「グローバル企業とは何か?」レノボ・ジャパン留目氏らが語る”世界で働くマインド”【C16-5 #1】 – INDUSTRY CO-CREATION

「グローバル企業とは何か?」レノボ・ジャパン留目氏らが語る”世界で働くマインド”【C16-5 #1】

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ICCカンファレンス CONNECTION 2016 の「グローバル企業のプロフェッショナル経営者の仕事とは何か?」【C16-5】のセッション書き起し記事をいよいよ公開!3回シリーズ(その1)は、登壇者の自己紹介とともに「グローバル企業とはそもそも何か?」や「グローバル企業で働くということのマインド」を議論しました。「グローバル企業」ということの定義を問い直せる内容となっております。是非御覧ください。

ICCカンファンレンスは新産業のトップリーダー160名以上が登壇する日本最大級の招待制カンファレンスです。次回ICCカンファレンス FUKUOKA 2017は2017年2月21〜23日 福岡市での開催を予定しております。

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登壇者情報
2016年6月25日開催
ICCカンファレンス CONNECTION 2016 
Session 5 
「グローバル企業のプロフェッショナル経営者の仕事とは何か?」
(スピーカー)
赤池 敦史  
シーヴィーシー・アジア・パシフィック・ジャパン株式会社 
代表取締役社長 パートナー
留目 真伸  
レノボ・ジャパン株式会社 代表取締役社長
NECパーソナルコンピュータ株式会社 代表取締役 執行役員社長
山田 善久   
楽天株式会社 副社長執行役員
(モデレーター)
琴坂 将広 
慶應義塾大学 准教授

琴坂将広 氏(以下、琴坂) ついに本日最終セッションがやってきました。

これほど豪華なメンバーを集めるのは極めて難しいのではないでしょうか。まさに、このトピックを語るのにはふさわしいメンバーがそろっていると思います。

投資家の目線であるかもしれませんし、事業家の目線であるかもしれません。もしくは、一人のプロフェッショナルとしてグローバル経営を実践されて来た方々の目線かもしれません。間違いなく、最高の布陣と言えるのではないでしょうか。

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琴坂 将広
慶應義塾大学 准教授
慶応義塾大学准教授(SFC・総合政策)。数社の起業を経験の後、マッキンゼー・アンド・カンパニーの日本およびドイツを拠点に主に海外企業の経営支援に従事。その後、オックスフォード大学に移籍し、経営学の優等修士号と博士号を取得。立命館大学経営学部を経て、2016年より現職。フランス国立社会科学高等研究院アソシエイト・フェロー、(株)アピリッツ社外取締役、(株)ユーザベース社外監査役を兼務。専門は、国際経営における経営戦略、および、制度と組織の関係。著書に『領域を超える経営学-グローバル経営の本質を知の系譜で読み解く』(ダイヤモンド社)、共編著に『マッキンゼーITの本質 情報システムを活かした「業務改革」で利益を創出する』(ダイヤモンド社)、分担著に『East Asian Capitalism: Diversity, Continuity, and Change』(オックスフォード大学出版局)などがある。

本セッションは各社の概要を紹介していくよりも、より根源的な、マネジメントのスタイルであったり、考え方について深堀していくようなセッションにしていきたいと思っています。本日はよろしくお願いします。

さて、登壇者のみなさんは、今すでに世界を舞台に経営をされているわけです。

そこで、昔、「まだイメージでしか国際経営もしくはグローバル経営というものを見ていなかった時代」と、今、「実際に数百億円、数千億円という事業展開を視野に入れた中で経営者をされている現在」と比較して、一番のギャップはどこにあったでしょうか。

ここをまずは議論のとっかかりにして、セッションを始めて行きたいと思います。

まず、留目さんいかがでしょうか。

グローバル経営とは何か?

留目真伸 氏(以下、留目) 私は、今はレノボ・ジャパンという会社の社長をやっていますが、NECパーソナルコンピュータという会社の社長もやらせていただいております。

NECとジョイントベンチャーでPC事業を日本でやっています。

その前は、レノボの本社というのは実は中国ではなくてアメリカにあるのですが、アメリカの本社の方で事業統合の責任者をしていました。

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留目 真伸
レノボ・ジャパン株式会社 代表取締役社長
NECパーソナルコンピュータ株式会社 代表取締役 執行役員社長
1971年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。総合商社、コンサルティング、外資系IT等を経て2006年レノボ・ジャパンに入社。常務執行役員として戦略・オペレーション・製品事業・営業部門統括を歴任。2011年からNECパーソナルコンピュータの取締役を兼任し、責任者としてNECとのPC事業統合を成功に導く。2012年、Lenovo Group米国本社戦略部門に全世界の企業統合の統括責任者として赴任。2013年4月よりレノボ、NEC両ブランドのコンシューマ事業を統括。2015年4月より現職。レノボ・グループVice President。

グローバル経営というと、そのあたりから本当にグローバル経営に携わったといえるのでしょう。

そこで最初は、少し気負っているところもありましたので、「日本人として世界で勝たなければならない」とか「日本の立場を主張しなければならない」とか、要は戦争ではないのに戦いを挑むというイメージを持っていました。

しかし、意外にそうではなかったというのが今の感想です。

グローバル企業というのは、何がグローバル企業なのかいろいろと定義がありますでしょう。

それこそ日本の会社でもどんどん海外へ進出している会社さんもたくさんある。

また、海外売上が半分以上あればそれは日本の会社なのか、というところまで含めて、いろいろな定義があります。

ただ、私が一番感じているのは、グローバル企業というのは、グローバルにものを考えて会社の経営をするということだと思います。

この本質は、資本主義という仕組みを通じて、グローバル規模の課題を解決しようとしているかどうか、だと思うのですね。

ですから、別に資本構成がどうとかという話ではなく、グローバル規模の課題を解決するというプロジェクトのために最適なチームを作って経営をするというのがグローバル企業だと思うのです。

それを考えると、たとえば日本から来てアメリカ人や中国人やインド人に勝たなければならないと考えていたのは「少し違ったな」という認識です。

琴坂 まさにレノボはIBMのPC事業が前身であったというところが、中国のレノボと一緒になって、かつ今はNECと融合しているということですからね。

留目 そうですね。レノボの面白いのは、2005年、10年前になりますが、IBMのPC事業を中国のレノボが買収したところから今の形がスタートしているということです。

つまり、最初から欧米とアジアと半分半分から出来上がっているのです。

そして、本社も今はノースカロライナにある拠点がその本社だと言われているのですが、あまり立派ではないオフィスなのです。別に巨大なキャンパスというほどでもない。

また、役員も全世界に分散していて、本社にいるわけでもないのです。

本当にバーチャルに本社機能を作って、かつ、アジア型でもない、欧米型でもないマネジメントをやっている。

ですから、本当にグローバルな雰囲気のある会社なのです。

そして、その前は、同業なのですが、D社さんという会社におりました。D社さんはアメリカの会社で、私は日本のマーケティングの統括をしていました。

だから、「アメリカから言われたことをやる」というイメージでした。

そういったこともあって、レノボに入った時は、「今度は乗り込んでいったのだから、勝たなければならない」「日本の存在感を出さなければならない」というような気負ったところもあった。

ですが、実はグローバル経営ということを考えてみると、そうではなかったというのが今の認識です。

琴坂 山田さんはいかがでしょうか。

山田善久 氏(以下、山田) 僕は、海外で働いた経験は、実は一回だけです。

もうずいぶん前ですが、日本の銀行にいて、1997年から2年くらいロンドンにいました。

1992年、20年以上前の日本の銀行ですと、ニューヨークやロンドンに拠点がたくさんあった。そこでは、基本的には日本人が日本人だけでやっているというのが基本的にはすごくありました。もちろん、現地の人たちも当然働いています。

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山田 善久
楽天株式会社
副社長執行役員 最高財務責任者
1987年3月 東京大学法学部 卒業
1987年4月 株式会社日本興業銀行入行
1992年5月 ハーバード大学経営大学院修士号取得
1999年9月 ゴールドマン・サックス証券会社 入社
2000年2月 楽天株式会社 常務取締役
2004年4月 マイトリップ・ネット株式会社(現 楽天トラベル株式会社) 代表取締役社長
2007年3月 当社取締役辞任、楽天トラベル株式会社 代表取締役社長退任
2010年8月 当社常務執行役員 ビットワレット株式会社 (限 楽天Edy 株式会社) 代表取締役社長
2011年1月 楽天トラベル株式会社 代表取締役副会長
2012年3月 楽天株式会社 取締役
2013年3月 楽天株式会社 最高財務責任者
2014年1月 楽天株式会社 代表取締役副社長執行役員
2016年3月 楽天株式会社 副社長執行役員 最高財務責任者(現任)

今はどうか。楽天で試行錯誤しながらやっていますが、もうそういう時代でもないのでしょう。

もちろん試行錯誤していますから、うまくいっていることもあればそうでないことも当然あるのですが、日本人だけでやろうなどということはもうまったく考えていません。

そこはもう本当にフラットなので、そういった意味ではこの20年の間に当たり前になってきたというふうに思います。

琴坂 では、「日本企業が海外へ進出していってそこで戦っている」というまさにど真ん中にいらっしゃったわけですけれども、今はそういうのではなくて、世界が協調して分散的に経営していくという方向に進んでいるということでしょうか。

山田 そうです。極めて当たり前と言えば当たり前です。

どの国籍の方であろうとも優秀な人は役員にもなってもらっているし、差別と言うかそいうものもあるわけもなく、グローバル企業という言い方が良いのかはわかりませんが、そういういろいろな才能のある人たちの力を当たり前に活かしていきたいです。

琴坂 国籍はだんだん関係がなくなってきているということですね。

では赤池さんどうでしょうか。

赤池敦史 氏(以下、赤池) 私は留目さんのお話を伺っていて、とても若い時には気負っていたなと思いました。

大学院の時、専門が鉱山だったので、コロラド鉱山大学という冗談のような名前の大学へ行って、Ph.D.(博士号の学位)をとりました。

そして、そのまま海外の鉱山会社で働きはじめました。

ストレートに言えば、ちょっとエラくなりたいという気持ちで行ったのです。やはり資源ビジネスをやるのであれば海外だなと勝手に思っていました。

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赤池 敦史
シーヴィーシー・アジア・パシフィック・ジャパン株式会社
代表取締役社長 パートナー
平成6年 3月 東京大学工学部資源開発工業学科 卒業
平成9年 3月 東京大学大学院工学系研究科地球システム工学専攻 修士課程修了;修士(工学)
平成11年5月 コロラドスクールオブマインズ Mining and Earth Systems Engineering 博士課程修了
平成11年7月 プライスウォーターハウスクーパース(アメリカ ニュージャージー州)入社
平成12年4月 マッキンゼー・アンド・カンパニー・インク・ジャパン 入社
平成14年4月 アドバンテッジパートナーズ有限責任事業組合 入社
平成27年4月 シーヴィーシー・アジア・パシフィック・ジャパン株式会社 入社: 代表取締役社長 パートナー

世界で一番大きな鉱山会社というのはリオ・ティントと言うのですが、イギリス資本の会社です。

イギリスも自国の資源がすべてなくなっている中で、世界で一番大きな資源の会社を作っている。

それが、チリとかオーストラリア出身の鉱山会社と違うところなので、自分もそこへ行けばきっとエラくなれるに違いないと考えたのです。

とても気負っていますでしょう。

きっと、ここにいらっしゃるみなさんも、若い時は「俺も海外でエラくなるのだ」と思っていらっしゃるのではないでしょうか。

私はネバダの砂漠で仕事をしたのですが、これは結構寂しいのです。

「これを10年やってリオ・ティントの上へ行くというのは遠いな」と思ってやめ始めたのです。

こうして最初の仕事は海外でやっていたりしました。

今の会社(CVC)はマネジメントとは言ってもいわゆるパートナーシップの会社で、グローバルにパートナーが40数名いる中の一人なので、共同経営とは言っているものの、シニアなパートナーと私のようなまだジュニアのパートナーでは結構な差があります。

ただ、一応40代前半で雇われているので、10年くらいやっていると残り10人から15人くらいのところに入れるという前提で雇われてはいる。

しかし、これも結構今は悩んでいて、G20の一番端っこにいる日本の財務大臣みたいな感じになるのではないかと思っているのです。

CVC(キャピタル・パートナーズ)は世界で一番大きな企業買収ファンドなのです。

cvc出所:CVC Capital Partners社のWebサイト

だいたい現預金=手元で使えるお金が3兆円くらいありまして、そして年間に5,000億円くらいはエクイティ(株式に投資する資金)投資を使っています。

日本の大手総合商社はだいたいマーケット・ギャップ(時価総額)が2〜3兆円くらいあって、どうやら過去5年間に企業価値ベースでたぶん5兆円くらい投資に使って、エクイティ(株式に投資する資金)で1〜2兆円を投資しているので、CVCと日本の大手総合商社の投資規模は変わらないと思うのです。

ただ、私たちの会社は(投資の)プロフェッショナルが400人くらいでやっているのを、日本の総合商社の方たちは6千人とか1万人でやっている。

それは、僕らが生産性がそんなに高いというよりも、単に外注をしながら自分たちは投資事業をやっているということなので、扱っているビジネスは同じだと思います。

そういう仕事なのです。

これもまたグローバル企業の、一応CVCもマネジメントの一員として残れば今後も機能していくと思うのですが、このギャップに今悩んでいるところです。

琴坂 極めてグローバルな組織なのですが、ロケーションは日本ということで、その「日本」というのはどのように意識されていますか。

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赤池 投資会社の中でもヨーロッパ系の会社に入って面白いと思うことがあります。これはリオ・ティントもそうでした。

アメリカは日本のGDPの4〜5倍くらいあって、マーケットが巨大です。

すると、アメリカからすればすべての国はサブシディアリー(subsidiary【形容詞】補助の、補足の、従属の)なのでしょう。

しかし、昨日のUKのEU離脱ではないですが、ヨーロッパというのはGDPベースで言うと一番大きなところでも日本の2分の1か3分の1くらいしかない国の集合体なのです。

つまり、日本というのは結構大きいです。

(CVCは)重要なイギリスやドイツやフランスなどに大きなオフィスがあって、(日本も)それと同じようなオフィスになっている。

その柱の集合体で会社全体が回ってゆくという形態なのです。

その意味で、(CVCにとっても日本は)すごく重要です。

アジアの中でも、日本とか中国とか、あとはシンガポールを中心とした東南アジアというのはやはり非常に大きな意味があるし、将来の成長の可能性もある。

そこに将来的に5本か10本くらいの柱が立って、お互い連携しながらやっていくという(形態的な)意味では、(日本も)すごく重要なのです。

グローバルな会社というのはそういう前提で世界へオペレーションを拡大していくというところがあるので、(日本も)結構大切にされているというか、重要なポジションではあります。

ですが、一方でやはりヨーロッパ資本でヨーロッパの人たちがものすごい勢いで仕事をしているので、「(日本人である自分が)本当に主流になれるのか」という不安は未だにあるのです。

(続)

 

編集チーム:小林 雅/石川 翔太/榎戸 貴史/戸田 秀成


【編集部コメント】

続編では主に「日本人がグローバル企業の経営者になりえるか?」という問いを様々な角度から議論しました。どんな人が世界の”ゲーム”で上がっていけたかといった、リアリティのある話となりました。感想はぜひNewsPicksでコメントを頂けると大変うれしいです。

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ICCパートナーズ(ICC Partners Inc.)は産業を共に創る経営者・経営幹部のためのコミュニティ型カンフ ァレンス「Industry Co-Creation(ICC) カンファレンス」の企画・運営および新規事業創出・アライアンスなどのアドバイザー業務を行っています。