「パワーゲームに勝たないとグローバル経営者にはなれない」CVC赤池氏、レノボ・ジャパン留目氏、楽天 山田氏らが考える日本人の強みとハンディキャップ【C16-5 #2】 – INDUSTRY CO-CREATION

「パワーゲームに勝たないとグローバル経営者にはなれない」CVC赤池氏、レノボ・ジャパン留目氏、楽天 山田氏らが考える日本人の強みとハンディキャップ【C16-5 #2】

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ICCカンファレンス CONNECTION 2016 の「グローバル企業のプロフェッショナル経営者の仕事とは何か?」【C16-5】のセッション書き起し記事をいよいよ公開!3回シリーズ(その2)は、主に「日本人がグローバル企業の経営者になりえるか?」という問いを様々な角度から議論しました。どんな人が世界の”ゲーム”で上がっていけたかといった、リアリティのある話となりました。是非御覧ください。

ICCカンファンレンスは新産業のトップリーダー160名以上が登壇する日本最大級の招待制カンファレンスです。次回ICCカンファレンス FUKUOKA 2017は2017年2月21〜23日 福岡市での開催を予定しております。

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登壇者情報
2016年6月25日開催
ICCカンファレンス CONNECTION 2016 
Session 5 
「グローバル企業のプロフェッショナル経営者の仕事とは何か?」
(スピーカー)
赤池 敦史  
シーヴィーシー・アジア・パシフィック・ジャパン株式会社 
代表取締役社長 パートナー
留目 真伸  
レノボ・ジャパン株式会社 代表取締役社長
NECパーソナルコンピュータ株式会社 代表取締役 執行役員社長
山田 善久   
楽天株式会社 副社長執行役員
(モデレーター)
琴坂 将広 
慶應義塾大学 准教授

その1はこちらをご覧ください:「グローバル企業とはなにか?」レノボ・ジャパン留目氏らが語る”世界で働くマインド”【C16-5 #1】


日本人はグローバル企業の経営者になれるのか?

山田 お二人にお聞きしたいのですが、よろしいでしょうか。

先ほど、留目さんの若い頃に「日本人だから戦う」というような気負いがあったというお話がありましたが、仮にそういうようなイメージを前提したとします。

そういうのが良いかどうかという議論はあるとしても、日本人というのはどうしても「海外へ行って挑戦をする」というのが好きというところがありますでしょう。

その上で、イチローがメジャーリーグで活躍しているというように、日本人がアメリカの会社でCEOになるというイメージは湧きますか。

たとえば、今、インド人はみんな(アメリカ企業のCEOに)なっている。

それこそ話題の(元ソフトバンクの)ニケシュもそうだし、Googleのスンダー・ピチャイもそうです。マイクロソフトもそうですね。

インド人も、ネイティブな英語ではありませんでしょう。だいたい、大学まではインドで学んでいたりします。

一方、日本人がそのようになるイメージは湧きますでしょうか。

もちろん、日本人がそのようになる必要はない、という議論もあるでしょう。

しかし、みなさんグローバルな会社で働いていて、そういうイメージというのは湧きますか。

留目 私はできると思うのです。将来的にはなると思う。

本当はもっと早くならなければならないと思います。

ですが、実際、私は少し前、本当にグローバルに全世界の事業統合をやるチームというのを持っていたのです。

それはなぜそのポジションがもらえたかと言うと、NECの事業統合があるのですが、それがもう過去最高にうまく行ったM&AのPMI(ポスト・マージャー・インテグレーション、M&A成立後の統合プロセス)だったと評価をされたからです。

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本当に合併直後から両ブランドでシェアも上がっていったし、利益も予定以上にシナジー効果(合併による相乗効果)をだせた。

これがすごい成果だということで、「どうやってやったのだ」と言われました。

そして、「そのマジックを全世界の事業統合に活かしたい」ということで、向こうに呼ばれたのです。

その事業統合のチームというのも、実はNECのPC事業というのはすでに日本にフォーカスしている事業だったのですが、研究開発から工場もありますし、本当に製造業のフル・ファンクション(全ての機能)がそろっている事業なのです。

これをレノボの中で考えますと、レノボは面マトリックス組織になっていまして、機能ごとにSVP(シニア・バイスプレジデント、職位)など役員がどこかへ行ったりする。

ですから、製造だと、製造の役員は誰で、どこの国にいて、というふうになる。

要は、NECの事業統合をどうやって進めていくのかというのを各役員と調整をして、「こういう理由で、ここは統合しない」とか「ここは統合するにしてもここまで」とか「スピード感をどうするか」などということを全部説明して回らなければならないのです。

ですが、そのチームは本当にSVPの下に、またそのプロジェクトチームに参加する人間がいて、総勢300~400人くらいで事業統合のチームをやっていたのです。

これを、ファシリテイションしなければならない。

電話会議なのですが、電話の向こうで300人、400人が入ってくるような会議をやったりする。

それでひとつひとつ進めていったのです。

そして、やっていて思ったのは、「やはり日本人は調整力がある」ということです。

これは私だけではなくて、私を含めたコンサルティングのチームもそうですし、NECもレノボジャパンのチームもそうなのですが、調整力はすごくある。

それこそアメリカ人はどちらかというと、決まった価値観をベースにロジックを使って、最終的には同じ結論になるはずだ、と言ってきますでしょう。

ただ、価値観だとか、前提のところのベースが違うので、実際にはそうならないですね。

理解するような力がないと、その前提が違うのではないかというところに辿り着かないのですが、日本人は意外にそれができるのだと思うのです。

琴坂 違う強みがあるから、それを活かしていけるとなると、トップに立てる可能性はあるということですね。

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留目 ただ、残念ながら、私もそうですが、ほとんどの日本人は大学を卒業するまで英語もなかなかうまく行かなかったりする。

これは語学だけではないのかもしれません。

それこそ異文化理解という薄っぺらい言葉ではなくて、本当にグローバルなチームと一緒にやって結果を出していくという経験をあまり積んで来ないですね。

琴坂 つまり、ポテンシャルはあるのだけれど、経験を積む土俵がないということですか。

留目 ええ。ですから、みなさん残念ながら社会人になってからそれを手に入れて行って、スタートラインからだいぶ遅れたところからスタートして、そこから頑張って今やっているわけです。

これがもう少し教育が変わってくれば、本当に日本人というのはトップになれるのではないかと思います。

琴坂 違う強みがあるので、もう少し早い段階で経験を積むことができれば、トップに立つ可能性はあるということですね。

留目 はい。

琴坂 赤池さんはどうでしょう。

赤池 今の留目さんのご指摘した部分は、私もわかるような気がします。

結局、自分がマネジメントをアサイン(assign、割り振り)するときに、そのマーケットではない人をアサインする意味というのは、実はあまり見出したことはないです。

過去、2社アメリカの会社を買収しまして、オーナー(投資家)として仕事をしています。

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すると、やはり自分がオーナーだと、アメリカの会社のマネジメントはできればアメリカ人にやって欲しいと思います。

ですから、グローバル連携をする大きな組織の連携に関する部分については、どんな国の人でもよいのかもしれません。

しかし、あるマーケットであるサービスやビジネスを展開するといった時に、ローカルではない人がマネジメントをやるということに意義は見出しにくい。

こちら側のアスピレーション(aspiration、野心)として、そういうことをやってみたいとか、アメリカでエラくなってみたいとか、そういうのは構わないと思います。

ですが、必然性はあまりないでしょう。

琴坂 完全にグローバルな組織であればどうでしょう。どこもローカルな部分のない組織であれば。

赤池 たとえば、今、私たちの会社ですと、各ローカルオフィスというのは全員ローカルスタッフなのです。

とは言え、投資の判断の機能、投資委員会ですとか、そういったところはパートナーを中心としたメンバーでやっている。

そこはたぶんどこの国の人でも構わないし、やはりお互いに大きな会社を買収するとなればクロスボーダー(国際間取引)のチームを組んでやるので、そのリーダーというのはそういうところがわかる人がやった方が良い。

すると、結果として、今の会社のリーダーというのはどの国の人でも構わないのですが、結局ビジネス自体はいろいろなところでサービスとかが展開されていて、そこにそれなりのローカルマネジメントがいて、組み合わせを上でやっているということなのではないでしょうか。

琴坂 赤池さんが将来その上に立つということでしょうか。

赤池 上に立つのは誰かがやると思いますし、アジアくらいだったら出来そうな感じはあります。

しかし、投資業というのは欧米が巨大なので、その人たちと比べると、パフォーマンス面でよほど凌駕しなければならないでしょう。

ただ、私たちはチームで会社をやっていますので、その10人の1人くらいには入れる可能性はあります。

先ほどの山田さんのお話のポイントはどのようなところにあるのでしょう。

日本人というお話でしたが、楽天もたくさん買収しているではないですか。

山田 僕が日本人ということで言うと、まずイメージが湧かないのです。

先ほど留目さんは「なるのではないか」というお話でした。

しかし、とにかく日本人は一般的に、海外で上へのしてきたような人たちと比べてアグレッシブさが全然違います。

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もちろん、日本人でも中にはすごい人もいますし、出てきて欲しいわけですけれども。

アグレッシブというのは良い意味もあるのだけれど、ハッタリなどというところも含めてです。

実力とか、頭が良いとか、そういうところもちろん負けるわけもない。

しかし、(海外で上にのしていくような人は)やはりアピールとかアグレッシブさがすごくて、まるで肉食獣です。

普通の日本人ではなかなか難しい。やはり、日本人は真面目ですよね。

赤池 アメリカ人が本当に上手だと思うことは結構あります。

あるビジネスがグローバル企業になっていく、あるいは新しい国へプロダクトを展開していくとき、シニアなセールス・マネージャーをちょこちょこ送ったりだとか、自分で行ってパートナー先を探して、何人か採用して、ビジネスを始めたりする。

あのあたりの軽やかさとか、現地人とのコミュニケーションを作っていくところとかは、アメリカ人が本当に上手です。

日本ですと、「ブラジルへ行くのだ」と言うと突然巨大なイメージになるのです。

とりあえず社長が行って、調査をして、ちょこちょこっとリソースを張って、そこから始めましょう、というような感覚・展開に(アメリカ人は)、本当に慣れているなという感じはします。

本当は、我々も同じようなことができても良いのですが、どうしてもそういうふうに海外へ軽やかにビジネスを展開できている人というのはあまり見たことがありません。

留目  私もそう思いますね。もっと学生時代にそういうものだと知れるような、たとえば「日本の市場など世界から見ればこのようなもので……」というような教育を受けていれば良かったと思いますね。

琴坂 なぜそうなるのでしょうか。確かに日本企業が議論していると、「たくさん投資しなければ」「しっかり調査をして」ということが上がるということはあるかもしれません。

赤池さんがおっしゃるような、結構気軽に海外へ進んでいくというアメリカの事例との差はどこにあると思いますか。

赤池 一つ、みんなにとってハードルなのは、グローバル対応で活きている製品やサービスが日本語ベースのものが少ないからというものです。

この言い訳は常にあります。ただ、そこはやはり大きいのだとは思います。

アメリカ人の別にITなどに限らずどんなものでも世界へ同じモノを持って行って売ってしまえという発想ですと、結構やりやすい部分はありますでしょう。

ただ、そこはもう言い古された話です。

そして、必ずしもそうではないものもありますでしょう。

ですから、日本でもうまくいっているケースはあるのかもしれないですけれど、全般として苦手だなというところはありますね。

すると、僕なんかが海外展開をお任せするのであれば、そういうことに長けた人種の人に任せたいという気分になってしまうというのはあります。

グローバル企業の経営者として成功するには?

留目 ローカルのオペレーションはやはりローカルの習慣があるので、それはそれでローカルがやりやすい形にしておくのが、ある程度は良いと思うのです。

そうではないと、一方的なロジックで、「グローバル企業の経営とはこうなのだ」と言ってもうまく行かないですから。

ローカルはローカルでそうなのですが、やはり「グローバル企業の経営者として成功するには」なのですが、これには究極的に二つしかないと思うのです。

一つは、やはり経営者なので、グローバル規模のヴィジョンを作れるかだと思います。

たとえば、我々パソコンというビジネスをしていたとします。

パソコンというの、この30年以上続いている箱売りのビジネスというのは、もうそんなに長くは続かないと思うのです。

このヴィジョンを切り替えて行かなければならない。そして、事業の目的というものを再定義していかなければならない。

そういった時に、グローバル規模でしっかりと事業の再定義をして、ヴィジョンを示せることだと思います。

経営者ですから、やはりヴィジョンを示さなければなりません。

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また、それが日本人にしか通用しないとか、日本で働いている社員だけがハッピーになれば良いというのは、グローバルに通用するヴィジョンではないですね。

それが一つです。そしてもう一つが、経営者なのでゲームに勝たなければならないということです。

つまり、このビジネスというゲームに勝つために最適なチームを作ったり、「どこまで突っ込んで、どこまで突っ込まないのか」とか、「グローバルな状況を見た上で今の問題点はこれで、これをやるのだ」ということに対して、ゲームとして理解できるかというところです。

琴坂 ゲームとして理解するというのはどういうことでしょうか。

留目 ゲームとして理解するということを説明するのは結構難しくて、要はロジックではないと思っているのです。

ロジックで全部調べて全部わかることなど不可能だから、ある意味、風を読まなければならない。

だから、もうゲームだと思っている。

琴坂 全部の情報を理解するのではなくて、ルールを理解するということでしょうか。

留目 いや、難しいのですが、ルールに強い人というのは結構いるのです。

たとえばコンサルティングなどやっていて頭がシャープな人は、何となくロジカルなことを言うのはすごくうまかったりする。

でも、事業の責任者をやらせてみると結果が出ないということは、多々ありますでしょう。

そして、それはゲームに強いかどうかだと思うのです。

ゲームに強いかどうかというのは、それこそ本当に風を読むことだと思います。

経営というのは不完全な者同士の戦いでしょう。相手だって不完全だし、こちらだって不完全です。

完全な者同士の戦いであれば、本当にロジカルに詰めていってどうだという高次な戦略の話になるのですが、お互い完全ではなくて、どちらも不完全な者たちの中で、「今有効な手は何だ」と見つけていくわけでしょう。

それはもう本当にゲームだと思うのです。

琴坂 これについては赤池さんのご意見を伺いたく存じます。

世界のディールバトルを戦うプライベート・エクイティ・ファンドとしては、どう解釈いたしますでしょうか。

パワーゲームに勝たないとグローバル経営者にはなれない

赤池 今日は本当に勉強になるな、と思いながら聞いております。

やはりグローバル企業の経営者、あるいは経営というのは、ローカルなビジネスとかモノを売るとか作るとかというところとは別に多国間で共通に流通するサービスや製品があって、それを本当に会社としてどういうふうにやっていくかということなのだと思うのです。

それこそGEやシーメンスなどと言った大きな会社の市場シェアは、巨大なものがたくさんあります。

そこと日本の会社がサブスケールに戦っているところというのはたくさんあるのです。

ですから、日本の中だとシェアが1位、2位だけれども、欧米へ行くと4位5位で、しかも5%くらいしかとれていなかったりする。

やはりそれはこれから長く続かないでしょうから、グローバルな会社をどうマネージしていくかということはすごく重要なポイントだと思うのです。

その連携がうまくできていない。

今、留目さんのお話を伺っていて思ったのは、「日本人だからそれができない」という理由はないということです。

私は個人的な接点の中で一番そこで成功した人というのは、いろいろ最近言われていますが、(LIXILの経営者だった)藤森(義明)さんだと思います。

藤森さんはジャック・ウェルチの右腕の5人くらいの1人に入っているくらいの人です。そして、本気でGEの次を狙っていた。

僕は大好きなのですが、大変なアンビションのあった人です。実際、(「次」に)近かったと思うし、パワーゲームの男だったと思います。

ですから、先ほどおっしゃったように、全部がわかっているというよりは、社内と外向きの戦いの中でそういうポジションを勝ち取っていくというような部分がかなりある。

それをカッコよく言えばリーダーシップとかヴィジョンなどとなるのですが、実際は内部で殴り合いのケンカをしているわけです。

そして、自分のホームマーケットで作った数字と、外のものをどううまく取り込んで自分がエラくなっていくか。

これがグローバル経営者がやっていることなのではないかと思います。

琴坂 それはおそらく、ゲームなのだけれど、「中」のゲームと「外」のゲームがあって、かつ、日本のドメスティックなゲームではなくて、グローバルなゲームを議論しなければならないということですか。

赤池 そうです。正直な話、そこの連携をどううまくできるかというのが大きな差なのです。

あとは、共通な製品とかR&D(研究開発)を持っている人は相対的にコストが安いし、提供できるサービスの質が高いというのも確かです。

ローカライゼイションがうまく行かないと日本だとどうだ……というような話は、どこの国にもあるのです。

ですからそういう人が根本的には強いのです。プロフィット・マージン(利幅)がどんどん高くなっていくからです。

そういう役割をどう作るかは、別に日本人に限らず誰でもできると思います。

ただ、そうは思いながらも一方で、それをやる人というのは本当にアグレッシブでお互いエラくなりたいから社内闘争を繰り返すという感じになりますね。

それが向いていない人もいるよなとは思うし、この日本の国の人たちにはそういうのは向いていないのかもしれません。

ゲームに勝つ

山田 今のゲームというか、風を読むというのはよくわかります。

とりわけグローバル経営に限らず、そういった感覚を持つか持たないかというのはありますでしょう。

あと、日本のオーナー社長たちはそれこそ風を読んで「ここをこうして、ああして」とやっていてすごく面白い。

つまり、動物的な、アニマル・スピリッツ(ケインズ一般理論12章より「常に不確実な長期的将来を前に事業家が事業へ資本投下しようとする意欲」)というか、理屈ではなく、まさに風を読んでやっている人がいっぱいいる。

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そして、これはイメージですが、海外の人の方が、グローバルな会社でもそういう感覚を持ち続けていることが多いような気がします。

これはストックオプションでインセンティブがとんでもないから、オーナー的な感覚でいられるのか、そこはわかりません。

そこは僕はわかりませんが、日本でチームプレーになっていくとだんだんとそういう感覚が薄れていくように思われます。

先ほども、海外へ行くとなるといろいろ調べて大げさになって……というお話がありましたでしょう。

「何か聞いた話だとあの国が儲かりそうで面白そうだからとりあえず行ってみよう」というようなところがない。

経営企画部などがすごく調べて、どんどんフィルターされてから進出する。

調べまくっているのだけれど、先ほどの話の「完全な者同士の戦い」を前提にしたようなレポートに基づいて進出するというようなところがある気がします。

実際は最近の日本企業もそうではないのかもしれませんが、そういうアニマルスピリットを持ってという方がいわゆる海外のグローバル経営ということについてもやっていける気がします。

そこは留目さん、どうでしょうか。

留目 あまり日本企業、外資企業と言いたくないのですが、そこは少しあると思います。

外資系の会社というのはそもそも年功序列という考え方がなかったりします。

もちろん経験があった方がたぶん実力の出ることが多いので、経験の価値を言わないわけではないのですが、そこで年齢は関係がない。

ある程度若い時から、ある事業部門の責任を持たせて、そこで選別されていくわけです。

やはりゲームに勝てる人間は勝っていくし、大きな部門を持たせる。

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そういうこの繰り返しで、カントリーのトップをやったりとか、アジアパシフィックとか、基本的にゲームは社内と社外両方なのですが、勝ってきた人たち、本当に実力のある人たちがわりと上に来ると思うのです。

そういう意味では残念ながら、日本人でそういう経験を若い時からさせてもらえる人が、たぶん日本の会社では少ないのではないかと思います。

ただ、できる人はいます。

そういう人が多く出て、目立ってくれば、少し変わってくるのだと思います。

琴坂 実際、私が見ている数字でも、いわゆる伝統的な日本企業で職歴を積んでいくと、このゲームに慣れる環境になかなか自分を置くことができないのが見て取れます。

例えば、すごく小さなビジネスでもいいから、その経営をして、そして実績を出すと、ボーナスが現金で1千万円くらいもらえる仕組みがありません。さらには、実力がある人材でも、年齢が邪魔をしてプロモーション(昇格)がいっこうに進まない状況が続いているようです。もったいない。

このゲームに慣れていくという環境は、欧米だけではなくて、中国や東南アジアでも整備されつつあります。そして、アジア各国で、経営経験を積んだ次世代リーダーが次々に育っている。

しかし、日本だけは少し遅れているようです。おそらく、「リーダーが生まれない」原因に関しては、これがボトルネックになっているのではないかと思います。

赤池 ここはぜひ掘り下げたいです。

今週の日経新聞か何かで(経営者の)報酬の話が出たではないですか。

日立のアメリカの会社が10億円もらっていて、日立の日本の社長が1億円か2億円という、ああいうのはどうなのでしょうか。

普通に自分で考えたら、会社で一番エラい人が一番もらってくれないと、下の人がゲンナリするので、ちゃんとそういうストラクチャーにしてほしいですね。

もちろん、場所の多少の違いなどはあるかもしれないですが、なぜあの人たちはああなるのでしょう。

普通に報酬10億円くらいもらって、その代わりに1億円くらいの人たちを(経営陣の)半分くらいにすればいいと思うのですが。

どうでしょうか。

琴坂 それはいろいろな解釈があるのですが、やはり一番大きな要素は流動性、マーケットかと思います。評価される人材が、囲い込まれていて、オークションに出てこない。

もし適切な市場が機能しているのであれば、ゲームに参加できる企業に優秀な人材が惹きつけられ、人材の獲得競争が、魅力的で希少価値のある人材の報酬レベルも引き上げていくはずです。

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しかし、これは多くの経営者の方々が口をそろえているのですが、日本は人材の流動性が低すぎる。

もちろん、各企業に特有の独特のスキル形成も阻害要因です。たとえば、トヨタの社長さんが日産へ転職できるかと言えば、できないでしょう。トヨタという組織に紐付いた強みや経営力を持っており、それは別の組織では必ずしも生かせないからです。

でも、例えば、日産の社長さんはフォードにもGMにも転職できると評価されています。なぜなら、別の組織でも活かせるスキルセットを持っていて、それを用いて多様な組織で成果を上げてきた実績と経験があるからです。

一つの組織に固有ではなく、他の組織でも活かせる経営能力、それを磨く環境が整っていると、それがいろいろなオポチュニティを広げていきます。

歴史的な要因もあり、なかなか人材が流動していかない、獲得競争が起きない、これもやはりリーダーという観点から見ればボトルネックなのかもしれないというのが持論です。

留目 そのあたり楽天さんなどはどうなのですか。

琴坂 オーナー企業は、そこは難しいところでしょうね。

山田 日本の役員のことについてですか。

留目 海外の役員とか、海外での人事制度、給与制度とか。

山田 そこは役員レベルだけではありません。

特にシリコンバレーのエンジニアの給料は尋常ではない。ですから、そこは結構大変です。

その中では結構頑張って現地並の給与を払わなければ人が来ませんから。

だから、本当に「シリコンバレー、シリコンバレー」と言うのが正しいのかどうか、アメリカの会社も悩んでいます。

場合によってはシカゴとか、僕らはクリーブランドにも会社があるけれど、そちらの方がいいのではないか、とか。

留目さんは同じIT業界ですけれど、今少しすごいことになっているでしょう。

そこは大変ですね。

あとは経営レベルで言うと、一応海外のコンサルティングなどを入れると、だいたいそういうマーケットの相場がありますからそれを参考にしながら決めています。

ということで言うと、一番上の方はいろいろな個別事例で対応していますけれど、アメリカの方が給料は高いですよね。役員レベルで比較すると。

そこは「俺たちは日本の会社だから」と言ったって通用しない。

ですので、そのマーケットにいる以上はマーケットに合わせるしかないとは思います。

赤池 グローバル経営には二つ会社の種類があります。

ご自身がオーナー企業で、あるいは僕らもオーナーとして海外へビジネスを展開していきますという話と、出来上がっている会社の中でサラリーマン的に上へあがってマネジメントを目指すという話の二つです。

ソフトバンクの話など、オーナー企業のサクセション(継承)を含めてどうするかというのは、一元的にはオーナーの方が外へ出て行って、現地にビジネスを作るときに現地のマネジメントを採用したりチームを作りながらやっていけばいいだけの話でしょう。

それは誰でも、ここにいる人も含めてチャレンジすればいいと思うのです。

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一方で、出来上がっている会社の、特にグローバル展開をしている会社で、日本人がどこかに軸足を持ちながら上へあがっていくという方は、実はあまりできている人はいない。

現実、なかなかそういう人は見たことがない。

世の中にはグローバル企業も何千社とあるはずなのですが。

でも、アジアくらいというのは結構います。アジアのヘッドをやっているという人は。

そして、アジアはそれはそれで世界で見ても3分の1くらいのボリュームがありますし、それだけでも……と言うと変ですが、それだって十分立派な仕事だとは思います。

ただ、欧米に立って、あそこのビジネスを日本人が統括して、伸ばしていくというのは、結構なハードルがあると思います。

もちろん、彼らは常にオープンなのですが、何となくハードルがあると感じます。

琴坂 私の知っている事例でも、30半ばでも欧米で部門長くらいに行っている例はあるのです。

ただ、それ以上にはガラス・シーリングがあるような感じはしています。つまり、それ以上に上がっていけることはない。

そこは留目さん、どうでしょう。

アジア統括の先に昇進する、全世界オペレーションのトップに上り詰めていく道は出てくるのでしょうか。

留目 レノボの場合は、そういう意味で言えばアジアと欧米の両方のものがあります。

また、研究開発だとかいわゆる製品系のところなどはどちらかと言えば市場によらないところがあります。

営業系ですと、市場の特性があるのでそこをわかっている人がやったほうがいいと思うのですが、製品系ですと各市場のニーズを集約してというところというのは別に問題ないと思います。

それから先ほどお話していたインテグレーションの部分などというものは別に日本人がやってもよいし、その上にレノボグローバルのストラテジーのトップというものがポジションとしてはあるのですが、そこは別に誰がやっても国籍にはあまり関係がないのではないかと思います。

山田 グローバル企業というのは、当然全世界でやっていたらグローバル企業なのですが、アメリカがもともと発祥の地であればアメリカ型のグローバル企業であって、色々なカルチャーというのもアメリカっぽいではないですか。

だからそこでトップを張ろうと思うと、やはりアメリカ人的なやり方や考え方に近くないとならない。

やはり、インドの人がアメリカの大きなグローバル企業のトップになっているというのは、いろいろなやり方や発言の仕方というのが比較的アメリカのやり方に近いからではないかと思っているのですがどうでしょう。

留目 最近はでもそうでもないと思うのです。

アメリカ、北米の存在感も少し落ちていると思いますし、新興国のパワーの方が大きくなってきていますでしょう。

そういう意味ではまだアメリカ色の強いグローバル企業というのはたくさんあるような気がするのですが、そうは言っても今かなりM&Aを進めて、新興国に対応できるようにしてきていると思いますし、かなり標準化、平準化していくのではないかと思うのです。

とは言っても、その中で、それこそ出自によるアイデンティティが少しアメリカっぽいとか少し日本っぽいとか少しイギリスっぽいとか、中国っぽいとか、インドっぽいとか、そういうことはあっていいと思うのです。

それは会社のアイデンティティとして。

ただし、グローバルに事業を展開するのであれば、どこの国の人にとってもある程度は働きやすいカルチャーだったり、制度だったり、とする必要はあると思うのです。

(続)

編集チーム:小林 雅/石川 翔太/榎戸 貴史/戸田 秀成


【編集部コメント】

続編では主にグローバルに活躍する経営者として必要なスキルやマインドを議論しました。登壇者からのメッセージは、経営者だけでなく、これから経営層を担う若手、これから就職する学生にも読んで頂きたい内容です。感想はぜひNewsPicksでコメントを頂けると大変うれしいです。

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