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「子ども1人1人にあった教育」を社会に実装するLITALICO【A16-5 #2】

ICCx AIESEC 2016 Session5 「教育を変え、社会を変える」

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「教育を変え、社会を変える」【A17-S5】セッションの書き起し記事をいよいよ公開!12回シリーズ(その2)は、LITALICO長谷川さんに現在、LITALICOが取り組む教育関連事業についてお話いただきました。「親向け学校」など子どもにとどまらない教育アプローチをぜひ御覧ください。

「ICCx AIESEC カンファレンス」は、NPO法人アイセック・ジャパン(AIESEC)とICCパートナーズが共同で開催した、AIESECに所属する大学生を対象としたカンファレンスです。当日は高い志を持った大学生250名が、ビジネスリーダー/社会起業家たちのパネルディスカッションと、質疑応答セッションに参加しました。

本年も、2017年9月15日(金)に「ICCx AIESEC 2017」を開催する予定です。参加を希望される方は、ぜひ全国25大学のAIESECの各委員会に所属ください。

Aiesec Logo


登壇者情報
2016年9月13日開催
ICC/AIESEC ソーシャル・イノベーション・カンファレンス2016
Session 5
「教育を変え、社会を変える」

(スピーカー)
長谷川 敦弥
株式会社LITALICO 代表取締役

松田 悠介
認定NPO法人 Teach For Japan 創業者 兼 代表理事

水野 雄介
ライフイズテック株式会社 代表取締役CEO

(モデレーター)
小林 雅
ICCパートナーズ株式会社 代表取締役

「教育を変え、社会を変える」の配信済みの記事一覧

長谷川 敦弥氏(以下、長谷川) 皆さんこんにちは。

会場 こんにちは。

長谷川 LITALICOの代表をしている長谷川と申します。

10分位弊社の紹介をさせていただきます。

LITALICOは2005年に創業した会社です。

社会の課題を、事業を通して解決していこうということで10年間運営してきた会社です。

有難いことに、「社会を良くする働き方がしたい」という若い人が世界的に増えているということもあり、弊社の新卒や中途採用に年間30,000人程の方から応募いただいております。

特に2011年の東日本大震災以降、日本の中でも「社会を良くしたい」という方が非常に増えているという印象を持っています。

現在では社員が1,400人程、今年(2016年)3月に東証マザーズに上場しました。

新卒入社1年で社長になったLITALICO長谷川さん

長谷川 実は、僕はLITALICOという会社の創業者ではありません。

途中から社長になりました。

弊社は創業10年の会社ですが、最初の3年間は創業者が社長をしており、残り7年間僕が社長をしています。

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僕は、大学卒業後、2008年に新卒でLITALICOに入社しました。

入社し、1年経った所で急に社長になったというのが、簡単な経歴です。

当時24歳、いきなり100人が働く組織の社長になりました。

皆さん、社長交代する場面は、どの様な場所で行われると思いますか?

僕は、田舎出身で、テレビばかり見て育ったので、社長が交代する場面は料亭で行われるものだと思っていました。

料亭で、日本酒を酌み交わしながら「頼んだ」と言われる。

そういったドラマのシーンがありますよね?

実際は、24歳のある日曜日、当時の社長から「敦弥くん、大事な話しがあるから来てほしい」と呼ばれた先が、「てんや」でした。

(会場 笑)

一杯600円位の天丼屋さんです。

そこへ行くと、社長が既に一番安い天丼を注文していて、二人で天丼を食べながら「来月から頼んだ」と言われました。

それから7年を経ています。

障害のない社会をつくる

長谷川 LITALICOは、「障害のない社会をつくる」というビジョンのもと、障害者支援に関する事業を行っています。

ICCx AIESEC 2016 Session5 「教育を変え、社会を変える」

障害があるお子さんに、その子に合った教育や、長所を伸ばすプログラミング教育を提供し、将来的には社会の活躍までワンストップでサポートする活動をしています。

大体20,000人程のお客様が利用している状況です。

今回のセッションのテーマでもありますが、弊社が現在特に力を入れている事業は教育事業です。

なぜ教育事業に取り組み始めたのか?

弊社は「LITALICOワークス」という障害者の就労支援事業からスタートしました。

この事業は、精神疾患になった方 中心のサービスです。

統合失調症という、幻聴が聞こえたり、幻覚が見えたりする方や、うつ病の方等を働けるようにサポートをしています。

僕達は、精神疾患になったとしても幸せに働ける社会づくりをしていこうと考え活動をしてきたのですが、精神疾患になると、現実はやはり大変です。

統合失調症は、例えば横に怒った方がずっと立っていて、会場のざわめきが自分の悪口になって聞こえてくるという病気で、精神病院に入院している方も多いです。

1人1人にあった教育が社会にない

長谷川 僕は、統合失調症の本人に、なぜ統合失調症になったのかと質問をしたことがあるのですが、その方の回答は、トラウマがあるからというものでした。

僕は深く聞きたかったので、トラウマは何だったのかズカズカ質問をしたのですが、彼はストレスの限界で、18歳の時発症したと話してくれました。

何がストレスの原因だったのかというと、彼は小学校の頃からずっと勉強が分からなかったというものでした。

勉強が分からない状態でも、日本の教育では学年がどんどん上がりますよね。

彼はずっとクラスメートからバカにされ続け、親からは兄弟と比較し「なぜお前はできないのか?」と言われ続け、先生からも「努力不足だ」と言われ続け、ついに中学生の時、親に暴力を振るってしまいました。

高校生になると、逆に親から暴力を振るわれるようになり、いつの間にか街中の音が全て自分の悪口となって聞こえるような状況となり、それから今現在まで精神病院にずっと入院しているとのことでした。

彼にとって本当の障害は何だったのかと考えてみると、彼に合った教育が社会になかったことが一番の障害だったのではないかと僕は考えました。

精神疾患になり、元気がでない状況で家に籠っているという方にインタビューしていくと、彼と同じように、幼いころの失敗体験が積み重なり発症したのではないかという方が非常に多いことが分かりました。

教育を抜本的に解決していかなければ、障害はなくならないのではないかと考え、教育事業の取り組みを始めました。

この事業に携わり始めて、精神疾患の方はユニークな方が多いということに気付きました。

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例えば、人と関わるのは少し苦手だけれど、動物は好きという人や、マニアックな趣味を持っているという人が多いです。

仮説として、この様なユニークな個性を持っている人に合った教育がなかった結果、精神疾患が発生したのではないかと考えました。

ユニークな人達の個性を伸ばす教育を行おうと考え、「LITALICOジュニア」や「LITALICOワンダー」というプログラミングの教育等を行っています。

教育を抜本的に解決していかなければ、障害はなくならないのではないかと考え、教育事業の取り組みを始めました。

この事業に携わり始めて、精神疾患の方はユニークな方が多いということに気付きました。

例えば、人と関わるのは少し苦手だけれど、動物は好きという人や、マニアックな趣味を持っているという人が多いです。

仮説として、この様なユニークな個性を持っている人に合った教育がなかった結果、精神疾患が発生したのではないかと考えました。

ユニークな人達の個性を伸ばす教育を行おうと考え、「LITALICOジュニア」や「LITALICOワンダー」というプログラミングの教育等を行っています。

現在、ADHDやアスペルガー症候群等の症状がある、発達障害といわれる生徒が8,000人程LITALICOジュニアを利用しています。

実は、弊社のサービス利用を待っている「LITALICO待機児童」だけで5,000人程の方がいます。

それぐらい、このような個性を持った人達の行き場がないということです。

教育事業で出会ったユニークな子どもたち

長谷川 この事業を始めてみると、とても面白い子ども達が沢山いることに気付きました。

例えば、まだ4歳なのに宇宙のビックバンを調べている子や、小学校3年生でロボットばかり作っている子がいます。

この子に「将来何がしたい?」と聞いたところ、「LITALICOの社員を幸せにしたい」と言ってくれました。

「どうやって幸せにするの?」と聞くと、「LITALICOの社員は、皆彼女がいない様子だから、彼女の代わりになるロボットを作ってあげる」と言われました(笑)。

(会場 笑)

「ロボットは熟女にも対応します」とも言われました(笑)。

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A君という生徒は、アスペルガー症候群の傾向があるので、興味関心のストライクゾーンがとても狭いです。

だから「A君」と話し掛けても、大体無視されます。

僕、社長なのに。

(会場 笑)

A君に、一度だけ話し掛けてもらったことがあるのですが、内容は「トイレはどこですか?」というものでした(笑)。

彼は走ることが好きなので、陸上競技選手の為末大さんに来て頂き、陸上教室を開催しました。

教室の最後、為末さんがハードルを跳ぶ所を見せてくれたのですが、その姿を見たA君に「どうだった?」と聞いたところ「うん、動きに無駄が無い」と言っていました。

(会場 笑)

彼らの様にユニークで、将来の可能性を感じる子ども達が沢山いるのですが、日本の教育は、皆同じように育てるという方針で教育をしているため、彼らは学校に行けば行くほど自己肯定感を下げる結果になります。

これはもったいないことだと思います。

社会で活躍するのは「異才」な人たち

長谷川 皆さんも、これから社会に出ると分かりますが、社会で活躍している人は変わった人ばかりです。

今日登壇している人を見て下さい。

変わった人ばかり登壇していると思いませんか?

例えば大学の先生のように社会で活躍している方は、学級委員長のような人間だと僕は田舎で教えられました。

いざ入学してみると、大学の先生は無粋で変わった方が多いですよね。

コミュニケーションが苦手な方も多いと思います。

社会で活躍する人は、意外と異才的な方が多いと感じます。

僕は、日本の教育を「個性を矯正する教育」から、「長所を重視する教育」へ転換することが一番大事なのではないかと考えています。

会社の経営は、ビジョンや戦略が一番大事です。

そして日本の教育は、そのビジョンや戦略が間違っている。

日本の教育は、未だに7割位の時間を暗記に費やしています。

ここで暗記した内容は、社会で使いません。

もっと色々な子どもたちの個性を大事にし、今 弊社や(ライフイズテックの)水野さんが取り組んでいるような「プログラミングで創造性を伸ばす」ということを行うことが大事なのではないかと思います。

このような観点で、僕は今LITALICOの活動を通し日本の教育を大転換していくチャレンジを行っています。

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日本の小学校、中学校の教育は、95%位の内容が義務教育なので、公教育を変えていくことが大事です。

僕は土日の空いた時間で、文科省や厚労省に行ったり、政治家の先生と話したり、どのようにルールを変えていくかということに一番時間を使っているのですが、これは時間がかかることだと感じています。

今なんとか取り組んでいますが、日本の公教育を変えるにはとても時間がかかります。

教育を変えるために、まず親御さんから

長谷川 一方、民間の力によって一番成果を出せる領域は、親に対するアプローチかなと僕は考えています。

社会で活躍した、例えばエジソンやアインシュタインといった異才的な人がどのように育ったのか調べたのですが、彼らの多くは大学を卒業しておらず中退という経歴でした。

エジソンに至っては小学校2年生位の時に中退させられていました。

でも、何が良かったか?彼のお母さんの対応です。

小学校を中退させられても、お母さんが「この子には才能がある」と、家の地下室で理科の実験ができる環境を与え、彼はひたすら理科の実験を行い、偉大な発明家になったという訳です。

親向けの教育を行い、親が変わることによって、子どもの教育もスピード感を持って変わるのではないかと僕は考えています。

今後は親向けの教育を確立していきたいと考えています。

実際、LITALICOにいらっしゃる親御さんの多くから、発達障害のお子さんを、他の子と同じようにしてほしいと言われます。

学校の中で、人と違うということはネガティブに作用するので、お母さんとしてはその子の個性を伸ばすというより、皆と同じになってほしいと考えてしまいがちです。

でも、そのように考えていると、やはり子どもは良い方向に伸びていきません。

どのような子どものタイプがあり、どのように伸ばしていけば、社会の活躍や本人の幸せと繋がるのかを親御さんに伝えるため、「親向けの学校」といったものを、インターネットを通して展開するチャレンジをこれから行っていきたいと考えています。

人工知能を活用して、自殺予兆を早期発見

長谷川 また、最近は技術を使ったチャレンジも行っています。

人工知能は非常に面白いと感じているのですが、人工知能を使って自殺を予防するという取り組みを今行っています。

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去年(2015年)から研究的に始めたのですが、今年(2016年)に入り、実際に上手く機能し始めました。

LITALICOには、精神障害の方が毎日いらっしゃいます。

彼らは、確率的に自殺のリスクが高いです。

彼らの発言や行動を、毎日テキストデータとして記録しているのですが、その記録を人工知能が分析し、今命の危機が迫っているかもしれない人にアラートが立ちます。

アラートを受け取った場合、弊社スタッフが家族や主治医と連携し、命を守るということを行っています。

今年(2016年)に入り複数、実際に危機を回避することができたという事例が発生しています。

これは良いチャレンジができていると感じています。

僕は、社会問題を解決するということはとても難しいことだと思います。

大体ニッチな領域であったり、お金を持っていないことが原因だったりするので、社会問題になっている訳です。

今の社会の構造で考えると、難しい社会課題に取り組む小さな団体はとても多いのですが、ある種非力な団体であることが多いと感じます。

僕は、難しい問題だからこそ大きな力を持って社会を変えるということが大事なのではないかと考えます。

難しい問題だからこそ、ビジネスの力、技術の力、政治の力それぞれが一番に必要で、弊社はそういった大きな力を持って社会の問題を解決し続ける強い集団になっていきたいと思っています。

冒頭でお話ししたように、弊社には「社会を良くしたい」と考えている年間30,000人の方から問い合わせがあります。

そして、「困っているので助けて欲しい」という問い合わせも年間30,000人から入ります。

障害者に限らず、「こういうことで困っています」という個別の問い合わせや、「被災地で困っているのですが、これを解決してくれるのはLITALICOさんしかいない」という問い合わせもあります。

LITALICOには、助けてあげたいという人が集まり、助けて欲しいという人も集まるという構造に徐々になりつつあります。

この構造をさらに強化し、社会を変え続ける、社会を良くし続けるような力強い集団を作っていきたいと思います。

今日は皆さんと色々議論したいと思っていますので、宜しくお願いします。

ありがとうございました。

(会場 拍手)

小林 ありがとうございました。

続きまして、ライフイズテックの水野さんにプレゼンテーションをしていただきたいと思います。

(続)

編集チーム:小林 雅/榎戸 貴史/戸田 秀成/横井 一隆/鎌田 さくら

続きは 延べ2万人以上が学ぶ、中高生プログラミング教育を手がける”Life is Tech!” をご覧ください。

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【編集部コメント】

続編その3は、ライフイズテック水野さんに自己紹介とライフイズテックの取り組みをご紹介頂きました。サッカー日本代表本田圭佑さんも出資する事業の内容を是非ご期待ください。他にも多く記事がございますので、TOPページからぜひご覧ください。

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