▶新着記事を公式LINEでお知らせしています。友だち申請はこちらから!
▶ICCの動画コンテンツも充実! YouTubeチャンネルの登録はこちらから!
2月14日~17日の4日間にわたって開催されたICCサミット FUKUOKA 2022。その開催レポートを連続シリーズでお届けします。今回は、パワーアップしたアワード・プログラム、「デザイン & イノベーション アワード」の体験プログラムの模様を、展示企業の意気込みとともにお伝えします。ぜひご覧ください。
ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。 次回ICCサミット KYOTO 2022は、2022年9月5日〜9月8日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。
第2回デザイン&イノベーション アワード開幕!
今回のアワードは、前回から格段にスケールアップした規模で行われた。熱狂を生み出したのは、何よりも展示企業の方々によるCo-Creation。「デザイン&イノベーション」と「フード&ドリンク」アワードにエントリーした企業の自慢のプロダクトが1つの会場に集められ、ICCサミットを盛り上げた。
初日は「デザイン&イノベーション」のキックオフが行われ、続いて審査員を対象とする体験プログラムが開催された。キックオフでは各展示企業が1分スピーチを行ったあと、審査員がこれから見学するプロダクトやアワードへの期待と豊富を語った。
マクアケ 坊垣 佳奈さん「日本環境設計さんのリサイクル工場見学ツアーにも行かせていただいて、改めて思ったのが、プレゼンを聞くだけじゃなくて、聞きながら見る、触る、感じるみたいな体験が持つ意味をすごく感じました。そういう意味では本当にカタパルトに並ぶこのアワードの企画は、素晴らしいなと思っています。
この後、一つ一つお話を聞きながら、見させていただく、体験させていただくお時間をすごく楽しみにしています。本当にいろんなジャンルのものが混ざっているので、これ、同じ土俵で見るの?みたいな感じですごく難しいんですが、一つ一つ真剣に審査させていただければと思っています」
リブ・コンサルティング 関 厳さん「前回のアワードは自分で見に行って、買えるものは買ったりしたので、今回も非常に楽しみです。
国産初のSNSで15年ぐらい前にすごい流行ったものと、iPhoneが日本でまだ売られていないときに、友達に『これ、どう思う?』と聞かれたことがあって、後々世界的な大ヒットをするものも、『いや、これ、いまいちだと思うよ』と私はいまいちな回答をした覚えがあります(笑)。
一応言い訳をさせていただくと。そこに作り手の方の想いやストーリーがあって、初めてプロダクトやサービスは完結するのかなと思ってまして、今日はものを見るのと同時に、皆さんのお話を聞けるので、楽しみにしています。もしいまいちな反応をしたら、どうせ見る目が無い人だから関係ない、と思っていただければと思います(笑)」
三星グループ 岩田 真吾さん「登壇者側に1つと、審査員側に1つずつメッセージがあって、登壇者の皆さんはたぶんここから2日間、あらゆるスピーカーよりもたくさんしゃべることになると思いますので、喉のケアをしっかりしながら頑張ってください。
つまりそれだけ多くの人とコミュニケーションを密に取れるチャンスで、僕はICCの中で実はこのアワードの出展者が一番お得なポジションなんじゃないかと思っています。同じ説明をたぶん100回ぐらいするんですけど、相手にとっては1回。しっかりとお話ししていただくと、気持ちが伝わるかなと思います。
審査員の皆さんは真面目なので、前のほうから順番に見ていこうとして、前回は優勝したヘラルボニーの辺りでめちゃめちゃ渋滞しているのに、後ろの方の僕らの展示が暇だなみたいなことが起きます。半分ぐらいの人はぜひ後ろから見ていってください! みんなでいい時間を作っていきましょう!」
ヘラルボニー 松田 文登さん「僕らはヘラルボニーは、障害が欠落ではないというものをアートというフィルターを通じて変えていく会社ですが、市場を開拓していくスタートアップはあっても、「思想」を開拓していくスタートアップは、なかなか無いのではと思っています。それが伝わって優勝という結果になったのではと思っているので、思想を伝えていくとのは、非常に大事なんじゃないかと思います」
アワードの新ロゴが誕生
キックオフでは運営スタッフの福西 祐樹さんが司会を務め、こちらも運営スタッフで本業はデザイナーである米永 さら沙さんのデザインにより、今回から新たに誕生したアワードのロゴもお披露目された。
続いては、会場に移動して審査員たちに実物を体験してもらいながら、熱心にプロダクトをアピール。以下のレポートでは、各エントリー企業の1分スピーチの内容も合わせて、ガイドツアーの模様をお伝えする。
ユカイ工学 – しっぽが動く癒やしクッション、甘噛みする猫型ロボット
青木 俊介さん「僕たちユカイ工学は、『ロボティクスで、世界をユカイに。』というミッションを掲げて、家庭向けのロボット市場を創ろうとしています。3万匹を出荷した、しっぽフリフリのクッション型ロボットや、2022年のCESで発表したばかりの甘噛みをしてくれるロボットなど、ユカイなロボットたちをたくさん並べておりますので、ぜひブースで体験いただければ!」
普段は真剣な表情の審査員たちも、甘噛みロボットに指を噛まれて、思わず笑顔に!
インターステラテクノロジズ – 実寸サイズのロケット
稲川 貴大さん「我々インターステラテクノロジズは、民間でロケット開発をしています。日本で初めて民間企業として宇宙空間に到達したロケットを造ったり、新しく、従来よりはるかに安いロケットを造っています。本日はモックアップで、1分の1サイズのロケットの模型を展示しています。
部品に関しては、実際に我々はロケットの上から下まで全部自社で内製しているという強みを持っており、そういった部品をいくつか展示しています。宇宙産業、そしてロケットが自動車に次ぐ日本の新しい基幹産業になると確信しています。そういう時代を我々は創ろうと思っています」
展示会場の最も奥にあり、存在感を放っていた実寸のロケット。官製よりはるかに安いというお値段は?
「市販品のものも一部使いながら、コストの一番かかりそうなところを安く抑えています。観測ロケットまるまる1基、実際にはロケットを買うというよりも、我々は輸送サービスなので、打ち上げて宇宙まで運ぶところに対価をいただいているのですが、このロケットだと1億円を切るぐらい」
日本の同様のサイズでは3〜5億円、ヨーロッパだとその数倍するのだとか。現在は民間の企業、とくに金融機関や大規模な小売企業などが、宇宙からのデータをビジネスに役立てることが増えているのだそうだ。
Shiftall – バーチャル空間を楽しむデバイス(HaritoraX)
岩佐 琢磨さん「1日6時間ヘッドセットを付けて、こういった全身をトラッキングするような装置と、外には声が聞こえなくなるマイクを付けて、バーチャル空間を楽しんでいく時代になります。我々Shiftallは、バーチャル空間で長く時間を過ごす方のためのプロダクトを、これからたくさん開発していきます。今日はぜひ体験してみてください」
全身にデバイスをつけている人のアバターが、背後の画面中に写っているのが見えるだろうか? これは全身でメタバースに入れるアイテム。ヘッドセット(オキュラスクエスト2)と合わせて合計6万円ぐらいの商品を買っている中心は10代〜20代で、2021年7月の販売からずっと売り切れだという。
「メタバースの中でみんな、カラオケも飲み会も、恋愛も麻雀もしています。飲み会とかカラオケで大きな声を出すと、同居人にとっては迷惑ですよね。僕が口につけているのがメタバースに対応した音漏れ防止のデバイス。Bluetooth対応で、現実空間では聞こえないけど、メタバースでは聞こえます」
岩佐さんがデバイスをつけて大声で目の前で話しても、何を言っているかまったくわからない。全身デバイスをつけた男性のメタバース内のアバターは若い女性だ。ここだけ、すごい世界が展開している。
Polyuse – 建設用の3Dプリンタ
岩本 卓也さん「建設用の3Dプリンタを作っているPolyuseです。コンクリート構造物を自動的に造るマシンを作っています。今回は150kgぐらいある構造物を作って持ってきています。ぜひ触ってみてください。マテリアルも持ってきているので触っていただけますし、それを造ったマシン自体も持ってきているので、ぜひ体感してください。
本日リリースしているんですけれども、日本で初めて建築基準法に適合した住宅を造るというプロジェクトを実行しました。いよいよ建設用3Dプリンタが皆さんの生活のインフラを支える段階に来たので、それを体感してもらえるような場にしたいと思っています。ぜひ遊びに来てください」
半年前のICC KYOTO 2021のプレゼンが、事業の説明に大いに役立っているという岩本さん。この日のためにICCのロゴ構造物を作って持ち込んでくださった。ちょうど腰掛けにもなるサイズで、アワード参加者たちも次々と記念撮影を行っていた。
ソラリス – 人工筋肉のソフトロボット
梅田 清さん「株式会社ソラリスと申します。我々は中央大学から生まれた初めてかつ唯一のベンチャー企業で、理工学部中村研究室で長年にわたって研究をしてきた独自の人工筋肉、これを使ったソフトロボット、柔らかくしなやかに動くロボットの事業化を目指しております。
我々のロボットは本体の部分に電子部品、モーターを一切使っておらず、人工筋肉と空気の力で、それはそれは世にも奇妙な動き方をいたします。この奇妙な動きが世の中のさまざまな課題を解決する可能性を秘めておりまして、いろんな業界の方から注目を集めております。今後も独自技術を使って、新価値の創造を行って参ります」
運びたいものを筒状の内部に入れ、空気によって縦方向にだけふくらむことで、中のものがどんどん運ばれる仕組み。ジョイント部分以外は柔らかいので、地中でも曲がった場所でも設置することができる。画像では伝わりにくいが、すごい動きはぜひカタパルトのプレゼン動画をご覧いただきたい。
mui Lab – 自然素材の木を使ったIoTデバイス
大木 和典さん「京都のmui Labの代表をやっています、大木と申します。スマートホームの国際規格『Matter(マター)』が2022年中にローンチされるのですが、私たちは日本で初めて、その規格に対応する会社としてワーキンググループに参加して、今Amazon、Apple、Googleと一緒に新しい規格作りを行っています。ぜひブースで、世界初の木製のIoTデバイス「mui」を体験いただければと思います」
指で「light」とデバイスをなぞると照明が点いたり、Alexaと対応しているので音楽を流してくれる「mui」。ただメッセージを書くこともできて、機能性とインテリア性を兼ね備えている。
メルティンMMI – 手指麻痺用ニューロリハビリテーション装置
粕谷 昌宏さん「自分の右手の生体信号で、自分の左手を遠隔操作した方っていますでしょうか? おそらくいないと思うんですが、僕たちメルティンは、人の体の中を流れている電気信号を取得して、それをロボットとシンクロナイズさせるというテクノロジーを持ったサイボーグベンチャーです。
今回持ってきている装置は、その技術で脳卒中により手指が麻痺した方のリハビリができます。
皆さんの生体信号を計測して、自分の反対側の手を動かしてしまう。もしくは他の人の手を遠隔操作できてしまう。そんなデモンストレーションを用意しています。リハビリに興味のある方、または自分の生体信号を見てみたいという方、お越しいただければと思います」
審査員たちが、喜々として体験していたのがこちらのデモ。自分の生体信号が見られるチャンスというのはなかなかない機会だ。そしてこの装置によってもたらされた初めての感覚に、皆一様に驚きの声を上げていた。
体に電極をつけて、まずは自分のグーやパーの手の動きを測定し、そこで発生した電気信号を読みとって、手が動かなくても、グーという信号が出たらロボットがその動きをアシストするという仕組み。展示では自分の電気信号に反して逆の手を動かすというデモが提供され、驚かないわけがない。
ワアク – 仕事もできるダイニングテーブル
酒見 史裕さん「ワアクの酒見でございます。私たちは福岡県大川市という日本一の家具の町の家具ブランドで、もともとハイブランドの下請けをずっとやって参りました。現在はD2Cで直接お客様の声を拾い上げながら作ることで、これまでに無いプロダクトを開発しております。
今回展示しているのが、『ワークとライフを、 軽やかに切り替える。』というコンセプトで、テレワーク用のダイニングテーブルです。コンセントをテーブルに刺すことができたり、充電をしながらテーブルにしまえたりなど、非常にこれからのライフスタイルには便利なものを作っておりますので、ぜひご覧になってください」
実際に見て驚いたのは、見た目は高級なテーブルなのに、ラップトップをしまえる深さのある天板下のスリットや、さり気なく配置された電源、テーブル脚の下に差し込む形の給電ケーブル用の差込口。これならば仕事を終えて食事というときも、PCやケーブルを持って移動する必要がない。
ONE NOVA – 3日穿いても臭わないパンツ
高山 泰歌さん「ONE NOVAの高山と申します。私たちは機能的でかつエコフレンドリーな下着を作っています。大自然の中にあるメリノウールとブナの木を掛け合わせて、3日穿いても臭わない、蒸れないボクサーパンツを作っています。『3日穿いても臭わない』で検索すると、私たちのパンツが出てきます。
主にキャンプや登山、アウトドアのシーンで結構使われていたり、あと体臭ケアのエチケットとして選ばれてきました。ブランドを立ち上げる際には、国内外のクラファンに挑戦して60カ国以上にパンツを届けてきました。本日販売も行っておりますので、ぜひICCの3日間をこの1枚のパンツで過ごしてみてください」
審査員のツアー日以外で、このブースをふらりと訪れていたのは、モデレーターとしてもおなじみの慶應義塾大学の琴坂 将広さん。高山さんはなんと教え子だそうで、当時から起業したいと言っていた高山さんを、当時から優秀だったと語っていた。もちろん教え子のプロダクトを愛用中。
ARK – 閉鎖循環式陸上養殖システム
竹之下 航洋さん「株式会社ARKの竹之下と申します。我々は陸上養殖のための装置を開発しています。どこでも誰でも陸上養殖ができるようになるというものでして、まず『どこでも』、サイズ的に9.99平米の土地があれば設置ができるような非常にコンパクトなシステムです。
そして『誰でも』では、初期投資1,000万円以下、養殖に関する非常に複雑なオペレーション、作業などは自動化されているので、基本的に誰でもできます。また、我々の装置は、エネルギーは太陽光発電などや、水はろ過をしながら再循環、基本的に排水をしないで育てることができるため、環境にも優しい製品です。
我々のシステムを使うとどこでも誰でも、水産養殖、食料生産の担い手になれることができます。ブースではフレッシュなエビを用意しておりますので、ぜひブースにお越しください」
このブースに吸い寄せられるようにやってきたのは、フィッシュバイオテックのサバ博士・右田さん。熱心に水槽に泳ぐエビを覗き込んでいる。
「かわいいなぁ……。もしサバと出会えてなかったら、絶対エビに行ってます。でもそう言ったらサバがヤキモチやくので」
展示されていたのは駐車場1台分の養殖システムの小型版。水中の環境はバナメイエビに最適化されており、その日の朝、剥いたばかりのものを試食させていただいた。まさに獲れたて、車海老のような歯ごたえと柔らかさ、甘さがあって、高級な寿司屋で出されるような味わいに驚いた。
Ashirase – 視覚障がい者向け歩行ナビゲーションシステム
千野 歩「株式会社Ashiraseの千野と申します。私たちは、歩くことを切り口に人の豊かさというものを創っている会社です。視覚障がい者の方向けデバイスを作っており、靴に取り付けて振動させるナビゲーションのインターフェース、それがユニークなポイントかなと思っています。
歩行時の視覚障がい者の不安を取り除き、彼らの行動範囲が広がる体験などをデザインするため、靴や足を振動させることに至りました。そういった経緯なども含めて皆さんにお伝えできればと思っています。足の振動の意味が分からないと思うので、ぜひご体験ください」
スマホのアプリに目的地を登録して、靴に差し込むだけで、歩行のサポートをしてくれる「あしらせ」。早速体験してみると、注意を喚起するようなある種不快な振動ではなく、穏やかでむしろ心地良い振動が、曲がるときや目的地に近づいたときに感じられる。利用者の女性からは「パンプスに付けられるものを」とリクエストもあるそうだ。
どんぐりピット – シェア冷蔵庫
鶴田 彩乃さん「どんぐりピット鶴田です。我々は人と人とのつながりでフードロスをゼロにするシェア冷蔵庫を展示しています。地域に設置した冷蔵庫に食材を入れるだけで、誰でも気軽に食材を売買できます。ただの自動販売機ではありません。規格外野菜や余剰のお弁当の売り場として活躍し、フードロス削減に貢献できます。
日本では年間600万トンの食材が廃棄されていますが、実は食事を取りそこねている人もとても多いです。このシェア冷蔵庫を買い物が不便な地域やこども食堂などに設置して、地域の中での食事の偏りを減らすこともできます。今回はそんな令和のおすそ分け文化を皆様に体験していただきたいです。
わらしべ長者のように、商品を交換していくおすそ分けリレーも実施しておりますので、ぜひとも皆様の企業の商品だったり、好きなものを冷蔵庫に持ってきていただいて新たな人のつながりのサービスを体験していただきたいと思います」
鶴田さんの本職はトヨタ自動車のエンジニア。本業で忙しい時期に、誰かの作った温かい手作りのご飯が食べたい、近所の人にちょっとシェアしてご飯食べさせてもらいたいなっていう気持ちで始めたというこの冷蔵庫、今や規格外野菜や余剰のお弁当、賞味期限が近い食品の受け皿となっているそう。
「我々と同じようなフードロスの視点を持った企業さんがいらっしゃったり、アプリの開発もしていますので、使い勝手のご意見を聞いたりしています。今回のご縁をきっかけにいろいろなコラボができたり、よりたくさんの冷蔵庫を日本全国に置けたらと思っています!」
TENTIAL – アスリート視点のコンディショニングウェア、インソール
中西 裕太郎さん「株式会社TENTIALの中西と申します。私たちは健康に前向きな社会を創るというテーマで、アスリートのコンディショニングのノウハウを民主化させるというところをテーマに、活動しています。
姿勢を整えることによって身体のコンディショニングをするというようなインソールを作っています。具体的にインソールによって身体の重心が歪んだりしてしまうとか、それが直るというところを体験できるブースを用意していますので、ぜひ体験いただければと思っております!」
いまやボディコンディショニングウェアはアスリートだけのものではない。BAKUNE、アイマスク、腹巻きといったアイテムは、どれも遠赤外線効果で体が温まり疲労の回復を早めるアイテム。とくに腹巻きは、大学との共同研究でいいデータが出てきそうとのこと。目を酷使しがちな現代、アイマスクもおすすめだそうだ。
前回のカタパルトの登壇でもプレゼンしていたインソールを敷いた上での荷重実験を体験させていただいたが、本当にぐらつかなくて驚いた。なんとTENTIALは運営スタッフ全員に、このインソールを提供していただき、毎日何万歩も歩くスタッフを支えてくださっていた。
日本環境設計 – BRING Technology™
中村 崇之さん「日本環境設計、服から服をつくる『BRING』のブランドディレクターの中村と申します。我々は要らなくなったお洋服を、いろんなブランドさんの店頭で集めています。これを我々の独自のBRING Technology™という技術で、ポリエステルをポリエステルの原料にケミカルリサイクルします。
その原料を糸にし、生地、最終製品であるお洋服を作って、もう一度店頭で販売しているという循環型の製品を作っているブランドです。何度も何度も循環できるのが、我々の特徴です。
そしてこの技術と回収の仕組み、この原料を独占することなくプラットフォーム化して、いろんなブランドさんに提供することもしています。ですから、社会全体で服から服を作るサーキュラー・エコノミーをやっているブランドです。ぜひ隣の会場で、その体験をしていただければと思います。よろしくお願いします」
日本環境設計は、リサイクルされる服と、燃やさないリサイクルのケミカルリサイクルの解重合の仕組み、そのプロセスを展示。またBRING Technologyのもう1つのリサイクル、生まれ変わったペットボトルも展示。今回会場で回収された飲み終えたペットボトルは、このような形で生まれ変わる予定だ。
Oh my teeth – 歯型スキャン体験
西野 誠さん「Oh my teethの西野です。我々は『歯科矯正の民主化』をミッションに、皆さんのような忙しいビジネスパーソンのためにマウスピース矯正で歯並びを直すことができるサービスを提供しています。今回は、オーダーメードのマウスピースを作る歯型スキャンの体験を提供しています。
2020年には世界で症例数ナンバーワンにもなったことがあるドクターを呼んでいて、皆さんに体験していただきたいです。歯並びが気になっているとか、最近全然忙しくて歯医者に行けていない方も無料で歯科検診ができる、そんなブースになっていますので、ぜひお気軽にご体験ください。お待ちしております」
長く続くマスク生活で矯正を始めている人は多いらしく、審査員たちも興味津々。現状の歯並びによって矯正のプロセスは異なり、写真で西野さんが手にしている白い箱には、矯正段階ごとの透明のマウスピースが複数入っている。最終的な歯並びのマウスピースを見ながら、矯正を進めていけるというわけだ。
「ホテルの椅子をお借りして診察をしようとしていたら、近くのブースのワァクさんが、展示されている素敵な黒い椅子を余っているからと貸してくださって、それがブースの雰囲気にもぴったりあって。本当にありがたかったです」
この展示の場所からすでにCo-Creationが始まっており、実際に矯正を開始した人もいるそうだ。
Ay – 伊勢崎銘仙をモチーフにしたアパレル、アクセサリー
村上 采さん「Ayは『文化を織りなおす』をミッションに、紡がれた文化に向き合い、ほぐし、新しい価値を添えて発信しているカルチャーブランドです。銘仙という着物をアップサイクルしたお洋服を作っています。銘仙とは明治から昭和初期にかけて作られていた着物で、普段着で着られていました。シルク100%、そしてモダンなテキスタイルが特徴的です。
私の地元群馬県がその産地であったのですが今は衰退してしまっています。その文化を新しく伝えていきたい。そんな思いからこのブランドをやっています。展示ブースではこのワンピースやユニセックスな羽織、シャツなど、いろいろなものを持ってきましたので、ぜひご覧いただきたいです」
「今は作られなくなってしまった銘仙ですが、その残布を全面に使ったものや、ワンポイントに使ったアイテムを使っています。着物屋や、産地の群馬県の家に眠っていたものを仕入れをさせてもらっています。群馬で作られていたにも関わらず、中東やヨーロッパのような柄もあって、面白いんです」
糸を先に染めてから手織りすることによるずれで、柄のエッジがぼやけて見えるのが特長の銘仙。縦糸に横糸を掛ける作業を、組子細工で表現したイヤアクセサリーもMakuakeで挑戦中だ。
ヤマチク – 竹のお箸
山﨑 彰悟さん「私たちヤマチクは、熊本の山奥で59年間竹のお箸だけを作り続けています。箸という漢字は、たけかんむりですよね、日本のお箸の歴史は竹から始まりました。
こんな田舎のお箸屋さんですが、世界中のデザイン賞を受賞し、ミシュランの星を獲ったシェフたちも虜にしています。たかが箸だろ、と。何が違うんだ?と。その違いはぜひブースで、皆さんの手で体感していただければと思います。お箸も一部販売しておりますので、ぜひお試しください」
手に取ると、心許なく思えるほど繊細で軽い竹の箸を展示したヤマチク。私たちが毎日箸を使うとき、数ぐらむの差でもわかるということを、手にとった人は実感したはずだ。展示では、小豆や大豆を30秒でいくつつまめるかというゲームも実施。そのつまみやすさに、プロの料理人が盛り付けに使うというのが体感で納得できたはずだ。
ITONAMI – 回収デニムから作ったデニム
山脇 耀平さん「岡山県の倉敷市、ジーンズの産地児島でデニムのブランドをやっております、ITONAMIの山脇と申します。この1年間、個人の方から不要になったデニムを回収して、それを粉砕、もう一度原料の綿の状態に戻してそこから糸を作り、デニム生地、製品を作るというプロジェクトをやっておりました。
実はこの2年前のICC FUKUOKA、クラフテッド・カタパルトでこの話をさせていただいて、今回ようやくそれがプロジェクトとして形になったので、今日はご報告させていただけてうれしいです。展示ブースでは原料の状態であったりとか、その再生の工程もぜひ一緒にご覧いただければと思いますので、ぜひ新しい形のデニム製品をご覧いただければと思います」
2020年に、福岡のクラフテッド・カタパルトで宣言したプロジェクトを実現させた山脇さん。それからブランド名を刷新し、新しいブランドを象徴するようなデニムが出来上がった。
「回収から製品化まで時間がかかるというのを実感しましたが、柔らかくてかわいい色に仕上がりました。今後も1年に1サイクル、次に入ろうとしています。リサイクルということで、日本環境設計さんのお店にも今度うかがう予定です」
横山興業 – BIRDY.のデキャンタによる味わいの変化体験
横山 哲也さん「横山興業の横山と申します。愛知県の豊田市で金属加工業を営んでおります。今回皆様に体験していただくのは、Makuakeでも200万円を達成したBIRDY.のステンレス製のデキャンタです。特徴は、容器の中にございます。研磨の職人が精密にこの中を磨くのですが、あえてミクロの凸凹を残す仕上げになっています。
飲み物を入れて、5回、10回かき回すと、その飲み物のポテンシャルが引き立ちます。今日はウィスキーのストレート、水割り、そしてノンアルコール、紅茶もご用意してますので、ビフォーアフターを体験していただければと思います。右に回すのか左に回すのか、研磨の目に添わせるか、逆らわせるかで、味わいが変わります。ぜひブースに足を運んでいただければと思います」
この飲み比べ、筆者は下戸のためスタッフの中でも酒豪の小杉さんにウィスキーの試飲レポートをお願いした。
「3種類の飲み比べをしました。①のボトルそのままは、いわゆるストレートで飲むままの味です。
②デキャンタ 左回し10回は、飲む前の香りは樽香が強く、でもスッキリとした印象の香り。口に含むと舌を通り越し、喉の奥からピートの香りが重くしっかりと鼻に抜け、その後の余韻も長い。
③デキャンタ 右回し10回は、飲む前の香りはやや甘く、花のような華やかな香り。口に含むと、喉よりも舌の左右に優しく余韻が残りました」
デキャンタを回す方向で、なんと香りも味も、余韻の長さも変わるとのこと。審査員たちがブースに長く留まり、語り合っていたのはその驚きゆえのようだ。終了した後で、ノンアルコールでも試せたことを知り、実に残念!
Yetina(ワシオ) – 魔法瓶のような暖かさのアパレル
鷲尾 岳さん「ワシオ株式会社の鷲尾と申します。突然ですが、日本には春夏秋冬、4つの季節がございます。これで好きな季節というふうに聞くと、だいたい春とか秋になるんですけれども、逆に嫌いな季節はと聞くと、圧倒的に冬が1位。その冬をなんで嫌なのかというのが、だいたい寒いからという理由です。
弊社の製品は私も今着ているパーカーなんですが、下にタンクトップ1枚。この格好で真冬でも普通に平気で外を歩いています。この服が弊社独自の技術でオリジナルの生地から作られており、まるで魔法瓶のような、空気を保温するような形で体温を逃がさない構造になっています。
私たちの服を着れば、冬が嫌いどころか逆に待ち遠しくなるような、そんな服を展示しております。ぜひ後ほど細かい説明はさせていただきますので、お越しいただければと思います」
バイカーや釣り好きに根強い支持を得ていた、独自起毛素材「もちはだ」素材の下着、靴下(右の写真で鷲尾さんが手にしている)をアップデートしたアウトドアブランドのYetina(イエティナ)を展示していたワシオ。昨今のアウトドアブームで新たなファンを獲得しているそうだ。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
どれも見ているだけでも楽しく、加えて実際に事業やプロダクトを作っている人たちが説明してくれるので、これ以上はないというほど詳しい解説が聞ける。投票カードを手にした審査員たちは、どこに投票すべきかと頭をひねっている。果たして今回グランプリを獲得するのはどの企業か? その結果は、この翌日の一番最後のセッションで決定される。
(終)
▶新着記事を公式LINEでお知らせしています。友だち申請はこちらから!
▶ICCの動画コンテンツも充実! YouTubeチャンネルの登録はこちらから!
編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/小林 弘美/戸田 秀成
更新情報はFacebookページのフォローをお願い致します。