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「ノブレス・オブリージュ 起業家と社会貢献活動」【K16-2D】セッションの書き起し記事をいよいよ公開!5回シリーズ(その5)は、会場からの質問を受け付け、ヒューマン・ライツ・ウォッチの運営の詳細に迫りました。是非御覧ください。
ICCサミットは新産業のトップリーダー600名以上が集結する日本最大級のイノベーション・カンファレンスです。次回 ICCサミット FUKUOKA 2018は2018年2月20日〜22日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。
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登壇者情報
2016年9月6日・7日開催
ICCカンファレンス KYOTO 2016 「ICC SUMMIT」
Session 2D
「ノブレス・オブリージュ−起業家と社会貢献活動−」
(スピーカー)
谷家 衛
あすかホールディングス株式会社
取締役会長
土井 香苗
国際人権NGO ヒューマン・ライツ・ウォッチ
日本代表
安渕 聖司
SMFLキャピタル株式会社
代表取締役社長兼CEO
(モデレーター)
趙 正美
国際人権NGO ヒューマン・ライツ・ウォッチ
発展戦略・グローバル構想局 ディレクター
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最初の記事
【新】いま、人権を考える – 調べて知らせて世界を変えるヒューマン・ライツ・ウォッチ【K16-2D #1】
1つ前の記事
ノブレス・オブリージュは日本に根付くか?【K16-2D #4】
【本編】
趙 それでは、質疑応答に移りたいと思います。
質問者1 LITALICOの中俣と申します。
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中俣 博之
株式会社LITALICO
取締役
1984年新潟県新潟市内野生まれ。筑波大学第三学群卒業後、株式会社ディー・エヌ・エーに入社。新規事業開発をはじめ、国内・海外企業との提携・買収案件や、海外支社での経営企画・戦略を担当し、帰国後 株式会社LITALICOに入社。同年10月、取締役に就任。採用、新規事業、マーケティング、経営企画領域を管掌。現在は次世代戦略全般を担当。
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LITALICOは障がい者の支援等をしています。
ヒューマン・ライツ・ウォッチさんは、たくさんの社会課題の中から、どのような意思決定のもとに領域を決めていますか。
また、その課題解決に向けて、取り組むべきことも数多くありますが、どれかにリソースを集中しないと本質的に解決しないと思っています。
選択と集中のバランス、どこまでを解決しようとしているかについて、お聞かせください。
取り組む社会課題をどう選ぶか
趙 ヒューマン・ライツ・ウォッチには、イシューを選ぶ際、グローバルで採用している合理的なクライテリアがあります。
各部署で、例えば子どもの権利局は来年こことここで調査をやりたいという人権問題のリストを、テーマごと、地域ごとに持っています。
その優先順位を決めるための4つの軸があります。1つは被害の甚大性。犠牲者の数など被害がどれくらい大きいかということ。
そして緊急性。今すぐ現地に入って調査をかけないと助けられない、もしくは調べることができなくなるという緊急性です。
そして、最終的には調査をした後に、アドボカシーで社会システムや法律を変えて問題を解決できる見込みが高いかどうかということ。
いくら重要な問題でもアドボカシーで変えられないのであれば、ヒューマン・ライツ・ウォッチが着手すべき問題ではないということなんです。
土井 4つ目は他の団体がやっているかどうかです。私たちしかやっていないようなところを選択してやっています。
質問者1 今の話では、アドボカシーの評価がかなり難しそうだなという感覚があります。構造的に把握して、できるかどうかを判断するのは、難しそうだなと思うのですが。
政策やシステムを変えられるか
土井 おっしゃる通りです。
ヒューマン・ライツ・ウォッチが得意としているのは、「政策を変える」「システムを変える」ということです。
例えば、ホームレスの方1人ひとりに、今日のご飯がないという問題があります。
ご飯を届けることも重要で緊急なことですが、数百人のご飯を配り続けるのかというと、サステイナブルではありません。
この状況を生み出している問題は何かを洗い出し、システムを変える必要があります。
要するに「ただ良いことをやればいい」というわけではなく、やはり結果を出すことが大事です。
システムを変えられるかという点を、最初から考えています。
ちなみに、LGBTの権利についても、子どものいじめの問題に関して去年全国的な調査を行い、さまざまな現実が上がってきました。
今は、次の臨時国会からLGBTの人たちのイコールオポチュニティ、差別の禁止の法律を作ることについて、一層力を入れてやっていこうと思っています。
雇用機会均等法や、障害者差別解消法など、法律ができると大きく変わるので、LGBTについても仕掛けていきたいと思います。
質問者1 ヒューマン・ライツ・ウォッチの日本では、特に何に注力していますか。
土井 日本では、子どもとLGBTに関して大規模な調査をかけたことがあるので、今は中心としてやっています。
調査をしていくと、本当の問題が見えてきて、政策を働きかけたりメディアの人に話す際、正当性を持って話せます。
この他に、難民や障害者、ビジネスと人権等についても、手広く取り組んでいます。
ビジネスマンが行う支援の理想的な距離感とは?
質問者2 ラクスルの松本と申します。
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松本 恭攝
ラクスル株式会社
代表取締役
1984年富山県生まれ。慶應義塾大学卒業。A.T.カーニーに入社し、コスト削減プロジェクトに従事する中で、印刷費が最もコスト削減率が高いことに気づき、印刷業界に興味を持つ。業界の革新を志し、 2009年にラクスル株式会社を設立。2013年より印刷機の非稼働時間を活用した印刷の E コマース事業「ラクスル」を開始。また、2015年12月より物流のシェアリングエコノミーサービス「ハコベル」を開始。「仕組みを変えれば、世界はもっとよくなる」をヴィジョンに巨大な既存産業にインターネットを持ち込み、産業構造の変革を行う。
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谷家さんと安渕さんに質問です。
サポートされる団体との距離感の取り方について。お金を出すだけというところからリーダーシップを発揮するというところまで、さまざまですが、どういう距離感の取り方をして団体をサポートされるのがいちばん良い形か、たどり着いた先を教えて下さい。
安渕 谷家さんも一緒だと思いますが、「この人だったらしっかりやってくれるだろう」という人をサポートしていることが多いです。
従ってリーダーはすでにいるので、私の役割は、何か必要とされる時にすぐ応えられる立場にいることです。
サポーターとしてお金を出したり活動に参加したり、発表会に行ったりします。
団体の中に入って何かをやるのは、私の得意なことではないので、そこの距離感は保ちます。
色々なところで団体について話して広める役割を果たしながら、何か相談事があればいつでもオンデマンドでメールにも答えてサポートするという立場を取っています。
谷家 私は団体によって異なりますね。
安渕さんがおっしゃったようにメインでやっている人の個性にもよりますしね。
自分自身が思いを持って始めたものは、ベンチャーと一緒で、喧々諤々(けんけんがくがく)と中でもめながらやっているのも結構あります。
団体によって関わり方は違うので、定型化するのは難しいと思います。
安渕 確かに、もめている時や危機に瀕している時は、深く入らざるを得なくなり、毎月来てもらって財務状況を聞いて立て直すためのプラン作りまでやったこともあります。
それをすべての団体にやるのは無理なので、ヒューマン・ライツ・ウォッチの話と一緒ですが、緊急性、被害の甚大性等に応じてステップインします。それは、やはり団体の活動を続けてほしいからですね。
社会問題に取り組む際の資金をどう集めるか?
質問者3 シェアウィングの佐藤と申します。お寺や神社の新しい価値の再創出と再生をしたいと思い、親友と新しく会社を立ち上げました。
資金調達の面で趙さんにお聞きしたいと思います。
難解な社会問題に取り組んでいるため事業計画が立てづらいと思いますが、どのように取り組まれていますか。
また、支援される立場のお2人には、どういう形でお願いすると上手く支援の関係が続くのか教えていただければと思います。
趙 ヒューマン・ライツ・ウォッチは、民間の大企業と同じくらい経営がしっかりしています。
来年度事業の優先順位のリストがあって、いくらぐらい寄付を集められそうかというのを本部が決めます。ちなみに今年度の予算は82億円です。合理的な判断をしながら、この予算規模でどのプロジェクトに着手するかを毎年決めています。
どうやってこの不可思議な商品を売っているかということですが、誰にも自分とコネクトできるポイントがあるはずで、そこにつなげていけるように努力しています。
いきなり「実は障がい者の権利をやってまして…」などと言っても、興味がないとすぐ終わってしまうので。
とはいえ、無理だったなということも多く、100発10中ぐらい上手くいけばラッキーぐらいの感じで、心を折らず会い続ける、それだけです。
谷家 NPOやNGO、社会起業家、それぞれ全然違いますよね。自分が一番やりたいやり方でやるのがいいと思います。
こういうNGOだったら、マイノリティーの人のためにというのがありますし、社会起業家には達成したい目標もあり、収益を挙げないとインパクトを与えられないという考え方もあるでしょうから。
自分たちが作りたいものを、一生懸命お話しされるのがいいと思います。
趙 ありがとうございました。時間となってしまいましたので、最後に一言ずつ、今日を締めくくるお言葉を頂ければと思います。
土井 今日は本当にありがとうございました。
ヒューマン・ライツ・ウォッチが今日あるのも趙さんのおかげというのがあります。
大会社勤めで煩悩の塊だったかもしれない趙さんに、人権のことばかりに取り組むまでになってもらいました。
先ほど、過去に難民だったと話されていました。
マイノリティーである辛さに打ち勝って、強さを身に着けてきた趙さんだからこそ、会社での経験と、パッションを融合してくれて今に至っていると思います。
趙 ほめ殺しみたいで怖いです。
(会場笑)
安渕 「今日こんな話を聞いたよ」という話をするだけでもいいので、みなさんがこの会場に来る前と後で、違うアクションをとってもらえたら嬉しいです。
1,000円どこかに寄付したり、自分の気になっている問題をチェックしてみたり、1人ずつが少しずつ行動を変えていくことで、色んな問題に対するアプローチが変わってきます。
谷家 土井さんと趙さんの2人は何をやっても成功したと思いますが、自分が信じていることをやっているからとても魅力的だと思います。
NGO、NPOに参加すると、そのコミュニティーの1人になり、仲間もできます。みなさんぜひ、主体的に入っていかれたら、新しい喜びが生まれると思います。
趙 ありがとうございました。実はみなさん、ヒューマン・ライツ・ウォッチは年に1回大きなガラ・ディナーを開催していまして、来年(2017年)5月24日に東京の帝国ホテルでやります。
1席5万円からで少し高いのですが、実費以外は全部寄付になります。
もし「何かやってみよう」と思われたら、お声がけいただけましたらご案内します。
みなさん、今日はどうもありがとうございました。
(完)
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編集チーム:小林 雅/榎戸 貴史/戸田 秀成/城山 ゆかり
【編集部コメント】
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