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技術が出口を見つけた歓喜と、社会を変えるワクワクと。ディープテックの発生源はここまで熱い

8月31日〜9月3日に開催されたICC KYOTO 2026。その開催レポートを連続シリーズでお届けします。このレポートでは、日本超電導応用開発の大坪 正人さんが優勝を飾ったディープテック・カタパルトの模様をお伝えします。ぜひご覧ください。

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回500名以上が登壇し、1,200名以上が参加する。そして参加者同士が真剣に議論し、学び合うためのカンファレンスです。次回ICCサミット FUKUOKA 2027は、2027年3月1日〜3月4日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページのアップデートをお待ちください。


日本超電導応用開発の大坪さん、優勝が発表された瞬間の感無量の表情

リアルテック・カタパルトから改名し、ディープテック・カタパルトとして初開催となった今回。ディープテックの一朝一夕にはいかない開発の長い道のりと、歩みを止めない情熱、そして技術が未来を変えることが、改めて熱く伝わった回だったのではないかと思う。

優勝した日本超電導応用開発の大坪さんは、7分間のプレゼンの中で、技術の力を信じるメンバーが増えていく喜びを、熱を込めてこう語った。

「中山(武、執行役員CTO)さんは、核融合炉からMRIまで、超電導応用の世界で、30年にわたり大企業で開発を行ってきました。

中山さんはこの線を見て、『この線で超電導の世界が変わる。超電導で銅線に勝てると確信した』と言って、大企業から、この創業間もないJSA(日本超電導応用開発)に転職してきてくれました」

そして、自分たちの開発した超電導線について、高鳴る胸を抑えきれないようにこう言った。

「私たちはこれを世界中に発表して、今、世界を周っているところです。

(中略)

JSAは超電導業界全体のEnablerになります。そして、超電導が当たり前の世界を作っていきます。

電気業界に、次の産業革命を起こします。

これはもう確実に起きると私は信じて、夜もワクワクして眠れません」

また、優勝スピーチでは、手には開発した極細の電線を握りしめて、こう語った。

「宇宙を含めて、これまでいろいろなディープテックをやってきましたが、超電導は本当に将来性を感じる、最もいけると感じるビジネスです。

残りの人生、これに賭けていきたい」

100年以上前に見つかった超電導の技術が今、先人たちの長い努力の積み重ねの末についに社会実装できる糸口が見えてきた。大坪さんも先人たちとともにその歴史に名を連ねる一人となり、長らく大きな課題だった、送電時のエネルギー損失を防ぐ技術の実現に大きく寄与しようとしている。

ディープテックには、そんな歴史を、社会を変える一員になれる、人類の歴史を変えるワクワクと、スケールの大きさがある。

それがダイレクトに伝わる、大坪さんのプレゼン(59分10秒あたりから開始)を、ぜひ動画でも見てほしい。

ディープテックの現在地

ICC KYOTO 2026で、ICCのカタパルトは10周年を迎えたが、スタートアップに次いで2番目にできたのが、当時リアルテック、現ディープテック・カタパルトだ。

ICC代表の小林 雅さんは、10周年の挨拶も兼ねて、会場に集まったディープテックに関わる人たちにこう伝えた。

「社会に資する研究開発を応援できるのはみなさんのおかげです。ファンドのリターンを求めてベンチャー投資をしていた時代、3年、5年でIPOをと言っていた自分を恥じました。こんなにも長く研究開発を重ねて、実用化するのに何年かかるかわからないものを日々やっている。こういったものが本当に社会を変える原動力になる。

今となっては本当に楽しみにしているカタパルトの1つです」

商品提供企業の紹介の次に壇上に現れたのは、UntroD Capitalの永田 暁彦さん。数々のICCのセッションに登壇するが、自身の発案で2017年にこのカタパルトが始まったことから、この冒頭でのプレゼンテーションは一際熱かった。

2015年、永田さんたちが日本の科学技術で社会に貢献するためのファンドとして創設した「リアルテックファンド」(UntroD前身)は100億円を集めてスタートしたが、偶然にもアメリカでも同じような動きがほぼ同時に始まっていたという。

それから10年で、時価総額ランキングの上位をディープテック企業が多く占めるようになるほど環境は変化した。名称をリアルテックからディープテックに変えた今、いよいよこのカタパルトで世界と日本を融合し、ディープテックの中心をICCのこの場にしようと永田さんは呼びかけた。

過去優勝者として永田さんの前に壇上でスピーチしたLIFESCAPES林 正彬さんは「カタパルトは、自分の可能性を信じてくれた場所」と語った。日本に約188万人もの患者がいて、4人に1人が一生のうちに発症するという、脳卒中後の後遺症を改善するほどの技術を開発しているにもかかわらず、である。

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それほどまでに、世界に伍する技術を持つ研究者たちは日々人知れず努力を続けて、長い研究の日々に応援されることは少ない。このディープテック・カタパルトがそのよりどころとなり、研究開発者たちの素晴らしい取り組みをもっと世の中へ発信する場に、と永田さんが改めて伝えたのは、そういう意味も込められていたと思う。

迷いなき確信が、会場を熱くする

世界に伍する技術を持つ7名だが、登壇を待つ姿は極めて穏やかだ。ICCサミットの前夜祭のひとつ、カタパルトやアワードのチャレンジャーたちが集まるチャレンジャーズ・ナイトでも、ディープテックの人たちは物静かなイメージがある。

研究開発の日々で、それぞれ全く異なる分野のチャレンジャーたちは、そんなに共通点はないのかもと思いきや、事前の公開リハーサルや、ICCサミットの他のプログラムなどに参加して、交流を深めている話も聞いた。直前でプレゼンに手を加えて意見を聞いたりもしたそうだ。

本番のプレゼンはどれも見応えがあり、自分たちの技術が社会を変えるという信念を伝えていた。「世間に果たして受け入れられるのか」「聞いてもらえるのか」という迷いはない。自分たちの技術は絶対に社会を変えるという確信を伝えるから、ディープテック・カタパルトはいつも清々しい。登壇した企業を紹介しよう。

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そして、優勝した「日本超電導応用開発」、右手に誇らしげに掲げているのが、極細の超電導線である。

未来の発生源が、ここにある

結果発表を待つ間の審査員コメントで、2022年にこのカタパルトで優勝したエイターリンクの岩佐 凌さんは「ディープテックを取り巻く状況が変わり、時価総額もさらに上がっていく。価格の壁をみなさん意識しているのが素晴らしい」と言い、普段はアメリカでこの分野に投資しているScrum Venturesの宮田 拓弥さんは、アメリカと見劣りしないレベルの高さでビジネスになる、と語った。

優勝した大坪さんには、このカタパルトをスポンサードする慶應イノベーション・イニシアティブ(KII)や、優勝賞品を贈呈する企業から激励の言葉が送られた。

KIIの山岸 広太郎さんは「サイエンスやテクノロジーによる本質的な課題の解決と、ビジネスの成長は必ず両立する」と伝え、一休の代理として登壇した小林さんは「実は大坪さんと大学の同期。最近は審査する側だったので今回はいい機会だと、リハーサルで言っていた。チャレンジする姿が素晴らしい。一休の代理としては、たまにはゆっくり休んで!」とメッセージ。

「知財戦略を一緒に考えたい。実は昔、電線会社で超電導に関わったことが」と明かしたのは、内田・鮫島法律事務所の鮫島 正洋さん。永田さんは「実は投資先。初めて会った日に『この会社に投資するために11年前ファンドを作った!』とオフィスの真ん中で叫びました。今日、この場にいたことが、将来必ず自慢できる会社になる」と興奮冷めやらぬ面持ちで賞品を贈呈した。

今年のノーベル化学賞を受賞した、東京理科大学名誉教授の硤合 憲三さんは会見でこう語っていた。

「研究していて苦しかったことは、なかったとは言えないが、全然覚えていないというか気にもしていない。傍から見たら苦しいことが続いていたかもしれないけど、全然本人はそうは思っていない。楽しいというか感動したことはありますね」

その言葉に、今回の7人のチャレンジャーたちの姿が重なった。こういうことが実現したら、どんなにいいか、ということが自分たちの技術で可能になる。技術は非言語だから、いきなり世界に届くものが生まれる。

ヒーローインタビューで「緊張したが、いつもあっち(チャレンジャー側)にいたいと思っていた」という大坪さんは「小さい会社だから、これからもいろんな方に応援してもらいたい」とさらに士気を高めた。

長い研究開発の末に、ようやく社会実装への道が見えてくる。そこには、技術を信じてきた人たちの歓喜があり、その先に社会が変わる未来へのワクワクがある。

そして、その技術を世の中に届けるためには、研究者や起業家だけでなく、応援する人たちの力も必要だし、そういうことができる場も必要だ。

技術が未来を変える。その可能性を信じる人たちが集まり、互いに刺激し合い、応援の輪を広げていく。ディープテック・カタパルトは、そんな未来の発生源になろうとしている。

(終)

編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/戸田 秀成

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