▶カタパルトの結果速報、ICCサミットの最新情報は公式X(旧Twitter)をぜひご覧ください!
▶新着記事を公式LINEで配信しています。友だち申請はこちらから!
▶過去のカタパルトライブ中継のアーカイブも見られます! ICCのYouTubeチャンネルはこちらから!
ICC FUKUOKA 2024 クラフテッド・カタパルトに登壇いただき2位に入賞した、シーベジタブル 友廣 裕一さんのプレゼンテーション動画【海藻の栽培から食の提案まで、海の生態系を育み循環をつくる「シーベジタブル」】の文字起こし版をお届けします。ぜひご覧ください!
ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に学び合い、交流します。次回ICCサミット KYOTO 2024は、2024年9月2日〜 9月5日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページのアップデートをお待ちください。
本セッションのオフィシャルサポーターはJ.フロント リテイリングです。
▶【速報】古民家宿でその土地に根差した職人技と文化を継承する「LOOOF」がクラフテッド・カタパルト優勝!(ICC FUKUOKA 2024)
▼
【登壇者情報】
2024年2月19〜22日開催
ICC FUKUOKA 2024
Session 8A
CRAFTED CATAPULT 豊かなライフスタイルの実現に向けて
Sponsored by J.フロント リテイリング
友廣 裕一
合同会社シーベジタブル
共同代表
HP | X(旧Twitter)
大学卒業後、日本全国70以上の農山漁村を訪ねる旅へ。東日本大震災後は、宮城県石巻市・牡鹿半島の漁家の女性らとともに「ぼっぽら食堂」や「OCICA」などの事業を立ち上げる。 2016年に共同代表の蜂谷潤と共に合同会社シーベジタブルを創業。世界初となる地下海水を利用した青のりの陸上栽培を開始。障害のある方や高齢の方々と共に香り高い青のりを栽培。現在は海面での栽培にも力を入れており、30種類以上の海藻を手掛けている。 多様な専門性を持つ研究者に加え、料理人たちも仲間となり、今まで流通してこなかった美味しい海藻の陸上及び海面での生産から、新たな食文化づくりまで行っている。
▲
友廣 裕一さん 皆さん、こんにちは。シーベジタブルの友廣と申します。
海藻の研究・生産・料理開発までを行うスタートアップ
シーベジタブルという会社は、海藻の種苗培養に関する研究から生産、料理開発まで行っているスタートアップです。
海藻は今、世界のいろいろなレストランのトップシェフに大変注目していただいているのですが、昨年(2023年)行われたnoma Kyotoでも我々の海藻を使った「海藻しゃぶしゃぶ」というメニューを提供していただき話題になりました。
▶海藻しゃぶしゃぶ @NOMA KYOTO 2023.03.17(SEA VEGETABLE COMPANY)
またスペインやフランスの星付きのシェフたちも海藻の料理方法を知りたいということで来日し、我々のところにも視察に来ています。
日本全国で食べられている海藻は約50種類
ところで、皆さんは、今までの人生で何種類くらいの海藻を食べてこられましたか?
5種類くらいしか思いつかないという方が多いと思うのですが、たぶん10種類くらいは食べていると思います。
実は今、日本全国で食べられている海藻は50種類くらいあると言われています。
日本の海域には食用の海藻が1,500種類も存在
では日本の沿岸海域には、どれくらいの種類の海藻があるかご存じでしょうか?
全然知らないという方もいると思いますが、実は日本の海域だけで約1,500種類の海藻が生えていると言われています。
▶海藻製品 – 歴史、文化など(農林水産省)
しかも、その全てが毒のない食用と言われています。
海藻はどんな特徴があるのかとよく聞かれるのですが、1,500種類あるので、野菜と同じように多様性があります。
たんぱく質40%、太陽光と海の栄養のみで育つ
いろいろな特徴があるのですが、たんぱく質が多く含まれている海藻があることをご存じでしょうか?
皆さんが好きなあの“海苔”は、実はたんぱく質が40%含まれていて、しかも“海面養殖”と呼ばれる方法で栽培される海苔は太陽の光と海の栄養だけで育つのです。
化石燃料や農薬、肥料を一切使わずにたんぱく質40%のものが生まれるというのは、ものすごくサステナブルな食材だと思うのです。
そのような海藻の食文化において、日本は圧倒的に世界の最先端にいます。
50種類も食べている国はほかにはないのです。
海苔の生産量は50%減、真昆布は99%収穫量減
ところが、日本の海藻の現状は悲しい状況になっています。
海苔の生産量はこの18年間で50%減、天然真昆布の水揚げ実績は9年間で99%減、“天然すじ青のり”は、高知県の四万十川が主要産地だったのですが、2020年度にはゼロ、100%減になってしまいました。
この海藻の現状をなんとかしたい、食文化を守ってほしいということで、いろいろなメーカーさんや問屋さんからお声がけをいただき、立ち上げたのが我々の会社です。
青のりは汽水域(淡水域と海域の推移帯)でしか育たないため天然海域では栽培できる場所が限られているということで、我々は陸上で栽培する技術、世界初の量産モデルを確立しました。
このような形で栽培しています。
海藻は食害により激減している
品質のよい青のりを安定して供給できるようになったあと、日本中の青のり以外の海藻も見てみようということで、北海道から沖縄までいろいろな海に年間100回以上潜ってきました。
磯焼けという言葉を聞いたことがある方も多いと思いますが、実際にすごい勢いで海藻がなくなっています。
海藻が生えなくなっているわけではなく、海藻は生えているけれど、食べられてなくなっていることが多いのです。
海藻は夏に枯れたように消失して、冬にまた芽生えるのですが、冬場の海水温度が下がらないため、海藻が芽生えた瞬間に食べられてしまっているのが大きな原因の一つなのですが、たくさん茂っていた海藻が2、3年でこのスライドの右側のように何も生えていない海になっています。
このような海が今たくさんあるのです。
日本中の海に潜っていると、このようなシーンを多く見て悲しい気持ちになります。
海藻がなくなれば魚やイカなどの生物が減少
海藻がなくなるとどのようなことが起こるかというと、生態系への影響がすごく大きいのです。
魚、イカ、貝がとれないというニュースを見ることがあると思うのですが、まさにそういう話なのです。
海藻がなくなったら、生態系のピラミッドがどんどん小さくなるので、いろいろな生き物がどんどん減っていきます。
だから、海藻が海にある状態を増やさないといけないのですが、天然の海藻を増やそうと思っても食害が原因なので増やせないのです。
ほとんど成功事例がないというのが現状です。
種苗生産技術確立で30種類以上の海藻の海面養殖に成功
そのような中、我々が今唯一できることとして考えているのが“海面養殖”という、海藻を海面で栽培するという方法です。
この方法は今までも行われてきたのですが、これまではワカメ、昆布、海苔、もずくくらいしか種苗生産の技術が確立していなかったのです。
漁師さんが育てたいと思っても、この4種類しか育てる選択肢になりませんでした。
これらの4種類が育ちやすい海域はびっしり使われていますが、それ以外の海域は使われてこなかったのです。
今まで使われてこなかった海域に対し、私たちの会社には研究者がたくさん集まっていまして、今、ラボが10ヵ所くらいあり、海藻の新しい種苗生産技術をどんどん開発して、30種類以上の海藻を栽培できるようになりました。
この技術によって、日本中の空いている海に海藻の畑や森をどんどん作ることができるという状況になってきました。
天然の海藻が増えたら魚が増えるけど、海面で栽培した海藻でも増えるの?と、皆さんは思うかもしれません。
海藻を海面で栽培することで本当に魚が増えるのかどうか、今エビデンスを取っているのですが、実際にこの海藻を育てることで、小型の生物が増えるというエビデンスも今取れてきています。
つまり、海藻に関しては、消費すればするだけ海藻の畑や森をどんどん増やしていき、生態系を豊かにしていくという循環が作れるところまで見えてきました。
海藻の生産量だけでなく消費量も激減
ところが海藻は生産量が減っているだけでなく、消費量も激減しているのです。
平成の22年間で約40%減っていると言われています。
我々は、海藻は、食文化が進化してこなかったことが課題ではないかというの仮説を立てています。
結局、ワカメは味噌汁、ひじきは甘辛く煮つける、昆布は出汁に使うとか、和食でしか出てこないですよね。
でも本来、食材として向き合ってみると、もっとポテンシャルがあるのです。
一流シェフチームが海藻のポテンシャルを引き出す
まだまだいろいろな活用方法があるだろうと、我々の社内にはシェフがいまして、リーダーの石坂(秀威 氏)はINUAというレストランのスーシェフとして料理開発をしていました。
去年、noma Kyotoにはシーベジタブルからnomaへ出向という形で参画してきました。
INUA出身の料理人が社内に3人いまして、彼らは日々海藻の料理開発をしています。
今まで誰も海藻を発酵させるなどやってこなかったのですが、たんぱく質が多いので、発酵させるとすごく美味しいものが出来てきています。
自社のテストキッチンでは100種類以上の調味料や加工品が生まれています。
今までなかったような保存方法や、スライド右上の海藻のスイーツ、左下は大豆を使わずに生の青のりを使って作った醤油(青のり しょうゆ)などが出来ています。
右下は海藻に糖分を足して発酵させて出来た美味しいドリンク(海のワイン)です。
▶海藻を発酵させてつくった「海のワイン」が誕生(PR TIMES)
このようなものを今、量産の準備をしています。
海藻食文化を作り豊かな海を育みたい
我々は海藻の新しい食文化を作ることで、皆さんの家庭に今までなかった美味しいものが届いて、しかも体も健康になり、結果として海の周りにたくさんの仕事が生まれて、そして海の生態系が豊かに育まれていく──そんな循環を作っていきたいと思い、活動しております。
最後に、皆さんのお手元にお配りしたのが海藻のタルトです。
我々が栽培している、もともとは沖縄の方で食べられていた「スーナ」という海藻とシャキシャキのひじきを使っています。
▶飲食店やホテル向け。シーベジタブルが希少な海藻「スーナ」の業務用販売を正式にスタート(PR TIMES)
食感が特徴的で、海藻がこのような形で食卓にやってくると皆さんの暮らしも楽しくなるとイメージしながら食べていただけたら有難いです。
ご清聴、ありがとうございました。
(終)
▶カタパルトの結果速報、ICCサミットの最新情報は公式X(旧Twitter)をぜひご覧ください!
▶新着記事を公式LINEで配信しています。友だち申請はこちらから!
▶過去のカタパルトライブ中継のアーカイブも見られます! ICCのYouTubeチャンネルはこちらから!
編集チーム:小林 雅/小林 弘美/浅郷 浩子/正能 由佳/星野 由香里/戸田 秀成