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1. 重要文化財、城下町など歴史的資源を活用した街づくりを進める「バリューマネジメント」

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日本全国で、地域活性や街づくり、産業振興に携わる登壇者による議論「地域の魅力を最大化する街づくりの取り組みとは?(シーズン2) 」。全6回シリーズの(その1)は、バリューマネジメントの他力野 淳さんが登場。大洲城の「城ホテル」などで話題を呼んでいる、約60の自治体と組んだ地域の文化財などの「歴史的資源」を保存・運営して、街づくりに活かす事業を紹介します。ぜひご覧ください!

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。 次回ICCサミット FUKUOKA 2022は、2022年2月14日〜2月17日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。

本セッションは、ICCサミット KYOTO 2021 プレミアム・スポンサーのTokyo Primeにサポート頂きました。


【登壇者情報】
2021年9月6〜9日開催
ICCサミット KYOTO 2021
Session 7E
地域の魅力を最大化する街づくりの取り組みとは?(シーズン2)
Sponsored by Tokyo Prime

(スピーカー)

他力野 淳
バリューマネジメント株式会社
代表取締役

富山 浩樹
サツドラホールディングス株式会社
代表取締役社長 兼 CEO

中川 政七
株式会社 中川政七商店
代表取締役会長

山井 梨沙
株式会社スノーピーク
代表取締役社長

(モデレーター)

各務 亮
THE KYOTO
Editor in Chief & Creative Director

「地域の魅力を最大化する街づくりの取り組みとは?(シーズン2) 」の配信済み記事一覧


本編

企業のリーダーが語る地域の魅力を最大化する取り組み

各務 亮さん(以下、各務) 皆さん、本日はよろしくお願いいたします。


各務 亮
THE KYOTO
Editor in Chief & Creative Director

2002年から中国、シンガポール、インドなど電通海外拠点を移り住み、2012年から京都支社へ。京都から日本ならではのグローバル価値を生み出すべく「GO ON」「太秦江戸酒場」 」 「夕暮能」など伝統に異分野を掛け合わせた全く新しい商品、サービス、事業を多数立ち上げ。
2020年6月には京都発、文化&アートのプラットフォーム「THE KYOTO」を立ち上げ、編集長&クリエイティブディレクターに。佐治敬三賞、カンヌライオン、D&ADなど受賞。内閣府 クールジャパン戦略推進会議メンバー、経産省 クールジャパンビジネスプロデューサー、観光庁 目利きプロデューサー、京都市 産業戦略懇談会委員、京都市 京都市伝統産業活性化推進審議会委員など歴任。著書に「すべてのビジネスに日本らしさを。」(クロスメディア・パブリッシング)

本日のこのセッションは、「地域の魅力を最大化する街づくりの取り組みとは?」ということで、各地域のトップ企業の代表の皆様にお集まりいただきました。

本当に心強く思います。

というのは、私は今ここ京都に住み、暮らしているのですが、このコロナ禍で、京都もご覧のとおり半分ぐらいの観光産業がお店を閉めていて、大きく痛んでいます。

しかも、これがあと少し辛抱すれば良いかというとそれも約束されず、出口の見えない数年間を覚悟しなくてはいけない状況です。

そんな中で、各地域が業態転換と言えるような新しい挑戦をしていかないと、生き残っていけないのではないか、その魅力を保っていけないのではないかという危機感を持っています。

今日この議論に参加いただくスピーカーの皆様もきっと今すごくお考えだと思います。

今お考えになっていることを聞いていきたいですし、これだけのメンバーがお集まりですので、Co-creationで手を取り合っていただければ、新しい未来が創れるのではないでしょうか。

これからの地域をどうすれば良いかの、真剣なブレインストーミングをこれから一緒に75分間でしていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

前回は地域の魅力は何なのか、それをどう発信すればよいのかというお話でご好評をいただきました。

【一挙公開】地域の魅力を最大化する街づくりの取り組みとは? (全7回)

しかし、発信のレベルではもうなくなってきたのかなという部分がありますので、魅力づくり自体をどうしていくのかを意見交換できればと思います。

その際中川 政七さんが言う「一番星企業」、つまり地域にに非ユニークで魅力的な企業があることがとても大事なことだと思います。京都でも、そういった企業がハブとなり、地域を活性化くださっているなと感じます。

コンセプトは「産地の一番星が産地の未来を描く」。中川政七商店ら11社が集まり「日本工芸産地協会」を設立(JDN)

そして、新潟、奈良、北海道、大阪の各地域において、一番星企業でいらっしゃるのが、今日お集まりいただいたスピーカーのみなさまかと思いますので、今回のシーズン2は、まず自己紹介を兼ねて、地域と自社の関係についてお話をいただきたいと思います。

トピック2は今、地域にどういったリアルが起こっていて、ニューノーマルが求められる中でどのように業態転換していくべきかについて、ご意見をお伺いしていきたいと思います。

トピックの3つ目は、「東京一極集中を乗り越え、地域分散型の社会は実現できるのか?」
今まで「地域創生」と言いながら、それが成功しているとはなかなか言い難い状況ではないかと思います。

地域の人口が減少していき、経済合理性から東京への集中が加速する中で、それでも地域にはやはり残ってほしいし、その魅力を失ってほしくない、それをどうすれば実現ことができるのかについて、皆さんとお話ししたいと思います。

僕は、1つの仮説として、地域間で連携していくことではないかと思います。

これだけの方が揃っていらっしゃるので、その連携のアイデアであったり、東京に対するオルタナティブな価値観の作り方みたいなものを、ぜひお話しいただきたいなと思っています。

では早速、他力野さんから、よろしくお願いいたします。

歴史的資源を活用した街づくり「バリューマネジメント」他力野さん

他力野 淳さん(以下、他力野) バリューマネジメント株式会社の他力野です。

よろしくお願いいたします。


他力野 淳
バリューマネジメント株式会社
代表取締役

2005年バリューマネジメント株式会社設立、代表取締役に就任。グローバル起業家団体 EO(Entrepreneurs Organization)Japan Area Director。文化財など歴史的資源、行政の遊休施設の利活用や観光まちづくりを推進。現在、観光庁の歴史的資源を活用した観光まちづくり、城の利活用を推進する城泊の専門家を担う。「施設再生から地域を活性化に繋げ、日本独自の文化を紡ぐ」がテーマ。

われわれは理念は高くということで「日本文化を紡ぐ」ことに取り組んでいます。

具体的には、文化財等々を国は「歴史的資源」という言い方をするのですが、こちらの保存をするための活用に取り組んでいます。

ここにあるように、歴史的資源は、民間が持っているもの、国・自治体が持っているもの、神社やお寺が持っているものといろいろあるのですが、ほとんど税金保全です。

日本は税金の再分配で成り立っている国ですから、こうやって税金で保全してきたものはすべからく無くなっていきます。

今どんどん、いろいろな事業が民間に委託されていると思いますが、これは文化財の保存も同じです。

こちらは、民間の3,000坪ある文化財です。

民営化されて黒字になった大阪城

他力野 当たり前ですが、大阪城も税金で保全しています。

お城も民営化されていっており、日本で最初に民営化された城は大阪城です。

蘇る大阪城!年4000万円赤字から2億5千万円の黒字へ! | 関西プレス|KANSAIPRESS

2019年にG20大阪サミットが開催されましたが、国賓を迎えた大阪城西の丸庭園の大阪迎賓館などをわれわれが管理しています。

2019年G20大阪サミット 世界の要人を迎え入れる6月28日(金)「大阪城西の丸庭園 大阪迎賓館」で晩餐会を開催(PR TIMES)

本日の会場のすぐ近くにある平安神宮は10,000坪の日本庭園があって、庭園の保存に億単位のお金がかかっていますが、こういったものもわれわれがお預かりして活用することで運営しています。

バリューマネジメント株式会社が京都平安神宮「平安神宮会館」を運営受託(PR TIMES)

その他われわれは、自治体の街づくりに参画しているような立ち位置です。

お預かりしている歴史的資源は、スライドでは54ですが、今60棟ぐらいになったでしょうか。

これをどんどん増やしていっているような状況です。

愛媛県大洲市の城下町全体をホテル化

他力野 自社と地域の関係についてという話がありましたので、自己紹介がてら、愛媛県の大洲市をご紹介します。

大洲市は、人口約42,000人の非常に小さな昔からの城下町です。

こちらは2017年の城下町の地図ですが、青く塗られているところが歴史的資源の、要は江戸時代から昭和初期ぐらいまでの古い建物で、赤く塗られているところが取り壊されると決まっていた物件です。

これをなんとかしないといけないということで、街づくりの連携協定を自治体と結びました。

【リリース】株式会社伊予銀行、大洲市、NOTEと愛媛県大洲市の町家・古民家等の歴史的資源を活用した観光まちづくりにおける連携協定を締結しました。(バリューマネジメント)

そこで街づくりのDMO(観光地域づくり法人)とよく言われますが、DMOキタ・マネジメントという街づくり会社を作って、あとは民間事業者としてわれわれが入って、まず地域経済牽引事業者となる企業を選定しました。

先ほどの地図で見ると、ただ赤く塗られていたり、青く塗られているだけですが、街並みはほぼ廃墟なんです。

写真掲載されるところは1カ所だけで、それ以外、全部整備されていないので、ボロボロだったのです。

そういった半分崩れているようなものも含めて、今全部修復していっています。

それを宿泊施設や飲食施設にしたり、外から物販の店舗を呼んできたりと、いろいろなことをしながら、「街全体がホテル」という構想で今進めています。

城に宿泊し歴史を体感する特別プラン

他力野 僕たちは城下町を預かっているので、「城下町というぐらいだから、城が顔だよね」と、城も文化財として保存されているわけですが、これも活用しましょうということにしました。

「市長、朝の9時から夕方の5時までは一般開放しないといけないけれど、夕方の5時から朝の9時までは空いているじゃないですか? 開放しましょう!」と、天守に泊まれるようにしました。もちろん法律の範囲内でやっています。

天守に泊まることを通じて、城主体験という、いわゆる「リビングヒストリー」と文化庁が呼んでいますが、当時あった文化体験をするというものの1つに、初めて城主の加藤 貞泰が入城したときの体験があり、目玉となっています。

『城』に泊まる 日本初、木造天守での宿泊体験(VMG HOTELS & UNIQUE VENUES)

この体験の中の、例えば鉄砲隊や幟(のぼり)隊、神楽などは、全部ボランティアで地元の人たちがやっていて、そこにお金を付けていきます。

支払われたお金が循環していくような、文化財にお金が回っていくようなことをやっています。

その次に、加藤家が400年大名として守っていたのですが、明治以降住んでいた三の丸のお城や重要文化財の櫓(やぐら)を開放しました。

これも文化財の保存のためにやっていて、客室にしたりしました。

国登録有形文化財・旧大洲藩主の末裔の邸宅が貸し切りの客室に。国指定重要文化財である南隅櫓でのディナーや臥⿓山荘のプライベートツアーなど宿泊者様限定の特別な旅プランが誕生!(Web東奥)

また、1ブロックを新たな街並みにして、このコロナ禍の中、整備が終わり、8月にオープンしました。

こういった蔵などを全部整備しまして、活用できるようにしていっています。

新規にまた5社ぐらい、外から、Iターン、Uターンの事業者が入ってくれて、また街並みが賑わいを持ったという形です。

重要文化財の活用の仕方を有識者と検討

他力野 現在、取り掛かっているのが、重要文化財の臥龍山荘です。

文献が残っていないことが結構あるので、有識者を集めて、これがどういう思いで造られたのか、どう残していくべきなのかを有識者検討会で検討して、活用の仕方を決めて残していくことを、文化庁にも入ってもらってやっています。

ざっくりとですが、このようなことをやっています。

以上です、ありがとうございました。

各務 ありがとうございました。

では引き続き、富山さん、お願いします。

富山 浩樹さん(以下、富山) 今のお話、すごいですね。

ちょっと伺ってもいいですか?(笑)

そもそも初期のお金はどこから出ているのですか?

相当な投資になっていますよね。

他力野 そうですね、10億円くらいの投資を今計画していますが、ファイナンススキームを作って、地銀さんに入ってもらって、官民ファンドにも入ってもらって、僕らが地域未来牽引企業(※) という形で選ばれているのもあり経産省から補助が入っているので、そういうことでやっています。

▶編集注:経済産業省により選定された地域経済の中心的な担い手となる事業者(経済産業省参照)

あとは投資したものは回収しないといけないので、利回りは、全部先ほどの整備したものを僕たちが回して、収益から返します。そういうモデルです。

イニシャルコスト(初期費用)は一部もらっていますが、運営に関しては完全に自走するモデルでやっています。

富山 じゃあそこで完全にマネタイズしてやっていくという計画をしているんですね。

他力野 そうです。

富山 すごい。

各務 ほかに他力野さんに質問は大丈夫ですか?

では富山さん、お願いします。

(続)

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編集チーム:小林 雅/星野 由香里/浅郷 浩子/戸田 秀成/小林 弘美

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