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国産メディカルフードを目指す「神楽坂乳業」、重症の便秘から医師を救った「神グルト」誕生秘話(ICC FUKUOKA 2026)

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ICC FUKUOKA 2026 クラフテッド・カタパルトに登壇いただき3位に入賞した、神楽坂乳業 林 和彦さんのプレゼンテーション動画【国産メディカルフードを目指す「神楽坂乳業」、重症の便秘から医師を救った「神グルト」誕生秘話】の文字起こし版をお届けします。ぜひご覧ください!

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回500名以上が登壇し、1,200名以上が参加する。そして参加者同士が真剣に議論し、学び合うためのカンファレンスです。次回ICCサミット KYOTO 2026は、2026年8月31日〜9月3日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページのアップデートをお待ちください。

本セッションのオフィシャルサポーターはJ.フロント リテイリングです。

【速報】「一点もの」のアートが溢れる日常を!芸術家に副業をつくり、夢を支える「リフレクトアート」がクラフテッド・カタパルト優勝!(ICC FUKUOKA 2026)


【登壇者情報】
2026年3月2〜5日開催
ICC FUKUOKA 2026
Session 8A
CRAFTED CATAPULT 豊かなライフスタイルの実現に向けて
Sponsored by J.フロント リテイリング

林 和彦
神楽坂乳業
代表取締役
公式HP

東京女子医大で35年間、がんの専門医として働き、還暦を機に早期退職して、神楽坂乳業株式会社を起業しました。弊社は「神グルト」というヨーグルトを自社ECで製造販売しています。
今回ICCサミットには初参加ですが、クラフテッド・カタパルト、ソーシャル・カタパルト、フード&ドリンクアワードと3つに出場させていただけることになりました。大学病院のがんセンター長がなぜヨーグルト何か作っているんだ?、と思われた方は是非私の話を聴きにいらしてください。


林 和彦さん 皆様、こんにちは。

神楽坂乳業代表取締役の林と申します。

本日は、医師がつくったヨーグルトの話をいたします。

勤務先の大学病院で起きた医療事故

私は医学部を卒業してから35年間、ずっと大学病院の最先端医療の現場にいました。

消化器外科医、がん専門診療科の教授、がんセンター長と、医療の力を誰よりも信じて歩んできたひとりです。

ところが、今から約10年前の2014年、我々の100%の過失により、2歳の男の子を死亡させてしまうという、極めて重大な医療事故が大学病院で発生しました。

私は、医療安全担当副委員長として、この医療事故の責任者になりました。

ストレスから身体を壊し、重症の便秘に

その日から、生活が一変しました。

申し訳なさと疲労により不眠になり、私の身体は、次第に壊れていきました。

極度のストレスによって、重症の便秘になりました。

食事や運動に気を配り、便秘薬も服用しましたが、私には、まったく効果がありませんでした。

苦しまぎれに、患者さんに処方している5倍量、10倍量の下剤を服用するようになると、すっかり衰弱してしまいました。

自宅の一部屋を改造して始めた腸内細菌研究

そうした経緯から、自分自身を救うために、腸内細菌の研究を開始しました。

しかし、個人的な課題を、大学の研究室で研究するわけにはいきません。

そのため、神楽坂の自宅にある、元々は子ども部屋だった部屋をラボに改造して、毎晩研究を続けました。

もう薬には、嫌気がさしていました。

市販のヨーグルトはいずれも、私にはまったく効果がなかったため、自分自身で最高のヨーグルトをつくるしかないと思いました。

医学研究者の目線で自ら実験台となり改良

乳酸菌も世界中から集めましたが、最終的に採用したのは、医薬品として承認されている菌たちです。

整腸作用が証明されているうえ、安全性や安定供給の不安もありませんが、その一方で、非常に繊細で、本来は食品にはまったく不向きです。

医学研究者の目で自分自身を実験台にして、丹念に改良を続けました。

納豆菌を乳酸菌とともに培養すると、増殖が10倍も速まるという研究論文を見つけて、ヨーグルト内で、それを再現することにも成功しました。

試作品数は500、突然美味しいヨーグルトが誕生

当初は、ひどい味と匂いだったため、無理やり飲み込んでいました。

毎晩、1リットルずつ、つくり続け、試作品の数は500を超えました。

ところが、2年ほど経ったある日突然に、「何これ、美味しい!」と、思わず叫んでしまったヨーグルトができたのです。

こちらが、私のヨーグルトです。

審査員の皆様、お手元の小瓶の蓋を開けて、どうぞお召し上がりください。

▶編集注:プレゼン中に、審査員席に「神グルト」が配布されました。

賞味期限は、ヨーグルトとしては異例とも言える、6週間です。

他社と一線を画す「出発点」

このヨーグルトは、風味だけでなく、効果も劇的でした。

その後、私は便秘から完全に解放されました。

「いったい他社製品と何が違うのですか?」と、よく尋ねられます。

私個人のためのヨーグルトでしたので、大量生産して利益を上げなければならない乳業会社の商品とは、出発点から異なります。

乳酸菌や原料だけでなく、発酵方法も大きく異なっています。

「神グルト」で起業、立ちはだかるOEMの壁

大学病院の院長である友人に、このヨーグルトを試食してもらったところ、「30年間服用していた花粉症の薬が要らなくなったよ。マジこれ、神じゃん!」と、言ってもらえました。

神楽坂の「神」という文字と、友人の言葉をヒントに、「神グルト」と命名しました。

私は、このヨーグルトで起業し、弱者雇用や食と健康のエビデンスづくりといった、病院では解決できなかった、社会課題の解決に取り組もうと決意しました。

乳業の製造工場の初期投資は、莫大です。

委託(OEM)生産しかないと考え、乳業会社に片っ端から打診しましたが、素人である私の話を聞いてくれる会社は、ほとんどありませんでした。

幸いなことに、北関東にある小規模の乳業会社が、委託生産を受け入れてくれました。

しかしながら、研究室で誕生した「神グルト」のレシピや繊細な温度管理は、乳業会社には無理があったのだと思います。

6カ月が経過した時点で、「弊社では、もう無理です」と断られてしまいました。

営業許可申請も「無理です」と言われて

苦渋の思いで、委託生産を断念しましたが、ここで諦めるわけにはいきませんでした。

「それなら、自分自身で製造するしかない」と思いました。

乳製品製造業に関して、まったくの素人でしたが、意を決して、新宿区保健所に営業許可申請書を持参しました。

食品衛生の担当官に、「乳製品製造業の申請に来ました」と伝えました。

「製造経験は何年ですか?」

「ありません」

「社員は何名ですか?」

「私ひとりです」

「場所はどちらですか?」

「これから決めます」

という短い会話の後、担当官は「無理です。乳製品製造業は、ひとりでできるような仕事ではありません」と言いました。

「どうしてでしょうか?」と食い下がると、「要件が非常に厳しいため、個人に許可したことはありません。せめて場所だけでも決めてからでなければ、相談にも乗れません」とのことでした。

願掛けに訪れて知った「牛込」の由来

しかし、新宿という東京のど真ん中では、工場にできる物件など、なかなか見つけられませんでした。

途方に暮れて、職場の近くの小さな祠(ほこら)に願掛けに行った際に、祠の案内板が、ふと目に入りました。

私は、それを読んで仰天しました。

案内板には、こう書かれていました。

「平安時代、この一帯は官製の牧場で、牛をたくさん集めていたので、『牛込』と呼ばれるようになりました。」

驚きました。

確かに、戦前までこの辺りは、「牛込区」だったのです。

そして、当時の私の職場は、まさに牛込にありました。

さらに、このようにも書かれていました。

「明治時代には、牛込から神楽坂には、たくさんの乳牛が飼育され、牛乳販売所(ミルクホール)がいくつも存在していました。」

確かに、早稲田生まれの夏目漱石の小説(『野分』)には、ミルクホールで牛乳を飲む学生の絵がありました。

「この地、牛込でやりなさい」と、神様に背中を押されているような気がしました。

総額200万円で工場が完成、笑顔で下りた営業許可

しばらくすると、なんと病院から150mほどの場所にある古いアパートの1階に、物件が見つかりました。

まさに、神様のご加護だと思いました。

毎週のように保健所に通い、承認に必要な事項を積み重ねていきました。

知り合いのひとり親方に頼み込み、私も手伝うという約束で、総額200万円という低予算で改装してもらい、ついに牛込工場が完成しました。

現地調査をしてくださった保健所の担当官は、私のしつこさに呆れながらも、最後は笑顔で承認してくれました。

通帳残高が7万円弱、起業6年半で新工場設立へ

実店舗なしのECのみで、材料の仕入れから製造、梱包、発送まで、すべてひとりで行っていましたが、経営は火の車でした。

ある晩、妻が怖い顔で私の前に座りました。

「これが全財産です」と、貯金通帳を突き出されました。

残高は、68,035円でした。

しかし、目標達成のためには、規模を拡大しなければなりません。

広告費もゼロでしたが、ありがたいことに、お客様の口コミにより、メディアでも次第に評判になりました。

私は、次の挑戦を始めました。

新工場のためには多額の資金が必要となりますが、金融機関に何度も断られ続けました。

しかし、メインバンク主催のビジネスコンテストに入賞したことによって、風向きが変わりました。

神楽坂の自宅を担保に入れて、起業6年半後に、ようやく栃木県に新工場を設立することができました。

ご覧のように、新工場の内部は、手術室のような清潔さです。

私以外にも、看護師や薬剤師、醸造専門家などのプロフェッショナルが揃っています。

事業性と社会性の両立に成功

酪農業界は今、瀕死状態です。

この工場では、地元の栃木県那須産の牛乳を使用することにより、酪農家を支援するとともに、小山市商工会議所を介した地域振興にも力を入れています。

まっすぐ進むことにより、理解者が次第に増えてきました。

ラジオ番組にも出演し、新宿区の「新宿逸品」にも選定され、新宿区のふるさと納税では、部門別の1位になりました。

ベストセラーシリーズ『日本でいちばん大切にしたい会社9』(2026年3月発売)にも、弊社が紹介されます。

おかげさまで、直近2年間で売上は4倍となり、前期最終の四半期には、損益分岐点を超えて、事業性と社会性を両立させることができました。

プロフェッショナルとして築くメディカルフードの礎

一般の食品会社は、臨床研究を医療機関に外注しています。

しかしながら、私は、大学病院で35年間、世界に向けてエビデンスを発信してきたプロフェッショナルです。

今後、神楽坂乳業は、他社の皆様と協業してまいります。

ICCを契機に、「我が国のメディカルフード」の礎をつくりたいと思っています。

ご清聴ありがとうございました。

▶︎実際のプレゼンテーション動画もぜひご覧ください。

(終)

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編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/戸田 秀成

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