「コミュニティを育む」メディアの創り方-卒業レポートに代えて(榎戸貴史) – 【ICC】INDUSTRY CO-CREATION

「コミュニティを育む」メディアの創り方-卒業レポートに代えて(榎戸貴史)

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ICCパートナーズに第1号社員として入社し、約1年半 勤務した榎戸貴史が、ICCパートナーズ卒業記念として「ICCメディアの創り方」をテーマに書きました。ICCパートナーズのメディア運営とは何だったのか?どんなことを学ぶことができたか?率直な感想をぜひご覧ください。

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ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回200名以上が登壇し、総勢800名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。次回 ICCサミット KYOTO 2018は2018年9月3日〜6日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。


【執筆者情報】
榎戸 貴史
ICCパートナーズ
ディレクター(Chief Operating Officer)

1988年生まれ。2011年 慶應義塾大学卒業後、フリービット株式会社に入社し、CEO室等で一貫して社長直轄の新規事業開発を担当。2014年、マーバルパートナーズ(現PwCアドバイザリー)に参画し、M&A戦略/成長戦略の策定、デューデリジェンス、ポストM&Aの業務改革支援などに従事。2016年、ICCパートナーズに1人目の社員として入社し、主にカンファレンスをベースとしたメディアの立ち上げと運営を担当した。


みなさん、こんにちは。ICCパートナーズの榎戸です。

「ともに学び、ともに産業を創る」の名の下、Industry Co-Creation(以下、ICC)のカンファレンスが立ち上がった2016年初頭よりボランティアの運営チームメンバーとして携わらせて頂き、2016年11月から正式にICCパートナーズ株式会社に参画しました。そして、この夏より、海外の大学院で経営学修士号を取得するため、ICCパートナーズを卒業することとなりました。

ICCパートナーズに在籍した約1年半は、主にICCのメディア運営について担当させて頂き、会社にとっても自分にとっても本当に貴重な時間を過ごすことができました。

ICCのメディア運営は、従来のWebメディアのカタチとは全く違う概念で運営されてきたと思います。ICCパートナーズを卒業する今、これまでやってきたことを振り返りつつ、ご挨拶と代えて、ICCのメディア運営とはどのようなものか、どんな気持ちや編集方針で記事を制作してきたか、そして私自身が何を学んだか、書いてみたいと思います。

PVを追うことのないメディア

私は、ICCパートナーズに入社する前、企業の戦略コンサルティングやM&Aにおけるデューデリジェンスなどをお仕事としていました。そこでは、何よりもまずファクト、引いてはデータ(数字)とその定量的な分析に基づいて論理を構築していくことが求められました。

そんな私が、ICCパートナーズ代表の小林と共にメディアを運営するようになってすぐ、「ページビュー(PV)やユニークユーザーを一義的な目標としていない」と言われ、困ってしまいました。

メディアを運営する社員として、何を目標に日々の仕事に向かえばよいのだろうか?と。

「カンファレンスで頂く参加料を収益とし、メディアから収益をあげるわけではないとは前もって話をしていたけれど、きっと”ノルマとしてのPV”という考え方がないだけであろう」と当初思っていましたが、本当にPVを目標として立てることはありませんでした。

小林と話していくうちに、徐々に気づけるようになったことがありました。それは、ICCのメディアは、誤解を恐れずに言えば、「読者のためのメディア」ではないということです。

代表の小林、インターンの立花さん、横井さんと、最初のオフィスで。

誰のためのメディアか?

少し立ち戻って、ICCパートナーズは何をしている会社なのか、というと「場づくり」の会社です。その本丸を私からここで書くことはありませんが、直近で代表の小林に取材を頂いたインタビューなども出ましたので、ぜひご覧いただければと思います。

ICCパートナーズ 小林雅さんに聞く「カンファレンスは“場づくり”。」(PR Table)

さて、「場づくり」を生業とするICCパートナーズが運営するメディアは、一言でいえば、「場に集う人たち」のためのメディアです。

あくまで私の理解ですが、とても自己中心的なのです。

通常のWebメディアでは、読者を考え、「どういった記事や特集が読者に読んでもらえるだろうか?」という問いを出発点として、企画・取材・制作といった運営をされているところも多いのではないかと思います。

一方で、ICCのメディアで配信している記事は、「ICCサミット」(ICCパートナーズが主催しているカンファレンス)でのパネルディスカッションやプレゼンテーションの書き起こし、つまり「アーカイブ」です。

こうしたパネルディスカッションやプレゼンテーションは、代表の小林が「この人の話を聞いてみたい」と感じた人にご依頼し、カンファレンスに登壇して頂ける方々によって行われ、カンファレンスに参加して頂けた方々に向けて話して頂いています。

つまり、元々そのコンテンツの出発点は主観的であり、消費主体はクローズドなカンファレンス参加者です。我々のコンテンツは、非常に消費者の限られた、とても内向きなものなのです。

では、なぜICCは消費主体の限られたコンテンツを、あえてWebメディアというオープンな媒体に載せて発信するのか?

このレポートを書きつつ、もう少し考えていきたいと思います。

ICCコミュニティの構造

ICCは、私は広義の意味で「コミュニティ」だと考えています。

「ともに学び、ともに産業を創る」という理念を体現する場として、「ICCサミット」などのカンファレンスがあり、そこでお話し頂く登壇者の方々、集まって頂いた参加者の方々がいらっしゃってICCパートナーズの事業活動が成立しています。

私の理解を概念図にしてみました。(会社公式のものではありません)

理念が中心にあり、カンファレンスに登壇・参加頂ける方々を核とした環状構造です。

ICCパートナーズや私がもともと参加していたボランティアの運営チームメンバーはこの環状構造を支えるために組織されています。

我々のWebメディアのコンテンツにもなる、ICCサミットのパネルディスカッション等にご登壇頂く方々は、その「場」でお話し頂くことに価値を感じていただかないとご登壇頂けません。ご参加頂く方々は、その「場」に来て頂くことに価値を感じていただかないとご参加頂けません。

その「場」の価値を社員数人の会社がどう高めていけるのか?

これが大きなチャレンジです。

一方で、ICCサミットにご登壇・ご参加いただける方々だけがICCの「環」を創っているわけではありません。

そこで、ICCパートナーズはWebメディアを使って、サミット参加者以外の方々のお力も借りることにしました。それが冒頭の図にあった、「潜在する仲間」や「未来の仲間」です。言い換えると、我々が記事を配信する中で、サミットに参加されていなくとも記事を読んで頂ける方々です。

活動を知って頂けるだけで、「場」は強くなる

話が逸れますが、ブランドが確立されたバッグや高級車などは、世界観に共感できたり、モノの品質が良かったりするだけでなく、持つ人にとってソフトな価値を与えることがあります。

そのブランドがついた商品やサービスを使っていることで、理念や物語について他の方と話し仲良くなれる、人に安心感や信頼のイメージを与える、「いつかはクラウン」(古い?)といったステータスの憧れを持ってもらえるなどです。

ファッションや車などであれば、物理的にそれを持った方が増えれば、それを見る機会は多くなっていきます。

しかし、我々はカンファレンス、つまり半年に1度ある特定の場所に集まって頂く機会しかありません。そこで、ICCサミットにご参加されている方々の了承を得た上で、せめてその「場」が毎日”見える”ようにしました。

”見える”化、つまりカンファレンスの記事をコンテンツとすることで、むしろ「場」に参加されていない方のアテンションをお借りして、「こういう人が話しているんだ」「学びになるな」「その場に行ってみたいな」という気持ちを集めて、「場」の価値を高めるということにこれまでトライしてきました。

ブランディングを学ばれていたり、実践されていたりする方には当たり前のお話なのかもしれませんが、

「ブランドの世界観は、むしろそのブランドに所属していない人たちが輪郭を描く」

ということなのだと思います。

無論、ICCコミュニティの柱は「場」に参加する方々の熱量で支えられています。一方で、カンファレンスに参加されておらず、遍在(潜在)するリーダーの方々、そして未来のリーダーとなる方々の認知を頂くことで、「場」の理念と求心力の輪郭を高めていけると信じています。

時々、私の仕事である記事の編集と配信について自己紹介をすると、「Webマーケティング」として捉えて頂ける方もいらっしゃいます。その側面はもちろんありつつも、実は、ICCのWebサイトから記事を読み、そのまま直接Webのフォームからカンファレンス参加のご登録を頂ける方はほとんどいません。

ICCが、参加者向けに企図されたコンテンツをあえて「Webメディア×書き起こし」という非常にオープンな媒体で発信し続ける理由は、ひとえに我々がつくる「場」そして「場に参加して頂ける方々」の価値を高めていくためだと今は理解しています。

”社外報”として「正しく伝える」

私が在籍した期間は約1年半ですが、記事の投稿ベースでは、約1,500本ほどの記事を編集・配信させていただきました。

ICCのメディア運営、特に編集を通じて学んだことは、「正しく伝える」ことの重要性、そしてそのために必要な”誠実さ”です。

ICCサミットは、「トップリーダー」が集まる場です。

常に自らが発する言葉に磨きをかけているリーダーの方々の言葉は、強烈です。時として、誤解を招きかねないとも思っています。さらに、カンファレンス内でのお話を書き起こしていますので、元の原稿がすごくハイコンテキストなことも多いです。

そのため、リーダーの発言を「正しく伝える」ことが重要です。自身もその登壇者の会社を調べ、関連記事を読み、できる限りビジネスを理解した上で編集をしています。

通常、例えば経済新聞や経済誌のインタビューでは、取材時に経営者が語ったことから「引き算」をしてコンテンツを制作されると思います。限られた紙幅や、読者の時間を考えた分量の中でまとめ上げる力が編集に求められるのだと推測しますが、ICCの場合、「足し算」をしています。

話の中で言及されたYouTube動画や、話した内容のプレスリリース、はたまた参照した学者の理論まで、ICC以外の他のWebページに飛ぼうがお構いなしに(笑)、情報を足します。日本語も読みやすくも比較的カジュアルな口語体を残しています。

そうでもしないとコンテキストが伝わらないということもありますが、コンテンツの中でのディスカッションをすべて学びにしてほしい、とも考えているからです。

最終出勤日の夜、MBAナイト(壮行会イベント)の最後に胴上げしていただきました

また、Webメディアにおいては、タイトルが非常に重要です。ICCのコンテンツでは「メッセージ」を重視したタイトル付けを常に意識し、約1,500本の記事すべてで代表の小林と議論して決めてきました。

よりジェネラルな、一般の方々が読んでくれそうな見出しにすることが可能なものも多いです。しかし、登壇者の「メッセージ」を優先し、ある種、対象となる読者を絞りきったタイトルをつけてきました。

こうした「足し算」と「メッセージのニッチさ」のおかげでそこまでPVは伸びていません(笑)。

しかし、最悪その領域や言葉が響く方だけにしか届かなくとも、やはりその道を突き走る登壇者のメッセージを強く出したいという思いがあります。その誠実さをICCパートナーズの仕事、引いては代表の小林から学ぶことができました。

「”社内報”を外に配るような感覚」でカンファレンスの現場を伝え、実際に誰かには1,500回(1,500記事)それを届けられたかと思うと、今とても感慨深く感じています。

仲間になってほしいなという想いを大事に

数々のトップリーダーの言葉に私も現地で・そして編集の現場で感銘を受けました。

特に、ICCのメディアを運営する立場として、とても勉強になったのは、「北欧、暮らしの道具店」を運営するクラシコムの青木耕平さんが、おっしゃっていたことです。(ICCの運営メンバー向けに勉強会のようなイベントを開催させていただいたり、桜が綺麗なオフィスにも遊びに行かせていただきました。ありがとうございました。)

コミュニティ形成の鍵は「仲間になりたいな」と思ってもらうこと(ICC FUKUOKA 2017)

▼【上記記事でのクラシコム青木さんのお話を引用】▼

青木 ブランディングやマーケティングについて我々がどう捉えているかというと、「仲間になりたいな」と思ってもらうことだと思います。「あの人たちの仲間になりたい」ということは採用でも、顧客が我々に関わってくださることもそうですし、取引先の増加についても言えます。

基本的には「どうやって仲間になりたいと思ってもらえる自分たちであるのか」ということで表現できるのかと思っています。その中で、誰の仲間になりたいのか明らかでないと、仲間になりたいと思ってもらいようがないと思っています。

そのため、そのサイトまたはサービスにアクセスした時に、仲間のコアの部分が人として可視化されているのがコミュニティ感を出すことにおいて大事だと思っています。

▲【引用終わり】▲

ICCサミットも、いろんな方が熱量高く集まって頂ければ頂けるほど、「場」の価値を高めることができます。そのために、読者というより、どちらかといえば内側からの目線で「こういう話が好きで、学び合える人と出会えたらな」という想いで記事をつくってきました。

その結果、ICCパートナーズでの仕事を通じて、本当に多様なビジネスやリーダーの価値観を知ることができました。また、カンファレンスで話しかけていただいた参加者の方、共にサミットを運営したメンバーと知り合うことができました。

ありがとうございました!

何かそれは明確なスキルや履歴書にかける類のものではありません。しかし、純粋にそうした「場」に加われたこと、そして微力ながらその「場」づくりに貢献できたことを誇りに思います。(運営チームのメンバーとして再びがんばります!)

最後に、私事で恐縮ですが、ICCパートナーズを卒業して、海外のビジネススクールに留学することになりました。世界50カ国以上から、多様なバックグランドを持ったクラスメイトが集まる「場」で、しっかりとICCパートナーズで学んだことを活かし、日本を発信し、仲間を増やしていきたいと思います。

お読み頂き、そして今まで、ありがとうございました。

(終)

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編集チーム:榎戸 貴史

【編集部コメント】

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