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Takram田川さんと、ライフスタイルアクセント山田さんをお迎えして開催した「モノづくりとデザインで切り開く日本の未来」の記事を再編集して6回シリーズでお届けします。
デザイン特集(その6)は、Takramで実践されるデザインエンジニアリングの3つの手法と、イノベーションを起こすチームに必要な条件についてお話いただきました。ぜひご覧ください。
ICCカンファレンスは新産業のトップリーダー160名以上が登壇する日本最大級のイノベーション・カンファレンスです。次回 ICCカンファレンス KYOTO 2017は2017年9月5〜7日 京都市での開催を予定しております。
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登壇者情報
2016年3月16日
トークセッション
「モノづくりとデザインで切り開く日本の未来」
(スピーカー)
田川 欣哉
Takram
代表取締役
山田 敏夫
ライフスタイルアクセント株式会社
代表取締役
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【前の記事】
【本編】
山田 すごいですね。田川さんが言っていた積み上げでありながら、プロブレムリフレーミング、問題再設定みたいなことですよね。頭の切り替えって、問題再設定みたいな話じゃないですか。
このプロブレムリフレーミングのこと、やるときのコツとかはありますか。
Takramが実践するデザインイノベーションの振り子
田川 そうだね。Takramが持っている方法論はこの3つで、プロトタイピング、ストーリーウィーヴィング、プロブレムリフレーミングです。プロトタイピングは、皆さんもよくご存知だと思うんですが、作ることと考えることをいったりきたりするっていうことですね。
これは僕らが持っている振り子のメタファーなんですが、AかBかの二択ではなくて、両方やる、という話です。
デザインかエンジニアリングじゃなくて、どちらもやる。この手の話をするときに、ポイントが一つあって、デザインが白でエンジニアリングが黒だとするときに、よく間違えるのはこれらを安直に混ぜないこと。
混ぜちゃうとグレーになって中途半端になるんです。そうではなくて、僕らがやろうとしているのは、白は純白、黒は漆黒を目指すということ。で、その白と黒の間をいったりきたりするんです。
デザイナーとして考えているときは、超一流のデザイナーと議論しても負けないくらいの純白さを持つ。
その次の瞬間に、エンジニアと技術の議論をしても負けない漆黒さをちゃんと持つっていう。2つをちゃんと持っておいて。振り子を振っていくと、指でやってみると、途中で指が両方にあるように見えるんでしょ。指は実際は1本なんだけど。
質問者(小林氏) 実際にはどういう事例になるのでしょうか?
ストーリーウィービングとは?
田川 プロトタイプを作っている事例は全てそうです。作ってみて、それを観察して、さらに考える。どっちがいいではなくて、両方やる、ということですね。
もう一つの手法である、「ストーリーウィービング」というのは「昔むかしあるところに…」ということではなくて、具体的なことと抽象的なことを両方いっぺんにやるということです。
これはベンチャーにとっては、すごく大事なことだと思っています。
普通はプランニングをガチっとやったあとに、プロダクトをつくるじゃないですか、プロダクトが仕上がった瞬間に、それがダメであることに気づくんですよね。
だからプロジェクトの初期にプロトタイプを出来るだけ早く作って、それとビジネス感覚を右手と左手に持ちながら、議論する。
それを繰り返していく、振り子を振っていく中で、ちぐはぐだった具体と抽象がピタッと合っていくみたいなことがあるんですね。
なので、企画をつくって、実装をやるんではなくて、企画も実装も最初からやる、みたいなことですね。その方がいいんじゃないかな、と。
プログラムリフレーミングとは?
プロブレムリフレーミングは、問題設定と問題解決は表裏一体ということを認識するところから始まります。
ソリューションでブレイクスルーが出てこないとき、実は問題の設定が間違っていたり、解像度が甘いパターンがよくあります。
上司から、これを解決すべき、とテーマが降ってくるじゃないですか。不思議なんだけど、問題を解くのにかけている時間の100分の1くらいしか、問題の設定に使われていないんですよ。
で、課題が間違っているとか、課題の記述が粗すぎるとか、いろいろとあるわけです。
このような場合、ちょっと問題設定をずらすとソリューションがすごく楽に考えられるようになったりすることがあります。その問題再設定のことをプロブレムリフレーミングと呼んでいます。
例えば企業の命令系統の中でいうと、問題を設定する人は上にいて、解決を考える人は下にいて、課題として「このマーケットを攻略せよ」というようなことが設定されたとします。それが無理ゲーだったりすることもあるんですよ。
でも、問題設定をちょっとずらすとそれが可能になったりする。それがテーマを決めたんだから、とにかくやれっ!みたいに硬直化してしまうと、それは非効率だと思うんですよね。
だから、僕は問題を設定する人と解く人は一緒にやるっていうのがいいんじゃないかな、と思っています。
さっきの水筒の話も典型で、水筒って考えていたら、あのコンセプトは出ないですね。水筒じゃなくていいんじゃないか、とか、水筒って言っているお前が間違っている、とかいうところまで、自分たちの想像力を応用していいんだって風に思えるかどうかで。
ベンチャーの仕事ってほとんどそうだと思うんですよね。そこってやっていいんだって気づいた人たちは、問題の設定をずらしているんですよね。それに思いついた瞬間にソリューションも思いついているはずで。
Factelie(ファクトリエ)もそうだと思います。非効率なサプライチェーンの中で、そこを問題だと思いついた瞬間に、それを超えていくソリューションも多分考えついているはずなんだけど、つくってみたらうまくいかなかったこともあるでしょ。そしたら、問題設定を少し調整する。
問題の設定と解答を、相互にいったりきたりすることで、プロジェクトの質が高まっていくんです。
山田 仮説検証の連続ということですね。
田川 プロトタイプを作っている事例は全てそうです。作ってみて、それを観察して、さらに考える。どっちがいいではなくて、両方やる、ということですね。
山田 なるほどな~。
イノベーションには「越境性」と「超越性」
田川 そういう部分で、メタ視点をどれだけ持てるかが、ビジネスをピボットする瞬間の判断を決めると思います。
時代としてはここ数年はとても面白い時期に入っていて、ITが世界の隅々にまで浸透する仮定で、これまでの常識になかったようなビジネスやイノベーションが次々を我々は目にすることになると思います。
そのような時代にあって、僕がイノベーションを牽引するチームの特徴として大事だと思っているのは、「越境性」と「超越性」です。
越境性とは、分野を軽々とまたいで仕事をしていくこと。自分自身の専門性がデザインだろうが、マーケティングだろうが、技術だろうが関係無い。必要なことはその場その場で学んでいく。そんなメンタリティの持ち主たちのことです。
一方、超越性とは、物事を超俯瞰視点で観察することのできる人たちのこと。自分自身の行いをスケールを変えて把握する感覚は、自らの振る舞いを随時変更しなければならない現代にはとても重要な感覚のように思います。
こういう人たちと一緒に新しい時代を作っていきたいですよね!
山田 視座を上げて視野を広げて見ることが大切だということですね。
今回は貴重なお話をいただき、どうも有難うございました!
(終)
編集チーム:小林 雅/榎戸 貴史/戸田 秀成/藤田 温乃
【編集部コメント】
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