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ICC KYOTO 2023 クラフテッド・カタパルトに登壇いただき2位に入賞した、日本草木研究所(山伏)古谷 知華さんのプレゼンテーション動画【「日本草木研究所(山伏)」は、森に眠る資源の発見で林業と食に新たな価値を創出する】の文字起こし版をお届けします。ぜひご覧ください!
ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。次回ICCサミット KYOTO 2023は、2023年9月4日〜 9月7日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページのアップデートをお待ちください。
本セッションのオフィシャルサポーターはJ.フロント リテイリングです。
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【登壇者情報】
2023年9月4〜7日開催
ICC KYOTO 2023
Session 8A
CRAFTED CATAPULT 豊かなライフスタイルの実現に向けて
Sponsored by J.フロント リテイリング
古谷 知華
日本草木研究所(山伏)代表
HP | X(旧Twitter)古谷知華 | 日本草木研究所/日本草木研究所
1992年東京都生まれ。食育家庭に育ち食への異常な興味を抱く。2015年東京大学工学部建築学科卒業後、ブランディングを専門に企業の新規事業や商品開発のコンサルを行う。2021年に「日本草木研究所」創業。2023年ForbesのNEXT100の企業選出。
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古谷 知華さん はじめまして、日本草木研究所の古谷です。よろしくお願いします。
我々は、今価値のついていない“森林資源”に「食」の切り口から新しい付加価値をつくる活動をしています。
ドリンクの原料は森の間伐材や落ち葉たち
例えば、こんな商品を作っています。
スギやヒノキなどのいい香りがする間伐材を原料に、ジン(草木酒フォレストジン)やソーダ(草木炭酸フォレストソーダ)などの「フォレストシリーズ」のドリンクを作り、「飲む森林浴」という新しい体験を提供したり、
秋になると、キャラメルの香りがする「かつら」の落ち葉が山に広がるのですが、それらを山主さんと一緒に採集して、お酒(落ち葉酒 カツーラミルク)を造ったりしています。
日本の森にはおいしさを知られていない草木がある
その他にも、打倒クレイジーソルトということで、日本の草木だけでジャパニーズ・シーズニング(草木塩)を作ったり、
森に生えている赤い生胡椒を塩漬け(森の生胡椒)にしてみたり。
驚かれると思うのですが、スギの新芽はリンゴやバジルのような味がして、実はすごくおいしいのです。
これをピクルスにしたりしています。
6年間日本の山や森でいい香りのする植物探し
きっかけは、6年前です。
スパイスとハーブのオタクだった私は、クラフトコーラブランド「ともコーラ」というものを作っていました。
その中で、世界中のスパイスを合わせて調合していたのですが、日本のスパイスはほとんどないことを疑問に思って、日本の山や森に出かけては、そこから6年間ぐらい、いろいろないい香りのする植物を採集し始めました。
木を焼いたり蒸留したりする実験
そこで、日本の植物のポテンシャルを知りました。
「日本の森の素材」に特化した食品事業をやってみたい。
これはまだ誰もやっていないぞと、2021年に共同創業者の木本 梨絵と一緒に、日本草木研究所を立ち上げました。
そこから彼女と一緒に何度も山に入っては木を焼いてみたり、蒸留してみたり、今までなかったような実験を繰り返し、沖縄から北海道まで全国の山を巡っては、食べて食べて食べまくって、いろいろなおいしい植物に出会いました。
その中で、「日本にもシナモンの木、生えてるじゃないか!」「胡椒の実、あるじゃん! 何で使われてないの?」といったことが、たくさんありました。
スパイスやハーブは海外産のものばかり
このように、日本にはいろいろなスパイスがあるにもかかわらず、現在市場には全くと言っていいほど流通していません。
流通しているのは、山菜ぐらいです。
代わりにスーパーにあるのは、海外産のスパイスやハーブばかりです。
Made in Japanの調味料やジンが市場にあると思いますが、これらも開いてみると、中身はほとんど海外のスパイスやハーブになっています。
もったいない、悔しいと思っています。
世界のスパイスとハーブ市場を合わせると23兆円もあるのに、ここで今目立っているワールドレベルのスパイスは、山椒ぐらいしかありません。
収穫パートナーは林業従事者
日本の山に眠る、こういったスパイスたちを市場に出すには、「収穫パートナー」が必要です。
それは、「林業従事者」です。
林業はご存知の通り、斜陽産業です。
彼らの稼ぎ方は、70年間全く変わっていません。
建材としての木材であるヒノキやスギを育てる、もしくはキノコを栽培する、この2種類しかないのです。
しかも総合売上も下がっています。
林業に新しい稼ぎ方を作る
彼らとしても、売上を上げたいと思っているはず。
そこで我々は、「山」×「食」で、第三の稼ぎ方を林業に作ろうと思っています。
60年育てたスギの丸太は、いくらだと思いますか?
なんと1t 5,000円、つまり1kg 5円にしかならないのです。
これが、通常の林業価格です。
一方、A5ランクの和牛は、1kg 8,500円もしています。
価値の付かなかった森の素材を独自のフェアトレード価格で買取
我々は、A5ランクの和牛に劣らないような金額で、落ち葉や野生の胡椒、スギの新芽を買い取っています。
また、通常は1kg 5円にしかならないようなウッドチップも、我々はなんと500倍の2,500円で買い取っています。
なぜか?
通常はウッドチップは切ってから数年間放置されていたり、切る時に使うチェーンソーに石油由来のオイルが使われていたりするのです。
我々の場合、注文後に伐採してフレッシュの状態で、しかも、食品にできるようにチェーンソーには植物性由来のオイルを使っていくことで食品用にカスタマイズ、そして付加価値を作っています。
その結果、港区にある某高級バーにて、我々のウッドチップは、酒のフレーバーになったりしています。
こんなふうに、森林資源に今までなかった形で付加価値を付け、独自のフェアトレード価格も作っています。
おそらくこれは日本で唯一の独自の買取リストです。
今まで林業では全くお金が付かなかったスギでも、新芽の部分や木の落ち葉などを、我々はかなりの高価格帯で買い取っています。
収穫だけでなく、ともに考えてくれる事業パートナー
その結果、このプライスリストをもって「相棒山制度」というものを作り、全国15カ所の山と提携しています。
相棒山制度に参加しているのは、30〜40代の林業の新しい可能性を拓きたい若手林業従事者たちです。
彼らは採集してくれるだけではなく、一緒に収穫マニュアルを作って、どうやったら効率化できるかを考えてくれる、もはや事業パートナーでもあります。
こうした彼らの知恵をもって、同じスギでもチェーンソーで切るなら2,500円ぐらいかな? 手摘みのスギだったら7,000円ぐらいかな?というように、価格も一緒に考えています。
ヒノキ、スギ以外もお金になるという「山の新常識」
林業従事者からは、「高い金額で買い取ってもらえるのが嬉しい」「建材以外の用途で、森林の資源が輝くのを見られて嬉しい」など、言っていただいています。
実績として、我々の仕事を手伝うことによって、副業で給料が20%アップした事例もあります。
このようにヒノキ、スギ以外の山の植物がお金になるんだという「山の新常識」を作っていきたいです。
未知な食材でもこんなにニーズがある
そんな食材たちに本当にニーズがあるのかと、ちょっと疑問に思われますよね?
実際にあります。
今我々は提携山主から素材を買い取って、その素材をお酒やドリンクにして生活者に届けたり、小売に卸したり、山の幸としてそのままレストランに納品もしています。
例えば、今年世界一のレストランに選ばれたペルーのCentralの東京支店(MAZ Tokyo)に卸しています。
写真のシェフは、「なんで今までこんなおいしい生胡椒が使われてこなかったんだ」と言っています。
その他にも、京都のミシュラン一つ星店LURRA°にお酒を卸していたり、エースホテル京都、ザ・リッツ・カールトン東京などの一流ホテル群で、我々の商品は今お取り扱いがあります。
ガストロミーブームやサステナブルへの関心が追い風
ECでも日商最大300万円に達したり、例えばスイス、オーストラリア、フィリピンなどの世界に輸出が始まっています。
背景としては、ガストロミーブームで、サステナブルへの関心が高まり、日本ならではの食材に関心がいっていることがあると思います。
前年比はまだまだ3倍ではありますが、最近の社会的インパクトとしては、例えば『Forbes JAPAN』でNEXT100の企業に選んでいただくなどしています。
森に眠る資源の活用で日本の経済をおいしく回す
森に眠る資源を活用していくことで、林業従事者にとっては副業収入アップを実現し、生活者の人たちにとっては「今までこんなの食べたことない、おいしい!」という嗜好の世界を広げていきたい。
スパイスとハーブの市場は23兆円もあります。
ここに日本の草木たちを入れていきたい。
そして林業従事者には、誇りとお金を。
日本の経済をおいしく回していきたいと思っています。
どうぞよろしくお願いいたします。
ありがとうございます。
(終)
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編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/小林 弘美/正能 由佳/戸田 秀成