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「おてつたび」は出稼ぎをリブランディングして、人手不足をファン創出のチャンスに変える(ICC FUKUOKA 2021)

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ICC FUKUOKA 2021 ソーシャルグッド・カタパルトに登壇いただいた、おてつたび 永岡 里菜さんのプレゼンテーション動画【「おてつたび」は出稼ぎをリブランディングして、人手不足をファン創出のチャンスに変える】の文字起こし版をお届けします。ぜひご覧ください!

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。 次回ICCサミット KYOTO 2021は、2021年9月6日〜9月9日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。

本セッションは、ICCサミット FUKUOKA 2021 プラチナ・スポンサーのセールスフォース・ドットコム様にサポート頂きました。

【速報】福祉を起点に寛容な社会を提案する「へラルボニー」が ソーシャルグッド・カタパルト優勝!(ICCサミット FUKUOKA 2021)


【登壇者情報】
2021年2月15〜18日開催
ICC FUKUOKA 2021
Session 13A
ソーシャルグッド・カタパルト&ラウンドテーブル
Supported by セールスフォース・ドットコム

永岡 里菜
株式会社おてつたび
代表取締役CEO

1990年生まれ。三重県尾鷲市(おわせし)出身。千葉大学卒業後、PR・プロモーション会社勤務後に、農林水産省との和食推進事業の立ち上げを経て、独立。自分の出身地のような一見何もなさそうに見えてしまう地域にも人が訪れる仕組みを創りたいと思い2018年7月に株式会社おてつたびを創業。地域の短期的・季節的な人手不足で困る事業者(宿泊施設や農家等)と、地域外の若者をマッチングするwebプラットフォーム『おてつたび』を運営。『おてつたび』は、地域の人手不足等の困りごとをお手伝いする事により報酬を得ながら旅行をする事が可能なため、地域にいく際のボトルネックになりがちな旅費を軽減する事を実現。また、お手伝いを通じて地域の方と関係性ができ再び同じ地域へ訪れる参加者も増えており、関係人口拡大の一助を担っている。全国の自治体や農協、大手交通会社や旅行会社等と連携しながら、日本各地に人と想いとお金が巡る世界を目指す。


永岡 里菜さん(以下、永岡) 皆さん、初めまして、(株式会社)おてつたびの永岡と申します。

情報が少ない地域の現状

突然ですが、皆さん、三重県の尾鷲市という地名を聞いたことはありますでしょうか?

私の出身地なのですが、三重県のこちら(スライド赤丸)にありまして、実は東京から車でも電車でも片道で約6時間、往復金額は3万円ほどかかってしまう、漁業と林業の町です。

電車から降りて駅前を見ると、スライド写真のような景色で、「何もない」と言われがちな地域です。

ゆえに、観光客の方にもなかなかいらしていただきづらい場所となっております。

こういった地域へ行く際のハードルはいくつかあるかと思いますが、やはり人が訪れづらいために、価格競争が起きにくく、アクセスも悪いままで旅費が高い、そして情報がないがゆえに、どのようにして楽しめばよいかわからないという現状があるかと思います。

私自身、前職では第一次産業をサポートする会社に勤めており、全国を飛び回っていた際に、そういった地域が全国の8割を占めるのではないかと痛感しました。

そして、いてもたってもいられなくなり、3年半前に会社員を辞め、東京の家を解約して、半年間、地域をひたすら巡りました。

地域の方と交流し、魅力を知る

どうしたらそういった地域の魅力を知ることができるだろうかと考えたときに、やはり「地域の方との交流」だと思いました。

また、いろいろな地域を巡る中で、短期的・季節的な人手不足の多さも痛感いたしました。

その人手不足を補うには、ハローワーク、シルバー人材センター、知人・親戚の3つが主な手段となっております。

私自身、半年間、東京を離れて地域を巡っていた最中に、例えば長野県のトマト農家さんから「人が足りないから来てくれ」とお声がけいただき、「次は隣の農家さんに行ってきてくれ」、「次は民宿さんに繋ぐから行ってきて」と、いろいろな方たちのお手伝いをさせていただきました。

そのようにして一緒に地域に入り込ませていただき、地域の魅力を知ることができました。

知らない地域に行くハードルを下げる

その経験から、地域の方と一緒にお仕事をすることは尊い体験だなと思いまして、こういったサービスを作れないかと考え、「おてつたび」というサービスを2年前からスタートしました。

「おてつたび」では、ウェブサイト上で、地域の方がお手伝いの内容を提示して、人材を募集できるようになっています。

今では、ありがたいことに、「おてつたび」に行きたい人で溢れかえっておりまして、一瞬で求人が埋まってしまうような状況となっています。

ちょうど昨日、募集開始した「おてつたび」先は、すでになんと数時間で定員の3倍以上のお申込みをいただいております。

私たちは、「おてつたび」を通じて、知らない地域に行く際のハードルをますます下げていきたいと思っています。

「季節労働」や「出稼ぎ」をリブランディング

「おてつたび」は、旅行者が地域でお手伝いをすればするほど報酬が得られるようになっております。

そのため、旅行者は旅費がリーズナブルになり、地域の方は地元の方に依頼するのと同じ程度の費用感で全国の若者にお手伝いをお願いすることができます。

かつ、お手伝いという交流を通じて、「どこ、そこ?」と言われてしまう地域にも人が訪れ、その地域のファンができるような世界を作っています。

こういった働き方は、実は昔から「季節労働」や「出稼ぎ」という言葉で存在していました。

ただ、それらの言葉は、少し怖そう、あるいは不安定な印象があり、ネガティブな先行イメージが強かったように思います。

私たちは、それらの言葉を「おてつたび」としてリブランディングしながら市場のリプレイスを図っています。

第一次産業のほかユニークなものも

「おてつたび」先は、第一次産業や観光業が中心となっていますが、最近はお祭りや雪かき、薪割など、わりとユニークなものも増えています。

非常にシンプルなUX(※)ですので、ご高齢の方でも簡単に利用できるようになっています。

▶編集注:UXとは、User Experienceの略で、ユーザーが製品・サービスを通じて得られる体験のこと。

例えば、三重県の熊野市という地域では、70代の方がみかんの収穫作業で「おてつたび」を使いこなしてくださっています。

最近は、地域の方から「おてつたびを受け入れると、1週間ほど早く仕事が終わる」、「毎年、おてつたびの子たちが来てくれるのを楽しみにしている」といったお声を頂いています。

リアル「田舎に泊まろう!」のような関係性を築く

一方で、参加者・旅行者の方からは「自分がおてつたびを通じて地域の方の役に立つことによって、自己肯定感・自己効力感が上がり、新しい自分の発見に繋がりました」と言っていただき、お互いにwin-winの関係となっています。

「おてつたび」を終えて帰るときには泣く泣く別れるという、リアル「田舎に泊まろう!」のような関係性を築いています。

また、興味深い点として、「おてつたび」に参加する若者の多くが、それまで知らなかった地域に行く傾向があります。

参加後は、その地域のことが好きでたまらなくなっており、100%の方がポジティブな感情を抱いています。

実際に、「おてつたび」の後、参加者の6割の方が観光客としてまた遊びに行っていたり、その農家さんのものを買っていたり、再訪しています。

また、就農を決めた方や「おてつたび」先に就職された方、定住・移住された方などもいらっしゃいます。

45道府県に受入先があり、50以上の自治体と連携

こういった形で私たちは広告宣伝費を一切かけていないのですが、ありがたいことに、ユーザーサイドである若者の60%が口コミを中心に次々と流入しており、また、受入事業者側である地域も、口コミで順調に広がっており、80%のリテンションというリピーターが非常に多い状況になっております。

事業を始めた当初は、「おてつたび? なんじゃそりゃ?」と理解していただけないことも多くありました。

法人格も実績もなかった初期は100件に1件の方が賛同してくださるような状況で、それから地道に実績を積み重ねていきました。

現在では45道府県に受入先があり、50以上の自治体と連携しています。

さらに昨秋から、全国の旅館・ホテル約4,000施設が加盟しているJTB協定旅館ホテル連盟とも連携させていただきました。

地域活性化や人手不足といった課題は非常に複雑で、1社でどうにか解決できるような問題ではないと思っています。

そのため、日本各地の自治体や組合、企業など様々な方々と、お互いの強みを活かし合いながら、人手不足をチャンスに変えてファン(関係人口)創出に努めています。

双方の満足度が100%近くに

また、私たちは地域に惚れて、地道に泥臭くサービスを立ち上げたメンバーが集まっている会社です。

「旅行」と「仕事」という期待値の異なるものの組み合わせなのですが、泥臭いすり合わせの繰り返しによって、現在では双方の満足度が100%近くになっています。

そのため、双方のリピーターや参加者側の口コミによるネットワーク効果でさらに事業を拡大しています。

年間250件以上のメディアにも取り上げていただきながら、今年度の農林水産省の「食料・農業・農村白書」にも掲載していただいて、メンバー一同で頑張っております。

地域を繋ぎ共存できる世界を作っていきたい

また、コロナ禍での地域との縁の紡ぎ方については、やはり安心安全が第一だと思っております。

例えば、現在「おてつたび」で京丹後市へ行く場合は、京丹後市観光公社と連携して、抗体検査やPCR検査を京丹後市負担で受けてから参加していただいています。

また、同じ都道府県内や近隣県でのマイクロツーリズムのような形でのマッチング、大企業に勤められているような本業をお持ちの社会人の方がワーケーションとして「おてつたび」を利用してくださることも多くなってきています。

5ヵ月連続で東京からの転出が増えたという情報を耳にすることも多いかと思いますが、やはりコロナ禍において、地域への関心が非常に高くなってきています。

東京5カ月連続で転出超過、11月の人口移動報告(2020年12月24日 日本経済新聞)

加えて、これからますます人口減少していくような中でも、私たちは地域と地域を繋いでいきながら、共存できるような世界を作っていきたいと考えています。

これからも皆で一丸となって地域とのご縁を紡ぎながら頑張っていきたいと思っておりますので、ぜひ皆さま、お力添えをいただけますと嬉しいです。

よろしくお願いします。

▶︎実際のプレゼンテーション動画もぜひご覧ください。

(終)

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編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/戸田 秀成

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