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「コミュニティの「世界観」をどう作り上げるのか?」【F17-8B】セッションの書き起し記事をいよいよ公開!7回シリーズ(その7)は、会場からの質問を受け付け、「独自文化が新規参加者との壁を作る」ことや、各登壇者が注視するKPI(重要管理指標)などについて議論しました。是非御覧ください。
ICCカンファレンスは新産業のトップリーダー160名以上が登壇する日本最大級のイノベーション・カンファレンスです。次回 ICCカンファレンス KYOTO 2017は2017年9月5〜7日 京都市での開催を予定しております。
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【登壇者情報】
2017年2月21日・22日・23日開催
ICCカンファレンス FUKUOKA 2017
Session 8B
ネットメディア&コミュニティの「世界観」をどう作り上げるのか?
(スピーカー)
青木 耕平
株式会社クラシコム
代表取締役
堀江 裕介
dely株式会社
代表取締役
松本 龍祐
株式会社ソウゾウ
代表取締役社長
(モデレーター)
小林 雅
ICCパートナーズ株式会社
代表取締役
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【前の記事】
【本編】
小林 残り15分程になったので、会場からの質疑応答を始めたいと思います。
質問者(ココナラ南) ココナラ南です。
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南 章行
株式会社ココナラ
代表取締役
1975年生まれ。名古屋市出身。1999年に慶応義塾大学経済学部を卒業後、三井住友銀行に入行。2004年1月に企業買収ファンドのアドバンテッジパートナーズに入社、5件の投資・経営に関わる。休職し、2009年に英国オックスフォード大学MBAを修了。帰国後、ファンドでの業務の傍ら、音楽を使った若者向け社会起業プログラム、NPO法人ブラストビートの設立を主導した他、NPO法人二枚目の名刺の立ち上げにも参加。2011年アドバンテッジパートナーズを退社し、自ら代表として株式会社ウェルセルフ(現株式会社ココナラ)を設立。「一人ひとりが『自分のストーリー』を生きていく世の中をつくる」というビジョンを掲げ、知識・スキルの個人間マーケットプレイス「ココナラ」を運営している。
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ハイコンテクストの共有やヘビーユーザー等とても良いお話が聞けたと思っています。
メルカリ アッテでは、お菓子を渡すという独自文化が出てきたというお話がありました。ここでもう少しコミュニティの話をしたいと思います。
コミュニティをどうスケールさせるかというところです。このような独自文化が生まれるのはユーザーのエンゲージメントが高まって良いことの様に思えるのですが、一方で昔からいる古参と新参者の問題が出来てしまいます。
例えば、2年後くらいにメルカリアッテを使い始めるとすると、訳が分からない独自文化があると入れないと思います。
コミュニティ感や独自文化というのはスケールに耐えられるものと、スケールを阻害するもの、そのようなリスクを裏腹で抱えるものなのかと思いました。
スケールするために良いけれども、ミートアップ等はどこかで止めないといけないという様な切り分けを持っていらっしゃるとか、今は良いけれどもここに危うさを感じているとか、逆に割り切ってスケールを諦めてでも世界観を大事にしていますとか、そのあたり、どうお考えでしょうか。
コミュニティの独自文化は新規参加者を阻害する?
小林 とても良い質問ですね。松本さん如何ですか?
松本 メルカリアッテの場合は、お菓子やジュースとの交換が多いです。
ジュース2本ならばお金の方が良いという意見もありますが、そこはあえてお金でもないウェットな部分を楽しんでいるところで、良いところでもあります。
しかし、そこは最終的なコミュニティの拡大にとっては阻害になるだろうと思っています。
同じようなことがメルカリの専用出品というカルチャーにも言えます。掲示板でコメントした後、「◯◯様専用」という出品をします。
そこに値下げしたもの等を書いて購入するという仕組みです。
この専用出品モードを付けた方が良いのではないかという話も前から起きていますが、基本的にはメルカリとしては推奨していません、機能も追加しません。
また、発展していった結果、古参トラブル等は起きるものだと思いますが、インターネットのコミュニティでは情報と人の露出のバランスをコントロールすることが大事だと思っています。
メルカリはコミュニティのようにも見えますが元がコマースですので、人よりも物にフォーカスされています。そのため、古参問題は起きづらいです。
洋服が欲しい人は2年後であっても洋服を買えば良いだけです。
ただしメルカリ アッテの場合は人の方に寄っているので古参問題が起きる可能性があります。
これはコミュニティが発展していく時のチューニングによって、遅らせるのかどこかの段階で抜本的にルールを変える必要があるかという選択が待っていると思います。
小林 青木さん如何ですか?
常連客とコミュニケーションを取る場所は選ぶべき
青木 古参問題に関しては、我々がSNS上の書き込みに関して積極的に返信をしないというのはそこをかなり意識してのことです。
実は、サイトを見ている人の中で、会社内部の人間と直接コミュニケーションを取りたいという人はとても少ないです。
その人たちとのコミュニケーションを衆人環視の場で行ってしまうことは、コミュニティの蛸壺化を生むのではないかと思います。
運営と常連客が気軽な言葉でコミュニケーションをしているのを見せることはブランディングや全てのユーザーの観点から見て良いことなのかということに対して、今のところ疑問を持っています。
勿論ご購入頂いたお客様からの質問やメッセージには丁寧にお答えしますし、細かいお問い合わせに対しても素早く返信しています。
ただし、それを皆が見ている場でやるのはどうなのかということです。
例えば、百貨店では外商という仕事がありますが、VIPの顧客の元に出向いたり、その方向けのサロンがあります。
それがデパートの1階の目立つところにあって、他の顧客にも優遇されている様子が見えるのが良いのか、目には見えない方が良いのかということです。
我々の場合、お問い合わせに関して個別にしっかりと対応していきますが、それを可視化して常連客と仲良くしている感じを出すことは、良いことではないという仮説を立てています。
小林 次に、中俣さんお願います。最後は、藤村さんに纏めて頂こうと思います。
中俣氏 LITALICOの中俣です。
KPIは何を見てらっしゃるのかをお聞きしたいです。
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中俣 博之
株式会社LITALICO
取締役
1984年新潟県新潟市内野生まれ。筑波大学第三学群卒業後、株式会社ディー・エヌ・エーに入社。新規事業開発をはじめ、国内・海外企業との提携・買収案件や、海外支社での経営企画・戦略を担当し、帰国後は主力のゲーム事業の部長職等歴任。2014年に株式会社LITALICOに入社。同年10月取締役に就任。新規事業開発、HR、マーケティング、経営企画領域を主に管掌。2016年に東証マザーズ、翌年に東証一部市場に上場。
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DAU(デイリーアクティブユーザー)や再訪率や、継続率というのは一般的な経営手法として見ていらっしゃると思いますが、「このKPIは特に重視している」というところや、そのKPIを上げてきた施策やアクション等ありましたら教えてください。
登壇者らが重視しているKPIとは?
青木 本当に何も見ていません。
見た経験もあり、「こうしたらこう動くか」と考えてみましたが、何をしても何も動きませんでした。上にも下にも動かなかったのでやめてしまったのが率直なところです。
唯一毎月確認しているのは、20回以上訪問している顧客が前月より純増しているか、というところと、その数値の全体の中での割合が変わっていないかどうかです。
純増していてもトータルの中での割合が増えていたら、成長余地が小さくなってきているということです。
今は20回以上の訪問者は全体の半分くらいなので、この半分という割合に変化は無いが純増していれば、獲得ペースも下がっていないということですし、獲得した人が確実に常連に育っているということなので、オーガニックに育ってさえいれば、後は何とかなるだろうと思っています。
堀江 メディアの収益は「リテンション(再訪率)×滞在時間」と明確にして見ています。
ユーザーの熱量の測り方もリテンションと滞在時間ですが、単純なUI(ユーザーインターフェース)の変更で上がるリテンションは本当に僅かで、デザイン等でリテンションが大幅に変わることはあまりないと仮説を立てています。
1千万MAUで止まってしまった時に、それを2千万にする施策がデザインの変更で打てるかというと、打てないと思っています。
その場合は滞在時間を長くする方が簡単で、しかも滞在時間が2倍になれば収益性も2倍になります。
DAUやMAUはどこかで止まるという前提のもと、滞在時間を伸ばす方向で考えています。
新規ユーザーが世界観に没頭しているか?が重要
堀江 ただし、コミュニティ化というのは、ユーザーの母数が増えればヘビーユーザーも増えているということなので、Googleアナリティクス上で見る滞在時間は伸びている様に見えてしまいます。
しかし本当に見るべきなのは、今月インストールした人の滞在時間です。
初めてこの世界観に入った時に、どれだけそれに没頭してもらえるかが重要です。
サイトをリリースしてからまだ8ヶ月くらいですが、それでも滞在時間は2倍になっています。
ということは、あまり見たくは無い部分ですが、初月の滞在時間を見るべきです。こういった厳しい指標を持ち続けることは大事だと思います。
小林 松本さんはどうでしょうか?
松本 色々見ています。
リテンションレートは勿論大事で、ユーザーの主要行動毎にクラスター化してクラスター毎の継続率を見ています。
例えば、訪問だけして来なかった人や、出品までした人等。そしてこのクラスター毎に施策を打ち、ライトな施策とヘビーな施策が騙らないようにしたり、のびしろの大きいところを優先する等しています。
これは定量的でわかりやすい話です。
また定性的な満足度を図るために取引の完了数を主要KPIとして見ています。
これが伸びていればコミュニティがプラットフォームとして成長して伸びているし、評価が完了するとほとんど「いいね」評価を貰えるので、ユーザーとして良い体験を毎日何件提供できたかということを見ています。
どんなタイミングになぜユーザーは再訪するのか
質問者 NewsPicksの坂本です。
青木さんにお聞きします。NewsPicksをやっている中で「長くユーザーに愛される」ということを一番に考えていますが、狙ったタイミングでユーザーが再訪すると考えて設計しているのでしょうか?
また、再訪してもらうためにできることがあれば教えてください。
青木 難しいですね。何故訪問してくれるのかは正直なところわからないと思っています。
10年間、「何故こんなに来てくれるのだろう?」と首を傾げながらやっています。
ただ一つ言えるのは、「何故、人はそのサイトやアプリを開くのだろう」と良く考えています。
同じECサイトと競合しているというよりは、少し暇な時にFacebookやInstagramを開くのか、それともゲームをしようかという中で、どうして「北欧、暮らしの道具店」が選ばれるのか、というところです。
いつアクセスしてもフレッシュな情報が見られるという信頼感はソーシャルメディアやNewsPicksさんも同じだと思います。
例えば、朝サイトを見て、次に昼にも見た時に全く新しい情報が無く、その状態が体に染み付いていれば、アクセス回数は1日1回になります。量の問題というのは解決しなければいけないものだと思っています。
どんな体験ができるかという約束を守り続ける
青木 もう一つは、そこに来たらどういう体験ができるのかという約束があり、それが確実に守られ続けているということがとても大事だと思います。
我々の場合は特定の価値観や美意識を持った人にフォーカスしたメディアなので、皆が一致しているテーマしか扱わないということを重要視しています。
例えば賛否が分かれるもの、「結婚するべきか、しないべきか」「仕事はするべきかどうか」「子供に受験をさせるのか、公立の学校にいれるか」等は、ある同じライフスタイルという価値観で握れている人たちを分断する行為だと思います。
我々がやっているのはイデオロギー集団のための「機関紙」のようなものです。
我々は、それぞれのコミュニティにおいてマイノリティの人たちが、マイノリティの価値観を持っている人の心を癒す又は支える存在です。
特定の価値観を持った人に、その価値観をサポートする情報を提供し続けるという約束をしているのに、こちらの好奇心で裏切ることが無いよう意識しています。
小林 ありがとうございます。時間になりましたので、最後 SmartNews 藤村さんに感想をお願いしたいと思います。
藤村 非常に学びがありました。登壇者に感謝致します。
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藤村 厚夫
スマートニュース株式会社
シニア・ヴァイス・プレジデント / 執行役員 メディア事業開発担当
1978年法政大学経済学部卒業。90年代に、株式会社アスキー(現株式会社KADOKAWA)で月刊誌編集長、ロータス株式会社(現日本アイ・ビー・エム株式会社)でマーケティング責任者を経て、2000年に株式会社アットマーク・アイティを起業。その後、合併を経てアイティメディア株式会社代表取締役会長。2013年4月より現職。現在は、数多くのメディアパートナーとの折衝を担当。並行して、個人のブロガーとして、デジタルメディアの将来像設計を中心主題にすえた執筆および講演活動を継続。
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特に青木さんがおっしゃられた「世界観と没入感」というセットは、ある意味で僕たちスマートニュースとは逆です。
僕たちは参加を生み出すために隙間を作っておきたいと考えています。
ロックと交響曲の違いのように、隙間のあるところに人の参加を作り出すという様に、逆方向で理解していきたいと思いました。とても刺激を受けました。ありがとうございました。
小林 ありがとうございました。
最後に一言ずつお三方の学びもお話しして頂きたいと思います。
松本 「参加性とブランド化」のバランスは今後も課題として向き合い続ける必要があると決意を新たにしました。
堀江 大きな学びがありました。ありがとうございます。
青木 世界観やブランド、コミュニティのあり方・その必要性は、行っているビジネスにより違いがあるのだと思いました。
正解があるというよりは、その事業と戦略に基づいてあり方を設定し、設定したものを矛盾なく続けていくのが重要だと、お二人のお話し聞きながら学ぶ事ができました。
ありがとうございました。
小林 素晴らしいまとめをありがとうございました。これをもちましてこのセッションを終わりにしたいと思います。
どうもありがとうございました。
(終)
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編集チーム:小林 雅/榎戸 貴史/戸田 秀成/横井 一隆/立花 美幸
【編集部コメント】
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