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【最終回】注目の地域プロデューサー対談 – 地域を変えるキーマンたちが考える未来【K16-9F #4】

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特別対談「町起こし・産業づくりプロデューサー対談」【K16-9F】のセッションの書き起し記事をいよいよ公開!4回シリーズ(その4)は、海外からの視点や連携について、また最後に振興に努める各地域の未来や意気込みについてお話しいただきました。是非御覧ください。

ICCカンファレンスは新産業のトップリーダー160名以上が登壇する日本最大級のイノベーション・カンファレンスです。次回 ICCカンファレンス KYOTO 2017は2017年9月5〜7日 京都市での開催を予定しております。


登壇者情報
2016年9月6日・7日開催
ICCカンファレンス KYOTO 2016 「ICC SUMMIT」
Session 9F
特別対談「町起こし・産業づくりプロデューサー対談」
 
(出演者)
市来 広一郎
株式会社machimori
代表取締役
 
各務 亮
株式会社電通 京都支社
プロデューサー
 
小松 洋介
特定非営利活動法人アスヘノキボウ
代表理事
 
(聞き手)
井上 真吾
ベイン・アンド・カンパニー・ジャパン
プリンシパル

「町起こし・産業づくりプロデューサー対談」の配信済み記事一覧

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【本編】

各務 全く知らない方が僕のところにコンタクトしてくださったり、京都のGO ONのプロジェクトで働きたい、工房で働きたい、職人になりたいという人が世界中で増えていてます。

世界中のアーティストが結構メールをくださるんです。

プロデューサー枠は「稼ぎ」がまだまだ十分でないので、その全員には応えられず心苦しいのですが、と、職人枠に関しては徐々に増えています。

僕が関わらせていただいている工房に関しては非常に光が見えているし、東京から地域プロデューサー候補も来てくださって、僕の仲間的に色々やってくださっている方がいるので手応えは感じています。

もっと加速させたいという思いもあるので、加速させる知恵があればもっと挑戦していきたいと思います。

質問者 今 海外というお話が出てきましたが、被災地のところでネットワークを作られたり、海外から実際に来られる方が増えてきている中で今後日本の地方がまた盛り上がっていくと思います。

逆に海外も同じように地方が沈んでくるということが今後起き得ると思うのですが、そこに対してこう働きかけていきたい、ということはありますか。

外国人を魅了する「町の哲学」

各務 僕が外国から京都に来た時に感じた感動は、やはり海外の方も感じられるみたいなんですよね。

東京的に、資本が集まって色んなモノ・サービスが充実していて、という豊かさもありますが、京都に来て海外のクリエイターの方をご案内してすると、1,000年以上続いている街の哲学や生き方が素晴らしい、と言うんですよね。

京都の場合、町中に古い町家が残っているというのは、お金よりも生き方、プライドを大事にしている。

つまり全ての町家には色んなマンション事業者さんとかが「おばあちゃん、今の家を売ったら快適な家に住めるよ」と言ってきているんですが、それを断っているんですよね。

快適なところに住むより、町の古くからある景色をしっかり残していくこと、そこに紐づく生活様式を未来に残すことの方が価値があることだ、とみんな信じている。

そこに通底する哲学みたいものに海外の方は一番感動するのです。

その哲学の部分に共感して、その哲学が町の魅力になっていく、という地域再生の考え方は大きなお金が無くてもできることだと考えています。

今はどうしても資本主義が色んな秩序を司って良くも悪くもお金が価値の源泉のように大部分の社会が信じてしまっている。

でも、物質的には、貧困だけど幸せになることということがあり得るんだと僕もインドに行った時にすごく思ったんです。

インドの人達は、家もない、洋服もボロボロ、だけどみんな表情がハッピーそう、日本とは対照的ですよね。。。

世界中の地方が、お金に縛られないオリジナルな尺度を作って、それが各地域の魅力になっていく、そこに独自の産業が生まれる。

ますます地域毎に特色ある生き方が賞賛される。伝統工芸が衰退する、資本のパワーに規模で圧倒されて小さな工房が潰れているというのは京都、日本だけの問題ではなくて、ミラノやフィレンツェ、中国など世界中で起きている現象です。

そんな逆境の中、京都の老舗の人達が世界で結果を出してることは、規模やお金だけでなく、哲学や精神性歴史等に注目する価値観が生まれてきたということだと思います。

お金が悪いわけではないんですが、少しそのバランスが整えられて、世界的に波及していく可能性は十分にあると思います。

変えてはいけない部分はどこか?を問う

市来 熱海の町並みは昭和20年半ばに火事で全部燃えちゃっているんです。

僕等は町を変えるということをやりつつも、町の守らなければいけない部分、変えちゃいけない部分、アイデンティティとなる部分は何なんだろう、というのを意識しています。

熱海の場合は温泉がその1つだと思っています。温泉があるから人がやってくるので、それは変えられないなと思います。

先ほどの質問に関して言うと、僕はインドとかバックパッカーの旅で1回は行ったし、色々な海外を旅したんですが、その時に特にアジアで思ったのは、日本みたいに発展していった先に日本みたいになったら嫌だということでした。

みんな鬱になったりという精神的なことや、町並みも含めて色んな意味で町の変わっちゃいけない部分とかそういう部分が変わっていくのは嫌だなと思っています。

自分の役割は自分のルーツである現場、熱海という場所をちゃんとこれから発展していくであろう町のモデルになるような場にしなければいけないと考えています。

熱海は課題先進地域です。熱海でちゃんとした先の未来を見せないといけないんじゃないかな、ということを思ったんです。

熱海でやってきたことを活かして海外などの他の地域の町づくりを支援していきとと僕は思っています。

小松 僕は世界の色んな危機があった国に行って今ネットワーク作りをやっているんですが、会って話すと国籍は関係ないと感じます。

基本的に他の危機が起こった国も、都市部の方が収入が高いし、生活もいいから人が流れていく、ということはどこでも起こっています。

その中で危機が起こってもう1回自分の地元を見直そう、シビックプライドを見直そうみたいなことがちゃんとどこでも起こっているんですよね。

その場所で根を張ってやっている人同士なので、あまり国がどうとかではなくて、お互いに地域で何をやっているんだっけ、という会話にすぐ入るんですね。

話をするとすぐに「何やってるの、教えてくれ」という話になるわけです。

世界で僕等が繋がっていく過程の中で、お互いの考えとかやり方をシェアすることでもっと面白い取り組みができると思っていています。

僕等が今やっているヘルスケアの事業はアメリカのニューオーリンズが先行してやっているのを色々教えてもらいながら、そして彼に日本に来てもらいながら事業を作っています。

そのように既に国を超えてきています。

お互いにやってることはシェアするし、教えるし、お互い事業を作っていくみたいなことが徐々に生まれてきています。

地方創生というのは日本でやっているという感じになっているのが僕は違和感を感じますし、これからはもうちょっと世界規模に広がっていってもおかしくないです。

特に危機が起こった町はみんな思いを持ってやっているところが沢山ある。そういう広がりは一気に出てくると思います。

そこでもう1回相手を知り、自分を知り、そうすると地域に新しく面白いことが起こっていく。そんなことがこの数年で起きるのではないかなと感じています。

井上 みなさんそれぞれやっている年数は違うと思いますが、年々自分がやりたいことに対して何割ぐらいできているのか、どういうところをやらなければいけないと思っているか、ということに関してお聞かせください。

地域プロデューサーが考える未来

各務 5年経って今、感覚的にはゴールに対して20%ぐらいですかね。

ただ5年間で自分が想定したよりは本当に多くの方の力を借りてできている部分もあるので、あと5年あれば更に自分が想定していたことを超えた面白いことができるような予感もしています。

ただ、これはエンドレスな挑戦なので、目の前のことを全力でやり続けるしかないかなと思っています。

一つ、分かりやすく言うと、オリンピックの時には伝統文化に光が当たることに自分が貢献したい。

例えば、閉会式は京都の伝統文化のチームで僕にプロデュースさせてもらえないかと思います。

東京のポップカルチャーやテクノロジーはすごく素敵ですが、一方で、京都に限らずとも地域の色んな面白いチームが連携してプレゼンテーションできたら日本の魅力が複層的に世界へ発信できると思います。

井上 市来さんは一番長くやってらっしゃいますが、何割ぐらいできていると思いますか。

市来 今は10%ぐらいですね。

やっと最近スタートラインに立てたかな、というところなんですよね。

今まで自分たちもどう食いながら町づくりをやっていくのか、どうやったら食べていけるのかということに必死になっていたところもあります。

これから2030年までに熱海を変えるということを何となくイメージしていたんですが、それをリアルに考えると今からあと15年しかないんだなと最近思っています。

本当に変わっていかないといけないところもあると思うので、10%ぐらいだと思っています。

小松 僕も10%か20%ぐらいだと思いますね。

5年やってきましたが、女川の復興期間というところでいうとあと3年で終わるんですね。

ただ女川という場所はすごく面白い場所なので、そこは面白くしていきながらも、町長がよくおっしゃるのですが、女川や被災地には皆さんの税金や海外の支援が入っているので、ここで起こったことを世界や国内にもっと広げていかなければいけないという考えを強く持っています。

だからこそ海外のネットワークや国内でも今は東京に拠点を持って5つの地域で学びのスクール等をやっているのですが、そういうのをもっと広げてきたい。

各地域が努力していくことと、町をお互いに開いて繋がって色々と新しい変化を起こしていくということは、多分本当に大きくやっていかないといけないと思います。

僕は女川をフィールドにしているのでそこから広げていかないと、ということを考えるとまだまだ遠い世界ですし、ここからどう繋げていくかということはもっと考えないといけないと思っています。

そうすると10%から20%ぐらいしかできてないですね。

地域からもっと多くの化学反応を生み出していく

井上 最後に、ICCはIndustry Co-Creation、 共に産業を創るということで、単にスタートアップの方だけではなく社会起業家の方や大企業の方と色々こういったコミュニティをしっかり作っていって新しい産業を生み出していく、ということに取り組んでいます。

これが最後のセッションになりますが、今回参加してどんな出会いがあり、どういうことを感じ、そして何か作り出せそうか、ということを最後締めの言葉としていただければと思います。

各務 京都にICCカンファレンスのような素晴らしい方達にお集まりいただいてやっていただいているというのは、非常にありがたく素晴らしいことだと思います。

来年(2017年)また京都でやっていただけるのであれば、京都はこの機会をもっともっと使わせていただくことが大事というか、ICCのためにも京都が役立てることがあるかもしれません。

参考情報:2017年9月4-7日 ICCカンファレンス KYOTO 2017 開催予定です。

京都はやはり投資(お金)が弱いんですよね。

非常にいい資産はあり、それを少し磨けばコンテンツになるにも関わらず、そこに十分な投資が入らないから力が発揮されないという状況です。

これは京都だけではなく地方はどこも恒常的に抱えている課題かもしれません。

今回これだけの人が京都に2日間、3日間集まってらっしゃるというのはとても得難い機会だと思うので、京都もこの機会を使わせていただくというのを来年はできるといいなと思います。

これだけ日本のトップリーダーの方たち、しかも次世代の若手の経営者の方たちと京都の文化人が交流したら、そこで生まれてくる化学反応はとてつもないものがあると思います。

僕も京都にいる人間として、触媒役として何かお役に立てればと思っています。

小松 女川でいうと水産業が一次産業で、震災があって一時はどうなると言われたところから工場は再建し、結果として世界で最先端の施設を持っている工場がたくさん並んでいて世界と戦える、むしろトップを走れる、そういう力を持っているんですよね。

ただ、それは水産というもので、これからは産業の壁を超えて、そこにITをかけるとかもっと色んな産業が有機的に繋がって、面白いことにチャレンジしていこうという意味で、1つのフィールドとしては可能性があると考えています。

地方=衰退している、都市部に人が流れるというところから、むしろそこを使って実証実験するぐらいの気持ちで一緒に組めるような機会をたくさん今回のICCカンファレンスを通じて作れればいいなと思います。

地方の課題はこれから日本の課題になっていくケースがほとんどなので、そういうところを見定めながら何か新しいものを生み出していけたら面白いなと思います。

井上 インターネットとかITは、まず最初はゲームとか比較的ホリゾンタルな話しが多かったのですが、今回のスタートアップ・コンテンスト「カタパルト」も1位が植物工場で2位が養殖業向けのICTソリューションで、どちらもバーティカル × テクノロジーでしたよね。

ITやテクノロジーを応用する領域がどんどんバーティカルな方、もっと地に足のついた方にいっている中で、地方はいろいろなウィークポイントがまだあるような、且つまだまだイノベーションの余地があると感じています。

おっしゃるとおりそういうところに気付いて、また旗を立てる人が増えていくとすごく面白いなと思います。

小松 そうですね、そういう人がどんどん増えていけば面白いと思うので、そういう機会がたくさんできらいいなと思います。

市来 昨日から、今までお会いしなかったような方々にお会いできたというのはすごい貴重でした。そういう場にいさせてもらえたことがすごく有り難いと思っています。

各務さんがおっしゃったことに近いんですが、ICCカンファレンスに参加するような人達と熱海の町の人達と掛け合わせる機会を作りたいなと思いました。

熱海という町はそれなりに皆さん知っていて、来たこともあって、どこで話しても大体「今度行くんだよ」「熱海好きなんだよ」と言ってくれる人が必ず会場にいます。

そう言ってくれた人達がみんな集まったら面白いし、すごく新しい何かが生まれるんじゃないかなと思っています。

今日こういう場に参加したからこそ何か自分の地域でも新しいことをやっていきたいなと強く思いました。

井上 素晴らしい対談ありがとうございました!

一同 ありがとうございました。

(終)

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編集チーム:小林 雅/榎戸 貴史/戸田 秀成/城山 ゆかり

【編集部コメント】

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