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ICC KYOTO 2025 リアルテック・カタパルトに登壇した、Invisible World 中矢 大輝さんのプレゼンテーション動画【早期発見が難しいがんのデジタル病理検査を可能にする「Invisible World」】の文字起こし版をお届けします。ぜひご覧ください!
ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に学び合い、交流します。次回ICCサミット FUKUOKA 2026は、2026年3月2日〜3月5日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。
本セッションのオフィシャルサポーターは 慶應イノベーション・イニシアティブ です。
▶【速報】諦めていた生活をもう一度、BMI医療機器で重度の手指麻痺を改善する「LIFESCAPES」がリアルテック・カタパルト優勝!(ICC KYOTO 2025)
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【登壇者情報】
2025年9月1〜4日開催
ICC KYOTO 2025
Session 7A
REALTECH CATAPULT リアルテック・ベンチャーが世界を変える
Sponsored by 慶應イノベーション・イニシアティブ
中矢 大輝
Invisible World
代表取締役
公式HP
愛媛県松山市出身。親族がみな会社創業者という環境の中、中学時代にひきこもりを経験したのがきっかけで物理学に熱中する。高校卒業後、カリフォルニア州SierraCollegeにて物理学専攻。当時、JAXAエンジニアであった佐鳥新教授の研究室に入り、ハイパースペクトルカメラによるがん細胞の研究をスタート。北里大学との共同研究をはじめとして、防衛医科大学校や昭和大学など計12施設との研究により、50件以上の学術成果と2件の特許を取得後、Milk.株式会社を創業。現在、光産業創設大学院大学の博士課程後期。Invisible Worldは、Milk.株式会社のハイパースペクトル技術を用いた社会変革事業の名前。
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中矢 大輝さん 皆さん、こんにちは。
私は、Invisible Worldの中矢と申します。
人間は世界のすべてを見ることができている?
早速ですが、皆さん、人間は世界のすべてを本当に見ることができているのでしょうか?
これは、私の顔です。

そして私は今、1枚の葉っぱを見ています。

私の目を、「ネコ」の目に変えてみましょう。
すると見える葉っぱは、このようになります。

ネコは、青と赤の「2原色」を見ています。
次に、「トリ」の目になって見てみましょう。

葉っぱが、少し青みがかったことがわかります。
実はトリは、紫外線を含む「4原色」を見分けられます。
「141原色」を識別するハイパースペクトルカメラ
ここで疑似的にではありますが、私たちが開発している「ハイパースペクトルカメラ」を目に装着してみましょう。

より色鮮やかになり、これまで認識しづらかった形も見えてきます。
このカメラは、なんと「141原色」を見分けることができます。

つまり、人間の目では捉えきれない情報を、ハイパースペクトルカメラは映すことができます。
「ハイパースペクトルカメラ」に「AI」を接続
人間の処理できる情報量を増やすために、AIを導入してみましょう。

ハイパースペクトルカメラに、AIが接続されました。
「目」を「ハイパースペクトルカメラ」、「頭」を「AI」にすることで、「普通の中矢」が「ANSWER NAKAYA」になりました。
これこそ本日紹介したい、「ハイパースペクトルカメラ」に「AI」を組み合わせた、私たちのサービス「ANSWER」です。

ここまで皆さん、ついてきていますでしょうか?
(会場笑)
大事なことなので、もう一度言います。
このハイパースペクトルカメラは、「人類が開発した新しい目」です。
「宇宙技術から生まれた最先端の目」を、人類が未だ乗り越えられていない最大の課題、「がん」にぶつけるというのが、私たちの事業になります。

がん細胞を高精度に「色合い」で区別
ここからは、本題に入ってまいります。
早速ですけれども、普通の人間が見た場合のがん細胞がこちらです。

これをハイパースペクトルカメラで映しますと、このような感じで見ることができます。

がん細胞を高精度に、「色合い」で区別することができます。
最初は「本当に区別できているのだろうか?」「コンピュータのエラーではないか?」と思いました。
しかし、実際に、1万人を超える方のがん細胞、7種類の臓器の症例を取り、このような高い精度が得られました。

それによって、私の「疑念」は「確信」に変わりました。
「これで、がんの早期発見が可能になり、人類はがんを克服できる」
そう思いました。

そこで特許を4件取得し、5年半前(2019年)に会社を設立しました。

平均2週間を要するがん診断
さて、「最先端の技術だと言っても、今のがん診断も進んでいるのでは?」と思われる方もいらっしゃると思います。
実は、がん診断の現状は、今でも「目視検査」です。

「病理検査」と言われる検査は、「病理専門医」という医師によって行われています。
病理専門医は、日本では2,700人、世界でも10万人しかおらず、80億人の人口と比較すると、とても心もとない数です。

この人材不足は深刻です。
見落としや誤診が起きることもあり、がん診断は平均2週間もかかってしまっています。

病理診断分野のプレイヤーは少ない
病院に行って、CTやMRI、マンモグラフィなどの検査を受けることがあると思います。

これらは検診であって、この時点ではがんであるか、がんのどのステージであるかはわかりません。
この検診分野には、多くのスタートアップが参入しています。
しかしながら、ボトルネックとなっている病理診断は、デジタル化が進んでいない未開拓領域になります。
私たちは、これまで誰も実現できなかった、この領域の改革として、ハイパースペクトルカメラにAIを組み合わせた「ANSWER」を導入します。

撮影データをアップロード後、3分で結果を表示
ANSWERの構成は、シンプルです。

顕微鏡にカメラを取り付けて撮影、そのデータをアップロードして、3分以内に結果を表示します。
これにより、先ほどお話ししたような誤診や見落としを防ぐだけでなく、診断スピードも向上させ、がんの早期で正確な診断を実現します。

ANSWERを導入することで、がんのデータを世界中から集めます。

これによって、現在目視分類による200種類のがんを、1,000種類以上のがんに分類できれば、より最適な治療法を提案することもできます。
ターゲットは5年生存率8.5%の膵がん
私は、がんの原因究明がしたいと、この研究を始めました。
がんの根本原因がわかれば、「がんにならない社会」が実現できると考えています。

私たちの最初のターゲットは、膵がんです。
膵がんの5年生存率は、わずか8.5%です。

なぜ、こんなに生存率が低いかというと、膵がんの早期発見は難しいからです。

早期発見が難しい理由は、3つあります。
自覚症状がなく、がん細胞と正常の細胞が似ていて判別が難しく、かつCTや超音波エコーでも見つけづらいためです。
膵液を採取できる内視鏡を開発
今、膵液を採取できる新しい内視鏡が開発されています。

膵液に含まれる膵がんをANSWERで見つけることで、膵がんの早期発見ができる可能性が見えてきています。
現在3施設で「フィージビリティスタディ(※プロジェクトの実現可能性を事前に調査・検討すること)」を行っております。

膵がんの専門医7名の方に、参画していただいております。

約1年半で薬事承認を経て、販売できるようになります。

検査数に応じた検査料による収益モデル
患者さんは病院でANSWERによる検査を5,000円程度で受けることができ、私たちは検査料の一部を収益として受け取ります。

病理診断をデジタル化しようという動きは世界中で広がっており、市場は年率16.9%で急成長中です。

現在25名のメンバーがおり、インドのメンバーも4名在籍しております。

そして外部から経営、メディカルのアドバイザーにも参画いただいております。

これまで、日本医療研究開発機構などから、約3億円を調達しました。

実用化まであとほんの少しです。
皆様のご協力をどうかお願いいたします。
「ゼロからのものづくり」を教えてくれた恩師
ここで、私がこの事業を始めた理由をお話しします。

ハイパースペクトルカメラは、私の恩師であり、JAXAで、はやぶさプロジェクトにて中心的な役割を果たされた佐鳥 新教授が開発しました。


私は当時、ノーベル賞を取りたいとアメリカに留学して、現地で研究を続けていました。

そんな私に、佐鳥教授は研究者としての態度、実績の積み重ね方を、丁寧に、時に厳しく教えてくれました。

「ゼロからのものづくり」が、佐鳥教授のモットーでした。

私を含む教え子たちは皆、全く知識も経験もないところから、人工衛星やAI開発もできるところまで育てていただきました。

4年前(2021年)、佐鳥教授は他界されました。

その時、特許やエンジニアも引き受け、今の体制になりました。

佐鳥教授の残されたカメラ技術の進化を引き出し、世の中に還元することが、私ができる最大の恩返しだと思っています。

「ANSWER」で“見えない世界”を開く
がんは、まだまだ未知の病です。

しかし、物事には必ず原因があります。
「ANSWER」によってInvisible World(見えない世界)を開いていきたいと思います。


ご清聴ありがとうございました。
(終)
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編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/正能 由佳/戸田 秀成


