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太宰府天満宮×現代アート?権宮司・西高辻氏が語る「伝統と革新」【F17-2C #6】

ICC FUKUOKA 2017 Session 2C「伝統から革新を生み出す挑戦者の取り組み」

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「伝統から革新を生み出す挑戦者の取り組み」【F17-2C】セッションの書き起し記事をいよいよ公開!9回シリーズ(その6)は、太宰府天満宮の西高辻さんに、太宰府天満宮が開催している現代アートのプログラムについてお話頂きました。ぜひ御覧ください。

ICCカンファレンスは新産業のトップリーダー160名以上が登壇する日本最大級のイノベーション・カンファレンスです。次回 ICCカンファレンス KYOTO 2017は2017年9月5〜7日 京都市での開催を予定しております。参加者の募集を開始しました。

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▶「伝統から革新を生み出す挑戦者の取り組み」の配信済み記事の一覧

中竹 西高辻さんは全然違う分野の人とすごく出会われているんじゃないですか。

西高辻 そうですね、意識的にというのもあるかもしれないですけど、特に先程申し上げましたが、太宰府天満宮で現代アートの取り組みをやっていますが、アーティストの方は非常に異質なんですね。

特に考え方のアプローチが全く違うといったらあれですが、そういう方をお呼びして、アートプログラムという形でやっています。

ここでは、ライアン・ガンダーという全く日本の概念が無いアプローチを持ったアーティストの方を招聘して行った展覧会の話をしたいと思います。

太宰府天満宮の現代アート

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ライアン・ガンダーが太宰府に来て、神道や神社に触れて考えてもらうと、出てきたのが「日本人は目に見えないものを非常に大切にしたり、感じているんじゃないか」ということを指摘していたのが、とても印象的だったんですね。

神社にお参りして手を合わせますが、神様自体は目に見えない。

例えば、キリスト教だったらそこにキリストの像があったりするんでしょうけど、目に見えないものを感じて手を合わせるとか、自然に対してもそうだということで、目に見えないものを展覧会の通底するテーマにしました。そうして制作された作品の一つが、ロダンの考える人が立ち去ったあとの石、という作品です。

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中竹 このタイトルすごくないですか。

西高辻 「すべて分かった」というタイトルですが、時間の経過とともに座った痕跡だけが残っている。でも何が分かったかは分からないけど、そこに想いを馳せて考える。

中竹 これは(写真の)ハテナも一応アートの1つですか。

西高辻 そうですね、目印をつけて、今はキャプションがついて作品の名前だけあるんですけども、こういうアプローチだったり、他にも磁力という目に見えないものが集まって金属がここに存在する、という目に見えない磁力をテーマにした作品も制作しました。

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これは神道クエスチョンといって、神社について考えるクエスチョンですね。

言語的な問いかけ、そこで自分もそれに向き合うということで、例えば「神道に匂いや音があるとすれば、それはどんな感じですか?」という質問があったり、多分日本人だと考えないアプローチなんですね。

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他にも、「1週間のうち何時間1人で過ごしますか?」という質問があったり、全体像として自分自身、そして神道というものを考えて向き合うというコンセプチャルアートの作品です。

アーティスト側にも影響を与える

このように異物と出合うことで、自分たちも「こういうアプローチがあったんだ」ということを考えますが、同時にアーティスト自体にも影響を与えています。

その後ライアン・ガンダーはドクメンタ(documenta)といって、5年に1回しか開催されないヨーロッパの大きな美術展覧会に参加しますが、会場全体に全く何も展示していなくて、キャプションだけあって、「ジェントルブリーズ」と書かれている。

そして会場には自然な風だけが流れていて、そのことをキャプションを見て改めて感じる。これは風なんだ、とあとで分かる、というような作品を発表しています。

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これはアーティストが神道から影響を受けて作ったものでして、逆に神社というものを使ってもらって異物を敢えて混ぜることによって、先程おっしゃったような伝統をマンネリ化しないというのもありますが、それは我々だけじゃなくてお互いだと思います。

逆に伝統というものに接続したことがない方にとっても、そこにアプローチすることで可能性が拓ける、そういう関係が作れたらいいなと思って今やっています。

中竹 パッといきますか。

西高辻 これはフィンランドのマリメッコ社の協力を得て、一緒に行ったプロジェクトです。

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神社の中でも御本殿はお参り下さるんですが、他は回らないので、普段は行かないけど空間として非常にいい場所にどうやって人に見て感じてもらえるか、ということを考え、境内各所に作品を設置しました。

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また、マリメッコ柄の麒麟の像を作ったりもしました。

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中竹 遊んでる感じがしますね。

太刀川 でもこの写真もそうだし、コラボレーションしているアーティストもそうですが、非常にクオリティーが高いですよね。

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こういうクオリティーであれば良いはずだ、というのは西高辻さんの感覚なんですか。

西高辻 そうです、私の感覚でやっています。

太刀川 相当センスいいですよね。

中竹 本職なんなのか、という感じがしますよね。

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異物をどう組み合わせるか

各務 質問させていただきたいのですが、僕も異物をどんどん繋いでいくなかで、どのシナプスを繋ぐのが一番活性化するのかな、と町を色々見ながら考えているというか、プロデューサーとしてその部分の組み合わせの妙はどこかな、というふうに考えています。

西高辻さんは神道とアートをだったというところのポイントや、異物がぶつかると本質が見えやすくなり、そこから新しい化学反応が起きてくるので、そのようなことがどんどん起きてらっしゃると思いますが、その辺を教えていただければと思います。

西高辻 まず、なぜアートだったのかというと、やはり子どもの頃から身近に古いものがあって見てきたんですが、なんで神社に伝わっているんだろうとか、元々どういうものだったんだろうとか、そういう考えるきっかけがあったことが1つです。

そして、中高の美術の先生が変わった先生で、初めての美術の授業で、今までは「綺麗に描きましょう」とか「太陽を描くなら赤で」とか、そういう授業を小学校で受けてたのが、中学に入るとその先生は「鏡を前に置いて自画像を描きましょう」と言ったんです。

真ん中に線を引いて、右手で右側を、左手で左側を描きましょうと言って授業をやったんですけど、それは何故かというと、人間の顔は非対称なんですね。

普通は顔は対称に描かれていますが、でもそうじゃないよ、というのを自分と向き合いながら感じるというのと、右利きだったら右手の線は綺麗な線ですが、左利きだったら上手くかけないですよね。

逆に左手の線の方が柔らかい線ができると言って、左手の線を使って発展的に作品を作りましょうとか、違うものの見方を教えてくれる先生と巡り合って、これは非常に面白いなと思いました。

固定化しないものを教えてくれた先生だったので、それがすごく心の中に残っていて、大学で美術史を専攻し、現代アーティストと一緒に美術の展覧会を作る、という経験をする一方、アートは幅広く色んな方が関われて、色んな文脈で考えられるなと思いました。一方、伝統が弛まないかということもあります。

一番初めの話しに戻ると、確たる物がしっかりあるので、その部分は残しながらも、他の部分は幅広いキャンバスとして使っていただいて色んな方とコラボレーションをしてきました。

お互いに可能性が発展的に広がるという意味で、強度があるからこそでき、歴史とか幅広さがあることを時代時代で解釈し、その積み重ねが革新となって、未来から振り返ると伝統的だけれども筋がとおっている、ということに繋がるのではないかなと考えています。

(続)

編集チーム:小林 雅/榎戸 貴史/戸田 秀成/横井 一隆/城山 ゆかり

続きは 【名言】「菅原道真公ならどう考えるか?」を自問する(太宰府天満宮・西高辻) をご覧ください。

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【編集部コメント】

続編(その7)では、色んな人との出会いが革新を生むことについて議論して頂きました。是非ご期待ください。他にも多く記事がございますので、TOPページからぜひご覧ください。

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