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ICCカンファレンス CONNECTION 2016 の「グローバル企業のプロフェッショナル経営者の仕事とは何か?」【C16-5】のセッション書き起し記事をいよいよ公開!3回シリーズ(その3)は、会場からの質問を受け付け、主にグローバルに活躍する経営者として必要なスキルやマインドを議論しました。登壇者からのメッセージは、経営者だけでなく、これから経営層を担う若手、これから就職する学生にも読んで頂きたい内容です。是非御覧ください。
ICCサミットは新産業のトップリーダー600名以上が集結する日本最大級のイノベーション・カンファレンスです。次回 ICCサミット FUKUOKA 2018は2018年2月20日〜22日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。
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【登壇者情報】
2016年6月25日開催
ICCカンファレンス CONNECTION 2016
Session 5
「グローバル企業のプロフェッショナル経営者の仕事とは何か?」
(スピーカー)
赤池 敦史
シーヴィーシー・アジア・パシフィック・ジャパン株式会社
代表取締役社長 パートナー
留目 真伸
レノボ・ジャパン株式会社 代表取締役社長
NECパーソナルコンピュータ株式会社 代表取締役 執行役員社長
山田 善久
楽天株式会社 副社長執行役員
(モデレーター)
琴坂 将広
慶應義塾大学 准教授
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最初の記事
「グローバル企業とはなにか?」レノボ・ジャパン留目氏らが語る”世界で働くマインド”【C16-5 #1】
1つ前の記事
「パワーゲームに勝たないとグローバル経営者にはなれない」CVC赤池氏、レノボ・ジャパン留目氏、楽天 山田氏らが考える日本人の強みとハンディキャップ【C16-5 #2】
本編
琴坂 なるほど。それではそろそろ会場からもQ&Aを取って行きたいと思います。
どのような質問でもいいのですが、ここで少し聞いておきたいというところがあれば、手を上げてください。
ヴィジョンを発信し続けることの重要性
質問者1 弁護士の伊藤と申します。私も海外の企業の買収などをお手伝いして遠隔地の会社さんのところに人を送り込んだりPMIなどが大変だということは間接的には知っております。
たとえば、グローバル企業というか、日本発でも海外発でも良いのですが、多国展開をしている会社で、各地へ送り込んだり現地採用したりするカントリーマネージャーがいたとします。
そして、それがいくつも増えてゆくと、だんだんコントロールが効かなくなるというか、一体感をどうするかというような話が出てくる可能性があると思うのです。
そういう部分でうまく行っているところを見て、「ここはこういうことをやっていてうまく行っている」とか、そういうTIPSをご存じだったら教えていただければと思います。
琴坂 実際グローバル経営をしていくと、どうしてもリモートでマネジメントしなければなりませんし、ハンズオンと言えるほどたくさんの国をカバーできませんので、そこに何かノウハウというか事例があればお伝えくださいということでした。
留目 二つあると思うのですが、また先ほどの話なのですがヴィジョンです。
一体感がなくなるのではないかというお話ですが、やはりその一体感を持たせるためにもグローバルに通用するヴィジョンというのを経営者、トップが発信し続けるということだと思うのです。
誰もが納得できるような。
それはやらなければならないよね、どこの国の人にとっても重要な課題だよね、それをやる意味はあるよね……というヴィジョンを作るということが一つだと思うのです。
あと、もう一つ、コントロールの部分は確かにグローバルにマネジメントシステムというのを一通り標準化はするのでしょうが、そこから見えてくるものというものは薄っぺらいので、ローカルで何が起こっているか各市場で何が起こっているかというのは、もう基本的にはそこからは見えてこないです。
ですから、もう一歩踏み込んで各地のマネージャーと話をしたりとか、それこそ先ほど言ったゲーム感覚ではありませんが、何が起こっているか推測しながら、どこが一番クリティカルなのかということをそのゲームの中で判断していくしかないと思うのです。
琴坂 実際、丁寧に話をしていくことも重要だということですね。
留目 それはそうですよね。
「Management By Walking Around」の重要性
山田 留目さんのお話と同じようなことになるのですが、僕のところもガバナンス室のようなものをやって、各海外の子会社の取締役会で何が議題に挙げられて、どこまでを決めて良いというようなことをもう一度全部作り直したりしています。
しかし、日本の会社でも何でもそうですが、そういうフォーマルな情報システムにあがってくるものというのは、もちろん重要な議題が上がってくるのですが、当然本音の部分が残されていたりしますでしょう。
「これは何とか売上を作っているけれど、実はなかなか苦しくて……」というようなことは当然言いません。
ですから、気を付けなければならないなと思うのは、日本の会社であれば当然、飲みニケーションのようなものもあり、それから知り合いがところどころにいて、「先ほど役員会であんなことを言っていたけれど、本当にそうなの」と聞ける人間が、役員クラスだけではなくてその下のレベルにもいるわけでしょう。
それが途端に、英語などになったりすると、Eメールで済ませたりする。
パッと電話して、議題などなくても、「最近どう?」みたいなものが必要です。
やはり風を読むのがうまい人というのは、何か少し気になったりすると「最近どう?」とやれる人だと思うのです。
”Management By Walking Around”(MBWA)と言って、重要だなどと言われたりしますでしょう。
▶参考資料:MBWAとは HPの創業者のデイブ・パッカード氏が実践した経営手法
そういう当たり前の、日本人がほとんど意識しないでやっているようなことを、やらない場合が多いのではないかと思うのです。
本当に日本だったら当たり前のことです。
飲みに行ったりとか、肩叩いて「どう?」とか、トイレで会ったら「最近どう?今度少し話そうよ」とか、ありますでしょう。
そういうことが、なぜかできなくなってしまう。
僕はやはりそこは英語の問題が大きいのだと思っています。
別に英語なんて発音なんてどうでもいいのですが、英語だとそれが億劫になる。
ですから、英語が下手なのが問題なのではなく、発音や文法などどうでもいいのですが、そういうところで何となく引け目を感じると、「最近どう?」ということを言わなくなります。
よって、僕は日本人の英語というのはすごくネックだと思っているのです。
ずうずうしい人は全然良いのです。ずうずうしい人は英語が下手でもまったく問題ない。
しかし、普通の日本人というのは比較的控えめだし、カッコつけ屋です。
すると、英語が下手だからと言ってEメールでばかりやったりする。
留目 最近、チャットツールが会社でも採用されていると思うのですが、結構便利ですよね。
山田 Eメールよりはチャットの方が良いですよね。
留目 私も放っておくとチャットをすごくしてしまうのですが。
琴坂 それは逆もそうです。
トップからどんどんそういうことをしなければならないというのもそうですが、若手からしてもどんどん上司へインフォーマルなコミュニケーションをしていかなければならないというところもありますね。
そこは英語だと消えて行ってしまう部分があるかもしれないと思うのですが、そこは赤池さんどうでしょうか。
赤池 それは、英語のことは絶対あります。
自分も英語が「すごく得意」という方ではありません。
23歳から海外へ出て、5年住んでいるのですが、今もトレーニングへ通っているのです。
そして、自分の仕事は投資委員会でファウンダー連中に話をして、500億円とか1,000億円出しますというのが仕事なので、英語が喋れないと話にならない。
ですが、引き続き勉強しています。
ただ、やはり「慣れ」なのかな、とは思います。
今のような話も含めて、山田さんも、ここにいるメンバーもそうだと思うのですが、私も海外の会社を2社買収して失敗したり、あるいはそういう会社に身を置いていると、今話しているようなことが普通の感がありますでしょう。
しかし、日本の会社で初めて海外の会社を買収しますとか、初めてビジネスを作りますといって、「さあ、マネジメントをどうするか」といった場合には、本当にイチから感覚なくやって、それをラーニングしていくというようなプロセスがものすごくあります。
それが、先ほどお話したことですが、なぜかアメリカ人はすごく慣れているのです。
ですから、スタンダードにやることをあまり外さない。
こちらはいろいろ何も知らない人がイチから考えて、試行錯誤しながらということが多い。
ですから、こういうセッションなども含めてかもしれませんが、リテラシーとか、普通に「こうやるとある程度できます」ということの共有知のようなものが、ものすごく少ないのではないかと思うのです。
そこはもったいなく思いますね。
琴坂 それでは次の質問者の方、どうぞ。
質問者2 グローバル経営、ないしはグローバルなオペレーションをする上で、逆にやめた方が良い日本のやり方というのはありますか。
今、私の会社には中国、韓国、それから英語のネイティブスピーカーもおります。
そういう場合、こういう接し方は良くないというものがあれば教えてください。
日本人だけでかたまるな
琴坂 どうでしょうか。これはやめた方が良いというものはあるか、というご質問でしたが。
留目 一般的に言われるのは、そういうことって出てきてしまうのですが、日本人だけで固まっているのはあまりよくないのではないかと思います。
琴坂 私は(マッキンゼー時代に)ドイツにいたのですが、9人ドイツ人がいて私が1人だけ日本人という時、ドイツ語で話されるとすごく寂しいのです。
それは逆にしない方がいいのだと思います。
留目 あとは、海外展開を本気で考えるのであれば、やはり日本のためにとかというマインドセットがありすぎてしまうと良くないと思います。
国と企業と人は別々のものだと思うので、愛国心は持っていて良いと思うし、オリンピックは応援して良いと思うのですが、企業の中にそれを持ち込んでしまうと良くないと思うのです。
赤池 各拠点で信頼できるローカルのパートナー、ビジネスパートナーという意味ではなくて会社の中の人という意味ですが、その人をどう採用するか、出会うことができるかだと思います。
スタートアップなどでも重要でしょう。
現地のビジネス化というのは、自分ではできないですからね。でもそういう人とは出会うことができると思います。
頑張って自分の熱意を語られたりして行けば。あまり、「これはやってはいけない」というようなことはないような気がします。
琴坂 最後にあと一問、これを聞きたいというものがあれば聞きます。
それではどうぞ。
質問者3 お話を伺っている中で、グローバルな人材というところで、たとえばローカルのところはローカルに任せるべきところもあるという点が気になりました。
マーケットが違うし、ビジネススキームが違うということでしたが、一方でおそらく共通している部分もあると思うのです。
特に経営層の中で共通しているスキルとかマインドセットとかもあるかと存じます。
そこで、どういう部分で全世界である程度一緒なのだと感じ、どういった部分で別なのだと感じられましたか。
お聞かせください。
琴坂 これは締めのお言葉も含めてお答え願えますか。
どういったプロフェッショナルが世界に共通して成功しているのかというメッセージと、あとはこういう人材がもっと増えるべきだというものがあればそのメッセージをお願いします。
たとえば、日本人が多国籍企業のトップになるためにはこういうことをするべきだというような。
そういうお話も含めて、最後一人ずつメッセージをいただければと思います。
グローバルで成功するプロフェッショナルになるには?
留目 何度も繰り返しになってしまいますが、やはりグローバル規模のゲームというものを知らなければならないと思うので、そこを知りたいとまずは思わなければならないと思いますし、それからそれにチャレンジしていくということだと思います。
今日は、日本人が通用するかしないかというところでもいろいろ議論がありました。
しかし、昔それこそ野茂選手が薄給で日本から追放されたくらいの感じでアメリカへ行きましたね。
すると、そこからメジャーリーグ、エンターテインメントの最高峰のところで日本人が成功するというのは当たり前になったでしょう。
あれは起きると思うのです。
残念ながらビジネスでそれが起きていないだけです。
もちろん、それはスポーツの方がゲームの質としてはわかりやすい、シンプルなので、通用しやすいのだと思うのですが、でも別に企業のビジネスの世界でそれが起こってもおかしくない。
残念ながら学校教育がそうでなかったりハンデがあるのだけれど、これからはそういう人もどんどん出てくるでしょう。
それこそビジネスのメジャーリーグ、プレミアリーグで中心となって、10番をつけて活躍するような日本人というのは、必ず出てくると思います。
それをもっともっと早く意識しながらやっていくと良いと思うのです。
琴坂 共通点としては結構早い段階からゲームに参加して理解していくことですね。
山田 僕が言うことも基本的には同じようなことです。
たとえば、アメリカの会社で本当にトップになろうと思ったら、まだアメリカ型、アメリカっぽい経営の仕方をしている会社というのはまだ多いと思うので、日本人がなるのは若干不利なところがあるかもしれません。
しかし、グローバルな会社の経営ということであれば違います。
たとえばトヨタなどとても尊敬されている。
つまり、グローバルな会社の経営ということであれば、日本人のスキルとかが何か足りないとか、そういうものはない。
当たり前ですが、みんな頭良いし、別にリーダーシップがないわけでもない。
ただ、アメリカの大統領になる人と、日本の首相になる人は少し違いますよね。だから、そこは少し違うのですが、実力などはあると思うのです。
しかし、やはり先ほどから留目さんが強調されているとおり、異質な人たちとやり取りする経験が比較的少ないのだろうとは思います。
あと、好むと好まざるとにかかわらず、これは日本型のチームだとかそういうこと抜きに、共通の言語が英語になってしまっている。
これは残念ながら、そういうふうに決まってしまった。
ビジネスをやっていく上で英語の部分で不利だと、何をするにもディスアドバンテージになります。
ですから、そこだけは異文化の人と一緒にやるとか、英語を使ってプレゼンをするとか、そういったところは本当に基礎能力としてやる必要はあると思います。
ただ、同じ話ですが、逆にそこで気負い過ぎてしまうと良くないですね。
俺は日本人だからサムライで……というふうになる必要はない。
逆に海外の人はそこまで意識していないというか、日本人は日本人のことを話すのが大好きすぎる。
でも、海外の人は別にパッと行って普通に話したら、「お前、日本人だったの」くらいの感じだと思うのです。
琴坂 ディスアドバンテージがあることは確かだからそこは意識した方が良いけれど、気負いすぎてはいけないということですね。
山田 ええ。日本人だからどうとか、向こうはあまり考えていない。
昔はともかく今はジャパン・アズ・ナンバーワンという時代でもないし、別に何人であろうと向こうはあまり気にしていないと思いますよ。
日本人が特別だとも思っていないし。
中国人と韓国人と日本人といたら、見た目もあまり変わらないから、その程度の認識ではないでしょうか。
まあ、全てではないかもしれませんが、そういう人もいますよね。ですから、あまり気負う必要もないと思います。
赤池 ベタな話になってしまいますが、わりと若い段階で海外へ出ていくということが結局必要なのではないかと思います。
それこそ山田さんが若い時代などは、正確な数字はわかりませんがアメリカのGDPが世界の30%とかで、日本も世界の10%を占めていた時代がありました。
そのように結構日本が大きな国で2番目だったという時代があった。
しかし、今はたぶん日本の世界に占めるGDPというのは5%くらいではないでしょうか。
アメリカも25%から20%くらい――本当の数字はわからないですが――になっていますでしょう。
そうなってきた時に、どうしても20年前と比べると倍ぐらいは外向きの意識でやっていった方が仕事が面白いということがあると思うのです。
そして、それが自然にできるようにわりと早い段階でやっていた方が、気負わなくて済む。
ただ、僕はやはりマザーマーケットがあった方が楽だと思うのです。
しかし、私の会社の、自分のボスでアジアヘッドをやっているのは、実はタイ系か中国系かよくわからないですが、どこにも自分のホームがない人で、そんな人がウチのようなデカい会社でよくアジアのヘッドをやっているなと、そのことだけはすごく尊敬しているのです。
投資業などと言うのはやはりローカルな部分がすごく大きくて、私などが日本で10件も投資をして成功しているというのは、日本人だからです。
その人はアメリカとかカナダとかで教育を受けながら努力しながらやっているのですが、彼にとってはそれが普通のことなのだと思うのです。
ですから、そういう感じを早い段階でやっておいた方が、結果仕事が楽しいのではないでしょうか。
日本のマーケットの中だけでエラくなって行こうとか、ある程度のビジネスをしようというのは、たぶん早晩30代終わりくらいに去って、だんだん外でやりたくなってしまうはずなのです。
そこで、さあ出て行こうと思って、その時からいろいろ身につけても、何となく国際感覚のある人間が下から抜けて行ってしまう。
そのようになるのが、年寄としては耐えられない。
それは今後も増えるのではないかと思うのです。
すみません、山田さんの例を出したわけではないのですが、山田さんはすごいなと思っています。
ただ、やはり楽天さんも若くてグローバルな人を採用してというのは、やはりトレンドとしてあるということですから、そちら側に自分の軸足を置いておいた方が、結果仕事が楽しいのではないかという気はします。
琴坂 小さくなったとは言え、まだプレゼンスのある日本を活かして、できるだけ早い段階から外を見て頑張っていくのが良いということですね。
赤池 やはり、相対的には外向きの仕事を増やさざるをえない国のはずなので、そういうことをたくさんやっている人の方が結果、40歳や50歳になった時に楽しいビジネスマン人生を送っているということになっている気がします。
すると、個人としては寂しいので、先に手を打っておいた方が良いのではないかという気がします。
琴坂 個人的にはあと10時間くらいお話をお聞きしたいところですが、残念ながらもう時間をオーバーしております。
今日はありがとうございました。
登壇者のみなさまに拍手をお願い致します。
(終)
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編集チーム:小林 雅/石川 翔太/榎戸 貴史/戸田 秀成
【編集部コメント】
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