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経営者の自問自答の幅を広げる「エグゼクティブコーチ」の役割とは?【SP-OD3 #5】

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これまでに配信した、組織づくりに関する議論を総特集いたします。今回は、ICCカンファレンス KYOTO 2016 から、「最高の成果を生み出すチーム作りの方法論」を10回に再編集してお届けします。組織づくり特集3(その5)は、ヤフー副社長 川邊さんが実践しているという「エグゼクティブコーチとの対話」について議論しました。コーチのコーチである中竹さんの理論に注目です。ぜひご覧ください。

ICCサミットは新産業のトップリーダー600名以上が集結する日本最大級のイノベーション・カンファレンスです。次回 ICCサミット FUKUOKA 2018は2018年2月20日〜22日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。


【登壇者情報】
2016年9月6日・7日開催
ICCカンファレンス KYOTO 2016「ICC SUMMIT」
Session 5C
最高の成果を生み出す チーム作りの方法論
 
(スピーカー)
石川 善樹
株式会社Campus for H
共同創業者
 
川上 (全龍)隆史
宗教法人 春光院
副住職
 
川邊 健太郎
ヤフー株式会社
副社長執行役員 COO
 
中竹 竜二
(公財)日本ラグビーフットボール協会
コーチングディレクター
 
(モデレーター)
小林 雅
ICCパートナーズ株式会社
代表取締役

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【新】最高の成果を生み出すチーム作りとは?【SP-OD3 #1】

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本編

コーチングによって自問自答の幅を広げる

石川 でもどうでしょう。

立場が上になればなるほど、部下の人たちに対する見方というのも変わってくるものですか。

川邊 そうですね。

石川 最初は至らぬ点がよく目に入ったが、そうでもなくなったとか。

川邊 と言うよりは、この数年間こうした場で話していますが、基本的には率先垂範で自分がやったほうが上手くいくことの方が多いわけです。

それをトップマネージメントになっても、最初の頃はやってしまう。

しかし、それを途中で切り替えて、部下を後押しして、部下が成果を出せるように変えていくわけです。

そして、昔は自分が仕事をうまくやることに対して脳にドーパミンが出ていたのが変わってきました。

もちろん、途中で「なぜできないのだコイツは」というような苦しみはあるのですが、最終的にはその部下が成果を出した時、あるいは部下が他の会社の人から褒められた時に、ドーパミンが出るように変わってくるのです。

ですから、部下の何が見えるかも変わってきますし、自分が何を喜びとするかは、途中でかなり変わってきます。

自分が成果を出すのが楽しかったのが、部下に成果を出させるというのが楽しいというふうに、ほんとうに変わっていきました。

川上 自分という枠が外れて、会社というものが自分ということになったのでしょうか。

つまり、部下というものが自分の一部になるという考え方でしょうか。

川邊 そこは人によって違うと思います。

僕は、会社というか、ヤフー・ジャパンというサービスとは、昔から一体化していたので、どちらかというとマネージメントというものはそういうものだということを、エグゼクティブコーチとの対話の中で自分なりに作っていき、そして変わっていきました。

そう。僕にもコーチがいるのです。

ですから、自分と会社が一体というよりは、トップマネージメントになるということはそういうことなのだという、そちらの一体感の方が出てきました。

エグゼクティブコーチの役割

石川 そのエグゼクティブコーチという方は、どういうことをするのですか。

川邊 なんか「どうよ、最近」という感じです。

中竹 僕自身もやるのですが、基本質問です。

だいたい言葉にはならないですし、なんとなく考えているのですが、立場が変わる時というのは自分がやるべきことというのはわからない。

しかし、客観的に「トップマネージメントというのはそもそも何をやるのですか」と普通は聞かれません。

ですから、川邊さんもおそらくコーチに「教わった」わけではなく、考えていることをご自身で喋ったのでしょう。

それで言語化されていく。

川邊 結局コーチングとは何をやってくれているのかと言えば、自問自答の幅を広げてくれているのです。

自問自答はみんなやっていますよね。

みんな意思決定しますから。

今日は雨が降ってくるからどんな格好をして行こうか、とか。

そうやって自問自答しているのですが、自分で自問自答している限りは自分の実力の範囲内でしか自問自答の幅はない。

ところが、プロのコーチがつくと、その自問自答の幅が広がって行く。

その中で、「トップマネージメントとは」とか、そういう質問をしてくれるのです。

中竹 コーチの世界でよく言われているのは、良い回答が出るためには良い質問が出なければならないということです。

ですから、いかに良い質問をするかということを常に考えているのがコーチです。

川邊 質問のプロです。

「どういうバイアスがかかっているか?」と問う

石川 僕は、先週までアメリカのイリノイ大学というところへ行っていました。

イリノイ大学というのは、20人以上のノーベル賞学者を出している大学です。おそらく、先生数あたりのノーベル賞は世界で一番でしょう。

そして、そこには脈々と伝統的な「問」というのがあるのです。

たとえば、生徒なり研究者が、何か言いますでしょう。それは、もちろん考え尽くして来ている。

それに対して、「なるほど、よくわかった。ところで、そこにはどういうバイアスがかかっているかと思うか」と聞かれるのです。

つまり、今自分が表明したその意見にどういうバイアスがかかっているかということをすごく聞かれる。

中竹 怖いですね。

石川 ええ。何を発表しても最後はそれを聞かれる。

川上 それはまさしく禅問答ですね。

ずっと考えていて、師匠へ行く前でベルを鳴らされるのと一緒です。

石川 だから、僕は1週間いたのですが、辛かったです。

発表して最後に次の日の宿題になるので。

川邊 でも、それで、やはり自分がすごくバイアスの中で考えていたということがわかるのですか。

石川 ええ。すごく気づきました。

小林 それはフィードバックされて変わっていくものなのですか。

石川 はい。変わって行きます。

でも、そのためにはこちらが考え尽くさなければなりません。

ものすごく考えて、考えて、こうだろうという時にそういう質問をされると、ハッと気づくのだと思うのです。

小林 ここにいらっしゃる経営者の方々も明日から部下へ、「キミの答えにはどういうバイアスがかかっているのだ」と聞かなければなりませんね。

川邊 それにしても、経営者はとにかく圧倒的に、答えを言えるかどうかよりも「問」です。

そう自分は思っています。

中竹さんのお話もそういうものが多いですね。部下に対して、いかに問えるか。「問」の質が高いか。

中竹 僕は今、立場的にコーチのコーチがメインの仕事なのですが、僕よりもキャリアの高いコーチを評価したり指導しなければなりません。

年齢もキャリアも低い僕が教えることはありませんので、すべてが「問」から始まるのです。

ところで、コーチのコーチというのは、業界的にはエデュケーターと言います。実はその上がありまして、コーチのコーチのコーチというものがあります。

これがトレーナー。そして、コーチのコーチのコーチのコーチというのがマスタートレーナーと言います。

その4段階があって、これがワールドスタンダードになっているのです。それがやはり最後のマスタートレーナーになると、何をやっているのかわかりません。

ほとんど何もやらないのですが、見て、問いかける。しかも、見て、問いかける相手も、また見て、問いかけているだけなのです。

その次のエデュケーターまでほとんど見て問いかけるだけの人に対して、見て問いかけて……が連なっている。

実は、僕はそのライセンスを取るのに何度も失敗しているのです。

この期間中にフィードバックで何度も聞かれるのは、「今、お前は何のキャップ(帽子)をかぶっているのだ」ということでした。

要するに、自分が今どのキャップをかぶって「今、僕はトレーナーです」「エデュケーターです」「コーチ役をやりました」というようなことを、ちゃんと意識しないと、どの立場かわからなくなるのです。

最初、僕は結構それに自信がありました。

俯瞰するのが得意なのだから素質があると言われて、自信満々で行った。

しかし、めった打ちで、初日はパニックになってしまいました。

そして、「キャップは何か」と聞かれて「エデュケーターです」と言うのですが、「いや、さっきはコーチの発言だったけど」と返されると、確かにそうだと気づく。

こういうことをやらされるのです。

経営者でも、リーダーになって、部長、取締役、社長、会長とありますが、おそらくこの段階の話かとすごく思いました。

そのプレーに意図はあるか?

石川 中竹さんがチーム作りをする上で、よくこの問いをするという決まったものはあるのですか。

中竹 僕は、「なぜ」を聞きます。

なぜそれをやるのか、と。

選手は「このプレーをしたい」「あのプレーをしました」と言うのですが、「そもそもそれをなんでやったのか。意図はあったのか」ということを聞くのです。

僕の中ではチーム作りで、”Somehow play” をなくそうと言っています。

要するに、普通、なんとなくやってしまうのです。

ボールが来たらなんとなくパスをするし、なんとなく走ってしまう。

でも、本当にそれは意図があったのかというのは相当突き詰めますね。

石川 なるほど。

僕は今回イリノイ大学で、先生からアドバイスをもらうこともあったのですが、それをやって持って行くと、「なんでこれをやっているのだ?」と言われました(笑)

先生が言ったからやりましたというのは、理由にならんというのです。

中竹 僕もほぼそれですね。

小林 経営者の中でもそういう方は多いのではないでしょうか。

自分で指示したのに、部下に対してなぜそれをやっているのだ、と言う人はいますよね?

川上 でも、人間は普通そうです。

毎日の生活で「なぜそれをやっているか考える」というのは非常に疲れる。結局人間というのは、いかに楽をできるかと進化していきますでしょう。

だから習慣や固定概念を作り上げて、脳を使わないようにしている。

そこで「なぜ」と聞かれるとすごく頭を使わなければなりませんから、普通なら避けてしまうのですが、そういうのを繰り返すコーチとか上司というのは必要になってきます。

そうすることによって、われわれの脳というのは常にフル回転している状態になるのだと思うのです。

川邊 本当にそうだと思います。

(続)

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編集チーム:小林 雅/榎戸 貴史/戸田 秀成/石川 翔太

【編集部コメント】

続編(その6)では、ラグビー日本代表で実践された、パフォーマンスを引き出す質問とプレーについてお話し頂きました。是非ご期待ください。他にも多く記事がございますので、TOPページからぜひご覧ください。

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