「日本の起業家の質は高まっている」気鋭のベンチャーキャピタリストが感じる起業家の質の変化【K16-5B #6】 – INDUSTRY CO-CREATION

「日本の起業家の質は高まっている」気鋭のベンチャーキャピタリストが感じる起業家の質の変化【K16-5B #6】

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「ベンチャー投資最前線 – 次のビック・ウェーブはどこにあるのか?」【K16-5B】セッションの書き起し記事をいよいよ公開!7回シリーズ(その6)は、気鋭のベンチャーキャピタリストたちが感じる、日本の起業環境に起きている変化について議論しました。是非御覧ください。

ICCカンファンレンスは新産業のトップリーダー160名以上が登壇する日本最大級の招待制カンファレンスです。次回ICCカンファレンス FUKUOKA 2017は2017年2月21〜23日 福岡市での開催を予定しております。

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登壇者情報
2016年9月6日・7日開催
ICCカンファレンス KYOTO 2016
Session 5B
「ベンチャー投資最前線 - 次のビック・ウェーブはどこにあるのか?」
(スピーカー)
今野 穣	 
株式会社グロービス・キャピタル・パートナーズ 
パートナー COO
榊原 健太郎 
株式会社サムライインキュベート 
代表取締役CEO
千葉 功太郎 
慶應義塾大学
SFC研究所 上席所員
宮田 拓弥 
Scrum Ventures 
General Partner
(モデレーター)
佐俣 アンリ 
ANRI 
General Partner

その1はこちらをご覧ください:最前線のベンチャーキャピタリストが語る次のビッグ・ウェーブはどこか?【K16-5B #1】
その2はこちらをご覧ください:日本で最もVCファンドに投資している千葉功太郎氏が注目する3つの分野【K16-5B #2】
その3はこちらをご覧ください:技術立国イスラエル ベンチャー投資の最前線(サムライインキュベート榊原)【K16-5B #3】
その4はこちらをご覧ください:新しいイノベーションが生まれ続ける米国ベンチャー投資の最前線(スクラムベンチャーズ宮田)【K16-5B #4】
その5はこちらをご覧ください:日本のVCファンドの代表格 グロービス今野氏が語る4つの注目投資領域【K16-5B #5】
その6はこちらをご覧ください:「日本の起業家の質は高まっている」気鋭のベンチャーキャピタリストが感じる起業家の質の変化【K16-5B #6】


佐俣 では少しシード・ステージの話をしたいです。

千葉さんは、シード投資家としてたくさん投資されていますし、千葉ファンド・オブ・ファンズ(Fund of funds)として沢山のファンドレポートを遠くから眺めていらっしゃいますよね。

僕自身、気になっているのですが、それらのレポートをご覧になられて、千葉さんは今のマーケットをどのように判断していらっしゃるのですか?

普段から、僕が「この会社に投資しました」と言うと、千葉さんからは、「これは大丈夫なの?」「これはどうなっているの?」と細かいご質問を頂くので、本当によくレポートをご覧になられているのだなと思っています。

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千葉 頂くレポートはきちんと読み、一社一社のKPI(Key Performance Indicator)を頭に入れるようにしていますので、皆さん頑張っているなと(笑)尊敬しています。

そしてやはり、先ほどのお話にもあったようにCVC(コーポレート・ベンチャーキャピタル)が大量にマネーを投入するようになり、そしてエスタブリッシュ企業もどんどん入ってきているので、マーケットが元気なのは肌感覚としてあります。

肌感覚として単純に1年前、2年前と比較すると、供給する量と、起業する企業数、そして1社1社のKPIが伸びていく角度などが、やはりどれもこれもバブルではなくて、地に足の着いた成長なのではないかということが感じられますね。

佐俣 バブルではないと?

千葉 はい。

1年半くらい前には少しバブリーな匂いがしていた時期もあったのですが、ここ1年、きちんとしたサービスの成長と、会社の成長と、それに必要な資金、適切なバリエーションとがバランス良く行われていなと感じています。

ですから、このまま頑張って欲しいと思っていいます。

榊原 では、金額が増えているだけではなくて、社数も増えているとお感じなのでしょうか?

千葉 そういう感覚はありますけれどね。

僕はこの間まで、前職(コロプラ社)で若者向け学生起業家向けの投資も行っていたのですが、やはり若手の人達で、且つ優秀層がどんどん起業家として飛び込んでくる風潮がありますね。

このイベントもそうですし、明後日の京都大学のイベントもそうなのですけれども、やはり熱量が圧倒的に高くなっています。

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日本でも、下の層がしっかりと上を目指して「頑張るぜ!」という気概を持っているように思えて、僕は大好きですね。

日本でも起業するタイプが変わりつつある

佐俣 この1〜2年、創業される方を見ると商社やメーカーの方が増えた感じがします。

会社全体で取り組んでいるせいなのかもしれませんけれども、結構、「そこの会社辞める?」みたいな方達もおられます。

先日、30代の大企業4人組がいらっしゃったのですが、その企業にいたほうが良いのではないかなと思ってしまいました。(笑)

それは冗談ですが、やはり5年前には絶対に見られなかった現象ですよね。

たまに変わり者が一人で辞めるといったケースはあるのですけれども、チームで辞めてきましたといった方達もいらっしゃったり。

千葉 うちの妻(加藤史子さん)も最近 WAmazingという会社を創業したのですけれども、十数年間 大手企業(リクルート)で勤務した後に創業していますが、長年大手企業を勤めてからの起業というチャレンジはすごいことですよね。

この10年、見たことのない潮流でしたね。

(編集注:ICCパートナーズとWAmazing社は同じオフィスにいます)

佐俣 確かに。

こんなことは初めてかもしれないですね。

千葉 このように、起業家の層がこの1年で急激に厚くなっている印象があります。

こういった30代、40代の、もう大手でしっかりと経験を積んできたビジネス経験豊かな方たちが、1人だったり複数人だったりで企業するパターンと、学生たちが真面目に下から上がってきて起業するパターンとの両方で厚みが増してきています。

既存のインターネット業界の人達も、シリアルアントレプレナーとして2回目、3回目を頑張るみたいな感じですし。

佐俣 宮田さん、一般的に、アメリカでは、特にエンタープライズなどではプロフェッショナルな感じの起業家が多いとよくお聞きするのですが、実際はどうなのですか?

シリコンバレーはシリアルアントレプレナー大国

宮田 僕らは現在50社くらいに投資をしていますけれども、初めて起業する人というのはほとんどいないですよね。

佐俣 え?

全員ほぼシリアルアントレプレナー(連続起業家)なのですか?

宮田 そういう意味で言うと、私も基本的には千葉さんと同じように日本はすごくよくなったなと思いつつ、決定的に違うのは、例えば僕は大学院のPh.Dの研究者に投資するパターンが一番多いのですが、彼らには既に起業経験があるんですよね。

どういうことかと言うと、高校や大学の時点で、それは別にVCマネーは入っていないけれども、本当に小さなものも含めて、会社やプロダクトを作って売ったことがあるという、そういう意味での起業経験というのはものすごくあるんですよね。

ですから、例えば28歳Ph.Dでスタンフォードにいますというゴリゴリ研究者な人でも、ビジネスマインドがあって、ビジネスをしたことがあるのです。

これってやはりすごいし、奥深いなというのは感じますね。

佐俣 層がかなり厚いということですね。

宮田 そうですね。

僕自身が初めて起業したのは26歳で、日本では早いと思ったけれども、アメリカには23歳で3回目という人が沢山いるわけですから、まさに起業というものがカルチャーに組み込まれているというのはこのことですよね。

ただ、大学生が起業し始めたのはすごくいいことだけれども、今の時代って小学生中学生でもプログラミングができるのだから、高校生で起業してはいけないという理由はないですよね。

佐俣 なるほど。

千葉 宮田さん、日本もこの1、2年で急激に伸びたと思うのですが、当然シリコンバレーはもっともっと先を行っていますよね。

どれくらい差が開いて、まず何倍くらい差が開いていて、この差は広がっていくのか、それとも、そこそこ同じくらいのそのまま両方成長しているのか、どのような肌感覚をお持ちですか?

宮田 難しいですね。

まず、日本で起きているのと同じことが、シリコンバレーではないところ、つまり、ボストンやロサンジェルスや世界中で起きているんですね。

そして、いみじくも先ほど榊原さんが仰ったYコンビネータの代表のサム・アルトマン(Sam Altman)が、「僕らはシリコンバレーだけを見ていたらダメだ」と言っています。

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世界の98パーセントのイノベーションはシリコンバレー以外で起きているから、当然目を離す訳にはいきません。

ただ、いくらスタンフォードを中心に質の高い取り組みが見られても、インドやインドネシアやアフリカなども伸びている訳ですから、シリコンバレーでなければダメだという雰囲気は、どんどん薄まってきているのだなと感じています。

佐俣 イスラエルにも、2回目3回目のような若い起業家が多いのですか?

イスラエルもシリアルアンプレナー大国

榊原 そうですね、同じですね。

僕も、投資する方もシリアルアントレプレナーで、要は3回目くらいの起業の方ばかりです。日本だと、例えば40歳以降の起業家には皆さん投資しないじゃないですか。

佐俣 はい。

榊原 逆に40歳以降の方が、脂が乗ってきている感じです。

佐俣 それはもう3回目の起業をしているからですか?

榊原 そうですね。

今回4回目なので、日本との架け橋を作るためにKen(榊原健太郎)のミッションに乗った、というような熱い人達とか。

数字的なところを言うと、テルアビブに住んでいる方はほぼ全員起業家みたいな感覚で、日本の5倍くらいと言われています。

佐俣 起業家数ですか?

榊原 ファウンダー数ですね。

恐らく、10人に1人が起業しているみたいな感じですかね。

佐俣 密度的には日本の100倍や1,000倍なのでしょうか?

榊原 そうですね。

人口800万人のうち、実際に働いている人は350万人しかいないのですけれども、投資額が日本の6倍、つまり6,000億円なんですよね。

例えば、首相が元VCだったり、経済産業省の大臣が今、3回イグジットしているんですよね。

4回目は政治家、みたいな(笑)。

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そういった感じなので、産学連携のような連係プレーもとても早いですし、目の前でエコシステムが具体的に見えるという感じです。

一方、日本では産学連携がまだまだ上手くいっていないと思うのですが…

佐俣 榊原さんのスタイルは珍しいと思っています。

「イスラエルだ!」と仰りつつ、日本にも投資されているじゃないですか。

榊原 そうそう。(笑)

佐俣 VCファンドは、やはり基本的に最も高いリターンを実現することが仕事になるので、だったら全てイスラエルに投資されれば良いのではないか思うのですが、日本を残されている理由というのは何なのでしょうか?

榊原 先ほど、昼間に千葉さんと話していたところなのですけれども、やはり愛というか、日本が好きなのでしょうね。

やはりイスラエルの投資先も、基本的には日本市場に参入したいか、日本の特定の大企業と組みたいという会社でないと投資をしませんね。

佐俣 そういう意味では宮田さんと少し違って、明確なブリッジの志向があるということですね。

榊原 そうです。

基本的には日本の大企業も弱っているので、そのサポートもしたいところと、もちろん、日本のスタートアップに対してイスラエルのスタートアップのノウハウを伝えたり、コラボレーションをしたりということもできるので、そこを繋ぐことによって日本から新しいイノベーションを起こそうというところですね。

ここまで作って下さり、色々な意味でお世話になっているので、大企業さんもサポートしたいという感じですね。

そこはかなり太くて、やはりそうではないと投資しないですね。

佐俣 そうですか。

リターンや可能性だけ見ていたら、全部イスラエルに寄せたいという誘惑はありませんか?

榊原 9年くらいやっていて、7年くらいは日本ですが、確率論で言うと確実にリターンが得られるのは日本だと思っています。

イスラエルも同じくらい出ると思うのですけれども、リスクヘッジを取るために半分ですね。

そして次の半分はもうどこでもいけるような感じにしようかなと思っていますが、今は日本に登記しているVCファンドなので、結果的に半分はイスラエル、半分は日本としているという感じですね。

佐俣 なるほど。面白い。

榊原 そうなんです。

佐俣 榊原さんはブリッジで投資をされていて、宮田さんは両方の国を行ったり来たりされていますね。

日本の起業家は、何をすればいいのでしょうか?

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僕らはイケてるんですか?

(会場笑)

今のお話だけ聞くと、やはりアメリカがすごいですという話と、イスラエルもすごいですという話になって、これはですね、お約束なんですよ、やはり。

ただ、僕らはどうすればいいんだろうなと思って。

僕らはまだまだ頑張っていいのですか?

ICCカンファレンス「カタパルト」に見る日本の起業家の今後

宮田 でも、今日のピッチ(ICCカンファレンスのスタートアップ・コンテンスト「カタパルト」は1社8分のプレゼンテーションを行なう企画)を見ても分かるように、明らかに変わっているわけでしょう。

「カタパルト」はちょっと感動的でしたよ。

(参考記事:ネットベンチャーからリアルビジネスの時代へ 「ファームシップ」が優勝―ICC カンファレンス KYOTO 2016 CATAPULT(カタパルト) -スタートアップ・コンテスト- )

榊原 僕もびっくりしました。

僕って結構レアなところに投資するケースが多かったのですけれども、かなり社会問題を解決する大きなミッションを持った方が増えましたね。

単純に儲かるからとかそういう感じではないので、宮田さんと同じで、僕もすごく嬉しかったですね。

佐俣 朝の「カタパルト」をご覧になった方はびっくりされたと思うのですが、一番前(下の写真の中央にいる外形がお坊さんのような人物)にいらっしゃいますけれども、スタートがいきなり「法然」で、(「法然」はイノベーターであるなど)ずっと法然について話されていて、何が始まるのかなと思っていたのですけれども、実際の事業内容は大変興味深い内容でした。

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近年日本で見なかったようなテーマのスタートアップが多かったです。

今日の「カタパルト」のチームは、2週間にあったYコンビネータのDemo Dayなんかに出て来るようなものに結構近かったのではないかなと思います。

宮田 そう思います。

そういう意味でも、昔は情報格差があって、例えばYコンビネータってすごそうだけれども情報が来ない。

でも今は日本語訳の記事もあるし、日本のメディアもたくさんできたので、もはや情報格差なんてなくなりました。

先ほど少し千葉さんが仰ったように、明らかに僕らが20年前にこの業界にいた時とは違う、異質な、本当に大企業にいたような人達が起業している訳だから、僕らがアメリカから見ても、日本は読み書き算盤の基礎力のレベルが高いですよ。

今日現在差があるかないかで言うと、正直少しはあると思うのですが、明らかにそのトップ層の人達が起業のマーケットに出てきているので、確実にキャッチアップしてきていると思います。

そして、会社のバリエーションがすごく増えてきているという感じはしますね。

日本の優れた技術の特許を活用すべき

榊原 僕が日本にすごく可能性があるなと思う点は、やはりずば抜けた特許数ですよね。

佐俣 多いですよね。

榊原 結局僕らは、その特許を取った技術をどうビジネス化するかというところを、繋げきれていないと思うんですよね。

テクノロジーや特許の技術では、恐らく日本はナンバーワンだと思うのですが、それをグローバル化したりビジネス化したりするところが弱いので、こういった色々なイベントをやって雰囲気を盛り上げて、僕らがそこをブリッジすることによってそういった人が出て来られるような機会を作れば、多分日本は世界でもいけるのではないですかね。

佐俣 なるほど。

日本の技術でレバレッジしていくということですかね?

榊原 十分できると思いますよ。

千葉 でも、日本のスタートアップは特許意識が薄くないですか?

榊原 仰る通りです。

今日は少しありましたが、通常、海外ですとほぼピッチの中に特許のページがありますね。

やはりイスラエルにはマーケットがないので、売上もないし、ユーザーもいなくて、でも特許があるから売れるみたいなところがあります。

編集注:ICCカンファレンス KYOTO 2016では小説「下町ロケット」の弁護士モデルが語るグローバルニッチ・トップを目指すための知財戦略論というセッションを行いました。

佐俣 僕の記憶が正しければ、グロービス・キャピタル・パートナーズさんは一時期結構そういう技術を持った会社に投資をしていたと思います。

実際問題、グロービス・キャピタル・パートナーズさんは日本を代表するシリーズA以降のファンドです。

技術に投資してきた時に、グロービス・キャピタル・パートナーズさんとしての結論はどういう風に出るのですか?

今野 あまり外に出していないのですが、1999年にスタートした200億円のファンドの内、40パーセントをコアテクノロジーに投資をして、そのほとんどが良い形になりませんでした。

ただ、その時と今では人材も全く違い、資金の流動も違うので、多分今やってもそんなことはないと思います。

ずっとコアテクノロジーはやりませんと言っていましたけれども、インターネットとコアテクノロジーの差というのが無くなってきている部分もありますので、結果的に、我々も多少というかこれからやっていくことになるのだと思いますし、実際ドローンの投資先もあるという感じではありますね。

佐俣 榊原さんが仰られていますけれども、サイバーセキュリティというのは、もうコアテクノロジーの塊ですよね。

榊原 本当に仰る通りですね。

佐俣 多分イスラエルも多いですし、米国の大手VCのアンドリーセン・ホロウィッツの投資先で多分一番多いカテゴリーはセキュリティですよね。

日本でも、そういうことが技術ベースでできれば戦えるのではないかという気もしますよね。

榊原 以前、ある大手のサイバーセキュリティを担当しているエンジニアにお聞きしたのですが、やはりサイバーセキュリティは、日本だとどちらかというと窓際族的な方が担当しているくらいなイメージがあります。

日本でサイバーセキュリティというと、エンジニアの中でもレベルが低い方がやるビジネスみたいな感じになってしまっているので、そういうところも少し考え方を変えていかないと、恐らくレベルアップはないのではないかなと思います。

優秀な大学生の可能性

佐俣 僕もその話にはすごく同感です。

僕は、3か月前に東京大学 本郷の前のラーメン屋さんの上に60平米くらいのオフィスを借りて、東京大学の中には入らないで、東京大学の前で「起業したい人、こちらにおいで!」とやっているのですけれども、結構面白いことがあるのではないかなと思っています。

東京大学にいる学生というのは、やはり死ぬほど優秀ですね。

工学部の教授にお会いして就職先のランキングを見せて頂いたのですが、1位「日立」、次に「富士通」、次に「NEC」、これ全部スタートアップにならないかなと思うんですよね。(笑)

でも実は、少しずつ学部毎に変わってきていて、グノシー(Gunosy)のファウンダーの彼らがまさにその工学部のシステム創生学科の辺りにいたのですけれども、その辺りの授業に出てみると、もう本当に起業家みたいな学生が沢山いて、普通にプログラミングの授業をやって、サービスを作ってピッチをするので、感想を聞かせて下さいということで先生に呼ばれるみたいなこともありました。

そういう兆候も出てきているので、そういうところから温めていくと、千葉さん、日本も明るいのでしょうか?

千葉 僕もそう思っています。

僕は前職のコロプラの時に7年半ずっと採用担当をしていましたが、東京大学や京都大学を含めた優秀層、日本のエリートと呼ばれている人達が、霞が関や大手企業研究所ではなくて、いかにネット業界に来てくれるかということに奔走していました。

7年前は絶対あり得ませんでしたが、グノシーもそうですけれども、若手スターが何人か生まれたことによって、じゃあそこを目指そうかというムーブメントが確実に起きていますね。

以前から京都大学や東京大学で色々とイベントを仕掛けてきて、その影響も大きいですし、東京大学の前に広告を出しているベンチャーキャピタルがいたりとか(笑)、やはりそういう地道な活動が功を奏している感はあるんですよ。

もし、文系理系を含めてこの日本のトップ層の20パーセントでもこちら側に入ってくれるなり起業するなりしてくれたら明るいですよね。

そして僕はお勧めするんですよね。

そちらの方が楽しい未来なんじゃないかなと思っていて。

研究所には充分、人は行っているので。

今野 より良くしていくという意味において質問があるのですけれども、これからの投資領域って、結構難易度が高い時に、若者だけで「こと」が出せるのかということにすごく悩みを持っていて、我々みたいなプレイヤーが組み合わせをしてあげないと、オーガニックだけでは難しい

だから佐俣さんのところに来ている人がテーマがないと言うのは、確かに若者にとってはそうなのだと思うんですよね。

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佐俣 そうなんですよね。

今野 若者だけではできないテーマが、目の前に結構あるのではないかなと思うのですが、どうなのでしょうか。

僕は学生そのものにはあまり接していないのだけれども。

千葉 先ほどの榊原さんモデルで、手元に素敵な大きな事業アイディアがあって、30代40代の方々の手練れがいて、でも現場の破壊力を考えると若手も必要だから、そこのカップリングというのはありかもしれないですよね。

佐俣 あと、うちのVCファンドがやっているのは、無責任に強制的にピボットさせるということです。

千葉 あれ、ひどいですよね。(笑)

(会場笑)

佐俣 ひどいです、はい。

千葉 よく投資レポートに「ピボットさせました!」と書いてあって、ジュエリーのレンタルをやっていたところからドローンになりましたとか、無茶苦茶だと思いながら読んでいました。(笑)

(会場笑)

佐俣 ジュエリーのレンタルでプレゼンされたので、それはつまらないと言って、ドローンだったら今すぐ投資をすると言ったら、「そういえば僕は工学部でした!」と言われて、それでは投資しますということで、先日、千葉さんにも投資して頂いたのです。

千葉 僕も勢いでドローンなので投資してしまったのですけれども、このネタ、ひどい話だなと思って。(笑)

佐俣 やっぱりもったいないと思いませんか?

東京大学の大学院を出ていて、工学部のバックグラウンドがあった人が誰でもできる領域でやっているのは勿体ないですよ。

シードで投資をしていると、日本って、かなりウェブサービスに寄るなということを感じます。

ですから、僕はドローンや、ビットコインや、ハードウエアなどのなるべく難しい方に振るんですね。

なぜかと言うと、日本は競合が出ないからです。

例えば、アメリカやインドでホットなカテゴリーがあると、100社くらいクローン(類似企業)がいるじゃないですか。

あれに勝つのは辛いですけれど、日本では誰もパクらないんですよ。

何かそれっぽい会社が出ると、ほとんどパクれない。

キュレーションはパクられましたけれども、キュレーション以外では、本当にパクってこないので、だったら難しい良いテーマを堂々とやってしまえば、誰も突っ込んでこないのではないかなというのが僕の仮説ですね。

千葉 僕はVCファンドさんに出資をさせて頂く中で、唯一なんですよ、VC側からピボットを働きかけるVCというのが。

実際に複数社やられてみて、その後のチームの雰囲気や、事業の伸びはどうなのですか?

佐俣 言ってしまえば、伸びてしまえば勝ちですよね。

千葉 僕はそこを知らないのですが、上手くいっているということですか?

佐俣 やはり幾つかは上手くいっていることがあるんですよ。

起業家の幸せって何だろうって思いますね。

シード投資家として上手くいかない会社とも付き合っていて、5年も一緒にやっていくのですけれども、幸せはグロース(成長)の中にしかないのではないかなと思っています。

別に彼らにお金が入って嬉しいかとか、人が増えて嬉しいかとかはなくて、やはり事業グロースだけが基本的な幸せだと思います。

そして、どんなに優秀な人が頑張っても、ダメな領域はダメなんですよ。

だったら明るく、「これはダメだったね」と言って死ぬほど笑えるくらい挑戦的な領域に行けば、ネタができるので。

これを儀式にしているんですよ。

突然ドローンをやれと言われても、ドローンをやりましたなんて普通あり得ないじゃないですか。

成功しても失敗しても皆で笑えるじゃないですか。

一生懸命考えていくと、重くなってしまうので。

と言って正当化しています(笑)。

このような感じで日本の投資環境は明るいという話をしていたのですけれども、全体の時間が残り15分くらいなので、会場の皆さんが温まっているという期待のもとに、ご質問を受け付けたいと思います。

(続)

続きは 「日本はファイナンスに無知な起業家/投資家が多い」気鋭のベンチャーキャピタリストが起業環境の課題と展望を徹底議論 をご覧ください。
今回 話題となりましたICCカンファレンスのスタートアップ・コンテスト「カタパルト」に関してはぜひ以下の記事をご覧ください。プレゼンテーション動画もございます。
 ネットベンチャーからリアルビジネスの時代へ 「ファームシップ」が優勝―ICC カンファレンス KYOTO 2016 CATAPULT(カタパルト) -スタートアップ・コンテスト- )

編集チーム:小林 雅/榎戸 貴史/戸田 秀成/Froese 祥子


【編集部コメント】

続編(その7/最終回)ではグロービス・キャピタル・パートナーズ今野さんからの提言から始まり、日本のベンチャーエコシステムをより良くなる為の議論なりました。是非ご期待ください。今回の感想はぜひNewsPicks(ICCのNewsPicksページ)でコメントやフォローを頂けると大変うれしいです。

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ICCパートナーズ(ICC Partners Inc.)は産業を共に創る経営者・経営幹部のためのコミュニティ型カンフ ァレンス「Industry Co-Creation(ICC) カンファレンス」の企画・運営および新規事業創出・アライアンスなどのアドバイザー業務を行っています。