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2020年12月某日、ICC一行は、関西へとオフシーズン恒例の2泊3日CRAFTED TOURへ出かけました。今回訪問したのは、CRAFTEDカタパルトを中心に次回登壇いただく企業を中心に6社です。今回訪問したのは、近年大ヒット作を連発している老舗のミシンメーカー「アックスヤマザキ」です。どんなものづくりをしているのか、なぜ大ヒットしたのかを探ります。ぜひご覧ください!
ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回200名以上が登壇し、総勢900名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。 次回ICCサミット FUKUOKA 2021は、2021年2月15日〜2月18日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。
ミシンというと、よほど手作りが好きな人か、家庭科の授業でという人が多いかもしれません。かつてはどの家庭にもあったかもしれないけれど、今はない、そんなイメージを覆すような、グッドデザイン賞を受賞したり、男性読者の多い情報誌『Pen』などで紹介されている、子育て世代向けミシンがあることをご存知ですか?
▶アックスヤマザキの『子育てにちょうどいいミシン』が2020年グッドデザイン金賞受賞!(PR TIMES)
このミシン、従来の半分くらいの重さで2.1キロ。幅も半分くらいと超コンパクトで、マットブラックのおしゃれ仕様。「子育てにちょうどいいミシン」は、税込みで1万1000円、「ステイホーム」とマスク需要で、2020年3月27日の販売開始から大ヒットとなり、当初予想の3倍以上売れ、一時は3ヵ月待ちだったといいます。
ミシン離れの時代に、会社の売り上げは前年同期比2・5倍で、営業利益は創業以来最高益。
そんな商品が生まれた背景とは? 3代目社長の山﨑 一史さんに、早速お話を聞いてみましょう。
赤字になって開き直り、一からやろうと
山﨑 一史さん「弊社は創業以来ミシンの製造・輸出をしていまして、為替の関係で採算が合わなくなり、債務超過ぐらいまで採算が悪くなってからは逆に、すべて海外で作って輸入していました。
クルマは中型車、大型車と色々ありますけれども、ミシンも同じで、弊社は小型のミシンを主にずっと取り扱っています。
ミシンメーカーは5社ぐらいあります。だいぶ減らしましたけれども、弊社はOEMもやっていたので、利益率が課題でした。
僕は2015年に事業を継いで、その時に第一弾で出したのが、毛糸のミシンです」
2015年に発売開始したその毛糸のミシンが、アックスヤマザキの起死回生のはじまり。「毛糸ミシンHug」は発売2ヶ月で2万台売れ、子どもをターゲットにした「毛糸ミシンふわもこHug」は機能をアップして2021年1月現在、売り切れが続いています。
山﨑さん「もともと家業とは違う機械工具の会社にいて、父親の代で、業績が右肩下がりに落ちていった時に、『やれるか?』と聞かれたので、『やります』と言って入りました。
そうはいっても全く能力が無かったので、何をしたらいいか分からないし、気合いばかりでどうしようかと思いました。
前の会社では営業だったので、とりあえずミシンを売りに行きましたが、OEM以外の自社のところは2倍にできても、OEMもしぼんでいっているので、結局限界しか感じませんでした。
それから、変革のヒントを探してグロービス経営大学院に通いました。
これはあかん、利益率も悪いしと思った時に、僕が継ぐというタイミングでうまいこと赤字になって、それならもう開き直って、一からやろうと思いました」
老舗メーカーが、簡単・安全な“ごっこ”ミシンを追求
構想は以前からあったものの、ものづくりの根拠となったのは、ユーザーの意見を聞くこと。何が問題か、なにがミシンを遠ざけているのかを徹底的に聞いて解決していったといいます。
山﨑さん「3代目として事業を継いだあと、すぐに『毛糸ミシンHug』を売り出しました。
普通のミシンは上糸を掛けて、下糸を通して、釜があってと、結構使うまでの準備が大変で、ミシン離れが進んでいます。
なんでかな?と色々分析したら、使い捨ての時代と言われるのですが、そんな単純な問題ではないと思いました。
それでさらに聞いて回ると、『小学校の時に苦手になった』という声がありました。それならば小学校で使う前に、簡単・安全に使えるミシンというのを、徹底的に追求しました。
“ごっこ”のものを追求しようと思いました。この案は実はグロービスに通っていた時に考えていました。
▶斜陽の業界で異例ヒット「子供向けミシン」が誕生するまで(日刊ゲンダイ)
普通のミシンは上糸、下糸のセットが必要です。これは毛糸で縫えるミシンで、市販の毛糸が使えて、糸を掛けるのは上からだけ。下糸はなくて、1秒で終わります。
上のガイドから針のケースに向けてクルリと毛糸を回しかけるだけで糸のセット完了
子どもは、ガーッと針が動いているのが怖いですよね? そこも研究して、指が入らないように針ガードをつけました。
うちの娘が1歳の時に針が動いている状態で持ち歩いても、安全なので別に問題ありませんでした。
縫っているというより叩いていて、5本の特殊な針で打ち付けて、生地と生地を絡ませています。
5本の針の配置などで、縫合力が変わってきます。初めに作ったものは、あまり付かないとか、色々ありましたね。
5本の特殊な針で打ち付けて、生地と生地を絡ませて縫う。開いても簡単にはほどけない
回転数も遅すぎるとあまりくっつかないので、回転数と配置など、色々研究しました。
こんなミシンは今まで無くて、3年かけて開発して、特許を取得しました。特許は、ミシンとして特殊な針で毛糸を使って生地と生地を縫合するというものです。
初めは、簡単・安全というコンセプトだったので、安全にするためには針をやめようかという案も出て研究したのですが、『こんなのはミシンじゃない』と言われてしまいました。
包丁でも、ちょっと切れるほうが人気あります。それで針にすることにしましたが、熱で圧着してみたりとか、実は色々研究をしました。
あとはキットだけを作れるものにしたらやりやすかったのですが、それだったらやって終わりになってしまいます。しかしこのミシンなら、市販の毛糸、市販の生地でずっと遊ぶことができます」
発売後の反響、そして黒船来襲
完成したミシンを持って、全く取引のなかった玩具市場に営業に出た山﨑さんですが、かなりの反応があったといいます。
山﨑さん「自分で玩具の市場を開拓しに行ったのですが、最大手玩具店に行っていきなり『今ここで何台発注頂けるか教えて頂けますか?』と言ったのですが、なんの面識もないうちに対して数千台の仮発注を出してくれました。
他にもどんどん反響が広まり2ヵ月で2万台が一瞬で売れて、その後も反響は続き、第10回キッズデザイン賞、第16回ホビー産業大賞を受賞しました」
その大反響が海を渡って海外の玩具メーカーに届きます。
山﨑さん「カナダの会社から特許を使いたい、世界で売りたいと言われましたが断りました。
お金のことだけ考えると断らなければ良かったかなみたいに思ったりしましたが(笑)。
自分のところで作って挑戦したいというのがあったのと、直感で、たぶん都合よくどこかでポイされるだろうな、というのはありました。
玩具の世界でも結構長い会社だったので、世界展開で数を売るというのは分かっていましたが、何か違和感を感じたので、後悔するのは嫌だなと思ったんです」
大阪の下町のミシン製造会社が開発した商品が、海外の大きな会社に注目され、しかも特許を使用したいと迫られる。諦めない先方は、特許について無効審判請求を起こしてきたそうです。
山﨑さん「ごつい企業で、またごつい日本の有名な玩具のメーカー関係者と組んでやってきたんです。向こうの陣営を調べてもらったら、すごい陣営だったらしく『やばいよ』と結構言われました。やばいと言われてもどうしようもなかったのですが(笑)。
無効にして使いたいということなので、無効審判を請求されるというのは、ある意味名誉なことらしいです。僕は負けたら特許が無くなるということで、新大阪で机を並べて口頭審理にも出て、1年ぐらい戦って勝ちました。『下町ロケットみたい』と、結構テレビで取り上げてもらいました」
その「毛糸ミシンHug」をバージョンアップさせた商品も、子どもの心を捉えて大ヒットしています。
山﨑さん「最初の毛糸ミシンで反響をいただいて、玩具のおもちゃショーを毎年研究しに見に行っていたら、もこもことかふわふわと言っているのに、みんなえらく食いついていたんです。これはちょっとミシンでやりたいなと思って、一生懸命研究してみました。
そうしたら、毛糸のポンポンを作る要領でいける。部品を付けたらできるのではないかという感じになって、できたのが、「毛糸ミシンふわもこHug」です」
「毛糸ミシンふわもこHug」で作った作品。コンテストも開催している
「サンタさんへ、パパのミシンをちょうだい」
山﨑さん「当時娘が4歳で、娘のことも結構研究していました。自分の娘が面白いと思えなかったら、世の中に出してもあかんわと思ったんです。
対象年齢が6歳以上なのでちょっと早いのですが、実際作ってみて、その年のクリスマスに『サンタさんから何がほしい?』と聞いたら、『粘土かパパのミシン』と言って、悩んでいました(笑)。
こちらからは何も言えないので『好きなようにしたら』と言って、娘に『ツリーに手紙を書いておいときや』と言いました。
娘が寝た後にその手紙をドキドキしながら見たら、『サンタさんへ、パパのミシンをちょうだい』と書いてありました。
もう1つそういう話があります。娘が幼稚園の年中になって『最近幼稚園で、かなこちゃんと仲良くなったの。パパ、見てえ』と、ポケットティッシュのケースを持ってきたのです。
何だろうと思って見たら、毛糸で縫ってあって『これ、かなこちゃんが作ってくれた』と言いました。
かなこちゃんは、娘の家がこのミシンを作っているのを全く知らずに、この毛糸ミシンを持っていて、それで作ったものをうちの娘にプレゼントしたんです(笑)。
娘は何も分からずに喜んでいるのを見て、『あっ、売れたんだな』と思いました。
うちのことを何も知らないでくれたのですが、毛糸で縫えるのはうちだけの技術なので、バレバレだったわけです(笑)」
身近な人の声に耳を傾けて、大ヒットミシンが誕生
山﨑さんが大切にしているのは、身近な人の声に耳を傾けること。大勢に聞くのではなく、身近にいるミシンを持っていない人の声を深く聞いていったといいます。
山﨑さん「よくイベントなどで、お母さんたちや、子どもたちが作るのは初めてだから、どうなるんだろう?と見ています。ポケットティッシュケースなどを作ると、めっちゃ喜ぶんです。
それを見てお母さんも横で、『〇〇ちゃん、すごいやん!』と、とても喜んでいて、お母さんも『私も何かやりたいなあ』となって、なぜミシンを使わないのかと話していったら、『やりたいけど、ちょっと難しいしな…』『でも、めんどくさいしな…』と言うのです。
でも、作りたいという気持ちは結構皆さんあって、それを解決したら、もしかしたらみんなに使ってもらえるのではと思って作ったのが、「子育てにちょうどいいミシン」です。
普通のミシンと違い、本棚に入るぐらいのサイズで、約2kgでめっちゃ軽いです。
『子供がいる昼間は針が危ないので夜しか使えない』という声もあり、針をガードすることにしました。
針ガードは、取り外すとスマホスタンドになり、動画で使用方法を確認するときに便利
友人たちに『どうしたら、ミシンを欲しくなるかな?』『なんで、要らないのかな?』と聞いていたのですが、面白かったのは、ある友人宅ではミシンを使うのですが、ママ友が来たら生活感が出るから隠すというのです。
『言いにくいけど、実はミシンを隠してる』と言われてちょっとショックでしたが、現実を受け入れて、とりあえず、ミシンはしまうもの、出し入れが不便、ある程度の大きさが必要という今までのミシンの概念を全部無くして、しまわなくてもよい、かっこいいものにしようと思いました」
山﨑さんはミシンメーカーにも関わらず、家庭にミシンを置いていなかったといいます。
山﨑さん「あえて置いていなかったんです。ミシンを要ると言わなかったら、それが現実だと思って、その理由を知ろうと思いました。
娘が入園・入学のタイミングになったとき、学校で必要な袋とか、うちの奥さんが手作りでないとちょっとかわいそうかなと言い出したので、生地を見に行ったんです。
子どもが『布はこれがいい』と言うので、ミシンで作ろうということになって、悪戦苦闘して作っていると、子どもが正座をしてずっと側で見ていて『早く寝なさい』と言っても、寝ないのです。
それで出来上がった時に『うわぁ、これ、持っていける!』とめっちゃ感動していました。作ったほうも感動していて、メーカーとして、ミシンを作ろうと思いましたね。
作ると、何とも言えない喜びみたいなものがあるし、やはり大事に使います」
「ミシンは難しい」を解決する
山﨑さん「一番解決が難しかったのが、『ミシンは難しい』という声です。
子ども向けの毛糸のミシンは上糸だけですが、大人のミシンは、上糸を掛けて、下糸を掛けてというやり方で、170年間同じなのです。
それは変えられないしどうしようかと考えていたら、うちの奥さんが料理の時に、レシピ動画を見るために使うスマホスタンドをIKEAで買って使っているのを見て、これだ!と思いました。
これをミシンに搭載しようとするのが今までのミシンメーカーの概念ですが、そうするとまた価格が高くなるし、大きくなってしまい、またお客さんの希望からかけ離れてしまいます。
ミシンは使い方、作り方が難しいので、QRコードを読み取って、全部動画で見られるようにしてみようと思い、使い方や作り方を全部動画にしました。携帯ならみんなが持っているので、例えばマスクの作り方も、動画を見ながら作れます。
こうすれば、『ミシンは難しい』という2つの課題が解決すると思いました。
ミシンそのものはシンプルにしていますが、構造が画期的かと言われると、ある程度普通のミシンのシンプルなものです。構造を変えるのに時間を割くと何十年も掛かるからです。
ミシンは色々機能があっても、『私は真っ直ぐ縫うだけでいい』という声をたくさん聞きます。
その一方で、ミシンメーカーとしては高く売りたいので、色々機能を付けたくなります。
市場が伸びている状況で、みんながミシンを欲しいならそれでいい。でもどんどん離れていっているのであれば、もっとそこに向き合っていかなければならないと思って、市場を作っていこうと思ったのは僕が社長になってからです。
発売してみると、手作りのハードルが下がって、『こんなのだったら、やってみたい』『こんなミシンがほしかった』と、発売前にInstagramにたくさん声が上がりました。
そんな声が上がった時に、ちょうどマスク不足になりました。
マスクはみんな初めて作りますよね、作り方も知らない。でも、このミシンだったら、作ってみようかなと思っていただけました」
賞を総なめ「子育てにちょうどいいミシン」
使いやすさに加えて、「ミシンはダサい」を解消したデザインは、従来の白っぽいミシンのイメージを一新して大好評。スタイリッシュでミニマルなデザインは、ユーザーだけでなくプロからも高い評価を獲得しています。
山﨑さん「まだトロフィーや賞状など届いていないのですが、キッズデザイン優秀賞と、グッドデザイン賞の金賞と、JIDAデザインミュージアムセレクションVol.22の三冠でした。
▶アックスヤマザキの『子育てにちょうどいいミシン』が「JIDAデザインミュージアムセレクションVol.22」 に選定されました(PR TIMES)
プロダクトデザインは、うちがこういうデザインにしたいというのをまとめてから、外部にお願いしています。
色については結構聞き回って、お母さんに集まってもらって、お菓子を食べてもらいながらというのをたくさんして、周りにもたくさん聞いたところ結構出てきたのが、『マットブラック』でした。
男性も乗れるような自転車で、こういう色のものがありますよね? あれみたいな感じだったら、イケてるなあという声を何回かもらって、色にはこだわりました。
そしてデジモノステーションという家電のアワードの1位をもらいました。
▶家電+ライフスタイルプロデューサー・神原サリーが選ぶ家電AWARD 2020(ds)
12月21日に発表されて授賞式がありますが、大阪活力グランプリというものがあります。
2019年は堺市の百舌鳥・古市古墳群の世界遺産だったりして、今までは本当に大阪を代表されるようなものが受賞していました。特別賞は去年は該当無しでしたが、年によってはあります。
過去のものを見たら、2005年に久しぶりにリーグ優勝した阪神タイガースとか、ガンバ大阪が優勝したとか、あべのハルカスが日本一の超高層ビルとか、近大マグロとか、そういうスケールのものが特別賞で、結構該当無しの年もありますが、今年の特別賞が弊社です。うれしいし、有難いです。
▶「大阪活力グランプリ2020」グランプリの発表について (大阪商工会議所)
▶株式会社アックスヤマザキが「大阪活力グランプリ2020特別賞」を受賞致しました!(PRTIMES)
その年の大阪を代表するみたいなことが書いてあるので、めっちゃうれしいです」
うれしいことはもう一つ。このミシンのヒットは、株価に影響するほどのインパクトを残しています。
山﨑さん「このミシンで4月に大きな反響があって、ヤフーニュースのトップに上がった時に、あるミシンメーカーの株価が大幅高になりました。
ヤフーファイナンスの記事を読んだら、アックスヤマザキの影響でその企業の株が買われているとありました。弊社はミシンメーカーの最小の最小なのですが(笑)。
弊社の影響でと、そんなことが書かれるんだなあと思って、めっちゃうれしかったです(笑)」
直販にこだわる理由
「毛糸ミシンHug」と「子育てにちょうどいいミシン」の検品作業中
山﨑さん「社員は現在18人です。他にもアルバイトのメンバーに結構助けてもらっていますが、全然追いついていかないくらいです。
今も忙しいのですが、4~5月は本当に電話も誰も追いつかないし、メールもすごい数で見るだけで追いつきませんでした。在庫も全部無くなりました。
子育てにちょうどいいミシンは、発売以来、まだ供給が追いついていない状況です。一時は3ヵ月待ちでした。
価格は11,000円です。サイズ的にも小さいので、手軽な反面パワーが弱くなりますが、その中でも最大限パワーが出せるように、中身にわざわざアルミを入れたり、どんくさいことをしています。
自分たちで地道に検品をしたり、普通で言うとあり得ないようなことをしています。色々なところから売りたいと言われてますが、このミシンは卸は全部お断りしています。
そういうところに広げたらもっと台数は出るのですが、全部直販でやっています。
このミシンに関しては、非常に手間もかかることもありますが、自分たちで販売していくことにしました。
手間はかけるけれど、ちゃんと利益率をいただいて、しっかりやっていますので、結構大口のところからもお話をいただいていますが、全部お断りをしています。
直販にこだわるのは、卸をすると、もう利益率が合わなくなってしまうからです。
これを15,000円にするのかとなってきたら、またちょっと離れてしまう。その代わり手間を掛けて、どんくさいことをやってコストを上げてでも、やっていこうと思います」
「ミシンですか、大変ですね」と言われたけれど
山﨑さん「うれしかったのが、娘の友達のパパに初めて会った時に、『何のお仕事されているんですか?』と聞かれて答えると、『ミシンですか、大変ですね。まだ使う人はいるんですか?』と悪気無く聞いてこられます(笑)。でも売れ行きが良くなって『すいません、2台欲しいのですが、買わせてください!』と言われました。
周囲でも今までミシンを持っていなくて、何も興味が無かったのが、今年になって『マスクを作って』と言うようになって、ミシンを買っていると聞きました。
興味が無かった人が作り手になって、ミシンをみんなが持っているというふうに変わって、伝播していくんだなと、そういうことを目指していきたいなと思いました。
あくまでも本当に手軽に、やらない人にやってもらいたいというのが、弊社のスタンスです。ミシンをやらない人にどうやってやってもらえるかを研究してきて、これからもそうしていきます。
そう考えたら楽しく、面白くなってきたんですよ。別にミシンの市場が右肩下がりでどうとかというよりも、自分で作っていけばいいと思ったので。
ちょっと難しいミシンだけれど子ども用に寄せている商品は昔からあったけれど、それをもっと寄せたら、そこだけのためにしたら、絶対やってもらえるのじゃないかなと思ったのです。
それはいろいろと聞きまくったので、自分で確信を持ちました。やはり分析だけではちょっと足りません。
『子育てにちょうどいいミシン』という名前なので、ずばりその世代を目指していますが、今回大きな反響をいただいて、男性からも問合せが多く、『Pen』でもランキング1位を1週間ぐらいずっと続けていました。年配の方からの電話もあって、幅広く広がりました。
『子育てにちょうどいいミシン』という名前をみんな覚えていなくて、“マスクミシン”ないですか?という問合せもいただきました(笑)。
その後、テレビに出させていただいた後に、『下町ロケット』と絡めて、海外と特許で戦ったので、“下町ミシン”ください、とも言われました(笑)」
「これはいける」という確信のうえに、山﨑さんは検証も重ねています。これは起死回生の第一弾「毛糸ミシンHug」を世に出そうとしていたときのエピソード。
山﨑さん「何回も作って、これの前に作っていた試作機もダメ出しをされたのですが、最後に本当にこれでいけると思ったのが、子どもを集めて試してもらった時です。いけるかなとは思っていたのですが、どうかな?と思っていました。
すると子どもがミシンにバーッとと寄ってきて楽しんでいて、途中から『私がー!』とミシンを取り合いになって泣き出したのです。『まあまあ』と子どもたちをなだめながら、心の中で『めっちゃいけるやん!』と思いました(笑)。
これが最終の、これで行こう!と思った瞬間でした。
だいたい今までの経験値で雰囲気、決めつけが自分の中でありますよね。そうなってしまうのですが、もう1回ちゃんと聞きにいこうということで、ヒアリングをしました。
ヒアリングすると、結構色々出てきます。『こんなこと、言ってもいい? 言いにくいけど』と(笑)。
それを『言って、言って』と言って聞いたところに、掘り出し物の意見があったりするんです」
アックスヤマザキの次なる一手はシニア向けミシン。山﨑さんは、シニアの集まる施設にミシンを持って何度も足を運び、ヒントを得たものを形にしたといいます。「子ども用、子育て用、シニア用の3世代でできる、一家に1台どころか3台」と言う山﨑さんには、まだ見ぬ市場が見えているようでした。
▶『孫につくる、わたしにやさしいミシン』2 月下旬予定で新発売(アックスヤマザキ)
山﨑さんは、2月17日のCRAFTEDカタパルトにプレゼンターとして登壇します。当日はライブ中継も予定していますので、ぜひご覧ください。訪問・見学を受け入れてくださった山﨑さん、社員の皆様、どうもありがとうございました。以上、現場から浅郷がお送りしました。
(終)
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編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/戸田 秀成
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