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2月13日~16日の4日間にわたって開催されたICCサミット FUKUOKA 2023。その開催レポートを連続シリーズでお届けします。このレポートでは、フード&ドリンクアワードに出展した15社のブースを紹介します。ICCアワードのブース出展が、提供販売や、審査会場にとどまらず、Co-Creationが生まれる様子を目撃しました。ぜひご覧ください。
ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回400名以上が登壇し、総勢1,000名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。 次回ICCサミット KYOTO 2023は、2023年9月4日〜7日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページのアップデートをお待ちください。
事前のオンラインミーティング、DAY 0の会場設営と、前夜祭を経て、すでにスタートしている感のあるICCアワードだが、DAY 1のSession 1では、審査員と登壇企業の代表者が集結したキックオフが行われた。
出展企業15社が壇上で意気込みをプレゼンし、前回優勝者の北三陸ファクトリー下苧坪 之典さんや、前田農産食品 前田 茂雄さんが今回の出展企業にメッセージを送った。2人とも前回のICCサミット KYOTO 2022でフード &ドリンク アワードとクラフテッド・カタパルトとW入賞という強者だ。
▶【速報】「フード & ドリンク アワード」のグランプリは北三陸ファクトリーの「UNI&岩手産バターSPREAD」(ICC KYOTO 2022)
北三陸ファクトリー下苧坪さん「僕ら審査員も挑戦者で、みなさんと同じ想いです。全国津々浦々、各地域の代弁者として、食の魅力、味、背景をお伝えいただいて、素晴らしい食をこのICCから世界に発信できたら、素晴らしい時間になると思います」
前田農産食品 前田さん「全国各地で、前向きに一次産業から日本を元気にしたいという人が、この場にはたくさんいます。想いを伝えることが重要だと思うので、ぜひ頑張ってください!」
出展企業は、31名の審査員により、以下の5つのファクターにおいて、「とても良い」 5点から「イマイチ」 1点まで、5段階で評価される。
- 美味しさ
- ヘルシーさ(健康)
- 手軽さ・便利さ(安い・時短・利便性)
- ソーシャルグッド(社会性)
- 想いへの共感
また、今回から審査員以外のオーディエンスも投票に参加できるようになった。「素晴らしい」と思った1社について投票し、オーディエンス賞が決定する。
キックオフの各社スピーチとブースの模様を写真とともに紹介していこう。
井上寅雄農園
井上 隆太朗さん「長野県佐久市のいちご狩りの観光農園です。規格外のイチゴを地元の特産品にしたいと、地元酒蔵とコラボして、『イチゴ甘酒スムージー』を開発しました。販売1年で1万本売れています。アイスクリームにこの甘酒をかけて召し上がっていただきます」
そのまま飲んでも美味しいイチゴ甘酒スムージーをバニラアイスクリームにたっぷりかけるという贅沢さ。ビタミンCたっぷりのイチゴと栄養たっぷりの甘酒とのコラボは、順路の最終地点のデザートとして、甘党の心を捉えていた。
格之進の千葉 祐士さんはそのアイスクリームを一口食べて「この甘酒スムージーはもっと値段を上げるべき!」と断言。規格外のアップサイクルであっても、その特別な味わいに感銘を受けた様子で、井上さんに真剣に話しかけていた。
おさぜん農園
長村 善和さん「15年前からいちご狩りの観光農園をやっています。本当においしいイチゴ、ヘタの先まで真っ赤な完熟イチゴを食べていただきたいと持ってきました」
完熟いちごといちごのラスクを提供した「おさぜん農園」が、おなじくいちご農園を営む「井上寅雄農園」と隣り合わせたのはICCではすべての順番が五十音順のため全くの偶然。シーズンまっさかりのいちご尽くしという贅沢な体験となった。
長村さん「おいCベリーという、ビタミンCが多くて、果肉が硬くて輸送などに向いた品種です。いちご狩りだったら、もっと完熟のイチゴを食べてもらえるんだけどなあ…郵送となると、どうしても白い部分を残さないといけない。イチゴは成る順番に大きいのですが、今は大きい時期ですね」
土遊野
河上 めぐみさん「富山県の里山をフィールドに、100枚を越える棚田での有機米づくりと平飼い養鶏を主軸に循環型農業をしています。棚田米の玄米と、本みりんや日本酒を試飲いただきます。ここで里山農業と出会っていただき、富山に、現場に見に来ていただいて、日本の里山をともに考えるきっかけ、つながりができれば」
河上さん「みりんも、日本酒も、もとはお米だったなあとわかって、お米の力を再認識いただければ。過疎地はどうしても最初に見捨てられる場所になっていますが、その価値、可能性を知るきっかけになるといいなと思っています。
平飼い養鶏もやっていて、卵もこだわっているのですが、供給不足なので地元で売り切れてしまいます。お米は地元のおじいちゃんにもう一山請け負ったので、もっと作りながら売れると思います」
ともにワンオペでブースに立っていたお隣のヨダファームと運営を助けあっていた河上さんは、提供するダイシモチ麦と棚田米の玄米のまぜ炊きに、ヨダファーム特製の無水トマト糀カレーをかけるCo-Creationを2日目から提案。ブースを訪れた飛騨工業の岡田さんが試食して、美味しさにうなる場面も。
ヨダファーム
功刀 隆行さん「トマト一筋半世紀農家、ヨダファームです。お父さんとお母さんが作る、A品と味は変わらないのに規格外のトマトが大量に畑に捨てられる現実を見て、こんな世の中を変えたいと思いました。今日は過去8回のMakuakeの挑戦で生まれた、5種類の規格外のトマトを使った農家代々に伝わる製法で作った加工品をご用意しました」
規格外は形だけ、味は一級品のトマトを贅沢に使った専門農家のレシピが美味しくないわけがなく、トマト塩糀、トマトケチャップ、トマトBBQソースにカレーなど、それを噛みしめるように味わう審査員の姿が目立っていた。
山西牧場
倉持 信宏さん「私たちの豚肉の『飲める脂』と称されるさっぱりとした脂、そこに旨味があります。今回は肉の旨味と脂をバランスよく味わえる肩ロースという部位を出品します。また、99%海外に流出してしまう豚革を国内でなめして作った、Makuakeで挑戦中の製品(現在は終了)をブースでご紹介いたします」
「山西牧場のお肉を食べたい」と味で記憶してブースを訪れる人がいる、過去にアワードやカタパルトに参加ずみの倉持さんはICCでもおなじみの存在。冷めてもおいしく食べられるロースを出品したのは、味への自信のあらわれでもあり、知り合いの多い審査員たちとの会話が弾んでいた。
しょうがのむし
周東 孝一さん「『発酵ジンジャーエール』というものを作っています。ジンジャービアと英語でいわれるジンジャーエールのルーツとなった飲み物で、ビールのように発酵させて作るノンアルコール飲料です。弊社は本格的な醸造所を備えた、アジアで唯一の発酵ジンジャーエールの製造所で、今日は生樽でビールのようにサーバーから提供させていただきます」
ちょんまげに和服という出で立ちに負けないほど味のインパクトも強い「発酵ジンジャーエール」を作る周東さん。ブースに並ぶジンジャーエールの瓶はすべて味が異なっており、ブースではそのうち3種類を提供。試飲してみると、シャープな苦味のあるもの、さわやかなもの、驚くほど味が違う。
「クラフトビールだったらまだ技術やレシピがある程度確立されているものがネット上にあるけれど、ジンジャービアはアジアで誰も作っていないので、1年半の間作りまくって、売りまくっていたらこうなりました。20〜30種類(2023年2月現在)あります。
畑によって、または収穫時期で、しょうがは全然味が変わります。レシピが同じでも辛くなってしまったりする。それも楽しんでいただけるといいのですが。
製法はビールと同じです。デーツシロップや麦芽糖を使って、コンセプトに合わせたもので発酵します。シロップをソーダで希釈しているのでなく、材料を発酵させている。狭山の紅茶とインドのアッサムを合わせた紅茶とカモミールを合わせたり。だいたい1週間〜10日発酵させます。麦芽を使うと2〜3週間ポコポコと発泡しています」
キャビア王国
鈴木 宏明さん「今日は私が毎朝食べている、キャビア王の朝食『キャビアキングサンドイッチ』というチョウザメのサンドイッチを持ってきました。みなさんなぜ今までチョウザメのお肉を食べたことがないか知っていますか? 僕が全部食べているからです! (会場笑)
今日はそれをちょっとだけ、おすそ分けしに来ました。皆さまにはチョウザメを食べて、僕が目指す、3つのなくさない社会の実現に協力していただきたいと思っています。チョウザメをなくさない、地域をなくさない、感謝をなくさない社会です。僕と一緒になくさない社会を目指しましょう」
白身魚に似た、チョウザメ肉のフライをサンドイッチにした「キャビア王の朝食」。チョウザメの卵(キャビア)が採れるようになるまでには約7年かかり、養殖業者でも採算が合わないと肉を廃棄してしまうことが多いのだとか。
鈴木さん「キャビアを持ってくればそれなりにもてはやされるのですが、僕が伝えたいのは、チョウザメに感謝して命をいただいていること。そのお肉を捨てないでいい世界を作るには、文化を作ろうと思って、目利きの人が多いICCに持ってきました。僕は美味しいと思っているけれど、他の人はどう思うかわからないですから。
みなさんが美味しいと言ってくださったら、工場に併設する飲食店を作って提供したいと思っています。もし美味しいと思ったら、お知り合いにチョウザメは美味しかったと伝えてください!」
田島蓮園
田島 寛也さん「愛知県の愛西市から来ました。レンコンを農薬、化学肥料を使わずに栽培しています。収穫は田んぼの水を全部抜き、ユンボとクワで1本1本手作業で収穫しています。昔ながらの甘くてもっちりした品種を栽培しています。
うちのレンコンを食べたお客様は、レンコンの価値観が変わったとか、他のレンコンが食べられなくなったとよくおっしゃいます。素材をそのまま味わっていただけるように、縦斬りにして塩でソテーした塩きんぴらと、米油でさっくり揚げたレンコンチップスをご用意いたしました。皆さんぜひ、レンコンの魅力という底なし沼に、足を突っこみに来てください」
田島さん「昔ながらの品種を守って栽培しています。なので非常に奥深い甘みやもっちりした食感が出せる。品種と収穫の方法でれんこんの味はかなり違ってきます。肥料は馬糞だったり、だしがらの昆布だったり、海のミネラルがレンコンのうまみに直結するように作っている。作りに使ってるものは海のものなんですね。
今、主流の品種は、水圧ジェット水流で泥を流してショベルカーとかで収穫している。季節の風物詩みたいな感じでテレビでもよくやっていますよね。でもうちは、田んぼの水を抜いてから普通に入って行って、クワで傷つかないように1本1本掘ります。難易度の高い宝探しみたいですね(笑)。
愛知県の愛西市は、三重県との県境のすぐでデルタ地帯。レンコンは国産は6割以上が茨城県で、愛知県は4位ですが、昭和40年代まで1位だったんです。今でうちは4代目で、75年くらいやっています。
木曽川が非常に洪水が多かったので、土質としてもお米が育ちにくく、非常に水はけが悪くて、レンコンしか育たなかった。変遷はあるのですが、むしろレンコンに徹したした方で行こうと」
田島さんはマザーハウス山崎 大祐さんの経営ゼミに2022年春から参加しており、その縁で今回出展となった。他に農家はいなかったというが、なぜ参加することにしたのか。
田島さん「産業がこれから農業生産だけではこれから立ち行かなくなるという意識があります。例えば今、海外から化学肥料が入ってこない。包括的に農業の関連産業も含めて、自分たちの仕事を考えたいと、マザーハウスさんのビジネスモデルから学べることがあるんじゃないかと考えました」
口コミで人気が広がり、地元愛知県内のほとんどのオーガニックスーパーに卸していて売れてしまうそうで、他の場所で味わえる機会は超レア。食べた方は驚いたと思うが、熱々のきんぴらを頬張ると、知っているレンコンのイメージを裏切る美味しさが広がる。
門崎
千葉 祐士さん「皆さんに今日知っていただきたいのは、日本の発酵文化の中で、黒毛和牛を原料とした世界初の発酵調味料『牛醤』です。醤油、みそ、牛醤というような調味料にしたいです。モスバーガーの和牛一頭買いバーガーのソースに、一風堂さんでは牛醤を使った限定のラーメンを提供します。
▶サーロインやヒレもパティに使用した“一頭丸ごと”のプレミアムバーガー「一頭買い 黒毛和牛バーガー ~特製テリヤキソース~」(PR TIMES)
▶一風堂 x 格之進、一日だけのコラボ、格之進ラーメン@一風堂 浅草橋本舗(お一人様のお手頃ランチブログ)
和牛の可能性と価値の拡大、そのようにして生産者に還元できるような取り組みをしながら、世界に発信していきたいと思います。日本の3大調味料となれるように、皆さん応援をお願いします」
いつも大人気の格之進のハンバーグを提供しながら、好奇心旺盛な千葉さんは時間をみては他のブースを訪ね、新たなCo-Creationの可能性の追求を続けていた。一口食べてみては味について質問し、ビジネスモデルについて聞き、なにか一緒にできることがないかどうか提案している。
田島蓮園のれんこんの塩きんぴらを一口食べてひらめいた千葉さんは、すかさず自分のブースから焼いたハンバーグを一切れ持ってきて、牛醤をかけて一緒に食べて至福の表情に。「これ最高!いける!」と田島さんやアックスヤマザキの山崎さんに熱く勧めている。この場かぎりの豪華コラボ、果たして何人が口にすることができただろうか。
フードコーナー(Craft Curry Brothers)
角田 憲吾さん「カレーのルーを作っています。原材料の半分は野菜と果物です。実家が食品の素材メーカーで、苦労して作り上げたもので、水とルーだけで美味しいカレーができます。野菜やお肉は煮込む必要がありません」
代々木に店舗を持ち、このときは渋谷の店舗の開店準備中だった角田さん。キーマカレーと、超本格無添加カレールーの素となるカレーフレークを、スープにして提供。どちらも材料やスパイスを知りたくなるような深い味わいが人気を集めていた。
「うまみの理由は、食品添加物を一切使っていないこと、普通のカレールーは小麦と脂が半分以上なのですが、野菜と果物を半分以上使っています。玉ねぎは100kgが10kgになるまで炒めていて、旨味とコクがあるのはそこからですね。
野菜が溶け切っているので、煮込む必要がない。だから野菜を入れたカレーは店で出していません。
このフレークを使えば仕込みは15分でできます。
キーマカレーは、ひき肉と玉ねぎにこのフレークを混ぜただけ。そして煮込み時間で味が変わります。お肉は山西牧場のもので、これは豚肉なんですか?と驚く方もいらっしゃいます。フレークは使い方次第で、魚のムニエルやタンドリーチキンににも使えます」
リミックス
富永 律子さん「OEMでお菓子を3000種類以上作ってきましたが、コロナをきっかけに、以前からやりたかった飲食業に挑戦しています。イタリア人がホッとするようなイタリアのパスタが食べられる店をやろうと、パスタ工房兼飲食物販店をやっています」
本格派イタリアンの出品で大人気だったブース。イタリア人も納得する味のミートソースとフェットチーネや、各種アワード受賞のシチリア産DOPエクストラヴァージンオリーブオイルは、食通が即買いするほど。
はなきファーム
中本 健仁さん「愛媛県の一番南の町、愛南町から来ました。祖父母の代から続く園地を引き継いで、河内晩柑を作っています。和製グレープフルーツと言われていて、4月からが旬で8月頃まで食べられます。2月は収穫前の冬の時期ですが、実が出荷量と同じくらい自然に落ちてしまいます。
これは全然食べられるものなので、ブースでは落ちたものをカットして、またそれで作った加工品、ドリンクも用意しています。拾ったものも食べられる世界を作りたいと思っています」
中本さん「みかんの旬は冬基準なので、11月が早くて極早生といいます。河内晩柑の旬は4月で、以降8月ぐらいまでと一番遅いので晩柑なのです。1月から2月ぐらいで自然に実が落ちてしまうのですが、かんきつ類はヘタが取れたらもう売れません。
いわゆる規格外品、大きさが異なったり見た目が汚いというロスとも違う。酸味は若干高めですが、中は十分美味しい。ただ収穫前に落ちてしまっただけです。歩留まりは0.5。どうすることもできないので、今までは当たり前のように捨てていました。
それをコンフィチュールやジュースといった加工品にしています。そのままでも美味しいです。
まずはこういった場で、河内晩柑を知ってもらうのが第一。かんきつ類の少ない5〜6月、ちょっと爽やかに温かくなってきて、蒸し暑くなって夏みたいな季節に、のどごしがよくて暑い時に爽やかに食べれるものとしてPRしたい。ゼリーやかき氷のシロップにしてもめちゃくちゃ合うんです。
スイカが出たら夏、のように、そろそろ蒸し暑くなってきたら晩柑みたいな感じで広めていきたいと思っています」
のらくら農場
萩原 紀行さん「長野県の標高1000mの高原地帯で、50〜60種類野菜を作っています。僕らの農場は“怒らない”農場です。怒ることをやめると平均67歳の農業界で、若い人たちがいっぱい入ってくると思います。僕たちが目指しているのは、農業、医療、栄養学の距離を縮めることです。
僕らが得意としているのは、土の設計です。それで味も栄養価も全く変わります。あと生育診断です。鉄分やマグネシウムなどが含まれているかを診断して、それをもとに野菜のケアをしていきます。この時期は生鮮野菜が少ないので、3種類の野菜スープとジュースを持ってきました。僕らの設計と生育診断をもとに作った加工品です。ぜひお召し上がりください」
食べチョクでも、わざわざでも取り扱いのある萩原さんの野菜で作った加工品は、シンプルなブースの佇まいながら、審査員たちから「ナンバーワン」と押す声が上がる大反響。秋元 里奈さんや平田 はる香さんがブースに訪れると、久しぶりの再会に盛り上がる場面も。
パプアニューギニア海産
武藤 北斗さん「30年以上、パプアニューギニアの最高級の天然エビ一筋でやっています。
僕は食べ物には本当に作り手の心が宿ると思っています。家庭でもそうだし、工場でも一緒だと思っていて、どうやったらみんなが苦しまずに働けるかということを考えました。現在パートさんが22人いますが、全員が好きな日に出勤、休み、連絡は一切してはいけないとして、10年間続けています。
その結果、品質、効率が上がって、今まで働けない人たちが一緒に働けるようになりました。今の社会の中で何か息苦しさを感じるならば、この食べ物の世界から変えていきたいと思っています」
揚げたてのエビコロフライは、無限に食べられるようなおいしさで、2日間に渡ってリピートしていた方も多いのではないだろうか。そんなエビフライの加工を行っているのが、キックオフで語っていた22人のパートさんたちだ。
武藤さん「好きな時に気兼ねなく休めることが会社にとってプラスだと思っている。そもそも子育て中のお母さんが多かったっていうのが理由なんですよね。10年前に始めて、いまは時間も自由。何時に来て帰るのもOKです。
そうするとなぜか労働時間が平均的になる。みんなも連絡取り合ったりはしてないけど、単純に人は多様なんだと思います。
僕らもなぜそうなるかはわからないけど、なんかなってるんです。問題が出てきたらその時に考えようと言っているんですが、そのタイミングが来ない。
最初は9人で、まだ勤務時間は自由でなかったのですが、1日だけ、誰も出勤しないことがありました。逆に2年間9人で、時間も縛られてるのにそれが1日だけなんですよ。だからその1日を基準に物事を考えるのはやめて、そこに縛られてみんなが苦しく出勤するぐらいだったら、その1日は祝日と考えようと。
もうエビは2日間で話し尽くしたので(笑)、ファイナルラウンドで、もし3 分のスピーチができるならそれを話したいな。僕の中では味や作り手の思いがこもることと、苦しまないで働くことはつながっているんですよ。
人件費も下がったんです。辞める人が少なくなるんですよね。逆に人が押し寄せることもない。僕ら別に障害者雇用を打ち出しているわけではないんですが、そういう方もいつのまにかいる。いろんな人がいる方が組織としてもバランスが取れるし、平均化していくんです。誰かを排除しようとするとたぶんだめなんだと思う。
ただ好きな時に来て好きなように働けばいい。すると働いた経験がないという人もやってきます。結構そういう人って、自分から言ってくるんですよね。僕はその真面目さに惚れる。時間が決まっていることがプレッシャーで引きこもってしまうので、逆にそれさえなければ、真面目だから働けるんです」
苦しまず働くことと美味しさの共存は、自然の摂理を聞いているようでもある。ちなみに武藤さん自身に引きこもりの経験はなく、そういう課題を解決しようと事業をしているわけでもない。
武藤さん「単純に決まった時間に行くのは嫌だなとは思ってましたけど、僕はもう見てのとおり元気いっぱいに過ごしてきたので(笑)。彼らの苦しみを僕は理解していない。どこかから理解するのを止めて、それだけでいいなと。僕らにとっても楽なんですよ」
ふく成
平尾 有希さん「熊本県の離島から船でやってきました。本日は水産養殖×テクノロジーで作り上げた、フィレッシュというお魚をお召し上がりいただけます。未来につながる水産養殖をサステナブルなものにできる商品だと思っているので、ぜひブースでお召し上がりください」
平尾さん「真鯛の炙りとカルパッチョ、和と洋でご用意しました。少し塩を振っています。日本酒と最高です。
もともとは卸売でしたが、コロナ禍で売上が8割減となり、食べチョクの秋元さんのところでtoCを始めたんです。
コロナ前から冷凍の機械は持っていたのですが、活用できていなかったんです。社会的にどうしても生が冷凍を上回るという概念が強くて、約5年間それで苦しみました。なぜ美味しい生を凍らせるのかと、生が冷凍を上回るとか、鮮度が落ちるというイメージが強かったんです。
それが今は、冷凍が売り場でも150%増と言われているくらい注目されています。やっと社会が追いついてきた。冷凍で調理してあったら無駄にもならないし、魚を1匹買っても、どうしたらいいかわからないという方も多いですよね。
子育てもしているので、その目線でいかに時短できるかにこだわっています! カルパッチョはソースつきで、そのままサラダの上にのせたり出来ます。
お兄ちゃん達が部活から帰ってきたから、真鯛の醤油漬けを氷水で解凍してご飯に乗っければ、めっちゃ時間の漬け丼にできます。5〜10分でできますよ!お父さんが飲んで帰ってきたら、漬け丼にお茶をかければ鯛茶漬けです。
骨や内蔵が年間5.5トン出るのですが、骨もふりかけにしたり、おせんべいにしたり、内臓も醤油蔵さんと魚醤にしようと今、取り組んでいます。愛情込めて育てた魚なので、残さず使いたい。そうしたらお客さんも内蔵の処理に困らないじゃないですか。
それはそうと、今日あともうちょっとクラフテッド・カタパルト登壇なのでドキドキしています…!」
その後、平尾さんが渾身のプレゼンで優勝を飾ったのは既報の通り。父親の名前をつけた社名で、未来につながる水産物を手軽に、無駄なく楽しめるアイデアをどんどん考案していく予定だ。
▶優勝プレゼン:養殖xテクノロジーで、こどもたちの未来に持続可能な水産業をつなぐ「ふく成」(ICC FUKUOKA 2023)
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
美味しさで判断される食の世界で、これだけ作り手の想いを聞くことのできるアワードというのは、類を見ないもの。とはいえいかに素晴らしい理念を持っていても、味が伴わなければ支持されることはない。しかしどうだろう、もはや想いがないことには、物足りない世の中になっているのではないだろうか。
とはいえ、この場に集まっているのは目利きの人たちが推薦してきた生産者たちばかり。味は当然のように平均以上のさまざまな食のバトルで、果たしてどこが優勝を勝ち取るのか。DAY2のファイナル・ラウンドまでその行方はわからない。
(終)
▶ICCサミットや登壇企業の最新情報を随時お知らせ。公式Twitterをぜひご覧ください!
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編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/戸田 秀成