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ICC FUKUOKA 2024 ソーシャルグッド・カタパルトに登壇した、CLACK 平井 大輝さんのプレゼンテーション動画【貧困家庭の高校生への無料プログラミング教育で、人生の選択肢を広げる支援に取り組む「CLACK」(ICC FUKUOKA 2024)】の文字起こし版をお届けします。ぜひご覧ください!
ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に学び合い、交流します。次回ICCサミット KYOTO 2024は、2024年9月2日〜9月5日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。
本セッションのオフィシャルサポーターはICCパートナーズです。
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【登壇者情報】
2024年2月19〜22日開催
ICC FUKUOKA 2024
Session 11A
ソーシャルグッド・カタパルト – 社会課題の解決への挑戦 –
Sponsored by ICCパートナーズ
平井 大輝
認定NPO法人CLACK
理事長
HP | X(旧Twitter)① | X(旧Twitter)②
1995年、大阪生まれ。中学時代に親の自営業の倒産と離婚を経験し、経済的な困難に直面。困難を抱える中高生の学習支援のNPOで活動。その後、生まれ育った環境に関係なく自分の人生を自分で切り拓いていく機会をつくるため、在学中の2018年にCLACKを設立。東京・大阪・愛媛で貧困家庭の高校生向けの無料のプログラミング教育やデジタル居場所を展開。シチズン・オブ・ザ・イヤー受賞。イノベーシスト大賞受賞。FORBES JAPAN 30 UNDER 30 受賞。
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平井 大輝さん こんにちは、認定NPO法人CLACKの平井です。
CLACKでは、貧困家庭の高校生に無料のプログラミング教育を届けています。
ひとり親や生活保護の家庭で育ち、困難を抱える高校生との地道な接点づくりから、プログラミングの学び、そして企業のインターンになるまでを、すべて無料でサポートしています。
難関私立を目指せる成績ながら退塾、そして地元中学へ
立ち上げの背景には、僕自身の原体験があります。
こちらは、僕(写真左下)が3歳の時の写真です。
9歳上の姉と、7歳上の兄がいます。
大阪の十三という下町で、飲食店(うどん屋)を営む家庭で、生まれ育ちました。
小学生の時は、父の仕入れに付き添い、店で多くの時間を過ごし、商売について自然に学べる環境でした。
お客さんがいる時間は、父に構ってもらうことができなかったため、勉強をして過ごしました。
そのような僕を見て、母は僕を中学受験のための学習塾「浜学園」へ通わせてくれました。
5年生の終わりまでは、塾の模試ランキングに載るほどの好成績で、灘中学校も目指せる圏内にいました。
しかし、この頃から、家庭が金銭的に厳しくなり、6年生になる前に塾を辞め、地元の公立中学校へ進学しました。
電気・ガスが止まり、試合に行く交通費がなかった高校時代
進学した中学校では、楽しく過ごしていましたが、2年生の時に、転機が訪れました。
父の経営する飲食店が潰れてしまい、両親が離婚。
姉と兄もちょうど家を出るタイミングであったため、文字どおり家族はバラバラになりました。
借金を背負い、無職となった父のもとで暮らすことを決めた僕は、貧困世帯で暮らすことになりました。
貧困から抜け出すためには勉強しかないと思い、勉強に励み、大阪府立北野高等学校という、大阪のトップ高校へ進学することができました。
しかし、進学校では、周囲との差を、余計に実感しました。
部活の試合に行くための交通費がない、家の電気やガスが止まる、そのような高校生活を送り、悔しさを感じていました。
さまざまな挑戦ができ、価値観を広げられた大学時代
幸い学費免除や給付型奨学金をもらうことができたため、大学進学後は、それまでお金がないことが理由で諦めていた、さまざまなことに挑戦できました。
バックパッカーとなりヒッチハイク、体育会の部活やインターンシップなどを通じて、色々な生き方や働き方に触れることができました。
そして、「当事者の自分だからこそ、自分と同じような境遇の子どもたちに何かできることがあるのではないか」――そう思い、貧困家庭の子どもの学習支援に関わり始めました。
自分はまだラッキーなほうだった
その活動の中で出会ったのが、彼です。
親に3回の離婚歴があり、生活保護を受ける母子家庭で育つ中学3年生です。
4人兄弟の長男として、家事に加え、幼い兄弟の世話もしている、今で言うところの「ヤングケアラー」でした。
そのような辛い状況でも、彼は勉強を頑張り、結果として、志望していた高校に合格できました。
しかし、生活保護世帯というお金がない状況や、母親の不安定さ、兄弟の面倒を見なくてはならないという状況はその後も変わらず続き、次第に、彼の意欲も落ちていきました。
そのような彼や、彼と似たような境遇の子どもたちと関わる中で、「自分は貧困の当事者であったけれども、ラッキーなほうだったのではないか」――そう思うようになりました。
なぜなら、自分は小学校時代、塾や習い事に通わせてもらえ、両親ともに大卒で、大学進学が当たり前の高校に通うこともできていたからです。
しかしながら、それは当たり前のことではなかったと気づきました。
環境・特性によって頑張れない子どもにチャンスを
先ほどご紹介した彼のように、家庭環境や本人の特性によって、頑張ること自体がそもそも難しい子どもたちは大勢いるのです。
昔は、そういった子どもたちはヤンキーになることもありましたが、今の子どもたちは、ヤンキーになる気力さえなく、惰性でYouTubeなどを観て漠然とした日々を過ごしています。
そういった子どもたちを、どうにかしたい。
「無気力にならずに挑戦しようと思えるようなチャンスを作りたい」――その思いで、大学を休学し、子どもの貧困問題に取り組み始めました。
やりたいことをやりお金ももらえるアイデアを発案
その中で、まずは目の前の1人、先ほどご紹介した彼をどうにかしたいと考えました。
彼には、高校進学後に挑戦したいことがありました。
離婚した父親がシステムエンジニアとして働いていたため憧れがあり、「プログラミングをやってみたい」と思っていたのです。
しかし、もちろん、学ぶことのできる環境は、ありませんでした。
そのような状況を見て、僕が思いついたのが、「IT企業で有給のインターンシップに参加できるように、サポートできればよいのではないか」というアイデアです。
やりたいことをやりながら、お金ももらうことができれば、貧困から脱出する手段にもなり、一石二鳥ではないかと思ったのです。
とはいえ、彼にプログラミングのスキルはないため、パソコンを支給して、インターンシップで雇ってもらえるほどの技術を学ぶ機会を、無料で作ろうと考えました。
また、大きな負担となる交通費も支給することで、お金を理由に諦めることもなくなるのではないかと思いました。
2018年の夏、それがCLACKの始まりでした。
ないない尽くしで始まった教室が現在7拠点に
とはいえ、最初は、お金もない・場所もない・パソコンもない・自分もプログラミングができないという、ないない尽くしでした。
どうにか、シェアオフィスの一角を無料で借りることができ、僕自身も一からプログラミングを学びながら、教室をスタートしました。
当時の生徒は、たったの2人でした。
それから5年間、困難を抱える高校生のニーズに合わせ、支援を広げています。
現在では、1,200名以上がプログラミング体験会に参加し、プログラム参加者は600名以上、東京・大阪・愛媛などの3都市・7拠点で、年間200名以上に、無料のプログラミング教育を届けています。
▶️CLACKの事業内容03 Tech Runway 完全無料のプログラミング教室(CLACK)
CLACKを通して進路を開いた卒業生たち
実際の卒業生の声をご紹介します。
「(動画内音声)女性:(CLACKと出会う前の状況は?)母子家庭で育ったので、経済的に困難な状況でした。
(CLACKを通して変わったことは?)CLACKで学ぶうちに、そっち(IT・エンジニア)の業界にすごい興味を持って専門学校に行きました。
(卒業後の活動状況は?)以前は、生徒として支援をされる側だったんですけど、今は自分の経験を踏まえて、CLACKのメンバーとして、働いています」
「男性:(CLACKと出会う前の状況は?)人との関わりとかはちょっと苦手で、なんとかしようとはしてたんですけど、特に何もうまくいかずで……。
(CLACKを通して変わったことは?)勉強する習慣みたいなものもついたりとか、新しいことをやってみようみたいな、ちょっと挑戦してみたりみたいな。
(卒業後の活動状況は?)高校の頃から知っていた企業で、4月からエンジニアとして働くことになりました」
最新技術を知る社会人エンジニアが協力
このような高校生をサポートするため、毎週多くの企業から、社会人エンジニアの方々が来てくださるようになりました。
おかげ様で、生成AIなどの日々変化している技術についても、サポートすることができています。
現在では、フルタイム勤務の社員も10名を超えました。
事業規模としては、5年連続で200%以上の成長をすることができており、2023年度は、団体の収入が1億円を超えました。
企業の使用済みPC寄贈プロジェクトを立ち上げ
応援をしてくださる企業も、年々増えています。
また、単にご寄付いただくだけでなく、共同でのプロジェクトも増えています。
たとえば、一人ひとりの高校生にノートパソコンを支給していますが、それらのパソコンは、企業で2~3年使用後に廃棄するはずだったものを寄贈いただいています。
PCリユースを専門で行っている上場企業(パシフィックネット)と連携することにより、情報漏洩の心配をすることなく、高校生に提供できるようになっています。
▶パス・ザ・バトン PC寄贈プロジェクト by CLACK(CLACK)
このような座組みによってサイボウズや村田製作所といった企業から、これまで1,000台以上のパソコンを頂いています。
こちらの取り組みは、提供企業のIRページにも掲載されており、広報活動もともに行っています。
インターン受け入れ企業が増加
また、インターン先として受け入れてくださる企業も増えてきました。
たとえば、製造業のDXサービスを運営しているベンチャー企業では、CLACKで学習した高校生が、エンジニアインターンとして働いています。
そのうちの1人は、中学生時代にはいじめによって不登校になっていましたが、インターンシップ先の社長(Mountain Gorilla 井口 一輝代表取締役)から、「経歴を聞いて、最初は不安に思っていましたが、今では新卒で入社した社員よりも活躍していて正直驚いています」という、お声を頂いております。
生まれ育った環境に関係なく希望を抱ける社会を
このように、困難を抱える高校生がCLACKと出会い、学び、実践していく中で、人生の選択肢を広げていっています。
子どもたちが、生まれ育った環境に関係なく、将来に希望とワクワクを感じられるように、CLACKの応援者になっていただけませんか。
ご清聴ありがとうございました。
(終)
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編集チーム:小林 雅/森田 竜馬/小林 弘美/正能 由佳/戸田 秀成/中村 瑠李子