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「小説『下町ロケット』の弁護士モデル(鮫島 正洋氏)が語るグローバルニッチ・トップを目指すための知財戦略論 」【K16-6D】セッションの書き起し記事をいよいよ公開!8回シリーズ(その8)は、会場からの質問を受け付け、スマホゲームの特許化や、知財戦略でまず始めるべきこと等を議論しました。是非御覧ください。
ICCカンファレンスは新産業のトップリーダー160名以上が登壇する日本最大級のイノベーション・カンファレンスです。次回 ICCサミット FUKUOKA 2018は2018年2月20日〜22日 福岡市での開催を予定しております。
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【登壇者情報】
2016年9月6日・7日開催
ICCカンファレンス KYOTO 2016 「ICC SUMMIT」
Session 6D
小説「下町ロケット」の弁護士モデルが語るグローバルニッチ・トップを目指すための知財戦略論
(スピーカー)
鮫島 正洋
弁護士法人内田・鮫島法律事務所
代表パートナー弁護士・弁理士
杉江 理
WHILL Inc.
CEO
玉川 憲
株式会社ソラコム
代表取締役社長
(モデレーター)
水島 淳
西村あさひ法律事務所
パートナー
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【前の記事】
【本編】
水島 知財戦略というのはあらゆる次元に広がっていき、本当に話が尽きませんが、お時間が来ましたので、最後10分程度Q&Aのセッションに移らせていただければと思います。
会場の皆様、どなたかご質問のある方、どうぞ。
スマホゲームの特許戦略をどう考えるべきか
質問者1 グッドラックスリーの井上と申します。
「さわって!ぐでたま」というスマートフォンのゲームアプリを作っており、同シリーズを出す時にも、ゲームの特許が既に取られているか、他社が押さえているかどうかの調査を弁理士さんに相談しました。
放置系、育成系などのゲームで何件か見つかったのですが、今日のお話を伺っていて、ゲーム業界というのは結構遅れているのかなと感じました。
ゲーム専用機については、任天堂、セガなどが多くの特許を取っていると思いますが、スマートフォンゲームですとかなり少ないです。
ただインターフェースとしては結構新しいので、UI、UXレベルでいえば結構押さえられるのではと思います。
加えてグローバルで見れば、市場規模も大きいですし、いろいろな切り口でニッチ市場を切り出していけるのではないかと思っています。
ただ日本のゲーム会社で、そのような動きをしているところは少ないという認識なのですが、なぜなのでしょうか。
また今後グローバル競争になった時に、恐らく欧米の企業は知財についてもきちんと押さえてきているのではないかと思っており、スタートアップとしてどうしていけば良いのか、経営方針としてまだ明確に定められておらず、本日はそのような問題意識で参加したのですが、例えばスマートフォンゲームということに特化した場合に、どのように考えていけば良いか、鮫島先生に教えていただければと思います。
アルゴリズムは秘匿し、インターフェースは特許化
鮫島 基本的には、玉川さんのご発言と重なると思いますが、ゲームの特許と言うのは、アルゴリズムなのか、インターフェースなのかという2つに分けられます。
アルゴリズムは侵害検出ができないのでブラックボックスにして、インターフェースで面白そうなものがあれば取っていくという考え方になるかと思います。
先ほど図をご覧いただきながら少し説明したように、強い特許を取れば、多少他人の特許を踏んでも安全というのが特許の世界なので、そのような強い特許をゲームの分野で今から取れるのかどうかがひとつのキーファクターになると思います。
実際に分析してみないと分かりませんが、強い特許を今から取れるかを絞っていくためには、どこでどのように事業領域をニッチ化していくかを考えねばなりません。
事業戦略との関係ではそういうことになります。
井上 ゲームに詳しいのは私たちで、弁理士・弁護士さんともに、ゲームに詳しいわけではないと思いますが、実際どこに強みがあるかということについては、どのように話し合っていくのでしょうか?
やはりゲームを実際にやってもらったりするのでしょうか……。
領域に明るい特許戦略パートナーを個別に探すべき
鮫島 そうではなく、まずは御社の事業戦略や、どこで特徴を出していくかという考えがあるはずですから、それをまず分析し、ヒアリングをかけてみると、例えばナムコ社が20年前から絶えず多くの特許を出していますよという話になるかもしれませんし、もしくは御社の着眼点はすごくユニークですね、という分析結果になるかもしれません。
井上 なるほど、弊社の売りを過去の事例に遡って見てもらい、特許が出ているか否かなどを調べていくということですね。
水島 そのインプットをいただけることが大事なのと、後は弁護士ないしは特許事務所には、それぞれ強い分野があります。
当該分野で実績のある事務所など、領域ごとに適切なパートナーを私たちが探して紹介することもあります。
井上 ゲームはどちらの事務所が強いのでしょうか。
鮫島 それは後ほど話しましょう!(笑)
(会場笑)
玉川 スタートアップの視点からは、そこがとても重要で、事務所どころか「By Name」で、つまり指名するくらいでないと、余分なコミュニケーションコストがかかってしまいます。
我々が伝えようとしているところ、我々は特に通信とクラウドのテクノロジーに特化していますが、もし「クラウド」と言ってピンとこないようであれば、それをコンセプトに落として特許を出願するのはほぼ不可能なので、こちら側に相当の負担がかかってしまいますので、その点はとても大事だと思います。
恐らく、個人でもゲームをされていて、ゲームの分野で実際に特許を出した経験のある人を選んだ方が、大幅に楽になると思います。
水島 ありがとうございます。
他にいらっしゃいますか?ではそちらの方。
質問者2 小田と申します。京都で、データ未来研究センターというベンチャーをやっています。
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小田 雄一
株式会社データ未来研究センター
代表取締役CEO
京都大学大学院農学研究科博士課程満期取得退学。修士、博士課程在籍時にイスラエルへ渡航。ベンチャー精神にふれ起業を決意。京都大学VBLにて会社を設立、京都大学理学研究科花山天文台台長柴田一成教授(宇宙事業)、JAXA主幹研究員中野不二男(衛星データ)、京都大学医学研究科浜中雅俊研究員(人工知能)を顧問にむかえ研究開発を開始、CEOに就任。衛星データをディープラーニングにより解析する事業をおこなう。現在それらを用い、非GPS下におけるドローンの位置推定技術、3次元位置情報サービスを開発中。イスラエル・ヘブライ大学、アリエル大学と研究交流をもつ。好きな仏教者は法然、好きな寺は当麻寺。
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玉川さんに質問させていただきたいのですが、特許については私も考えていたのですが、他に思考のリソースというか、優先順位として上がってこなかったことを後悔しているのですが、何から始めたかお聞かせください。
特許を出願する・しないを時間をかけて議論すべき
玉川 我々が何から始めたかというと、経営層の間でのディスカッションから始めました。
特許を出願するかしないかのディスカッションです。
ディスカッションの結果、先ほどお話ししたような方針を決め、UXは取る、検出可能でないものは取らない、ただし我々にとってコアなところ、今後競合が入ってこようとした時に防御できるコアなところは、少しでもリソースをかけて取っていこう、ということを決めました。
ファウンダーの中に1人担当者を決めて、かなり時間を費やしました。
そうしなければ、グローバルに打って出ていく時に、太刀打ちできないだろうという考えがありました。
先ほども少し話が出ていましたが、他の人にとって何の害もないスタートアップならば意味のない作業になりますが、成長して他のインダストリーに影響を与えるようになればなるほど、知財戦略が重要になってきます。
そして難しいのは取り返しがつかないことです。
最初から取り組んでおかないと、会社が大きくなった時に取り返そうとしても、取り返しがつかないので、そう考えると、テック系の会社であればCEOのリソースのうちの恐らく10%、20%くらいの労力と頭をこの問題に割かなければいけないのではないかと思います。
水島 ありがとうございます。
大変申し訳ないのですが、時間がきましたので、これをもって終了とさせていただきます。
まだ質問がある方は、この後、個別にお願いできればと思います。
今回、鮫島先生には、お忙しい中いらしていただいて、大変分かり易く、かつ実務的な内容をまとめてくださり本当にありがとうございました。
知財戦略というのは、なかなか話しにくいところがありますが、経営者のお二方には、可能な限り突っ込んだ話を聞かせていただき、皆さんの参考になったのではないかと思います。
今回のセッションが今後皆さんが経営を進めていくうえで、長期的な知財戦略の策定や、競争優位ポジションの確保に少しでも貢献できたなら幸いです。
本日はありがとうございました。
(終)
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編集チーム:小林 雅/榎戸 貴史/戸田 秀成/鈴木 ファストアーベント 理恵
【編集部コメント】
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