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「伝統から革新を生み出す挑戦者の取り組み」【F17-2C】セッションの書き起し記事をいよいよ公開!9回シリーズ(その5)は、電通の各務さんに縦割り化している京都の伝統産業をどう横に繋ぐかについて、手がける「GO ON」プロジェクトと併せてお話頂きました。ぜひ御覧ください。
ICCカンファレンスは新産業のトップリーダー160名以上が登壇する日本最大級のイノベーション・カンファレンスです。次回 ICCカンファレンス KYOTO 2017は2017年9月5〜7日 京都市での開催を予定しております。
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太刀川 表現をするというよりしないんですけど、そこで繋がりをどんどん見つけていくということは、いかに表現に制約を作っていくかということでもあるので、その適切な制約を見つけてそこに落とし込んでいくというのは、すごく大事なことのような気がしています。
中竹 本質に近づいていると思います。
今の流れで、各務さんにデザインを色々見ながらプロデュースしている立場からお話いただけると嬉しいですね。
縦割りになりがちな京都の伝統をチームで繋げていく
各務 太刀川さんも僕も色んなものを接続し直していく、ということを色んな分野でやらせていただいています。
例えば「Japan Handmade」というブランドは、伝統工芸を海外のインテリアとかデザイン市場に繋げていくということを、「和える」さんとはちょっと違うアプローチで、非伝統産業に対して伝統産業を繋げていく、ということをやっています。
参考資料:「Japan Handmade」のWebサイトより引用
あとは、京都は伝統がどんどん洗練していく中で、縦割りで横の繋がりがやや薄くなっているという不都合があったりするんです。
伝統工芸品はもともとは当然生活の中で使っていたので、料理屋さんと伝統工芸の職人さんって仲良いのかと思いきや、意外とそこの交流が薄かったりします。
また、伝統芸能をやってらっしゃるお茶人さんと能楽師さんは仲良いのかと思ったら、「実は30年間能楽師やってきたけど、1回も茶会に行ったことないんです」ということがあります。
普通に京都の中であることで、僕はそれを第三者として、GO ONプロジェクトにおいても、6人の暖簾を超えた伝統工芸の会社を横で繋いで、おせっかい的に「じゃあチームでやったらいいじゃない」と、自分の持ち前の鈍感力と空気を読まない感じでやっています。
そういう、洗練されているけれども、代わりに縦割りになりがちな業界をもう1回リアルなものに戻していくというか、バランスしていくことを少し媒介者としてお手伝いさせていただいています。
世の中の流れがそうなっているんだと考えています。
ただ悩みは、そうやって中に入っていけば入っていくほど、よそ者の強みが弱まっていく部分があるので、それはやっぱり自分はよそ者だと割り切る。
割り切るというのは変ですが、そこの自分の役立ち方をしっかり自信をもってやっていく、でもそれってやっぱり少し寂しいことでもあったりするので、そこの寂しさのジレンマがあったりしますね。
中竹 それ深いですね。
太刀川 確かに、よそ者ではもはやなくなってきてるもんね。
中竹 見ていてどうですか、よそ者じゃなくなってる感じですか。
川上 僕より伝統のところに出てますからね。
(会場笑)
逆に言うと僕のほうが疎外感があるというか、阻害されてるなって思います。
各務 川上さんはその領域のトップランナーとして確立されてますからね。
京都の人同士は意外と群れないというか、僕なんかはおせっかいで「一緒にやりましょうよ」みたいな感じで色々させていただいています。
川上 確かに東京の人とつるんでる方が多いですからね。
伝統も洗練され続けると新鮮さが失われる
川上 僕は考えてみれば東京の人か海外の人とやってるプロジェクトの方が多いので、なかなか京都とは関係が無いんですよね。意外と、東京や海外の方から、京都の人間と繋いで頂くケースが多いです。
先ほど各務さんが言ってたキーワードで、「洗練されているから縦割りになっている」というのがありましたが。
昨日たまたま認知症の研究をされてる方々と一緒に話していたのですが、認知症と、洗練しつくされた伝統のプロセスが何となく似てるなと思ったのが、人間は頭の中で色んな概念を作っていくんですよね。
それによって脳のエネルギー消費量とか、使う時間を減らしていくんですよ。
そうなってくると、人間の脳は年をとると1年が早く感じたりとか、知らないうちにまた正月か、誕生日か、というふうになると思うんですが、それはなぜかというと新鮮さがなくなってしまうからです。
そして脳はあんまり使わなくなってくる、結局これはこういうものだという概念が頭にあるわけですよね。
だからそれによって脳を使わなくなってくるからボケる、という話だったんです。
伝統も洗練され続けていると、そうなっちゃうと思うんですね。
洗練されてこれが一番効率がいいものだから、ということで今の形になっているわけですが、それによって職人さん達もこれをずっとパターン的にやっていけばちゃんとしたものができる、こういうものをやってたら絶対売れるんだというパターンを勝手に作っちゃっていて、結局認知症の人の脳と同じような状況になってるんじゃないかな、と今お話を聞いていて思いました。
太刀川 確かに、その感覚ってすごくわかりますね。
鬱とかもそうだっていいますよね、1つのものしか見えなくなってしまうと。
僕の知り合いで幸せを研究している慶應のSDM(システムデザイン・マネジメント研究科)の前野先生という教授がいるのですが、彼と話してて面白かったのは、人間は友達が増えると単純に幸せになるというものではなくて、友達の種類が増えると幸せになるんだそうです、数ではなくて。
これは要するに、隣の世界もあるよとか、別の可能性と接続する接点とか種類の数が多ければ多いほど、人は幸せと感じるということで、プロジェクトでもそうだと思うんです。
さきほどの意外性のある接続、各務さんの場合はものすごくスマートでヤングエグゼクティブな感じのものと伝統産業がバシッと結びつく間に彼がいるわけですよね。
「和える」でいうと、ベイビー・キッズという新市場とバチっとはまるところにあったり、西高辻さんもモダンアートやデザインとか、違う分野と接続することによって可能性が開くぞ、ということは共通の体験としてここにはある。
それが脳科学的なマシーンであることもあるし、「From 禅」ではあるけれどカタカナになっているマインドフルネスみたいなものかもしれないし。
そことの接点を拒んでしまうことが一番やばいわけですよね。
なぜなら変わっていかなければいけない、恒常的に革新し続けないと伝統が保てないというのは歴史が証明している事実ということもありますから。
マルチセクターに繋がるという言い方が普通の結論かもしれませんが、伝統においても、多様な接続がものすごく大事だということですよね。
だから全然伝統と関係無い人と伝統の人をマリアージュさせる会、みたいなのがあったら結構面白いんでしょうね。
「世の中狭いよね」はキケン
川上 前野教授が言っていたことと似たようなことを友人の石川善樹さんが言ってたんですが、最近口癖で僕も石川さんも「世の中狭いよね」って言ってるんですよね。
という話を去年ぐらいにしていて、最近「世の中狭いですよね」と言われた時に、自分はバイアスがすごくかかっているし、似たような人間としかつるんでないんだと思って、俺の脳大丈夫かなって最近ずっと思ってるんですよね。
違う環境に入れたり、違う人に当てると、人間ってそれを理解しようと注意を向けるんですよね。
それで脳の活性化もされるし、新しいものが見えるようになってくるというか、それ最近できてるのかな、とずっと考えています。
伝統と個人は似ているところがあって、人間が恒常性を求めるのもそうだし、伝統が恒常性を求めるのもそうだし、社会の人が伝統に対して安定を求めるのもそういうところだと思うのです。
やはり刺激とかそういうものを与えていかない限りこういうものは前に進んでいかないし、絶対残っていかない、ぼけちゃうというか認知症になるってそういうものなんだろうなという感じですよね。
太刀川 確かに各務君、こういうところで良く会いすぎているね。
各務 当分会っちゃダメだね(笑)
太刀川 危ない危ない。
中竹 それでいうと、ICCカンファレンスはそういう場を作ってるということですかね。
太刀川 そうかもしれませんね。
中竹 普通こういう産業カンファレンスにお坊さんと神職さんが一緒にきたりしないですよね。
各務 そこはいいですよね。
(続)
編集チーム:小林 雅/榎戸 貴史/戸田 秀成/横井 一隆/城山 ゆかり
続きは 太宰府天満宮×現代アート?権宮司・西高辻氏が語る「伝統と革新」 をご覧ください。
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【編集部コメント】
続編(その6)では、太宰府天満宮の西高辻さんに、太宰府天満宮が開催している現代アートのプログラムについてお話頂きました。是非ご期待ください。他にも多く記事がございますので、TOPページからぜひご覧ください。
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