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ICC FUKUOKA 2023 スタートアップ・カタパルトに登壇いただき、見事優勝に輝いた、リージョナルフィッシュ梅川 忠典さんのプレゼンテーション動画【ゲノム編集による高速品種改良で、日本の水産業の復活を目指す「リージョナルフィッシュ」】の文字起こし版をお届けします。ぜひご覧ください!
ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。次回ICCサミット KYOTO 2023は、2023年9月4日〜 9月7日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。
本セッションのオフィシャルサポーターはノバセルです。
▶【速報】ゲノム編集技術による水産業革命で、世界の“タンパク質危機”を解決する「リージョナルフィッシュ」がスタートアップ・カタパルト優勝!(ICC FUKUOKA 2023)
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【登壇者情報】
2023年2月13〜16日開催
ICC FUKUOKA 2023
Session 1A
ICCサミット FUKUOKA 2023 1A STARTUP CATAPULT スタートアップの登竜門
Supported by ノバセル
梅川 忠典
リージョナルフィッシュ株式会社
代表取締役社長
HP | STARTUP DB
デロイトトーマツコンサルティング株式会社(現:合同会社)に入社。資源エネルギーセクターにて、電力・ガス業界の大手企業に対して、戦略・業務・システム・M&Aに係る経営コンサルティング業務に従事。株式会社産業革新機構(INCJ)に転職し、大手・中堅企業に対するバイアウト投資および投資先の経営支援に従事。2019年4月、リージョナルフィッシュ株式会社を設立し、代表取締役社長に就任。70団体以上とオープンイノベーションを実施。
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梅川 忠典さん ゲノム編集技術で、日本から世界の水産業を変革する唯一の会社、リージョナルフィッシュです。
「天然魚のほうが美味しい」という方、ではいちごなら?
突然ですが、天然のマダイと養殖のマダイ、皆さん、どちらの方が美味しいと思いますか?
こういう質問をすると、大体「天然のマダイ」と答えられます。
では、天然のイチゴである野いちごと、栽培されたイチゴの「あまおう」では、どちらの方が美味しいと思いますか?
これだと、確実に「あまおう」ですよね。
牛も豚も鶏も野菜も品種改良されている
この違いが何かと言うと、品種改良が進んでいるかどうかなのです。
天然の牛、オーロックスは400年前に絶滅しましたが、それを品種改良したのが今の黒毛和牛です。
イノシシから、毛と牙がなく、大人しい豚になりました。
空を飛んでいた鳥は、飛べなくなって成長性が6.5倍になったブロイラーになりました。
テオシントというトウモロコシは、手の指くらいの太さでしたが、腕の太さくらいのスイートコーンになりました。
高麗人参のような苦いノラニンジンは、甘い5寸ニンジンに変わっています。
人類は長い時間をかけながら、さまざまな品種改良を進めてきました。
1つの品種改良には、10年から30年かかるのです。
野菜なら10年くらい、動物や果樹なら30年です。
ただ、30年かかったとしても、農耕畜産1.2万年の歴史の前では、30年という長さは短いのです。
あらゆるものが品種改良されており、我々が普段口にしている農作物や畜産物は、ほぼ全て品種改良されたものです。
天然種は、三つ葉くらいと言われています。
ところが、水産物だけは天然物の方が美味しいとされている。
それはなぜかと言うと、完全養殖といって、卵から大人にし、卵を産ませて、品種改良ができるような状態になってから、まだ50年だからです。
30年もかかる品種改良を行うだけの時間がなかったということです。
ただ、農作物や畜産物では天然物の方が美味しいとされていないのに、水産物だけは、天然物の方が美味しいとされているのはおかしい。
きっと品種改良が進むはずだろうという、メガトレンドを我々は追っています。
ゲノム編集技術で品種改良した成長性1.9倍のトラフグ
通常通り品種改良を行うと30年かかるので、我々はゲノム編集技術を使って、2~3年で品種を作ります。
これが我々の生み出した、成長性1.9倍のトラフグです。
2年で品種を作り、4年で量産化に成功しました。
遺伝子組換えと品種改良の違い
よく、遺伝子組換えではないのか?と聞かれますが、遺伝子組換えとは、ある生物に別の生物の遺伝子を入れて、新生物を作る技術なのです。
品種改良は、別の生物の遺伝子は入れず、自然界でも存在するものを抜き出すことです。
従来法では、例えば、放射線や薬剤を投与して、ランダムに遺伝子を切り、うまく切れたものを抜き出すという方法が使われています。
我々の行うゲノム編集は、酵素を使って、狙ったところだけをピンポイントで切り取ります。
どちらも自然界で起こりえますが、その品種改良スピードが全然違うのです。
ゲノム編集の第一人者と共同創業。強力な研究開発体制
我々は、京都大学のゲノム編集技術と、近畿大学の完全養殖技術を組み合わせ、世界で唯一、ゲノム編集による水産物の品種改良ができるようになりました。
コンサル・ファンド出身の私、梅川は、ゲノム編集業界の権威である京都大学の木下、近畿大学の家戸と共に共同創業しており、現在、研究員25名、博士号取得者18名の体制を構築しています。
タンパク質不足の根本的な原因とは
人口が今後増える中、タンパク質の需要が供給を上回って、タンパク質不足になると言われていることに、我々は問題意識を持っています。
この問題の根本的な原因は、タンパク質源となる動物の餌が不足することなのです。
餌が少なくてもすむ品種を作れば、この問題は解決すると思っています。
もう一つ、この30年で、世界の水産物の生産量は倍増しました。
ところが日本の生産量は3分の1にまで下がっていて、世界1位だったのが8位にまで落ちています。
これを、技術によって、また日本を世界ナンバーワンに輝かせたいと考えています。
ゲノム編集のヒントは「牛」
最初のゲノム編集のヒントは、牛でした。
ショートホーンという肉牛系統の牛が、ある日突然、筋肉ムキムキのベルジアンブルーという品種に変わったのです。
なぜ筋肉がムキムキになったのかは分からなかったのですが、赤身がちで美味しかったので、ベルギーの牛の9割がこの品種になったと言われています。
時代が流れ、解析技術が発展すると、どうやら筋肉量を調整しているミオスタチン遺伝子が壊されているらしい、ということが分かりました。
マダイやふぐでも高成長と飼料減を実現
これをマダイに当て込んだところ、マダイの可食部、つまり食べられる部位が1.2倍に、そして飼料の量が2割減になりました。
こんな感じで、丸みを帯びています。
厚生労働省と農林水産省に届出をした、世界で初めてのゲノム編集「動物」食品として、このマダイを「22世紀鯛」と命名し上市することに成功しています。
▶ゲノム編集技術を利用して開発した「可食部増量マダイ」、厚生労働省及び農林水産省への届出完了(PR TIMES)
同様のプロセスを経て、高成長のトラフグも、「22世紀ふぐ」として販売しています。
成長性が1.9倍になり、飼料が4割減になっています。
飼料が4割も減れば、タンパク質不足問題は解決すると思っています。
作ったロットは現在完売しており、生産性だけではなく、味の良い、その他20品種を同時開発しており、今年は2品種を上市予定です。
また、アレルゲンのないエビなども開発しています。
加工品として提供していますが、「とてもおいしかった」という評価が85%、「おいしかった」という評価が15%という、非常に高い評価を頂いています。
稚魚販売で海外マーケットへ
我々は成魚で販売していますが、浸透してくれば稚魚販売に移行し、マーケットを切り開いていきたいと思っています。
東南アジアをはじめ、海外にも展開していく予定です。
マーケットサイズは成魚の方が大きいのですが、利益率は稚魚の方が高いので、稚魚マーケットで、4兆円のグローバル市場を狙っていきたいと考えています。
我々1社でできることは本当に少ないので、創業3年で70団体と連携してきました。
我々のバリューチェーンがつながる事業会社と連携しながら、26.4億円のエクイティファイナンスを実行し、8億円の助成を頂きながら、事業を開発してきています。
そしてこの資金を使い、今、1万平米超の、自社の稚魚養殖プラントの立ち上げを行っています。
ゲノム編集技術を使い超高速で水産業を変える
農耕や畜産では、品種改良は非常に大きな革命でした。
ですから我々は、天然物は食べていないわけです。
水産はこの革命をまだ享受していません。
しかし、通常通りの品種改良をすると30年かかってしまいます。
そこで我々はゲノム編集技術を使って、2、3年で品種を作り、日本の水産業を本気で変えていきたいと思っています。
ご清聴ありがとうございました。
(終)
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編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/小林 弘美/正能 由佳/戸田 秀成