

それではNTTに入ったのは、まずは大企業で経験を積もうと思われたのでしょうか。

上原氏 まさしくその通りで、経営を学んでいくなかで、戦略と組織というものがあります。

戦略は誰もが興味を持ちますし、自分自身も学んでいったりしたのですが、実際に知らないと身につかないのが組織だと思いました。

当時1995年頃のNTTというと日本一の大組織であり、組織というものについて学ぶにはまずここだと考えたのと、もう1つは自分自身の子どもの時からの夢で、「どこでもドア」を作りたいというのがありました。

会いたい時に会いたい人に会える、というのは未だにマイネットの「起業理念」でもあるんですが、どこでもドアに一番近いものは何かと考えた時に、96年当時は光ファイバーが全世帯に張り巡らされて、低額で貸し出されるという構想が発表されました。

その時期それを発表したNTTが「どこでもドア」に一番近いと思い、経営・組織を学ぶこと、そして「どこでもドア」の実現に一番近いことを両立する場としてNTTを選びました。

小泉氏 2006年7月、株式会社マイネット・ジャパン、現在のマイネットを創業され、同社代表に就任されました。

NTTを退社されてすぐに起業されたんですか。

上原氏 そうですね。

NTTにいる間、特にインターネット事業の仕事をしていました。

名だたる先輩であるmixiの笠原さんやGREEの田中さんとか、そのような方々と接点を持ちながら協議をしたり、といったことをNTT側でやっていました。

その途上で、同世代の人たちが実際に起業して大活躍しているので、自分ももうそろそろこちら側にいかないとという思いで、NTTを抜ける1年半前ぐらいから準備をし始め、2006年7月、31歳で起業しました。

小林氏 31歳の選択肢として、例えばNTTからすぐに起業するわけではなくて、他のベンチャーの経営幹部として入って2、3年やってから起業する、という選択肢もあると思うんですが、それは考えましたか。

上原氏 ほぼ考えなかったですね、そんな暇はないという感覚でした。

20代のうちにできれば起業したいという想いを持っていたのですが、NTTのなかで学ぶことがまだあり、またインターネット事業開発をNTTのお金をしっかり使ってやれるというところの面白さに惹かれて結局30歳を超えてしまったんですが、30歳を超えてまだもう1ステップというのは、私の場合は考えませんでした。

小泉氏 自社のモバイルCRM事業を国内3万店舗まで育成した後にヤフーへ事業売却しスマホゲーム事業に注力。

現在はゲームタイトル買収・再生のリーディングカンパニーとしてスマホゲームのセカンダリ市場をリードされていらっしゃいます。

この辺りのお話は後ほどゆっくりお伺いします。

2015年12月21日、東証マザーズに上場されていらっしゃいます、おめでとうございます。

プロフィールの資料ですが、一番上に「起業理念はどこでもドアの実現」とありますが、起業の「起」は「企」ではないんですね。

上原氏 そうですね。起業、起こす時に定めた理念としての「どこでもドア」の実現。

これは変わらぬものとしてありはするんですが、現在の一般的な「企業」としての企業理念は「会いたい時に会いたい人に会える社会」です。「どこでもドア」が意味するものがそちらの意味なので、企業理念にしています。

起業理念に「どこでもドア」を残しているのは、ずっと持つ想いとしてあるというのと、「どこでもドア」というのは藤子不二雄先生の著作物なので、今ゲームのセカンダリ市場において、買収・再生等で著作物を扱うビジネスをする者として、これを企業理念として掲げ続けるのはイカンなということで、一段別の、象徴天皇の「象徴」みたいな存在感に「どこでもドアの実現」を置きました。

小林氏 「どこでもドア」はいつから思ってたんですか。

上原氏 10歳の頃です。

松下幸之助に憧れるよりも先にドラえもんが大好きで、ドラえもんの中でも「どこでもドア」が大好きでした。

「どこでもドア」があればいつでも自分の会いたい人、お父さんお母さんや友達に会いにいけるのに、なかなかそれが実現できないじゃないですか。

そして1人で悶々と時間を過ごすようになる、そういう時間を突破してくれるのが「どこでもドア」だと思っていて、自分の中での「どこでもドア」というのは、会いたい人に会いに行ける道具です。

その頃からずっとそれを思い続けて、今も会社の企業理念に「会いたい時に会いたい人に会える社会」というのを置いているのですが、人にとって一番大事なものはやはり人だと思います。

その人と人が会うというところに生まれる価値は、何にも代えがたいものだと思うんです。

そこに生まれる共感や愛情、時には刺激や共鳴、そういったものが人が生きてる上で一番大切なものなんだ、というのが自分たちの根っこにある考えです。

人と人が会う、繋がるということを実現できるサービスや事業を世の中に沢山生み出していきたいという思いがあって、「どこでもドア」であり、会いたい時に会いたい人に会える社会というのを起(企)業理念にしています。

小泉氏 上原さん、アルファブロガーという著書もおありになるんですよね。

小林氏 懐かしいですね、いつの書籍ですか。

上原氏 2005年です。

自分自身起業して幾年かの間は、かなり頻繁に更新するブロガーでした。

小林氏 上原さんとはブロガー繋がりでした。

私も元々ブロガーでした、最近真面目に書いてますけど。

上原氏 起業する前ですが、 ブロガーとして沢山の人と接点を持たせていただくようになる中で、当時アルファブロガーと呼ばれた梅田望夫さんとか山本一郎さん、そういった当時多くの人に影響を与えていたブロガーの方々を取材して1つの本にしようという企画があって、それを実行しました。

小林氏 ブログをやっている人は注目を集めるので、起業している人が結構いますよね。

ブログを書いて注目を集めると、「面白いからやろうよ」といった感じで声がかかることもあります。ライフネットの岩瀬さんは元々ハーバード・ビジネス・スクールに留学している日記を書いていたら、(あすかアセットの谷家さんから)声がかかって起業しました。

NTTという大企業にいる中で、個人の名前はなかなか目立たないけれど、ブログを書いていることによって旗が立って仲間が集まり、起業に至ったのではないかと思います。

小泉氏 続きまして、会社の概要を私から簡単にご紹介します。

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株式会社マイネットの資本金は11億8,830万円、そして設立が2006年7月、従業員数が300名。

事業領域はスマートフォンゲーム事業、所在地は東京都港区になっております。

そして役員について少しお話をお願いします。

上原氏 現在、取締役は4名で、4名中常勤の取締約は2名で、私と嶺井という者がやっております。

嶺井はモルガン・スタンレー出身で今31歳、私とは10年違いですが、彼が3年前にジョインしてくれて、財務の部分とその他様々な部分を担ってくれています。

【参考資料】
副社長の嶺井さんはICCカンファレンス 特別対談「No.2の役割とは何か?」に登場しています。併せてご覧ください。

Mr. Minei Masato

嶺井 政人
株式会社マイネット取締役 副社長

1984年生まれ。早稲田大学在学中に学生向け求人サイトを立ち上げ、株式会社HPTへ売却。法人向けCMS事業の「もっとネクスト株式会社」を創業し軌道に乗せた後、東証マザーズ上場の比較.comへ売却する。2009年4月モルガン・スタンレー証券に入社し、投資銀行業務、クレジットリスク管理業務に従事しテクノロジー業界の資金調達や格付業務を担当する。2013年3月マイネットに転進し、執行役員CFO戦略室長に就任。2014年11月取締役CFOを経て、2016年3月取締役副社長に就任。

私が起業する前、今から10年強前に、私はブロガーとして活動したり、多くのカンファレンスを運営していましたが、彼とはその場で知り合いました。

彼は学生起業家でしたので、10歳年は違いますが起業家と起業を目指す者同士でよく飲み会をしていました。

その後、彼は自分の事業を売却してモルガン・スタンレーに就職し、金融についての勉強をしていました。

私は起業して7年ぐらいたったタイミングで、現在のスマホゲームの事業に突入していく時に、嶺井に「一緒にやって欲しい」と頼みました。

小林氏 CFOの勉強会みたいな時にいましたよね。

僕も嶺井さんが「これからマイネットに入るんです」という感じの時にお会いしました。

小泉氏 この構成をご覧になってどうですか。

小林氏 構成は分かりやすく、多分昔からのお知り合いだと思いますが、保田さんという方と、事業的な関係があるセガの岩城さんという方の2人が社外取締役に入っています。非常にバランスが取れていると思います。

意外に常勤の人が少ないですね、普通3-5人ぐらい常勤の取締役がいて、CFOというよりは事業寄りのNo2のような人が取締役に入っているケースが多いのですが、どちらかというと裏方の人がNo2というふうになっているのが特長だと思います。

上原氏 COO的な役回りをしてくれる人が4人いて、その4人が執行役員をやってくれています。

小泉氏 続きまして経営ビジョン、人と人を結びつける「オンラインサービスの100年企業」ということです。

上原氏 人と人を結びつけるというのは、先程の「どこでもドア」をそのまま意味しています。

創業する時に1つ決めたのは、100年成長し続ける企業を作るということでした。

100年成長し続ける会社を作ろうとした時にどういうフィールドを選ぶべきかというと、100年伸び続けるような市場を選ぶべきだという考えがありました。

自分自身がキャリアを進めて行く中で自ずとインターネットに出会い、心酔していくなかで、インターネット、言い換えると「社会のオンライン化」というのはこれから先100年間、不可逆的に進んでいく、ということを確信できたんです。

故にオンラインサービスの進化の先端で人と人を結びつける事業をやり続けると、そうやって100年間成長し続ける会社にするんだ、というのが自分たちの根っこにある想いです。

小林氏 松下幸之助的ですね。

上原氏 やはり憧れですので、色々影響を受けていると思います。

小林氏 コメントをすると、考え方等の軸がぶれていないですよね。

子どもの頃からというストーリーが一貫しているし、今やっていること、努力していることも一貫しているので、それが人を惹きつけ、支援の獲得に繋がっていると思います。

小泉氏 下が、創業の時からの変遷ですね。

上原氏 今 小林さんに一貫していると言っていただいた矢先ですが、実は事業の中身自体は3回ころっと変えました。

2006年の創業の時点では、国内初めてのソーシャルニュースサイトを始めました。

今でいうところのニュースキュレーションサービスの国内最初版をPCのインターネットで行いました。

後にCRMの事業、モバイルの、ガラケーベースで飲食店の集客をお手伝いするようなサービスをやっていました。

その事業を事業譲渡して、スマホゲームの事業、特にスマホゲームの新作を作ってグローバルに配信していくという事業をやりました。

今一度事業転換をして、既に出ているゲームを買収して再生していく、再生した後の運営によって収益をあげていく、というセカンダリ事業に転換して今現在に至っています。

現在の事業構造自体は、「ゲーム業界の星野リゾートです」という表現をよくしています。

小泉氏 では現在の事業内容を伺ってまいります。

上原氏 先程申し上げた買収・再生というのを軸にした事業、これを当社ではリビルド事業と呼んでいます。

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再設計、再構築ということです。

現在、買収するものと、協業型といってレベニューシェアで運営するものがあります。

自社のゲーム事業もありますが、3年ほど前に作った当社のゲームを着々と運営し続けているもので、メインはリビルドの事業です。

このリビルド事業の構造を簡単に説明しますと、多くのゲーム事業者さんが、ゲームを作って最初の半年から1年の間はとにかくてんこ盛りで運営するんです。

ユーザーさんが欲しいとおっしゃる機能をつけて、イベントなどの施策もたくさん行って、という感じでてんこ盛り盛りにしてゲームを成長させます。

これはこれで初動としては素晴らしいことですが、ゲームはある程度のところで飽きがきます。

少し飽き始めると、てんこ盛りになっているゲームを運営するための人員やサーバーのコストが重くなってきます。

そうなってくると我々の出番で、ちょっとコスト負担が大きくなったかなというタイトルを当社が買収させていただきます。

買収したタイトルを当社独自のデータ分析によって、てんこ盛りになっているものの中から本当に必要なものとそうでないものをきちんと分けます。

取捨選択をして不要な部分をしっかりと排除して、排除というと申し訳ないんですが、実際にユーザーさんがほとんど使っていないものがそのまま更新し続けられていたりするので、そういうものを綺麗に整理をして、逆にユーザーさんが一番楽しんでいる部分にリソースを投下します。

それによって磨き上げると、結果的に売上はほとんど落ちないけれどもコストは圧縮できて、大変収益性の高い状態になります。

収益性が高くなったところに、当社が持っている集客プラットフォームでCroProというものがありまして、これを使って収益性が高くなったゲームタイトルにお客様を流し込んでいきます。

そうすることで再生したゲームタイトルを長くユーザーさんに楽しみ続けていただけます。

そういうサービス構造を持った事業がリビルト事業になります。

小林氏 まさに星野リゾートですよね。

皆さんもゲームをして楽しみたいとか、旅館に行って泊まりたいと思っているけど、赤字だったら続きませんよね。

それを1回圧縮して利益がでる構造にすることで、ユーザーさんからすると好きなゲームがずっと続くわけですから、お互いハッピーですよね。

上原氏 おっしゃるとおりで、今のスマホゲームは多くがソーシャルで人との繋がりがあるゲームですよね。

ソーシャルゲームはユーザーさん個々人からしてみると、大事な居場所なんです。

無くてはならない居場所で、毎日そこにいくといつもの仲間が待っていて、仲間と一緒にワクワクする時間を過ごす、という大切な場所なのに、そんな居場所がある日突然無くなってしまうのってすごく切ないことなんです。

ある意味ではある日突然学校が無くなる、会社が無くなるというのに近いものだと思います。

そういうふうにならないように、ユーザーさんに自分の大切な居場所を長く育み続けていただけるようにするというのがこの事業のユーザーさんに向けた本質的なバリューだと思っています。

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ICCカンファレンス KYOTO 2016に登壇するマイネット上原 氏

小泉氏 2012年に参入したばかりの時は、自社ゲームの事業もやられていたんですよね。

上原氏 はい、2012年、2013年の2年間については、自社で新作を3タイトル開発し、韓国でパブリッシュし、シンガポールに進出し、という感じで、特にAndroid(アンドロイド)のGoogle Play(グーグルプレイ)の出だしの時期だったということもあり、Androidに完全特化して3タイトルをぐっと伸ばしていきました。

3つとも売上ランキングの50位ぐらいには入ったりしたんですが、ただ、3本出して展開し終えたところで、ふと立ち返って周りを見てみると、セガさんとかスクエニさん、バンナムさんとか相当強い、資本規模で言ったら我々のゼロ2つ大きい事業者さんが集中投下を始めてらっしゃる段階でした。

このままの状態で走り続けるのはいかんな、自分たちならではの領域を切り拓くべきではないか、ということをよくよく考えていった時に、自分たちが一番得意なもの、ゲーム強者の方々には無くて自分たちが持っているのが「運営」なんです。

もっと端的に、一言でいうと、PDCAでサービス運営し続けること。

これについては創業してニュースサービス事業を行っていた頃からずっとオンラインサービスを提供し続けて、ずっと組織に根付いた能力、考え方、文化だったんです。

ここを活かして事業を展開したらいいのではないかと考え、まず最初にセガさんと組み、セガさんにご出資いただきながら、彼らのゲームタイトルを当社が預かって運営するというのをやりました。

これを行ったところ、そのタイトルの重要指標(KPI)においては、セガさんが運営していた時よりも、マイネットに移してからの方がKPIが高いという状態を作れました。

これはやっぱり自信になりまして、世界のセガよりも運営だったら我々は勝てるんだ、というふうに思えたので、ここにもっと特化してみようということで他のタイトルを別の会社から預かったり引き取って運営をやり、というふうにやっていったら、1つ1つ上手くいったんです。

そしてこれをどんどん仕組み化していき、ある時、イグニスさんという会社と元々ゲームタイトルの移管を予定していましたが、彼らからできたら買い取って欲しい、というお話が出たんです。

当社は幸いファイナンススキルがある人間がいましたので、しっかりとした査定・評価を行って買い取りして運営していくと、当然ながら当社の利益幅も大きかったのです。

当社としては、取ったリスク分以上のリターンが得られるものであるということを検証できたので、これはいい、これに更に突っ込んでいこうと決め、2015年の頭に7億円の資金調達をして、その資金をもって更なるゲームタイトルの買収を重ねていき、現在19タイトルを運営しています。

小林氏 まさに星野リゾートですよ。

自分たちの事業そのものがピボットしているので、全体が再生し、バイタリティが溢れる、という感じがしますよね、

上原氏 そうなんですよね、本来いいもので、最初ほど華々しさは無くなっても、ユーザーさんがついていてユーザーさんにとって大事なものってすごく多くあるわけです。

きちっと利益がでる状態にすることに対して、きちんとデータに基いてPDCAを回して成果を出していく。ユーザーさんにもバリューがあり、しっかりと売上・利益がでるものをバランスして作っていくというのはできることだと思いますし、自分たちが得意なことだなと気付き、それに注力できたことが今の成長を作っていると思います。

小泉氏 続いては中期ビジョンにいきましょう。

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上原氏 中期といいますか、本当にこの1年、2年で実現していくことは、スマートフォンのセカンダリ市場の圧倒的No.1 になることです。

現在(2015年)、スマートフォンゲームセカンダリ市場は200億円ほどの市場になっています。

ここからもう2年で1,000億円のマーケットになろうとしています、2年で5倍です。

この2年で5倍という急成長を示す領域において、現在シェア30%ほどのトップ企業になっていますが、更にアクセルをベタ踏みにして、2年で5倍に成長していくマーケットの圧倒的なNo.1になっていくことに本当に注力してやっていこう、というのが現在の動き方です。

小林氏 力強いですね。

小泉氏 そうですね。

このセカンダリ市場というのも、マイネットが創りだしたという感じになるわけですよね。

上原氏 そうですね、というとおこがましいところもありますが、ゲームのセカンダリ市場という言葉を最初に発しさせていただいたのは多分我々だと思います。

それがマーケットになったので、皆さんが注目するようになっていった、というところがあると思います。

丁度セガさんとのお取り組みを始めたのが2014年の最初でしたので、丁度グラフの起こりのタイミングのところが当社が動き始めたタイミングと合致しています。

小林氏 「セカンダリ」という名前自体は、ファンド業界でも、例えばファンドの満期になったものを丸ごと買い取ったりするセカンダリ専門ファンドがあるんです。

つまり安く叩いて買う、という手法がそもそもあるんですが、ファンドは投資として不動産など資産全般に適用しているのですね。それを上手く使って、ゲームも資産ですから、スマホのゲームタイトルを買い取るセカンダリという表現をしているということですね。

上原氏 そうですね、不動産やリゾートではセカンダリ領域は一般的な事業構造です。

ただ、ゲーム業界はこれまでパッケージ中心で、新作主義で作られてきた産業でしたが、実際のところこのマーケットは、この5年間ぐらいでパッケージ市場から運営サービス市場にどんどん中身が転換していっています。

運営サービスとしてのゲームを定義した時に、やはり不動産やリゾートと大変類似した産業構造になっているわけです。
その産業構造に照らして考えてみると、スマホゲームの領域においても同様のビジネスモデルが成立するはずだと考え、組み立てていけたというところがあります。

小林氏 これはやはり新築の家が建ったら中古の市場が大きくなる、車だと中国であれば新車が売れていると、5年後10年後には中古の市場が大きくなるというのは誰が見ても分かるわけですね。

中古車の整備等のインフラが整っていくので、そういうったところをめがけて投資をする人がいるわけです。

そのようなアナロジーで、こういうセカンダリ領域をやるという事業に目をつけてそれに特化するというのは、本当に星野リゾートだなと思います。

星野リゾートは先駆けじゃないですか。

旅館ってやばいよねというけれど、運営の達人としてやばいところをしっかりやって、今は新しく作っていくものと、ファイナンス的な、例えばファンドを作ってやったりと、新しい取り組みをしていますが、そういったことがどんどん進んで行くんじゃないかなと思います。

新しい市場を作るというのはベンチャー企業においても非常に重要ですね。

新しい産業を作り続けていくということは、業界でリーディングカンパニーになっていく、自分たちが定義した市場の中でリーディングカンパニーになっていくというのは、競争力を維持する上で重要になってくるので、ここは非常に特化して力強いメッセージがあっていいなと思いました。

小泉氏 続きまして、事業の概況をお願いします。

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上原氏 先程、ぐんぐんと伸び上がっている市場のグラフをご覧頂きましたが、市場の成長をそのまま受け取って当社の業績も急拡大しております。

9ヶ月で売上が2.7倍となっております。

この成長を特に牽引しているのが、買収型のリビルド、先程申し上げましたゲームタイトルを買収して、再生して運営していく、というものになります。

こちらが昨年の段階では1タイトルだけだったのが、15年の1年間で8タイトルまで増やし、16年に入ってからも早速1タイトルの買収を既に発表させていただいているという状態です。

小泉氏 協業型にするか買収型にするかというのは、毎回取引先と協議していくわけですよね。

上原氏 当社としては、比較的買収型をお勧めします。

もともとのパブリッシャーさんにとっても、大変手離れよくやれますし、彼らからすると利益確定ができるわけです。

そこで利益確定をして入金もあって、しかもそこにあたっていた人と得られるお金を使って、また新たな取り組みができるので、買収型をお勧めしています。

協業型ですと、どうしても相手方もある程度ずっと気にかけ続けなくてはいけないというところがあります。

小泉氏 ゲームは基本的に課金収入でしょうか。

上原氏 課金収入で、アイテム課金です。

ユーザーさんがゲームの世界の中において、より強くなるための武器や、より自分が大事にしているキャラクターを獲得するためのの課金等、そういったところによる課金収入が売上の殆どを占めています。

小林氏 だいたいそれが主流ですね。次いきましょう。

小泉氏 続きまして、事業のピボットの変遷です。

(続)

編集チーム:小林 雅/城山 ゆかり/榎戸 貴史/戸田 秀成

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