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地域の未利用資源が循環する平飼い養鶏で、美しい風景を未来につなぐ「点々」(ICC KYOTO 2025)

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ICC KYOTO 2025 ソーシャルグッド・カタパルトに登壇した、点々 羽田 知弘さんのプレゼンテーション動画【地域の未利用資源が循環する平飼い養鶏で、美しい風景を未来につなぐ「点々」】の文字起こし版をお届けします。ぜひご覧ください!

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に学び合い、交流します。次回ICCサミット FUKUOKA 2026は、2026年3月2日〜3月5日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。

本セッションのオフィシャルサポーターはICCパートナーズです。

【速報】“インパクトヒーロー”を育成し、世界中で小さな革命を起こし続ける「Earth Company」がソーシャルグッド・カタパルト優勝!(ICC KYOTO 2025)


【登壇者情報】
2025年9月1〜4日開催
ICC KYOTO 2025
Session 11A
ソーシャルグッド・カタパルト – 社会課題の解決への挑戦 –
Sponsored by ICCパートナーズ

羽田 知弘
点々
取締役
公式HP | 公式X

1300人のむら、岡山県北・西粟倉村在住。20世帯40人の集落を拠点に中山間地の未利用資源を活用する資源循環型の平飼い養鶏に取り組む。地域資源を編集した生業づくりがお仕事。1989年生まれ愛知県津島市出身。三重大学卒業。住友林業フォレストサービス株式会社を経て、株式会社西粟倉・森の学校(現:株式会社エーゼログループ)に参画。事業部長としてマーケティング・セールス、集客施設の立ち上げ・運営等に携わる。2022年に合同会社セリフを創業。2024年に株式会社点々を創業。西粟倉事業協同組合の理事。くくり罠の猟師としても活動する。


羽田 知弘さん 株式会社 点々の羽田 知弘です。

よろしくお願いいたします。

本日は、「鶏は中山間地農業の救世主だ!」というお話をさせていただきます。

中山間地域等について(農林水産省)

卵好きの日本人が知らない「卵の課題」

ご存じでしょうか。

日本人は、1年間で320個の卵を食べています。

世界第4位の消費量です。

日本は19個減の320個 1人当たり年間鶏卵消費量 順位は2つ落とし4位に 2024年9月15日(鶏鳴新聞)

しかし、毎日のように卵を食べているにもかかわらず、その生産背景を知らない人が大多数です。

この現状を変えるために、私は、養鶏家になりました。

岡山県の20世帯40人の限界集落が拠点

私は、岡山県にある西粟倉村から参りました。

人口わずか1,300人、村内にはコンビニすらありません。

おそらく、今、会場にいらっしゃる方々の人数は、村の人口の約半数に相当するかと思います(笑)。

20世帯40人の限界集落が、私たちの生活と事業の拠点です。

自販機もない地域で生活しております。

耕作放棄地、鶏、未利用資源、これら3つを組み合わせて、循環型農業に取り組んでいます。

鶏が自由に走り回る平飼いの鶏舎

まずは、鶏の様子をご覧ください。

鶏舎は、棚田に建っています。

鶏は、自由に走り回ります。

お腹が減ると、餌を食べ、体を綺麗にするために砂浴びをします。

卵を産まない雄も飼育して、群れを守ってもらいます。

そして、雌は巣箱で、卵を産みます。

日本で鶏の平飼いは全体の約1%

日本では、「平飼い」は普及していません。

流通シェアは、わずか1%です。

日本のケージフリー飼育の鶏の割合は1.11%、ケージ飼育が98.89%(2023年調査結果)(アニマルライツセンター)

では、残りは何でしょうか?

「ケージ飼い」です。

流通シェアの99%を占めています。

ケージ飼いは、非常に効率的に卵を生産できる仕組みです。

しかし、世界195カ国のうち39の国が禁止しています。

理由は、アニマルウェルフェア(動物福祉)です。

狭いケージの中では、鶏が羽ばたいたり、巣で産卵したりといった、本能的な行動ができません。

卵の自給率はほぼ100%、飼料の自給率は?

もうひとつの課題は、食料自給です。

卵の自給率は、97%を超えています。

鶏卵97%、鶏肉66%に上昇 令和2年度の食料自給率 2021年9月15日(鶏鳴新聞)

しかし、飼料の自給率を考慮しますと、わずか12%しかありません。

これは、どういうことなのでしょうか。

日本の卵の生産は、輸入飼料に依存しているということです。

さらに、円安や紛争の影響もあり、供給や価格は安定していません。

地域には捨てられている宝がある

輸入の飼料に依存しなければ、卵は生産できないのか。

そのようなことはありません。

地域には、捨てられている宝が、山のようにあるのです。

規格外のくず米やコイン精米機の米糠、醸造所のビール粕、漬物工場の白菜など、未利用資源をかき集め、飼料として活用しています。

自家配合の発酵飼料からレモンイエローの卵

鶏の体調や季節に合わせて、配合を変えています。

こちらは、私たちが生産している卵です。

黄味は、鮮やかなレモンイエローに仕上がります。

卵の味わいや黄身の色は、鶏の健康状態と鶏が食べた飼料で決まります。

ミシュラン星付きレストランが採用

卵は、1個100円で販売しています。

生産開始から9カ月が経ちましたが、現在は、50店舗でお取り扱いいただいています。

ミシュランの星付きレストランでも、ご使用いただいています。

原体験は庭先で始めた資源循環

私の原体験について、お話しさせてください。

私は、養鶏業の勤務経験はありません。

農家のせがれでもありません。

10年前に引っ越してきた、移住者です。

原体験は、家庭養鶏でした。

有精卵を孵化させて、ひよこを飼い始めました。

すると、感動的な出来事が起こりました。

家で、生ごみを捨てることがなくなったのです。

料理で発生する野菜の皮や魚のアラは、餌になります。

庭の雑草でさえ、鶏には新鮮なサラダに。

鶏の糞は畑にすき込み、肥料として活用します。

人が食べない規格外の野菜は再び餌にするなど、鶏を中心に資源が循環することに感動しました。

美しい風景を残すには暮らしのための仕事が必要

一方で、集落を見渡すと、様々な問題がありました。

住んでいらっしゃるのは65歳以上のシニアが大多数で、耕作放棄地や空き家が増え、草刈りや雪かきすら、ままなりません。

それでも、美しい風景を私たちの代で終わらせたくない。

そのためには、人が暮らし続けるための仕事が必要です。

2024年に、養鶏を基点とした資源循環と風景づくりを目指し、事業をスタートしました。

間伐材も木屑も籾殻も鶏糞もみんな宝

活用する未利用資源は、鶏の餌だけではありません。

鶏舎は、間伐材を用いて建てました。

床には、木材工場で発生する、木屑や籾殻も敷き詰めています。

鶏の糞を肥料として活用し、お米の栽培も始めました。

現在、まさに、新米の収穫に追われています。

フード & ドリンク アワードで準優勝

「点々」というブランドを通して、地域資源を商品化しています。

審査員の皆さんのお手元にあるのは、ゆで卵とオリジナルマヨネーズです。

▶編集注:プレゼン中に、審査員席にゆで卵とオリジナルマヨネーズが配布されました。

全卵を使い、やさしい甘酸っぱさに仕上げました。

卵本来の美味しさを、ぜひ味わってください。

昨日まで開催されていた、フード & ドリンク アワードでは、準優勝することができました。

ICC KYOTO 2025 フード & ドリンク アワードで株式会社点々が第2位を受賞(PR TIMES) 

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(会場拍手)

ありがとうございます。

卵を食べて美味しいと言ってくださった方々のお顔が、壇上からとてもよく見えます。

本当にありがとうございます。

耕作放棄地に2棟目の鶏舎

事業拡大も、進めています。

2週間前(2025年8月)に、2棟目の鶏舎を建てました。

今冬には、1,200羽を飼育する体制になります。

もう少しで、村の人口を超えられます。

(会場笑)

2027年までに、3,000羽へ拡大する予定です。

半径1kmの集落を宿、レストランなどでまるごとブランド化

今春(2025年春)より、店舗も運営しています。

2027年には一棟貸しの宿を、2028年にはレストランを開業します。

耕作放棄地や空き家を、すべて活かします。

鶏舎や田畑、店、宿、レストラン、住居など、半径1kmしかない集落を活かして、集中的にエリア開発をしています。

そして、2029年までに、自販機すらない集落から、売上1億円を作ります。

養鶏が生む雇用機会とブランド

このモデルは、集落だけで終わりません。

養鶏は、シニアや子育て中の母親の雇用も生むことができます。

毎日、卵を洗ったりパックに詰めたりといった軽作業があるからです。

そして、養鶏は、地域の課題を強みに変えます。

規格外の果物、獣害をもたらすイノシシ、市場に流通しない未利用魚など、これらは、すべて鶏の餌になります。

飼料化すると、地域の課題が「卵の特徴」となるのです。

耕作放棄地から養鶏で1,200万円の売上

そして、耕作放棄された田んぼから、米の100倍の価値を作ることができます。

田んぼ1枚で、米を育てると、売上は12万円ほどです。

一方で、平飼いに取り組めば、1,200万円の売上を作ることができます。

卵1個から地域は変えられる

平飼いのシェア率は、まだ1%しかありません。

しかし、それを3%に引き上げれば、養鶏業や農業は必ず変わります。

そのために、仲間を増やし、全国10拠点に展開します。

すでに、2地域と準備を進めています。

何もない限界集落で実現することができれば、全国の中山間地の背中を押すことができます。

私は、そう信じています。

卵1個から、地域は変えられる。

本日会場にいらっしゃる皆さんに、仲間に加わっていただけましたら嬉しいです。

卵は、オンラインストアからも購入できます。

消費者ひとりひとりの選択から、市場と地域は変えられます。

ぜひ応援してください。

ご清聴ありがとうございました。

▶︎実際のプレゼンテーション動画もぜひご覧ください。

(終)

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編集チーム:小林 雅/星野 由香里/浅郷 浩子/中村 瑠李子/戸田 秀成

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